日本経済

2017年3月14日

【藤井聡】「菅直人」政権が導入。日本経済を破壊し続ける「PB黒字化目標」

From 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

言うまでもありませんが「財政規律」、つまり、政府の支出に関する何らかのルールそのものは、不要なものでもなんでもなく、あって当たり前のものです。政治家が好き勝手に政府のカネを、何の制約もなく自由に使いまくって良い訳はありません。

しかしだからといって、あまりに制約をかけ過ぎるのも問題です。例えば、安倍総理は平成29年3月1日の参議院予算委員会で、次の様に答弁しています。

「来年の予算を半額にしますよといったら、PBは黒字化するんです。

黒字化した瞬間にですね、日本経済は死んだような状況になって、その翌年から悲惨なことがおこっていくわけです。

・・・プライマリーバランスを、いわば無理矢理、人工的にバランス(=PB赤字をゼロにするの意)させたって、これは正に意味がない。

・・・支出を半減すれば一気に大不況になりますから、税収もどんと減ってしまいますから、その翌年から、経済は最悪になるわけでございます。」 ( )内は筆者加筆
https://www.youtube.com/watch?v=TDfaOOz53NI

この話は、財政を絞りすぎれば深刻な事態となる、ということを端的に示しています。

つまり、財政規律というは「緩すぎても」「厳しすぎて」もいけない、という次第です。

だから、我々が論ずべきなのは「財政規律が必要かどうか」という愚問ではなく、「適切な財政規律とは何か?」、逆に言うなら、「つまり、その財政規律は、厳しすぎるのか、緩すぎるのか?」という一点なのです。

ですから、「我が国の今の財政規律」は「適切なのか否か?」、もしも適切でないとすると、「緩すぎるのか厳しすぎるのか?」――当然ながら、こういう疑問が当たり前に成立するはず。

では、わが国の財政規律とは一体何かと言えば、「2020年に、プライマリーバランスを黒字化する」というもの。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2013/2013_chukizaisei.pdf

プライマリー・バランスとは、日本語では「基礎的財政収支」と呼ばれるもので、しばしば「PB」とも表記されますが、これは要するに政府の収入と支出(国債費を除く)の差。

そして現在これが、「赤字」の状況にあります。だから政府は、この「赤字」を2020年までに解消するために、収入を増やすべく「消費増税」を行うと同時に様々な項目の支出カット(ならびに、一定以上増えないようにする「シーリング」)を進めてきました。

そして今や、

『日本は今、G7諸国の中で最も「緊縮」的な財政である 〜OECDからの警告〜』https://38news.jp/economy/08237
『今の経済政策は「戦後最大の緊縮」政策である』 https://38news.jp/economy/07934

・・・・という状況になっています。

しかし、その結果、我が国の経済は深刻な被害を受けてしまっているのが実態です。例えば、

『日本経済の「供給力」「生産性」を破壊し続ける消費増税』https://38news.jp/economy/10172

『消費増税ショックで「日本の貧困化」が進行しています。』https://38news.jp/economy/09997

『やはり実在、幻の秘技「消費税・三年殺し」』 https://38news.jp/economy/07999

・・・などで紹介した通りです。

このことはつまり、現状のこのプライマリー・バランス黒字化目標(PB黒字化目標)は「不適切に厳しすぎる目標」であることを明確に示しています。

したがって、政府がこの目標に向けての「無理」な努力を重ねれば重ねるほど、安倍総理が言う

「日本経済は死んだような状況」

へと一歩ずつ近づいている、という次第です。

ですから、現状の「PB黒字化目標」なる財政規律を撤廃することが今、求められているのです。

・・・ただし・・・

こうした主張をすれば、瞬く間に、

「財政規律を破棄しろだって?野放図な政府支出がいいわけないだろ!」
「日本の財政を破たんさせる気か!?」

といった「批判」「非難」が、一般の人々から有名大学の経済学教授に至るまでのあらゆる方々から浴びせかけられることになるのが、今の日本。

しかし、これらの批判はいずれも不当なものなのです。繰り返しますが、筆者は財政規律そのものを無くせと言っているのではありません。日本の財政を破綻させず、日本経済の成長を導きうるものへと、現在の財政規律そのものを「改善」すべきだと主張しているに過ぎないのです。

財政規律、財政再建にご関心の国民各位には、政治家、官僚、学者も含め、冷静で理性的に議論されることを心から祈念いたします。

・・・

ところで、このプライマリー・バランス目標を論ずる上で多くの国民、あるいは、政治家や経済学者達も忘れてしまっている、重大なポイントを一つご紹介しておきたいと思います。

実は、現在の政府のプライマリー・バランス目標(PB目標)は、安倍内閣が導入したのでは「なく」、2010年の民主党の「菅直人政権」が導入したものだ、という事実です。

もちろん内閣の「継続性」は一定は必要です。

しかし「過剰な硬直性」は時に深刻な弊害をもたらすことも真実です。

そもそも、これまでと全く異なる概念のアベノミクスを進める安倍内閣と菅直人政権とでは、経済財政の運営の仕方が全く異なっています。

その結果、国際公約上、最も重視されている「債務対GDP」は、アベノミクスのお陰で金利が低迷し、成長率が一定確保されているため、PBが赤字の現状でも既に、安定化し、引き下がり始めているのです!

つまり今や、PBの黒字化で「なく」、「(低金利状況の継続を見据えつつ)名目成長率3%以上を確保し続ける事」を目標にしていくことこそが、債務対GDP比の安定的低下という真の財政再建を果たす上で、求められているのです。

こうした状況を踏まえるなら、財政規律の内容を、「名目成長率3%を通して債務対GDP比を引き下げる」というアベノミクス・バージョンに「改善」することは、不当でも不条理でも何でもなく、むしろ至って「正当」な正しき運営なのです。

おりしも、上述の記事で指摘したように、(野田政権が政治的に決定した)2014年の消費増税で途轍もない被害を被り始めている今、菅政権が立てたPB目標に「硬直的」にこだわり続ければ恐ろしい「悪夢」が実現しかねぬ状況にあります。

そうすればまさに文字通り、安倍総理が国会で答弁した「死んだ状態」に、日本経済が至りかねません。

だから今こそ、財政規律の内容を、成長を度外視した「菅内閣」ヴァージョンから、成長を前提とした「安倍内閣」ヴァージョンへと、「改善」すべき時なのです。

追伸:「成長」を通した「財政再建」の道にご関心の方は、是非こちらをご一読ください。
https://goo.gl/Jcqhm0

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