コラム

2017年3月15日

【佐藤健志】震災復興と地政経済学

From 佐藤健志

今年も3・11がめぐってきました。
早いもので、あの震災から6年となります。

かなり時間が経ったような印象もありますが、復興は決して十分ではありません。
次の記事をどうぞ。

「復興『2020年度以降も』4割 42市町村長調査」

これは毎日新聞が、岩手・宮城・福島の沿岸部42市町村の首長(岩手12人、宮城15人、福島15人)にアンケートしたもの。
政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を、復興のメドとしていますが、
同年度までに復興事業を終わらせる見込みが「ない」と答えた首長は
見出しの通り、約4割(16人)に上りました。

とくに福島県は
見込みがない 13人
見込みがある  1人
分からない   1人
という結果だったそうです。

岩手県では陸前高田市と大槌町、宮城県では山元町が「見込みがない」と答えたとか。
山元町の齋藤俊夫町長は、「集団移転先でのコミュニティー形成や心の復興」などに長い歳月が必要だと答えたそうです。
http://mainichi.jp/articles/20170310/k00/00m/040/093000c?fm=mnm

東京オリンピック・パラリンピックの開催準備が本格化する中、当初掲げられていた「震災復興五輪」の理念が薄れていると感じるか?
という質問への回答は
薄れている    21人
薄れていない   11人
分からない・その他 9人
となりました。

合計すると41人なので、回答者が1人足りないものの、
これは2月26日に初当選したばかりの佐藤金正・福島県川俣町町長が、質問の一部にのみ回答したためのようです。

震災の風化については、「かなり感じる」と「ある程度感じる」と答えた首長が39人。
福島県双葉町の伊沢史朗町長によれば
「国に要望活動に行っても風化を感じる」
とのことです。
復興の進捗についても、10人が「遅れている」と答えました。

政府の策定した復興予算については、29人の首長が「評価する」「ある程度評価する」と答えましたが
地元負担が求められた点については不満の声も目立つとのこと。

「財政規模の小さい自治体にとって地元負担が重くのしかかる」(水上信宏・岩手県洋野町町長)
「地元負担は残念。自由度のある復興交付金の拡充を」(伊達勝身・岩手県岩泉町町長)
「被災住民からの要望に応える単独事業で財政が厳しい」(小田祐士・岩手県野田村村長)
「ようやく復興事業が本格化しようとする中、地元負担を求めることは復興の更なる遅れにつながる可能性がある」(山田司郎・宮城県名取市市長)
といった具合です。
http://mainichi.jp/articles/20170310/org/00m/040/018000c

政府は2020年度で復興事業をほぼ終わらせ、復興庁も廃止する方針なのを思えば
復興事業がようやく本格化しようとしているところだという、山田市長の言葉は重大と言わねばなりません。
このままだと2020年東京オリンピックが終わったあたりで、被災地が本格的に切り捨てられる恐れが強いのです。

2019年には消費税率の10%引き上げが予定されていますし、オリンピックのあとは反動で景気が冷え込むでしょう。
戦後日本で初めて赤字国債が発行されたのも、前回の東京オリンピックの翌年にあたる1965年でした。
この年は大型倒産が相次ぎ、「(昭和)40年不況」と言われたのです。

まして今はデフレのうえ、「国の借金」こと政府負債への風当たりも強い。
機能的財政論にもとづく積極財政へと、早めに舵を切っておかないかぎり
「復興事業の継続?! 何だね、どこにそんなカネがあるんだね?!!」
という話になるのは目に見えているではありませんか。

現に「創造的復興(※)」や「被災地の自立(※)」といった、
いささかいかがわしい議論すら、すでにあまり聞かれなくなっています。

しかし、それでいいのか?

ここで参照したいのが、中野剛志さんが大著『富国と強兵』で提起した地政経済学の概念。
ごく簡単に骨子をまとめれば、こうです。

1)国の経済的繁栄は、安全保障の確立と切り離せない。
2)安全保障の確立は、地政学的条件の考慮なしには達成しえない。
3)よって国の経済的繁栄も、地政学的条件の考慮なしには達成しえない。

地政学的条件はふつう、「地理的特徴を踏まえた他国との力関係」として考慮されます。
しかしわが国の場合、「自然災害対策を踏まえた国内各地域の力配分」という点からも考慮される必要があるでしょう。

同じGDP600兆円でも、東京一極集中で実現するのと
各地域がそろって発展する形で実現するのとでは
国の将来にとっての意味合いは変わってくるだろう、ということです。

何せわが国は遠くない将来、首都直下地震や南海トラフ地震に見舞われる危険が高いのですぞ。

また金正恩の異母兄弟にあたる金正男を暗殺したり、弾道ミサイル発射実験を行ったりといった
最近の北朝鮮の動向や、
韓国における朴槿恵大統領の罷免決定などを見ると、朝鮮半島情勢も今後緊迫する恐れが強い。
つまりは日本海がキナ臭くなるということです。

北朝鮮で体制崩壊など起きた日には、日本海沿岸や九州といった地域は難民が押し寄せてきて大変なことになるのでは?

金日成政権の末期、1993年に防衛庁(現・防衛省)が行ったシミュレーションでも、
朝鮮半島で武力紛争が発生した場合、27万人の難民が日本に流入すると予測されています。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170309-00518645-shincho-kr

こういう地政学的条件を考えれば、東北の太平洋岸(つまり被災地一帯)については

たんなる復興にとどまらず、
発展と繁栄を積極的に推進するのが
自然災害対策の点から見ても、また安全保障政策の点から見ても
国家戦略として正しい!

ということになるはず。
ですから震災6周年にあたり、こう提唱しましょう。

日本全体の繁栄と安全保障のためにも
東北で「富国と強兵」、あるいは富国強靱化を!!

そのためには何が必要か。
理解のカギを与えてくれるのが、3月12日のNHK「日曜討論」に出演した今村雅弘復興大臣の発言です。
福島原発事故に伴う帰還困難区域に「特定復興再生拠点区域」を設けることに関連して、大臣は以下のように述べました。

「ふるさとを取り戻してもらいたいという施策の一環だ。
ふるさとを捨てるというのは簡単だが、
戻ってとにかく頑張っていくんだという気持ちをしっかり持ってもらいたい」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170312/k10010908151000.html

今村復興相の発言、なかなかもっともに響きます。
しかし考えてみましょう。
2013年9月、安倍総理はニューヨーク証券取引所で
「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」
と語ったのではなかったか。

国境や国籍にすらこだわる必要がないはずなのに、
なぜ「ふるさと」にこだわる気持ちをしっかり持たねばならないのか?
何を根拠に、そんな心構えを要求できるのか?

ヾ(℃゜)々\(◎o◎)/ザッツ・ブーメラン!!\(◎o◎)/(゜ロ)ギョェ

そうです。
震災復興をまっとうにやり遂げるには、従来のグローバリズム的発想を根底から見直さねばならないのです。

これができないようでは、やはり
『右の売国、左の亡国』ということになってしまうでしょう。

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文中、「(※)」マークを打ったフレーズ
「創造的復興」と
「自立」についても
本書収録の「政治経済用語辞典」で、本当の意味を記しておきました。

ではでは♪

<佐藤健志からのお知らせ>
1)まっとうなナショナリズムなしに戦後脱却をめざすと、事態はかえって悪くなりかねません。そのメカニズムの体系的分析です。

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4)「まずは地元を愛してこそ、国という大規模で高次元なものにたいし、個人的な事柄のごとく愛着が持てるようになる」(230ページ)
エドマンド・バークの言葉です。とはいえ、国境や国籍へのこだわりを捨てろと言いつつ、地元を愛することを求めるとなると・・・

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5)「広い世界を知るにつれ、人間は少しずつ、地元がすべてという固定観念から自由になってゆく」(128ページ)
裏を返せば、グローバリズムを肯定しつつ、「とにかく地元で頑張れ」と求めるのは、やはり矛盾しているのです。

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6)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
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