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2018年9月7日

【上島嘉郎】日本には「負の遺産」しかないのか

From 上島嘉郎@ジャーナリスト(『正論』元編集長)

平成最後の「終戦記念の日」の新聞――。

相変わらず
「日本はアジアの声を聞け」
「戦争の反省を忘れるな」
といった社説が並んでいました。

たとえば
「戦後73年とアジア
未来へ向け記憶を紡ぐ」
と題したのは朝日新聞で、
こう書かれています。

〈この歳月を経てなお、
日本はアジアでの和解を
成し遂げていない。(略)

侵略や植民地支配の記憶という
「負の遺産」の風化をこのまま待つ
という姿勢では、
未来志向の関係は築けない。(略)

自らの過去を美化することはできない。

しかし、将来を変えることはできる。

平和と繁栄と人権を尊ぶ目標を
各国の国民とともにし、
アジアの未来への新たな記憶を
紡いでいく。

そんな日本の姿を
築いていきたい。〉

十年一日の主張ですが、
この社説の執筆者の念頭にある
「アジア」には中国と朝鮮半島以外の
国はないかのごとく感じます。

たしかに
〈自らの過去を美化することはできない〉し、
そうするのは見苦しいことですが、
だからといって自らの過去を
戦勝国の視点に従属させ、
事実を矮小化したり、
根拠なく父祖を貶めたりする
歴史観を放置していいはずもない。

「負の遺産」を強調することが
〈アジアの未来への新たな記憶を紡いで〉
いくことなのでしょうか。

戦前の日本人が苦悩したこと、
その命を抛ってまで後に続く
世代に託そうとしたものは何か――。

日露戦争における日本の勝利が、
白人至上主義の時代に敢然と
有色人種が戦いを挑んだ出発点とするなら、
その帰結としてまさに
大東亜戦争がありました。

アメリカの歴史学者
ロスロップ・スタッダードは
『有色人種の勃興』でこう述べています。

〈すでに四百年の間、
連続的勝利によって、
白人は本能的に自己の膨張は
無限に継続するものと信ずるに至った。

一九〇四年の日露戦争以前には、
自己の膨張が停止するというような
思想は白人千人中の一人も
考えおよばなかった。(略)

一九〇〇年は、四百年間
みなぎり来った白人潮勢の
頂点であった。

白人はそのとき、
威名と実力の頂上に達したのである。

その後わずか四年にして
日本は猛然起って露国に抗し、
旅順港に巨砲弾を浴びせて
世界を驚かした。

その刹那に白人の退潮が始まった。〉

戦前日本の歩みは
「侵略や植民地支配」に汲々とし、
愚かな大戦争に突入して
大敗を喫したという
記憶でしか語れないのか。

朝日新聞は先の社説で

〈歴史認識について、
国からのお仕着せや
ステレオタイプではなく、
自由で多様な見方や意見をもち、
交流する。

そのための民主主義の
成熟も欠かせない〉

とも書いています。

ならば朝日が伝えない
〈自由で多様な見方や意見〉について、
大東亜戦争の時代を生きた
アジア各国の指導者たちの
言葉を探してみましょう。

「日本のおかげで、
アジアの諸国はすべて独立した。

日本というお母さんは、
難産して母体をそこなったが、
生まれた子供はすくすくと育っている。

今日、東南アジアの諸国民が
米・英と対等に話ができるのは、
いったい誰のおかげであるのか。

それは、身を殺して仁をなした
日本というお母さんが
あったためである。

十二月八日は、
我々にこの重大な思想を
示してくれたお母さんが
身を賭して重大決意を
された日である。

われわれは、
この日を忘れてはならない」

(タイ・元首相 ククリット・プラモード)

「われわれアジア・アフリカの有色民族は、
ヨーロッパ人に対して何度となく
独立戦争を試みたが、全部失敗した。

インドネシアの場合は、
三百五十年間も失敗が続いた。

それなのに、日本軍が米・英・蘭・仏を
われわれの面前徹底的に
打ちのめしてくれた。

われわれは白人の弱体と醜悪ぶりをみて、
アジア人全部が自信をもち、
独立は近いと知った。

一度持った自信は決して崩壊しない。

日本が敗北したとき、

〝これからの独立戦争は
自力で遂行しなければならない。
独力でやれば五十年はかかる〟

と思っていたが、
独立は意外にも早く
勝ちとることができた。

そもそも大東亜戦争は
われわれの戦争であり、
われわれがやらなければならなかった。

そして実はわれわれの
力でやりたかった。

それなのに日本にだけ担当させ、
少ししかお手伝いできず、
誠に申し訳なかった。」

(インドネシア・元情報・宣伝相 ブン・トモ)

「インドネシアも、その他の国も、
大東亜戦争で、
日本軍の憲兵隊が弾圧したとか、
多数の労務者を駆使したとか、
そんなことばかり言っているけれども、
そういうことは小さい問題だ。

いかなる戦場でも、
そういうことは起こり得る。(略)

日本がやった基本的なことは、
すなわち最も大きな貢献は、
われわれに独立心を
かき立ててくれたことだ。

そして、厳しい訓練を
われわれに課してくれたことだ。(略)

日本人はインドネシア人と
同じように苦労し、
同じように汗を流し、
同じように笑いながら、
われわれに対して、

〝独立とは何か〟
〝どういう苦労をして勝ち取るものか〟

を教えてくれた。

これは、いかに感謝しても、
感謝し過ぎることはない。」

(インドネシア・元復員相 サンバス)

「日本軍政は、東南アジアの中で
もっとも政治意識の遅れていた
マレイ人たちの間に、
その意識の成長を促し、
マレイにおける民族主義の
台頭と発展に〝触媒〟の
役割を果たした。」

(マレーシア・歴史学者 ザイナル・アビディーン)

「真実のビルマ独立宣言は、
一九四八年一月四日ではなく、
一九四三年八月一日に
行われたのであって、
真のビルマ解放者はアトリーの率いる
労働党政府ではなく、
東条大将と大日本帝国政府であった。

……日本ほどアジアを白人支配から
離脱させることに貢献した国はない。

しかしまた、その解放を助けたり、
あるいは多くの事柄に対して
範を示してやったりした
諸国民そのものから、
日本ほど誤解を
受けている国はない。(略)

もし日本が武断的独断と自惚れを退け、
開戦当時の初一念を忘れず、
大東亜宣言の精神を一貫し、
南機関や鈴木大佐らの解放の
真心が軍人の間にもっと広がっていたら、
いかなる軍事的敗北も、アジアの半分、
否、過半数の人々からの信頼と感謝とを
日本から奪い去ることは
できなかったであろう。」

(ビルマ・元首相 バー・モウ)

これらは単純な
日本礼賛の言葉ではありません。

日本の欠点や失敗を承知した上で、
それでもなお当時の日本人が
彼らにどのように映っていたかを
語ったものです。

〈自由で多様な見方や意見〉
のなかにはこうした声もあるわけで、
朝日のいう〈民主主義の成熟〉
のためにもこれに耳を
閉ざしてはなりませんね。

〈上島嘉郎からのお知らせ〉
●慰安婦問題、徴用工問題、日韓併合、竹島…日本人としてこれだけは知っておきたい
『韓国には言うべきことをキッチリ言おう!』(ワニブックスPLUS新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/484706092X

●大東亜戦争は無謀な戦争だったのか。定説や既成概念とは異なる発想、視点から再考する
『優位戦思考に学ぶ―大東亜戦争「失敗の本質」』(PHP研究所)
http://www.amazon.co.jp/dp/4569827268

●日本文化チャンネル桜【Front Japan 桜】に出演しました。
(8月14日〈習近平の黄昏/合理主義だけで歴史は読み解けない/ 党綱領に謳う「改憲」になぜ異を唱える?/呆れるばかりの韓国「慰安婦の日」〉)
https://www.youtube.com/watch?v=e9wG4OXnDhA
(8月31日〈UNの欺瞞-なぜ日本は「人権」で攻撃されるのか/「善意の熱心家」に対処できない精神医療/自由は弱点でもある~米朝、終戦宣言と非核化の駆け引き〉)
https://www.youtube.com/watch?v=dzjEpYUTGQg

●大人のための WEB Magazine「MOC」(Moment Of Choice)のインタビュー番組に出演しました。テーマは「日韓問題」です。
https://moc.style/world/movie-program-kamijima-01/

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【上島嘉郎】日本には「負の遺産」しかないのかへの4件のコメント

  1. たかゆき より

    永遠の齟齬

    朝日新聞が永遠に 日本と和解できぬように

    支那 朝鮮は 永遠に
    日本と和解などする意思は ない かと。。。

    そんなに 今のご時世がお気に召さぬなら

    支那 朝鮮を もう一度解放して あげませうか、、、

    などとは これっぽっちも 考えておりません 

    支那も朝鮮も大好きな小生

    どちらも 二つしか存在しないのは 

    とてもとても寂しい限りでございます ♪

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  2. ぬこ より

    僕もこの手の話を直接英国人とインド人から(それぞれ別の時に)言われた事あります。
    いきなりインド人から握手されました。

    日本の無い悪を刷り込んでるのは、欧米人ですよね。
    安倍政権や日銀や財務省の裏に居て、反日ならぬ搾日してる連中ですよね。

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  3. your name より

    朝日を始めとするパヨク系メディアの態度を一言で表すなら、

    【ダブルスタンダード】

    に尽きますね。

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  4. 神奈川県skatou より

    上島先生のお話を友人知人にどうやって拡散するのか。
    いつも考え、工夫しようとしていますが、かならずひとつの壁にあたります。

    それは「昔から、NHKと朝日新聞が信用できる情報入手先だ」という理由、それは単なる思い込みであり、かなり昔の、ある前提条件のもとで成立していただろうだけ、と思いますが、その強い思い込み、子供時代からの記憶と習慣を否定できない、その過去に立脚して大人を形成している場合です。

    今の時代、なおその姿勢が可能なのは、政治経済とはある程度距離のある人々、たとえば教師、大学関係者、そして厳重な既得権益集団である放送局、新聞社らも含む方々。いやさらに、それらを除いてなお、もはや「新しいことを知り、学び、今までと違った、今に合致する見方を新たに得る」ことがおっくうになった大人、まだ40歳そこそこでも、それらカビの生えかかった人たちに、どう壁を越えさせればよいのか。

    彼ら自身が、そもそも知りたい、本当のことを見たい、そういう意欲がなければ、なにを提示しても無駄であり、意欲こそ、伝えること、教えることが困難なものはないのかもしれません。

    間違った情報の否定や真実を伝えることでは駄目ならば、今に安住している人々に、もっともっと筋の通った明るく素晴らしい拓けた未来を見せるしかないのか。

    そう、自問自答しております。そう思うこそ、先生のお話に随所に出てくるその光明を、伝えられないものだろうか。日々そう感じております。

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