日本経済

2017年2月14日

【藤井聡】日本は今、G7諸国の中で最も「緊縮」的な財政である 〜OECDからの警告〜

FROM 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

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OECDのレポートで、G7各国にどれだけの「財政余地」があるかが報告されています。
http://www.oecd.org/eco/public-finance/Using-the-fiscal-levers-to-escape-the-low-growth-trap.pdf

その中で、最も「財政余地がある」と判定された国家は、なんと他でもない、わが国「日本」でした。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=977224089045201&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=3&theater

この「財政余地」という指標は、「あとどれくらい財出を拡大すると、財政が悪化するのか――?」という尺度なのですが、比較的余裕のあるイギリス(UK)やカナダ、ドイツでも、GDP比で「1%」程度しか財出余地はない、という中、日本は実にGDP比で「2%以上」(つまり、10兆円以上)もの余地がある、という結果になっているのです。

では、OECDでは、どういう基準で「財政が悪化する」と判断しているかというと、日本が「金科玉条」のごとく取り扱っている、かの「プライマリー・バランス」(PB)に準拠しているのではありません。

政府関係者やエコノミスト含め、誤解している方が日本にはたくさんおられるのですが、PBなるものをここまで重視している国は他に、ありません。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/12/23/fujii-122/

もちろん、どんな国でも「財政規律」は重視されています。

ですが、その時に重視されるのは、諸外国ではPBなどでなく、

  「債務対GDP比」の「変化」

なのです。

少しわかりにくいかもしれませんが、以下にて簡単に説明したいと思います。

まず、「債務対GDP比」とは、これまでの借金の合計(累積債務)が、その国のGDPに対して、何パーセントの割合となっているのか、という水準。一般的に国内でよく言われている定義に基づけば、日本は今、おおよそ1000兆円の累積債務があり、かつ、GDPが500兆円ですから、債務対GDPはおおよそ200%、ということになります。

ですが、財政規律を考える上で重要なのは、この200%という水準そのものでは、

 「ない」

のです。

国際的に重視されている「財政規律」とは、この200%という数字が、

  「増えるのか減るのか」

という一点なのです。

この比率が無限に増えていけば、その内、政府やその借金を返すことが出来なくなってしまいます。なぜなら、GDPが過剰に小さな国の政府には、大量のカネを貸してやろうとは、皆が思わなくなってしまうからです。

ですが、この債務対GDP比が減っていくなら、その国の政府に対して、誰も不信感を持つようなことは無くなり、政府はもっと容易にオカネを借りることができるようになっていきます。そもそも「現状のGDPの水準でも借金を返せている」わけですから、GDPに対して借金が相対的にもっと小さくなっていけば、さらに余裕で政府はカネを返せるに違いない――と皆が予期するからです。

ですから今、「財政健全化」にとって大切となるのは、「借金がどれだけあるのか?」とか、「借金がGDPより何倍大きいのか?」という視点でなく、「債務対GDP比」が「拡大」しているのか、「落ち着いている」のか、あるいは「縮小」しているのか――という視点だということになるのです。

そして今、日本では「債務対GDP比」は安定基調にあり、むしろこれから「改善」していくであろうことが、内閣府の試算でも計量的に示されているのです!

(下記の内閣府資料のP3の下図をご参照ください。いずれのケースでも2017年まで、債務対GDP比は縮小していくことが予想されています。しかも、今、安倍内閣が目指している「経済再生ケース」では、以後ずっと縮小し続ける(!)見通しとなっています。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h28chuuchouki1.pdf )

したがって日本は今、GDPの2%以上(つまり、10兆円以上)財出を一気に増やしたとしても、債務対GDP比が「発散」することはない――それくらいに、「今」の日本の財政はもう既に「健全だ」という次第です。

しかも、このOECDの評価は、

  「財政支出を拡大しても、GDPは拡大しない」

という前提で行われたものだ、という点に留意が必要です。

実際は財出を例えば10兆円程度増やせば、GDPは確実に10兆円から20兆円は拡大し(一般に、そういう効果は乗数効果、と言われます)、その結果、「債務対GDP比」は(その分母が大きくなる事で)さらに「改善」します。

(注:もちろん、財出は金利にも影響を及ぼしますが、金融緩和を徹底的に進めている現在の日本では、その影響は極めて限定的です)。

この点を考えれば、OECDが計算した2%強よりもさらに大きな水準で財政支出を拡大しても「債務対GDP比」は発散することはない――ということになります。

つまり、財出によるGDPの拡大効果(乗数効果)を考慮すれば(大規模な金融緩和を続けている今)、「実際」には、財政余地は2%どころか、3%や4%以上(つまり15兆〜20兆円以上)といった、極めて大きな水準で存在しているのです。

いずれにせよ、今回のOECDの指摘は、今の日本の財出レベルが、先進諸外国に比べて「低すぎる」という事を、すなわち今の日本がG7諸国の中でも特に激しい「緊縮」財政を行っているという事を意味しています。

折りしも今、G7の中でも唯一日本だけが、長いデフレ不況に苦しみ続けています。

もしも日本がこれ以上、G7諸国の中でも特に激しい「緊縮」財政をこれ以上続けてしまえば、デフレがさらに継続することは必至。その結果、安部総理の念願である「アベノミクスを通した600兆円経済の実現」は「失敗」してしまうこともまた、「必至」の状況です。

だとするなら、OECDが指摘する、G7諸国中最大の「財政余地」を徹底的に活用して、大規模な財政政策を展開し、デフレ完全脱却を実現していく事が、今、強く求められているのです。

それができれば、内需は拡大し、国民所得が上昇すると同時に、トランプ政権が何よりも注目している「日米貿易不均衡」も是正され、良好な日米関係が形成されていくこととなるでしょう。そしてその結果、日本のGDPはさらに拡大し、税収も拡大し、財政がさらに健全化されると同時に、尖閣防衛や巨大地震対策をはじめとした様々な重要課題に、その公費を充当していくことも可能となるでしょう。

そうである以上、今回のレポートは、今、「日本よ、もうこれ以上、『緊縮』財政を続けてはならない!」という「OECDからの警告」と受け止めることができるのではないかと思います。

わが国の財政が、こうした正しい情報に基づいて、冷静かつ合理的に展開されんことを、心から祈念したいと思います。

追伸: OECDが示した、G7諸国中、最も大きな水準と言われたに本の「財政余地」。これをどう活用すべきか、については、是非、下記をご一読ください。
https://goo.gl/xkQukg

—発行者より—

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【藤井聡】日本は今、G7諸国の中で最も「緊縮」的な財政である 〜OECDからの警告〜への7件のコメント

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  2. 拓三 より

    お花畑の方達は「自由貿易が日本の成長には欠かせない」と言いながら「日本がアジアのリーダーになるんだ」と意味不明な妄想を歌っています……灯台下暗し…まず、リーダーになるには需要大国にならんとあかんねんで。需要不足で20年デフレに苦しみ、なおかつサナダムシ根性で輸入で儲けようとしている国がリーダーって….子分肌の人たちよ己を知れ!何で米国がTPP離脱したか解ってんのか?何でトランプが大統領になったか解ってんのか?今、世界は内需拡大を図る時期に来ています。既存の経済学ではマクロ的には自由貿易が経済成長を促すと説いていますが、これは世界全体の話です。一国が消滅したところで、全体がそれ以上成長していればマクロ的には問題ありません。本当に日本がアジアのリーダーになりたいのであれば、自力による内需拡大を避けては話になりません。どのリーダーもやって来た事です。

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  3. 神奈川県skatou より

    藤井先生のご説明、とても正論に思います。人の脳みそというのは意外と不便のようで、静的ロジックは操作できても、動的となるととたんに不確かになるようです。「とある瞬間が200%だ」という状態に注目しがちであり、でも、絶対値でなく、変化傾向が大事なのだ、という着目は、だいぶ知的であり、なおかつ相手が時間により変化する対象、生物のみならず、経済というものでも、適切と思わるのです。過去、心理学が計算機をつかって仮説を動作させることで振る舞いから考えよう、とした認知科学への潮流を考えれば、経済学も、単純化された経済人モデルが不十分な判断をしつづけて、その総体としての振る舞い、それは螺旋になりそうですが、そういう知的な研究法もそろそろ俎上になってほしいと、自分は感じます。そして法律も同様、と思っているのですが。(でもまずは大衆への拡散、ですかね・・・)

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  4. ホワホ より

    簿記会計的に考えるとそれぞれの中身の精査が無いのでGDP比すらも全く妥当では無いですねしかも通貨という、相手方が究極的には自分になる負債を発行できる……やっぱり国家のバランスシート全体を見ないと意味が無い会計学は植民地に甘んじないで経済学に反撃するべきですどう考えても経済の事を理解していないのは相手だ

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  5. せい より

    そうですねえ、一般に広めるやり方をあげるなら、シミュレーションゲームを作るのはどうでしょうか?昔、南京大虐殺の無実を晴らすテーマで、逆転裁判というゲームを元ネタにしたFlashゲームが制作されていました。その後、制作中止になりましたが。短い動画でもいいので、動きをつけて、日本の国の金の流れをシミュレーションしたものを広めると、昨今のゲーム脳な若者を中心にツイッター辺りで広がっていくんじゃないかな。イメージとしては、日本を上から俯瞰して、金を血流に見立てた感じ。

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  6. 學天則 より

    更に考え方を超簡単に言えばですねw政府債務って国民への公的な融資ですよね。通常は民間銀行を通して国民は借りるわけです。つまり公共による金融がその正体で本質でありますね。だから担保価値=生産性が大事なんですねw担保があるかぎり元本返済はして欲しくわない訳です、金融業ならwまあ公的部門に民間が支配されかねない政治的な弊害もあるかもですがね。もし、銀行が俺のシャッキンガクガーと喚いてたら商売成り立ちますかね?wwwまあBIS規制辺りはあるのでしょうけどwほんと馬鹿w馬鹿は死ななきゃ治らない〜♪w

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  7. 學天則 より

    複式簿記も理解できないで貸し方の債務の絶体額だけ見て己が知ってると思い込む無知を知らない財務省のデマに騙される虚無主義の馬鹿大衆相手には説明が難しすぎますよ。この手の話は100人話したら3人ぐらいしかわからない話だと実感しております。世の公式規準は散々、GDPだと言ってるのに、その意味も考えずなぜかシャッキンガーですからね。馬鹿は自分以外の他者を舐め腐っているので平気でわけもわからんコピペを受け売りで喚いて他人がどうなろうとしったこちゃない下等生物ですしな。そもそも、根源は生物として、自分や他者を尊重する精神が欠落した人間ではない目的が異なる相手にどうするかですよ。彼ら下等生物に理解できるのは己の欲望に関する事だけでしょうから、彼らが一番関心がある住宅ローンに例えればわかりやすいのかと。まあ、戦いを進める以上相手の立場に立って考察していかねばならんのですけど下種すぎて、ああ、吐き気がするし、病みますわ。住宅ローンの担保は主に住宅ですが政府債務の担保は最終的には生産される生産物つまりGDPと言う事でしょう。だから世界中あちらこちらでGDPつってんですよねw恐らく債務のGDPとの比較ってのはこの考え方の延長線上ではないですかね?政府の債務は徴税権で担保されておりますが、結局その税は通貨で支払われますから最終的な担保は生産物でしょう。この辺で哲学(宗教学)や歴史を知らん専門馬鹿な馬鹿エンジニアの経済学者は金本位制なのでお頭が破裂して、専門用語並べて立てヒステリーを起こしますから専門領域の話ではなくそれ以前の一般論で戦うのが大事ですよ。私は専門家出身ですから、そうやって同じくマネジメントが解らん専門馬鹿相手に制空権を取ってきました。つづけますが、これは住宅ローンと同じ構造と言えますね。いくら借金をしても、十分な返済できる担保があるなら問題ない。デフレである限り、徴税すれば価値のある通貨が政府債務の担保ですのでいくら債務をしても問題は無いでしょう。だって貸し方の政府債務に借り方に国民への徴税権が発生している訳ですから、これは銀行が住宅ローン融資をしているのと同様であり銀行も十分な担保価値がある以上、貸しはがす必要性はありませんね。利子を取っても、元本は返済してもらわないほうがいい、ずっと借りててほしい訳です、それが銀行の商売で一番うまいわけでしょう?でもまあ住宅が100%の担保価値がある訳がありませんから80%なら2割は返済してくれないといざと言う時に銀行は損失になる。政府も同様で政府債務の担保になる生産性がインフレで2割減るなら2割徴税して通貨を回収しないと通貨によって成り立っている政府の信用が損なわれる訳でしょう。問題はこの様な超簡単な話をやつらの極めて悪いドタマにねじ込むかでしょう。構造改革論者が大好きなショックドクトリンしか方法はないと思いますが・・・。彼らは文化人類学風に考察すれば本来は集団の成人と認められる通過儀礼で一人前となる為には自分よりもまず集団の公の利益を尊重するような態度が試されて大人たる成員として認められるわけですがそれが失敗して利己的な幼稚な子供のまま社会の重要なポジションについてしまった連中ですからな。公を裏付ける物って?そりゃ神ですわw

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