日本経済

2018年1月2日

【藤井聡】2018年最大の争点は「プライマリーバランス」問題です。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

新年あけましておめでとうございます。

この新しい年を迎えることができたのは、確かに有り難いことなのですが、この新しい年、2018年は残念ながら、大変に危機的な年になりそうです。

北朝鮮問題や巨大地震リスクはもちろんのこと、2014年の消費増税の後遺症は未だ残存し、デフレ脱却は一向に進展していないのが実情です。その上、ビットコイン・バブルをはじめとした様々なリスクを起点とした世界的な経済危機がいつ生じても不思議ではない状況が継続しています。つまり2018年は日本にとって、昨年よりもさらに厳しい年となりそうなのです。

このあたりは、まさに新年「元日」の夜から新番組として始まりましたラジオ番組、

「藤井聡 あるがまま日本・京都 ~週刊ラジオ表現者」
https://www.youtube.com/watch?v=a4AZAN7u1vU

にてお話差し上げていますので、是非、ご視聴ください。

ただし、2018年はただ単に「乗り越えれば」それでよいという年ではありません。

残念な事に翌年2019年には10%消費増税や働き方改革による大規模な残業代カットのために、間違い無く経済が停滞する見通しです。ですから2018年は衰退を食い止めるだけでなく、「2019年を乗り越えるために、勢いよく上向かせておく」必要があるのです。さもなければ、2019年以降、日本は確実に「没落」していくことになります。

つまり日本の未来にとって、2018年はまさに、勝負の年、となるのです。

ちなみに、当方は元旦のお祝いの席にて毎年年初の目標を立てるのですが、今年の目標は「日本の衰退を食い止めるために全力を尽くす」というもの。既に「崖から落ちた」状況にある日本は衰退中ですが、仮にそれを乗り越えて18年に成長できたとしても、それはあくまでも19年からはじまる大衰退を緩和する措置にしかならないからです。

さて───そんな「日本の衰退の回避」を目指す上で、絶対に避けて通れない問題が「プライマリーバランス問題」です。

「プライマリーバランス規律」とは、政府の収入を増やし支出を削る「緊縮」を繰り返し、政府財政の「収支」を黒字化させる、という「政府の財政規律」の一つ。

政府はこれまで「2020年にプライマリーバランスを黒字化する」という目標を立てていましたが、今、それを「見直す」検討を進めています。そしてその検討結果を、今年の6月頃に閣議決定する「骨太の方針」と呼ばれる経済財政方針に明記する見通しとなっています。

もし、このプライマリーバランス規律が抜本的に修正されず、ただ単に黒字化達成を2,3年延期する、というだけの話となれば───我が国にはもう、絶望しか残らないことになります。

なぜなら、日本の衰退を食い止めるためには、国内最強の権力と財力を持つ「政府」が存分に活躍することが必要であり、それがなければ日本の衰退は止められない───一方で、プライマリーバランス規律が今のまま継続されれば、政府活動に手枷足枷がはめられ、誰も日本の衰退を食い止める事ができなくなってしまうからです。

具体的に言いましょう。

もしもプライマリーバランス規律の見直しが2,3年延期、と言う程度に収まれば、結局は、次のような亡国的事態が連発することは避けられません。

○デフレ脱却のために必要な財政政策ができず、デフレが継続。

10%消費増税が断行される見通しが濃厚となり、デフレが継続。

巨大地震等への対策投資が不十分となり、国難級の被害が発生。

核迎撃システムが不十分となり、核ミサイルが「着弾」するリスクが極大化。

ILC,量子コンピュータ等への投資ができず、科学技術力が二流化。

島嶼防衛力が増強できず、尖閣諸島が中国に占領されるリスクが極大化。

ちなみに「デフレの継続」は、国民の貧困化、格差の拡大、労働生産性の低迷、科学技術力・防衛力・防災力の低下、地方の衰退、国際社会における相対的国力の暴落、さらには「赤字国債発行額の拡大」「財政悪化」といった、あらゆる問題を巻き起こすこともまた、ここに付記しておきましょう。

一方で、プライマリーバランス規律が緩和、あるいは解除され、政府が「公益活動の自由」を手に入れることができるようになれば、日本の衰退を食い止める様々な項目に支出することが可能となります。

結果、デフレは終わり、国防力、防災力、科学技術力は増進し、核ミサイルの着弾リスクは最小化され、南海トラフ地震・首都直下地震で日本が深刻事態に陥るリスクも最小化され、国家の安泰と国民の安寧が長期的に保持されることが期待されるのです。

この地獄と天国の別れ目の年こそ、本年2018年なのです。

日本のことを少しでも慮る気持ちを持つ国民は全て、本年6月の「骨太の方針」における,プラマリーバランス規律の緩和・緩和問題に、

最大の関心

を寄せなければなりません。

さもなければ、プライマリーバランス目標の「堅持」のために全力を賭してロビー活動を全面展開する緊縮財政派の省庁、政治家、学者達に、我が国は席巻されてしまうこととなるでしょう。そして、日本の衰退を食い止めることが、永遠に不可能となるでしょう。

なぜなら今ならまだ、復活する余力が日本に残存しているからです。しかし、これが後10年遅れれば、日本の復活は絶望的となることは必定なのです。

その意味に於いて、2018年は日本の歴史にとって極めて重要な年となります。

日本の国を守る国防精神の下、まずはしっかりと、「プライマリーバランス問題」の構造を、一人でも多くの国民の皆様にご理解頂きたいと思います。

追伸: 2018年の最大争点であるプライマリーバランス問題をしっかりと理解頂くためにも改めて、『プラマリーバランス亡国論』を是非ご一読ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/4594077323

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【藤井聡】2018年最大の争点は「プライマリーバランス」問題です。への5件のコメント

  1. 麦粒 より

    非常な困難に際しては、「いい方法」などという甘いものは元々存在しない。「そういう時にやるべき事」があるだけだ。しかし、知的精神的に低い者にとって、それはやりたくない事なので、予め選択肢から除外されている。そして、「いい方法が無い。困った困った。」と言いながら死んでいく。

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  2. 麦粒 より

    例えば重い病気にかかった子を持つ親が、「父ちゃんの給料が上がりさえすれば、銀行がお金を貸してくれさえすれば、お前の治療費に充てられる。それまで待ってくれ。」なんて言いますか? たとえそれが勘違いであったとしても、そう思っている間は、生活費をぎりぎりまで切り詰めて、なんとか工面しようとするんじゃないですか? そんな素振りすら見せない者が、少しばかり給料が上がったから、借金が出来るようになったからといって、その子の治療に必要な事を十分にしてやるようになると、本気で思っているんですか? 仮にそれが「たまたま」思惑通りにいったとして、その後も、そんな精神で、そういうやり方で、多くの困難な問題を解決していけると、本気で思っているんですか?

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  3. 麦粒 より

    想像を絶する数の日本人が死ぬかどうか、日本が壊滅的な打撃を受けるかどうかは、隣国の最高権力者の気分次第、という度合いが強まっていってますね(笑)。

    米国の実質的上流階級は庶民をいじめる悪い奴らだとよく言うけれど、確かにそういう面(部分)を持ったリーダー群ではあるけれど、ハリケーン「ごとき」でも民族大移動をやってのける。まして、核攻撃するぞと脅されれば、もちろん全力で取り組む。日本はどうですか? 驚くほど静かですよね。自然災害については随分熱心なようですが(少数ですが)。そういう事は国防関係者に任せるという依頼心でしょうか。危機感を持って活動している者の少なさもさることながら、他部門への関心の低さ、協力、連動の少なさが、すべてを停滞させる大きな要因となっているのではありませんか?

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  4. 麦粒 より

    以前(クレヨンという名前で)、「東京への核攻撃を防げなかった場合」について書いたのですが、「日本の何処かの都市に一発でも核ミサイルが撃ち込まれた場合(及びそれに準じる攻撃を受けた場合)」に訂正します。以前は、日本が核攻撃される場合、当然、東京が最優先で攻撃されるだろう、そしてそれは、日本にとっても米国にとっても象徴的な意味になる、という考えから「東京」としたのですが、その判断の甘さに加え、あの国の最高権力者の瞬間的な気分でミサイル発射ボタンが押されかねない状況が出現しつつあり、合理的ではない事態が発生する可能性が高まったという判断から、そのように変更します。

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