政治

日本経済

2022年10月11日

【室伏謙一】「スタートアップ」を増やすだけでは経済成長にはつながりません

From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表

 加えて、「スタートアップ」を増やしたからといってイノベーションや新技術開発が実現するわけではありません。詳しくは私のオンラインサロン「霞が関リークス」で解説していますが、日本に蔓延するある種の「スタートアップ」神話のようなものは、神話というか嘘話、ただの勘違いにすぎません。

 岸田総理は本年を「スタートアップ創業元年」と位置付けて向こう5年間でスタートアップを増やしていくそうで、彼はそれが日本の経済成長につながると考えているようですが、彼の頭の中もこの神話、否、嘘話に支配されているのでしょう。

 そうした中で、先日こんな記事が配信されました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6123bf6b410b6dd08f4a737dd75298fc7d8b2bdb
大企業がスタートアップを買収するについて、法人税を減税することを検討するそうです。それでスタートアップの創業が加速化されると考えているようですが、結論から言えばただの愚策ですが、まさに「スタートアップ」の本質を表した措置であると言えます。

 それはどういうことかと言うと、「スタートアップ」の目的が創業から数年以内に「スタートアップ」を売却してその売却益で儲ける、金融投機の対象というか道具であるということです。しかし儲けようと思っても買ってくれる人、しかも高値で買ってくれる人がいないとこのモデルというかこの投機は成り立ちません。そこで「スタートアップ」を傘下に納めて何かビジネスをしよう、ビジネスを拡大しよう、自ら研究開発コストをかけずにその果実をお手頃に入手しようと考える大企業に減税という誘因を与えて買ってもらおうと考えた、といったところでしょう。

 しかし、イノベーションや技術開発は一朝一夕でどうにかなる話ではないどころか、10年以上の中長期的な視点で考えなければいけない話ですし、政府による巨額の投資が不可欠です。(かつての日本のように民間企業にそうした意欲と体力があるのであれば、民間企業による中長期的な巨額の投資でも構いませんが。)「スタートアップ」を増やすだけでは経済成長にはつながらないというのは、こういうことなのです。(勿論、スタートアップを中長期的な視点で育成し、イノベーションを支援し、単なる技術開発のみならず、その商用化・実用化まで政府が手厚く支援するというのであれば、話は別ですが。)

 したがって、「スタートアップ」を買収したとしても、その後10年以上儲けられるビジネスが可能になるわけではありません。数年は数字を作ることができるかもしれませんが、単なるお荷物になって、またどこぞに売却するということになるのがオチでしょうね。

 よって、目利き力があり腰の据わった大企業であれば、そんなスタートアップを買収するなんて愚行はしないでしょうね。

 要するに「スタートアップ」の創業促進も、その買収促進も、ただのマネーゲームに過ぎないということです。これが新しい資本主義の一部のようです。なんと情けないことか・・・

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【室伏謙一】「スタートアップ」を増やすだけでは経済成長にはつながりませんへの5件のコメント

  1. 利根川 より

     TVで報道されていましたが、岸田首相の新しい資本主義の一つにリスキリングというものがあるそうで、街角でインタビューを受けていた町の人達も

    町人「リス…キリン、グ?なに?」

    と困惑しきりな様子でした。TVの解説によると、従業員のクビを更に切りやすくして雇用流動性を高めると同時に新たなスキルの勉強をさせてより給料の高い職業への転職を促すというものなのだそう。雇用流動性を高めるって

    どこが”新しい”のか言ってみろと

     政府としては、

    政府「実質賃金が下がり続けているのは国民の努力が足りないせい。政策が悪いわけではない。国民に勉強させてスキルを身に着けさせれば実質賃金は上がる」

    という話にもっていきたいのでしょうけれど、日本人は知識も技術も持っているんです。ただ、政府が30年以上デフレギャップを放置し続けてきたせいでその技術や知識がドブに捨てられてるだけなんですよ。
     増税が延々と続く状況では実質賃金は上がりません。実質賃金が下がっていく状況下では個人は消費を増やせません、個人が消費を増やしてくれないと企業は売り上げが上がらないので大規模な設備投資の必要はありません。個人も企業もお金を使えない状況下で政府までお金を使わなかったから

    失われた30年

    になったわけでね。これね、政治・行政で飯を食ってる政治家や高級官僚の皆さんにきちんと仕事をしてもらうしか解決策がないんですよ。政治家は2000万から報酬を貰っているのだからきちんと仕事をしたらいいんじゃないですか

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      1. 利根川 より

         日本のデフレギャップ(需要不足)はどんなに少なく見積もっても20兆円、実際には40兆円以上需要が足りない状況にあると言われています。

        個人「増税と悪いインフレでお金使えません」

        起業「売り上げ上がらないのでお金使えません」

        政府「均衡財政です。お金使いません」(←日本円を発行できる

        そして(金を使う者が)誰もいなくなった。そら、需要足らんでしょうね(苦笑い
         需要が無い(お客さんが少ない)状況では職にあぶれる人も出てくるわけだ。その状況下で頑張って新しいスキルを勉強して転職をめざそうとしても

        オールドルーキー「転職のため新たに調理師免許とりました。雇ってください」

        起業側「今、熟練の料理人でも失業してたりするので、わざわざ免許とりたてのルーキーを雇うメリットないんだよね。むしろ、フロアの人員が欲しい」

        てなる(苦笑い
         昔、ビートたけしのTVタックルで

        ビートたけし「俺の知り合いに美大で油絵を勉強してた奴がいるんだけど、油絵だと金にならないっていうんで水彩画やって、それでも食えないから今は全然別の仕事やってる。日本は学んだ技術を生かせないからもったいないよな」

        という話をされていました。
         森永康平さのビズアップチャンネル(ムギタローさん回)でも

        ムギタローさん「日本って『技術大国』って名乗ってるんですよ」

        ムギタローさん「なのに、なんか科学技術研究費は減ってるし、企業は技術者よりも人あたりの良い総合職の部活やってた人とかを採用してて」

        ムギタローさん「結果として、僕の周りでも技術に強かった人が大企業の総合職に就職していくんですよ」

        ムギタローさん「それ、ずっと繰り返していたらどう考えても技術力下がっていくんですよ」

        という話題が上がっていました。
         必要なのは技術や知識をドブに捨てずに済むように「需要」を増やすことなわけですが、上でも書いたように個人や企業には現状では無理なわけで、政府にやってもらうしかないわけですが、新しい資本主義とかなんとかいって”やってるフリ”をするばかりで実際には仕事をする気がないという(苦笑い
         いや、本当に何もしないでいてくれるならまだマシな方で、実際には防衛税やインボイス制度(消費税増税)などオウンゴールをぶち込む話を進めているわけで、もはや頭がおかしいとしか言いようがない。

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  2. 利根川 より

     誰かの黒字は誰かの赤字、社会全体でみると社会のどこかで100万円の資産が発生する時、必ず社会のどこかに100万円の負債も発生する。社会から100万円の負債が消滅する時、必ず社会から100万円の資産も消えてなくなる。

    社会全体でみると、一方的に資産だけを増やすことはできないし、負債だけが増えることもない

    この程度の内容は高校で習う簿記を知っていればわざわざ言われるまでもない内容なのだそうですが、意外と知らない人が多いそうなので念のため…
     で、日本政府(政府+中央銀行)は日本円(国債・日銀当座預金)を発行しているわけですが、日本円を発行している日本政府が日本円が足りなくなることはない。つまり、

    債務不履行(日本円を返済できなくなること)はない。

     それから、

    増税派「新規に国債が発行されても銀行に国債を買うための民間貯蓄(銀行預金)が無かったら国債を買いたくても買えない。そうなれば誰にも買われない国債がだぶつき、国債の価値が下がる」

    増税派「価値の低い国債は魅力が無い。『たくさん利子を支払いますから買ってください』とやらないと買ってもらえない。はい、金利高騰」

    とのことですが、

    <参議院財政金融委員会質問 令和4年3月15日>

    日銀・清水企画局長「銀行が『日銀当座預金』などの手元を潤沢に保有している場合、通常は『日銀当座預金』を使って国債を購入すると考えられます」

    清水「その意味では日銀当座預金が国債購入の財源という言い方も可能かと思います」

    ということで、基本的には国債は日銀当座預金で購入されているのであって銀行預金で購入されているわけではない(そもそも、日本政府は日銀以外に口座を持っていない)
     くわえて、

    <財政金融委員会 2019 5 23>

    西田昌司議員「銀行は皆さんから集めた金を他の誰かに貸し出しているわけではない。サラ金と民間銀行の違いを説明してみて」

    雨宮日銀副総裁「決済性預金口座を提供している銀行だけが、自ら貸し出しと預金を”同時に作り出すことができる”」

    雨宮「私がサラ金で金を借りる場合、サラ金は預金を創造する事は出来ないので、どこか他所から金を調達してきて、その金を私に貸すわけです」

    雨宮「ところが、銀行は私に金を貸す時、私の銀行口座に貸す金額を書き込むだけなのです。金額を書き込むと、その後、”書き込んだ金額分の預金が誕生する”という格好になります。これが信用創造」

    ということで、銀行は「書くだけ」で銀行預金・日銀当座預金を発行しているので

    「国債を発行し続けると、いずれは国債を買うための民間貯蓄がなくなる」

    などということは起きないのですよ。つまり、

    国債を発行し続けることによる金利の高騰はない

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      1. 利根川 より

         インフレについてですが、政府が財政支出を増やせば「誰かの商品やサービスが買われる」ことになるので、それはインフレになりますよ。ここで、国家がどのようにして財政破綻するのかおさらいです。

        <財政破綻のプロセス レバノンの例>

        1、複雑な宗教勢力による政治闘争や内戦などで治安が悪い(いつ何時、政府が消し飛ぶか分からない)

        2、そんな危ない所にわざわざ工場建てたりしないので、生産能力が低い

        3、生産能力が低いので国民が必要とする品物を国内で生産できない←ココ原因1

        4、国内生産できないので国民が必要とする品物は海外から買う(輸入する)←ココ原因2

        5、外国の輸出業者はレバノンに住んでいるわけではないので支払われたレバノンポンドをドルに両替する

        6、レバノンポンドがどんどん外貨に両替されていくので、レバノンポンドがケツを拭く紙の代わりに使ってもいいくらい余る

        7、余りまくってるレバノンポンドの価値が下がる

        8、最初、1ドル1500レバノンポンドで交換されていたものが、レバノンポンドの価値が下がったことで15000レバノンポンドださないと1ドルと交換してもらえなくなる

        9、昔は輸入物の1ドルチョコレートは1500レバノンポンドで買えたのに、15000レバノンポンド出さないと買えなくなる(インフレ率急騰)

        ※輸入に頼らざるを得ない国なのに輸入価格が上がる

        10、インフレを抑えるためレバノン政府は手持ちのドルを使って余りまくってるレバノンポンドを回収して1ドル1500レバノンポンドを維持する(固定為替相場制)

        11、手持ちのドルが尽きる

        12、手持ちのドルが無くなってしまったのでドル建て国債を発行する(外国からドルを借りる)

        13、レバノン政府はドルを発行することはできないので、借りたドルでレバノンポンドを回収する作業を続けると借りたドルを返せなくなって財政破綻する

         おわかりいただけるだろうか、国家が財政破綻をするのは、その国の生産能力が低く輸入に頼らねばならないからなのですよ。なので、政府が財政支出を増やして国内生産能力を高めた方が”悪いインフレ”も抑えられるし財政破綻も回避できるのですよ。
         今、日本は輸入価格が上昇したせいで”悪いインフレ”になっていますが、そもそも、国内生産していれば輸入する必要はなかったわけで、輸入価格が上がろうが下がろうが関係なかったわけです。なのに、食料自給率を76%(昭和)→36%(令和)まで下げて

        日本政府「いいじゃん、海外から買ってくれば。その方がコスト減らせるし」

        とやっていたところで、輸入価格が上がったことで阿鼻叫喚の地獄絵図になっているわけだ(苦笑い
         アメリカは日本と違ってコストプッシュインフレとデマンドプル型インフレが同時に来ているためインフレ対策に苦慮しているようで、この先、円高になる可能性もあるわけですが、大事なのは円高や円安などの海外要因にいちいち翻弄されないように国内生産能力を高め、輸入にせよ輸出にせよ海外依存を減らすことにあると思います。その為にも、海外に頼っている部分の国産化を政府支出を増やすことで進める必要があると思います。

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