日本経済

2024年4月16日

【室伏謙一】首長に求められる資質は何か?

 首長、「くびちょう」と読みますが、これは都道府県知事や市区町村長の総称です。最近は平気で「しゅちょう」と読み間違えて訂正もしない民放のアナウンサーを目にすることがありますが・・・

 さて、静岡県の川勝知事が入庁式での「失言」に端を発した騒動で、電撃的に辞任したことにより急遽行われることになった静岡県知事選挙、5月9日告示、26日投開票の日程で実施されることになり、注目を集めています。

 もっとも、直近で行われる首長選挙はこれに限りません。気づいたら告示されていた、なんてこともあるかもしれないので、皆様よくご確認を。

 こうした首長、選挙で選ばれる公職、政治家ではありますが、都道府県や市区町村という行政機関の長であり、その意味では行政官の組織のトップを選ぶ選挙でもあると言えます。

 ということは、行政機関のことをよく分かっていて、地方行財政についての知識や知見を十分持っていて、行政官としての経験が必須であるということ。

 20〜30年ぐらい前に流行り、大失敗したNPM(New Public Management)の発想やそれをつまみ食いしたような、「民間の感覚や経験を活かして」とか「経営の感覚を行政に」と訴えて当選してしまう候補や、そうしたものが必要で役人の感覚ではダメだとコメントする言論人(モドキ)や応援演説をする政治家がいますが、端的に言って誤りです。

 地方公共団体は行政機関であって営利を目的とする民間企業ではありません。当然のことながらその行動原理も異なります。よく効率性の観点から「民間の〜」と言う人がいますが、効率性は仕事や事業の進め方に関するものであって、民間だから効率が良くて行政機関だから効率が悪いということでもなければ、行政機関では効率をよくすることができないわけでもありません。

 民営化すれば効率が良くなると勘違いしている人が日本ではまだまだ多いようですが、公営のままで効率を向上させた例はありますし、民営化すれば、効率性と収益性を追求するあまり、事業の本来の目的が蔑ろにされ、サービスの質が低下したり、サービスそのものがなくなってしまったりということが起きてしまいます。まさに本末転倒。(細かくなるので具体的な解説は省きますが、日本でも海外でも頭に浮かんできますよね。)

 「私は市長ではなく社長のつもりでやっている。」などと軽々しく語る首長もいるようですが、幼稚な勘違いも大概にしてもらいたいものですね。だいたいそうした首長は行政官としての経験も地方行財政に関する知見もない方がほとんど。行政機関のトップになって浮かれているのでしょうけれど、地方行政は子供の遊び場ではありませんから、心根を入れ替えていただくか、退場していただきたいところですね。

 ということで、首長になるに相応しい資質を持っている人とは、1)中央省庁の官僚として一定程度の経験を有し、行政機関とはなんぞや、地方公共団体とはなんぞや、地方自治とは、国地方関係とはといったことについてある程度の経験と知見を有している人材、2)その地公体に長年勤務し、部局長や、出来れば副知事、副市長等を経験して、地方行財政、そして何よりその地方公共団体についてよく理解している人材、3)長年その地方公共団体の議会の議員として在籍・活動し、地方行財政についてある程度理解があり、その地方公共団体の職員を含め内部について理解し、職員たちに任せるところは任せることが出来る等、良好な関係を持っているか築くことが出来る人材、ということになりますね。

 官僚ではダメだ、とか既得権がどうだとか、改革がどうだとか、勢いのいいこと、耳障りが良さそうなことを言う候補というのは、端的に言って、中身がない、知見がないと言っているようなものだと思いますし、官僚批判をするのは、官僚出身の候補には知見や経験ではとても敵わないからでしょう。だから官僚であったという経験、経歴そのものを否定しようとするのでしょう。ある種、語るに落ちるということですから、情けない話ですね。

 以上、皆様の投票行動のご参考になれば。

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