アジア

2016年11月18日

【上島嘉郎】めぐみさん拉致から39年

From 上島嘉郎@ジャーナリスト(『正論』元編集長)

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東京・羽田から福岡に向かう機上でこの原稿を書いています。
劇団夜想会(代表・野伏翔氏)による『めぐみへの誓い―奪還』
という舞台劇の企画者の1人として、福岡市での公演に立ち会います。

この舞台劇は、北朝鮮による拉致被害者の問題を風化させてはならない、
演劇人として何かできないかという野伏氏の熱意から生まれました。

拉致被害者の横田めぐみさんと両親の滋さん、
早紀江さんを中心に、同じく拉致被害者の田口八重子さん、
救出活動に取り組む荒木和博さん、大韓航空機爆破事件の
犯人金賢姫や北朝鮮国内で反体制分子として弾圧される人々など、
それぞれの人生を描きながら“金王朝”の苛酷さと、
日本人拉致の理不尽を描いたものです。

初演は平成22年1月でした。その後、第二次安倍政権で
初代拉致問題担当大臣をつとめた古屋圭司さんの肝いりで、
政府と全国各地の自治体が共同して「拉致問題啓発演劇」
というかたちでの公演が続けられています。

今年は2月13日に北秋田市、11月3日に男鹿市で公演し、
18日が福岡市での公演という次第です。

当時13歳の横田めぐみさんが新潟市の海岸で
北朝鮮に連れ去られてからこの11月15日で39年が経ちました。

北朝鮮は平成14年の小泉首相の訪朝で拉致を認めましたが、
めぐみさんはすでに死亡したと説明。
他人の「遺骨」をめぐみさんのものとして引き渡すなど、
虚偽説明を繰り返し、死亡との主張も変えていません。

解決(救出)への糸口が見えないなか、滋さん、早紀江さんは
日本政府の取り組みに望みをかけていますが、
それには何より拉致被害者救出を求める日本国民の思い、
「必ず奪還する!」という強い意志の糾合が必要です。

横田滋さんは84歳、早紀江さんは80歳になりました。
めぐみさんは52歳になります。被害者家族会には、
肉親の帰国を待たずに亡くなった方もいます。

増元るみ子さんの父、正一さんは14年前、
息子で、るみ子さんの弟の照明さんに、
「俺は日本を信じる。お前も日本を信じろ」
と言い残して79歳でこの世を去りました。

今の日本は信じられる国か――私たちが、
信じられる国にしていかなければなりません。
国連人権理事会で、外国人拉致を含む北朝鮮の
人権侵害を非難し、関与した個人の刑事責任追及を
安保理に勧告する決議案が可決されましたが、
国連頼みではダメです。他人事ではない、
自らの問題として「同胞の身の上」に
少しでも心を寄せ、それを強力な国家意志として縒り合わせていく――。

劇中、横田滋さんを演じる原田大二郎さんがこう語ります。

「(拉致の)犯人はわかっている。
(被害者が)監禁されている国もわかっている。
 それなのになぜ取り戻せない…」

まさにそうです。なぜ取り戻せないのか。
何事につけ「人命第一」を訴えるマスコミが、
拉致被害者に対して、その命の重さや帰還に
どれほど意を注いだことがあるか。

たとえば朝日新聞。吉田調書や慰安婦報道をめぐる
誤報・捏造問題の責任をとるかたちで
平成26年11月に社長を辞任した木村伊量氏は
政治部長時代にこう書きました。

まずは平成14年9月17日、時の小泉首相が訪朝し、
金総書記が日本人拉致を認めた翌日の社説の一節。

「拉致問題が極めて重大なことは言うまでもないが、
 それを理由に対北朝鮮制裁などで、
 正常化交渉の窓口を閉すべきではない」

一面に掲載された木村政治部長の一文はこうです。
日本人拉致を「国家犯罪以外の何ものでもあるまい」と書きながら、
「冷静さを失っては歴史は後戻りするだけである。
 いかなる意味でも拉致は正当化できないが、
 そもそも日朝の間の不正常な関係は、
 北朝鮮ができる前、戦前、戦中の35年間にわたる
 日本による朝鮮半島の植民地支配に始まる」。

拉致問題が起きたのは日本側に
そもそもの非があったからだと言わんばかりです。

評論家の片岡正巳氏(故人)は、
この木村政治部長の一文を厳しく批判しました。

「政治部長は、悲憤に満ちる国民に冷静たれと昂然と言った。
 しかし、朝日の受け止め方は『冷静』ではなく、
 まさに『冷血』であった。これが常日頃、
 人権を唱える朝日の人権感覚であり、
 正体見たり、であった」(『別冊正論』第12号「朝日新聞・NHKの大罪」)

同感です。私たちが、忘れたら終わりです。
戦後の日本人がいかに人権尊重、人道重視を謳おうとも、
拉致被害者に思いを寄せられないとしたら、
それは一部のイデオロギーによるご都合主義でしかない。

拉致被害者救出を訴える署名活動中に横田夫妻、
荒木さんらが、通行人に「日本だって戦前朝鮮人を
強制連行しただろう」と気色ばまれたことがあります。
拉致問題を「強制連行神話」によって
“相殺”しようとする言説にはノーと言わねばなりません。

そもそも強制連行は事実ではありません。
たとえばそれは、昭和34年7月11日付の外務省記事資料
「在日朝鮮人の渡来および引き揚げに関する経緯、
とくに戦時中の徴用労務者について」によっても明らかです。

記事資料は、当時登録されていた
在日朝鮮人約61万人について関係当局で、
「外国人登録票について、いちいち渡来の事情を調査した」
結果をまとめたもので、戦時中に徴用労務者として
やって来た朝鮮人は245人しかいないのです。

「現在日本に居住している者は、みな自分の自由意思によって
 日本にとどまった者また日本生まれのものである。
 したがって現在日本政府が本人の意思に反して
 日本にとどめているような朝鮮人は犯罪者を除き一名もない」
というのが事実です。
(ちなみに、これを報じた
 《大半、自由意思で居住 外務省、在日朝鮮人で発表》
 という朝日新聞の記事をインターネットで探すことができます)

記事資料には次のような指摘もなされています。

(1)敗戦後、帰国を希望する朝鮮人のうち
   約90万人が昭和20年8月から21年3月までの間に
   日本政府の手配によって引き揚げ、
   ほかに個別的に約50万人が引き揚げている。

(2)昭和21年3月、日本政府が残留朝鮮人全員
   約65万人について帰国希望の有無を調査した結果、
   約50万人が帰国を希望したが、
   実際に帰国したのは約8万人で、
   残りは自ら日本にとどまる途を選んだ。

この資料は高市早苗代議士(現総務大臣)が発掘し、
民主党政権時代に国会で取り上げましたが、
政権はこの「事実」を汲むことなく、
メディアも産経新聞以外はほぼ黙殺しました。

戦前戦中の日本を批判する言説はあっていいのです。
それが事実に基づくのならば。

確かに、戦前の日韓併合を不本意だ、
悔しいと思った朝鮮人はいたでしょう。

しかし同時に、日本と合邦することで
朝鮮の未来を切り拓くしかないと、
苦悩しつつも綺麗事、絵空事ではない
「責任」を担った朝鮮人が大勢いたことも事実です。

私は自分の立場を「保守」だと思っていますが、
「事実」には右も左もありません。

『めぐみへの誓い―奪還』の今後の公演予定です。
事前申し込みが必要ですが、入場無料です。

詳しくは内閣官房 拉致問題対策本部事務局のHPを。
http://www.rachi.go.jp/index.html

●宮城県仙台市公演 
11月22日(火)13:30開場/14:00開会/16:30閉会予定
太白区文化センター「楽楽楽ホール」

●沖縄県浦添市公演
12月20日(火)17:00開場/17:30開会/20:00閉会予定
浦添市てだこホール(大ホール)

●福島県白河市公演
平成29年1月12日(木)17:00開場/18:00開会/20:30閉会予定
白河文化交流館「コミネス」

〈上島嘉郎からのお知らせ〉
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—発行者より—

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★★★★★:山本直美さまのレビュー

豊洲問題は、完全に小池百合子劇場に取り込まれていました。

解説を聞いてはっきり理解でき
月刊三橋の会員でよかったと心から思いました。

プロパガンダに騙されないつもりでいても、
見抜く知識や経験のなさで、簡単に
騙されるものだということがよくわかりました。

今回教えていただいた
1)恐怖プロパガンダ   
2)ルサンチマン・プロパガンダ 
3)木を見せ森を見せないプロパガンダ
をしっかり理解してこの3つのプロパガンダに
対しては騙されない人間になります。

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【上島嘉郎】めぐみさん拉致から39年への1件のコメント

  1. たかゆき より

    漱石 曰く ♪只小人は己れの智の程度を知らず。彼等を取扱ふに 急ぐことなかれ。急ぐ時は 彼等の術中に陥る。急がざるなかれ。急がざるときは 彼等の軽蔑する所となる。急ぐが如く急がざる如きにして 十年、二十年、もしくは三十年の後に彼等の無知無能にして且 陋醜下劣なることは不言の間に明白にするを得べし。>  11月15日で39年が経ちました。テロリストとの話し合いなど成立するわけがないそしてこの国にも テロリスト分子が存在するということでございますね。。。

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