from 川崎市議会議員 三宅隆介
文部科学省および政府は、令和8年度からの公立小学校の給食無償化に向けて動いています。
これまでは自治体が独自に予算を組んで実施してきましたが、ことし4月からは国が主導する形で全国的な負担軽減がはじまる予定です。
現在、国会で審議中の「令和8年度予算案」においても、公立小学校の給食無償化に向けた費用(約1,649億円)が盛り込まれています。
令和8年3月12日、川崎市議会では、学校給食費の無償化を求める陳情が審査されました。
その審査の中で私は、「学校給食は教育活動なのに、なぜ食材費は家庭負担なのか」という問題を提起しました。
実際、学校給食法では、学校給食は学校教育の一環として実施されるものとされています。
つまり制度上は、学校給食は教育活動です。
学校給食が食育であり、義務教育の一環であるのであれば、教科書が無償であるのと同様に、給食も無償であるべきではないでしょうか。
にもかかわらず、日本では長く「食材料費は保護者負担」という仕組みが続いてきました。
この点を理解するには、学校給食の歴史を少し振り返らねばなりません。
実は日本の学校給食は、もともと教育制度として始まったものではありません。
その起源は、戦前から戦後にかけての「貧困児童救済」にあります。
戦前の学校給食は、主に貧困家庭の子どもたちに食事を提供する救済事業として行われていました。
また戦後の混乱期には、栄養不足に苦しむ子どもたちを救うため、海外からの食料援助などを背景に学校給食が広がりました。
1889年に山形県鶴岡町(現在の鶴岡市)で、貧困対策や栄養不足に苦しむ子どもたちのためにはじめられた「給食」が、我が国の学校給食の起源です。
つまり、学校給食はもともと「福祉的な制度」として始まったのです。
ちなみに、本市の前教育委員長は「昨今の給食には福祉の側面もある」と発言されましたが、その理解は歴史的経緯とは少し異なるように思います。
学校給食制度は福祉としてはじまり、教育制度に編入されたという歴史を持っているのです。
その後、経済の復興とともに学校給食は全国に広がり、1954年には学校給食法が制定されました。
この法律により、学校給食は正式に学校教育の一環として位置づけられることになりました。
しかし、そのとき制度の位置づけは教育に変わったものの、費用の考え方までは完全には整理されませんでした。
その結果、給食の調理施設、調理員の人件費、運営費などは公費で負担される一方、食材料費は家庭が負担するという仕組みが残りました。
つまり現在の学校給食制度は、制度の位置づけは教育でありながら、費用の考え方は生活費という、二つの原理が混在した制度になっています。
この歴史的経緯を知らないと、「教育なのに家庭負担なのはおかしい」という疑問だけが残ります。
しかし実際には、学校給食制度は福祉としてはじまり、教育制度に編入されたという歴史を持っているのです。
そのため、現在の制度は教育制度と生活費負担の考え方が混在する、いわばハイブリッド制度になっています。
あの『骨太の方針』(経済財政運営と改革の基本方針2025)にも、少子化対策の柱として学校給食の負担軽減が明記されています。
しばしば学校給食無償化は「子育て支援」として語られます。
しかし、子育て支援が目的だというのであれば、その政府支出は福祉政策の一環ということになります。
川崎市議会で審議された「学校給食の無償化」を求める陳情文にも、給食費の値上げによる保護者負担の増加への懸念が大前提として示され、追加的な理由として「学校給食は食教育でもある」ことが挙げられていました。
「家庭負担が増えるのが嫌だから無償化してほしい」と言うのと、「義務教育の範囲なのだから無償化すべき」というのではその趣旨が全く異なります。
このように言うと、「どうせ無償化されるのなら、その理由が福祉だろうが、義務教育の範囲だろうがどっちでもいいのでは?」と思われるかもしれません。
実は、そうではありません。
福祉目的の無償化となると、例えば以下のような財政制約を受けることになります。
・財源が足りないので一部は家庭負担で
・制度は福祉目的なので所得制限を設ける
・経済状況の変化を理由に再び有償化される可能性
一方、無償化の目的が義務教育の範囲であるならば、以下のようになります。
・教育が目的だから必須の投資(財源は問わない)
・教育が目的だから所得制限は不要
・教育が目的だから景気や実質賃金は無関係
要するに、学校給食費の無償化を議論するということは、単に家計負担の問題だけではありません。
本当は、義務教育において、どこまでを社会全体で負担するのかという制度の問題でもあります。
学校給食を義務教育の範囲であると考えるのであれば、その費用を公費で賄うのは当然です。
学校給食の制度の歴史や費用の考え方について、広く理解が深まることを期待します。















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