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2024年3月7日

【藤井聡】【岸田総裁の政倫審出席はむしろ有害】岸田氏の弁明は予算委員会と全く同じ。唯一の相違点「パーティやらない」宣言は奇しくも「岸田文雄に倫理ナシ」の証となった。

今回自民党総裁の岸田氏をはじめとして自民党議員達の「裏金疑惑」を巡って開催された政倫審なんて、強制力も無いし、任意だし何の意味も無い、という意見がしばしば言われる。

今回開催された政倫審の審査の模様を、見ている限り、「何の意味も無い」という意見は的を射たものではある。

しかし、本来的に言うなら、政倫審に意味が無い筈がない。岸田文雄氏ら「疑惑の被疑者」として出席した議員達の振る舞いのせいで政倫審が失われてしまったものの、本来的には政倫審には意味がある。

そもそも政倫審は、「国会における倫理の維持・確立」を果たすことが目的であり、その目的は誠にもって重要なものなのだ。そして、疑惑の被疑者達が誠実に振る舞いさえすれば、政倫審は、その目的を果たすことができるのだ。

そもそも今回の政倫審の目的は、「裏金」があったことがハッキリしている以上、

「なぜそんな裏金をつくったのか?」
「その裏金を何につかったのか、あるいは使おうとしていたのか?」
「その裏金、誰からもらったのか?」

等について説明し、そこに潜んでいた「非倫理性」を明らかに、その非倫理性を国会の場から除去せしめることだった。

しかし、例えば岸田総裁からは、

・単なる事務のうっかりミスでの未記載だった。
・政治活動に活用してきた/する予定だった。
・パーティ券20万以下は、購入者は不明。
・昔のことは分からない

ということ以上の発言はなかった。これらは全て、予算委員会で何度も何度も岸田氏が繰り返してきた説明だった。野党議員や多くの国民は、この予算委員会での説明について、

「嘘つけ! 知ってなかったわけないだろ! パーティ出席者くらいだいたい分かるだろ! 政治活動に使ってきたっていうなら、全部、説明してみろ!」

という激しいツッコミを入れてきたのだが、それにも関わらず、政倫審の場でもそういうツッコミに対する対応は一切無く、発言内容を一切かえなかったのだ。

安倍派議員達のように「出てこい!」と言われて渋々でていって、これまでの同じ説明を繰り返すのなら百歩譲って未だ分かる。

しかし今回、岸田氏は、「俺は俺の潔白を証明するのだ!」と言って、のこのこ政倫審の場に自らやってきたのだ。

だから彼は、政倫審の場に呼ばれてもいないのにわざわざ自ら出席する以上、自らの潔白を証明するために予算委員会の自らの発言に対してもたれていた様々な疑惑について、的確に説明する義務があったのだ。

しかし驚くべき事に、彼はその義務の一切を無視したのだ!

これほど政倫審を、国民を愚弄する振る舞いはない。

つまり、今回の政倫審における岸田氏の振る舞いそのものが、「岸田文雄」という人物に、倫理性が完全に欠落していることを証明してしまっているのである!

ただし…今回の政倫審では、これまでの予算委員会での発言と唯一異なる新しい発言があった。

それは、野田議員に何度も何度も「もうパーティはしないんですね?」と念押しされ、渋々「総理在任中はパーティはもうしない」と半ば強制的に行った発言だ。

だったらこの発言は、岸田氏の倫理性の存在を示唆するものなのかと言えば…まったくそうではない。むしろ、彼の倫理性の無さを重ねて証明してしまう発言なのだ!

彼は、過去のパーティ開催について「国民の疑惑を招くものではない」という発言を繰り返してきており、今回の政倫審でもその発言を繰り返した。

だとすれば、これからパーティを開催しても何の問題もない筈だ。パーティ開催は国民の疑惑を招くものでないなら、これからも正々堂々と、これまでと同じ頻度、同じ規模で開催すればいいではないか。つまり、これまでのパーティが正当だと主張している以上、彼は今後パーティを開催しない事を正当化する論拠を失っているのだ。

しかも、彼はわざわざ「総理在任中は」と明言した。

なぜ総理の間だけは開催しないのか。総理の間に開催しないことを正当化する理由があるなら、その理由は総理を辞めた後も、開催しないことを要請するのではないか?つまりこれは、「パーティこれからしないなら、総理やめた後もパーティやるなよ!」というだけの話なのだ。

もうメチャクチャだ…。

つまり、彼には、パーティを開催することの是非についての基準が何もないまま、「いまはちょっとヤバいから、パーティやめとこう」と言っているに過ぎないのだ。

それは倫理のあるなし以前に、「幼稚」としか言いようがない振る舞いだ。

こんな振る舞いをするような人物は、当方がこれまで大学で面倒を見てきたあらゆる学生と比べてみても、彼らよりもはるかに低い水準の倫理しかないと言わざるを得ない。

そういう人物が今の「総理大臣」だという我が国日本は、極めて恐ろしい重大な危機に直面しているという事になる。

ただ、唯一の救いが、今回の政倫審を巡る岸田氏の一連のふるまいによって、これまで以上に彼の倫理性の無さが明確に「証明」されたという点にある。さすが、倫理の確立を目指す国権の最高機関たる国会の政倫審だ、と言えよう。

ただし、大手新聞や野党議員達は、「やっぱ、岸田さんってダメな奴だなぁ…」という気分を今回の政倫審の顛末から感じ取ってはいるものの、「岸田氏の倫理性の無さが証明された」とまでは明確に気が付いていない点は、極めて残念ではある。

道徳心理学で明らかにされている通り、他人の倫理性の水準を判断するには、一定水準以上の高い倫理性が求められているのだが、岸田氏の倫理性の無さを詳らかに解説できないということはつまり、メディアや野党の倫理性の乏しさを意味している。

そう考えるとますます、日本は危機状況に突入している実情が見えてくるわけだが…少なくとも本メルマガ読者だけでも、岸田氏がどれほどに倫理性の乏しい人物なのかといことを、しっかりと冷静、かつ、論理的にご理解いただきたいと思う。

追伸1:「岸田文雄」とは一体如何なる人物なのか…については、表現者クライテリオンではかつて徹底的に分析致しました。「岸田氏、総理大臣着任」という現象は、幸か不幸か今の日本の腐敗を考える上で極めて秀逸な現象です。是非一度、下記特集ご一読下さい。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BYYQZMNK

追伸2:岸田文雄氏の政倫審の「出席自体」が、岸田総理の「腐敗」を証明しています。
https://foomii.com/00178/20240229091748121037

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【藤井聡】【岸田総裁の政倫審出席はむしろ有害】岸田氏の弁明は予算委員会と全く同じ。唯一の相違点「パーティやらない」宣言は奇しくも「岸田文雄に倫理ナシ」の証となった。への2件のコメント

  1. おれいんさん より

    いままで読んだ政倫審出席問題で
    もっとも薄っぺらい、幼い論考
    学校の先生らしいといえばらしいけど

    岸田総理の目的は
    事実をつまびらかにすることなんかじゃない
    出席を渋る人間をおびき出すこと
    渋る人間に不審の目を向けさせること

    岸田総理は
    安倍と名の付くあらゆるものが
    自民党を脅かす元凶だと思っている点で
    徹頭徹尾みごとに一貫している

    野田は学校の先生なみに愚かなのか
    愚かなフリをしてみせたのかはわからないが
    パーティーをするしないにこだわったおかげで
    岸田総理の出席目的をぼかすことできた

    積極財政に賛成の議員が多いというだけの理由で
    安倍派を擁護してみせるひとがいるが
    生前安倍は政治は結果だと強調していた
    結果はどうだったのか

    擁護などまあ頓珍漢もいいところ
    公害の垂れ流しに近い

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