From 三橋貴明@ブログ
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全国を回り、企業、金融機関の方々とお話しし、色々と見えてきたものがあります。例えば、民間資金需要が伸びず、金利が超低迷する日本国においても、あるいは経済が停滞する地方に置いても、「銀行融資」と「設備投資」が活発な分野はあるのです。それも、二つ。
一つ目は、介護分野です。
介護分野は、ご存知の通り、人手不足です。すなわち、「需要>供給能力」というインフレギャップ状態にあります。介護産業の人手不足を解消するためには、最終的には政府が介護報酬を引き上げ、人件費の引き上げを可能にしなければなりませんが、民間企業レベルで「投資」による生産性向上のための努力は始まっているわけです。
そして、二つ目。ご存知、FITでございます。
すなわち、再生可能エネルギー特別措置法に基づく再生可能エネルギーの固定価格買取制度になります。FITの場合、何しろ、
「需要と無関係に、高価格で、長期間、発電した電気を買い取ってもらえる(代金は国民が再エネ賦課金として負担する)」
わけでございますので、事業が始まれば「必ず儲かる」ことになります。(※始められれば)
というわけで、FIT(主にメガソーラー)の場合は日本人の「企業家精神」が大いに発揮され、銀行融資と設備投資が拡大し、最後には銀行側が積極的に、
「FITやりませんか。お金は貸します」
という状況に至ったのです。
結果的に、FITが最終的にどうなったか。あるいは、どうなっているかについては、本ブログのユーザーの皆様にくどくどと説明しませんが、結局のところ何を言いたいのかと言えば、
「儲かるならば、日本人は銀行融資と投資を拡大する」
という話です。「儲かる」つまり「豊かになる」ために果敢に投資する、アニマル・スピリットは、まだ日本国民に残されているのです。
問題は、儲かる先がないことです。「儲かる」の前提は、介護サービスのように「需要>供給能力」の関係が成立していることになります。要するに、
「仕事が多くあれば、儲かる。仕事が少なければ、儲からない」
ただ、これだけの話なのです。(FITの場合は「国民の損」に基づく仕事、需要の増加だったので、極めて問題ですが)
それにも関わらず、経済学者やらエコノミスト、官僚や政治家までもが、
「経済が成長しないのは、生産性が低いからだ。生産性を引き上げるための規制緩和、構造改革が必要だ」
と、トンチンカンなことを主張し、バリバリと構造改革が進められてきました。解散総選挙後も、そうなる可能性が高いと思います。
いや、いや。マクロレベルで「生産性の向上」が成長に貢献するためには、「需要>供給能力」の関係が成立していないとダメでしょう。「生産性向上」「銀行融資」「設備投資」、この三つは関係が深いですが(「生産性を向上」させるため、「銀行融資」を受けて、「設備投資」をする)、そもそもの前提は、しつこいですが「需要>供給能力」、すなわちインフレギャップの環境が成立していることです。
というわけで、現在の日本政府に求められる政策は、不足している「需要」を創出することです。ところが、現実には昨日の図からも明らかな通り、安倍政権は消費税増税により、総需要(=名目GDP)を大きく縮小させてしまいました。
【96−98と13−15年の名目GDP比較】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_48.html#GDP
需要創出のために必要なのは、もちろん「財政出動」です。現在の日本にとって、財政支出拡大のためのボトルネック(制約条件)は存在しません。
『消費増税は日本の未来に役立つのか(評論家 中野剛志)
http://ironna.jp/article/627
平成14年4月、財務省は、日本国債を格下げした格付け会社3社に対して書簡を発出し、その中で「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか」と抗議した。財務省は、日本政府の財政破綻はあり得ないと言っていたのだ。
もっとも、この認識は正しい。日本の国債はすべて円建てであり、その円の発行権は日本政府にあるのだから、日本政府が返済不履行に陥ることはあり得ない。歴史上も、自国通貨建ての国債が返済不履行となった例は、(政治的な理由によるものを除けば)ない。日本は財政危機にはないのであり、それゆえ消費増税は必要がない。
消費増税は不要だと言うと、決まって「では、社会保障の財源はどうするのだ」という反論が返って来る。しかし、財政破綻があり得ない国が財源に悩む必要などない。そもそも、税というものを、政府支出の「財源」と考える発想自体が間違いなのだ。課税とは、政府収入を増やすための手段ではなく、国民経済を適切に運営するための手段なのである。この考え方を「機能的財政論」と言う。
機能的財政論によれば、財政赤字の善し悪しは、それが国民経済にもたらした「結果」で判断すべきとされる。具体的には、失業や物価上昇率、あるいは社会格差などが判断指標となろう。
例えば、完全雇用が達成され、需要超過で高インフレであるなら、財政支出の削減や課税によって、加熱した需要を冷却する必要がある。逆に、失業率が高く、デフレであるならば、財政支出の拡大や減税によって消費や投資を刺激すべきである。しかも、完全雇用やデフレ脱却を達成するまで、財政赤字を拡大し続けてもよいし、そうすべきなのだ。
この「機能的財政論」によれば、長期のデフレに苦しむ現在の日本は、財政赤字を拡大すべき状況なのであって、消費増税どころか消費減税が必要だということになる。まして、格差の拡大が懸念される中で、逆進性があって低所得者層に不利に働く消費税を増税してよいはずがない。
国債の増発による金利の高騰を不安視する声が後を絶たないが、デフレ下での金利高騰はまずあり得ない。しかも、中央銀行が国債を購入すれば金利を低く抑えることは容易だ。実際、日本銀行は、現在、量的緩和によってそれを実行しているのである。
我が国の政治家・官僚・経済学者らは、「機能的財政論」という税財政政策の基本的な理解を欠いたまま、消費税の是非を巡って大騒ぎを繰り返してきた。そんなことだから、二十年も虚しく失われたのだ。』
中野先生が書いている通り、機能的財政論という「ごくごく、当たり前のこと」すら理解していない政治家、官僚、学者らが「財政破綻」を叫び、我が国の財政支出は十分に拡大せず、デフレギャップが継続し、挙句の果てに消費増税で総需要を縮小させてしまいました。
ジョン・メイナード・ケインズの「発想・考え方が、世界を支配する」が、身に染みる秋の季節でございますす。
「経済学者や政治哲学者たちの発想というのは、それが正しい場合にもまちがっている場合にも、一般に思われるよりずっと強力なものです。というか、それ以外に世界を支配するものはほとんどありません。知的影響力から自由なつもりの実務屋は、たいがいどこかの破綻した経済学者の奴隷です。虚空からお告げを聞き取るような、権力の座にいるイカれた連中は、数年前の駄文書き殴り学者からその狂信的な発想を得ているのです(ジョン・M・ケインズ 講談社学術文庫「雇用、利子、お金の一般理論」P508)
PS
日本経済は底割れへと向かうのか?
http://youtu.be/FYzYGcCtZpI
【三橋貴明】機能的財政論への1件のコメント
2014年11月22日 5:35 AM
機能的財政論、国家と会社が別物と理解できれば(コメを作れる農家同様、カネを作れる国家)普通に理解できそうな、こういう話を学生時代に聴けば、自分にも社会科学が少しは分かったのかなと、今更に思われます。総選挙があるようですが、もしも安倍政権継続となれば総理の好きな「成長戦略」、これをぐいぐい推進するのは最近の発言からも確かなようで、その中身は、地方と方向が変わってもシュンpなイノベーションがどうとか規制緩和、岩盤規制をぶっ壊す、という以前から繰り返している話がまた続くのかと予想され憂鬱になります。そもそもですが、「イノベーション対策」って、なんでしょう。学生に奨励したとしても「素人の思いつきで新しいビジネス」という程度の期待でしたら馬券レベルの確率でしょう。予算がもったいないです。そもそも「学生素人の柔軟な発想が新しいイノベーション云々」というイメージが陳腐すぎではないでしょうか。自分の知ってる例では、とある業界で、客を知り、業界を知り、自分の技術を知るベテランが、どうしても今の商品じゃない、自分はもっと違うことをやってみたいのだという、もはやプレゼンにも書けない言語的でないこだわりの情熱で生み出されるもの、そういうものが「イノベーション」になることがある、いや、新製品を生み出すのだと感じるのです(主観)。もしそうだとして、そういう立場になれる人間はだれでしょう。社内分業の進んだ大企業なぞではなく、自分で機械を動かし、設計し、客回りして経営判断する、中小零細企業こそ、イノベーションの発信基地ではないかと。ああ、某メイド殿の「効率の悪い企業は退場してもらって調整」など、もっともイノベーションから遠い空論に聞こえてならないわけです。こんなこと零細社長サンらの常識、だと思いたいです。なお、そういうアニマルさんたちが、実際やろうとしたらよのなか規制だらけ、ということはありうる話だと思いますが、「規制緩和するからイノベーション発生」ってのは因果関係があべこべではないでしょうか。大企業経営者、権威の欲する「規制緩和」なんか、もう。
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