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日本経済

2019年8月6日

【室伏謙一】公共交通は公共サービスであり、その整備・維持は福祉政策でもある -公共交通を巡る緊縮脳、独立採算脳からの脱却を-

From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表

 公共交通は公共サービスである、これは欧州のみならず米国でも、いやおそらく世界全体で共通の理解だと思いますが、なぜか日本だけは独立採算の純粋民間サービスという考えが浸透してしまっています。これは担い手が民間企業であると地方公共団体であるとに関わらずの話です。少々分かりにくいかもしれませんが、ポイントは独立採算というところ。要は、自分の調達した資金で、稼いだ資金で運営すべきであって、公的資金、もっと言えば税金は、当初の整備の段階ぐらいならいいが、運営には原則として投入してはならないということを意味しています。

 なんとなく「当然では?」と思ってしまいがちかもしれません。

 この話、ちょっと角度を変えて考えてみましょう。ある地方公共団体で新たな公共交通(いわゆる路線バス以外のものです)を導入しようという計画が持ち上がったとします。公共交通の整備主体、事業主体はその地方公共団体です。(運営主体は別になる可能性がありますが、その話をし出すと話が複雑になるので今回はとりあえず置いておきます。)その公共交通が整備されると、渋滞の緩和や通勤通学時間の短縮、これまで公共交通がなかった、いわゆる交通空白地域からの中心部の業務・商業地域への移動の利便性が飛躍的に向上するといった多くのメリットがあるとします。それなら市民は諸手を挙げて賛成!のはず、と思うかもしれませんが、そうは問屋が卸さないのがこの不思議の国ニッポンの地方政治。必ず出てくるのは、「採算性はどうなんだ!」、「無駄な公共事業だ!」、「赤字になったらどうするのか!」、「過大な需要予測だ!」、「施設が過剰だ!」、「渋滞の原因になる!」といった批判、反対の大合唱。(「モータリゼイションが進展した現代社会に逆行するものだ!」といった、時代遅れというか状況認識を全く誤った、まさに不思議の国で生活していらっしゃる方からのご意見もたまーに聞かれますが、まあその手のものは放っておきましょう。)

 自分たちが生活する地域全体にとってメリットがあり、当然自らも受益者になりうるのですが、それよりも採算性や赤字への懸念が上回ってしまうということのようです。「採算が取れなくて赤字になって、負債を抱えたらどうするのだ!」、どっかで聞いたような話ですね。対象と表現は違えども、まさに緊縮脳の考え方。しかも、「メリットがあるならばそれを数字で示せ!」、これも決まり文句のようなもの。そうすると地公体の職員は一生懸命経済効果の数字を作るわけですが、それに対しても「仮定の数字だ」とか「その程度の効果しかない」とか「ありえない効果を盛り込んでいる」とかとか、この手の批判が際限もなく、また永遠に納得することもなく出されることになります。(これらは地方議会の党派を問わずに当てはまる話です。当然のことながら共産党も含まれます。「無駄が云々」は大阪維新の専売特許ではありません。例えば、新潟のBRTは当初の計画では専用線を設けて、新たな交通結節点も整備される予定でしたが、共産党系からの「無駄だ」、「過剰だ」といった反対により、たまに連接バスが運行される単なる路線バスになってしまいました。当然渋滞に巻き込まれるので、今度は定時性が失われたことが批判され、渋滞の原因になっているとまで批判されるようになっているとか。これじゃ共産党系の批判のためのオモチャですね・・・)

 しかし、そもそも公共交通は低廉な料金で誰でも使える交通手段。車を運転できなくても、車を持っていなくても、歩くのに不自由しているお年寄りでも、バリアフリー化が施してあれば障がい者であっても利用できます。また、経済的な理由から自動車を購入できない、ガソリン代を節約するために自動車の使用を抑制せざるを得ない、そうした低所得の人々にとっては貴重な生活の足として機能します。実際、米国ではこのことが新たな公共交通整備の理由の一つに挙げられることが多いようです。住宅地と業務地域を、主に専用線を走行する連接バスで結ぶBRTはその典型例で、明確に労働者の足として整備されています。こうした点では公共交通の整備は福祉政策でもあるのです。

 つまり極めて公共的な性格が強いものであり、数値化できない、数値化しにくい社会的なメリットもたくさんあるわけですが、そうしたものは数値化できないのでメリットとしては見なされないことが多いようです。こちらはまさに緊縮のための政策評価、最近で言えばEBPMの考え方と同じです。

 そして、この独立採算という考え方、なんと関係法令にも制度的に埋め込まれてしまっていますから更にタチが悪い。加えて、公共性がこれだけ高いもの、はっきり言えば公共サービスを、施設整備から運営まで主に民間事業者が担っているというのは、特異というよりある種異常なこと。実際、民間事業者も鉄道やバス単体では黒字を出すのは困難であることから、様々な附帯事業に進出しています。しかしそれでも赤字で、元々本体事業であった鉄道事業を廃止せざるを得なくなった事業者もあります。

 公共的性格の強い、貴重な地域住民の足が整備できなくても、既存のものがなくなろうとも、それは経営者の責任。沿線住移民はかわいそうだが仕方がない、そんな話が罷り通ってきてしまった平成日本。その背景には緊縮脳、それに裏打ちされた独立採算脳。もういい加減転換しないと、地域から始まって日本は衰退への道を更にまっすぐ進むことになりかねません。

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【室伏謙一】公共交通は公共サービスであり、その整備・維持は福祉政策でもある -公共交通を巡る緊縮脳、独立採算脳からの脱却を-への7件のコメント

  1. たかゆき より

    無駄 無駄 無駄 無駄

    「ジョジョの奇妙な」国家か しら ん。。

    一番の無駄は

    己がこの世に 存在すること と

    自ら命を断つのが 落語

    『極意の始末』

    奇妙な国の 無駄は、、

    緊縮財政やら 消費増税やら 既存政党やら

    現政権に賛成する 

    バカ共 で ございます ♪

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  2. 神奈川県skatou より

    当メルマガで、桜ch討論で拝聴しております。
    いつも政策に深い議論をありがとうございます。

    「公共交通は公共サービス」
    まさしくコロンブスの卵のようなご指摘ですね。

    だというのに、昨今はものさしがカネしかないので、公共交通の整備が価値を生むことが見えず、カネの多寡だけ、しかもその負の側面、無駄という悲観しか感じとることができない。現代人の哀れさですね。

    無駄排除の極致はどうなったか。
    地方では鉄道が廃止され代替のバスも消え、自動車が当たりまえの生活になり、中学生は自転車、老人、障がい者は家に引きこもり。それも田舎に住んでいる自己責任。東京集中もしょうがないですよね。

    でも、都会でもバリアだらけです。乗車率180%の電車に、はたして後期高齢者や乳児をつれた母親が乗れるでしょうか。

    混み合い過ぎてシルバーシートに近づくことも出来ない。連結器付近のベビーカーエリアにはイヤホンスマホの男女が耳目に蓋をしてたむろし、赤ちゃん連れはドア付近で身動きもできず、人に押されて、ゆすられ、息苦しさ、蒸し暑さに子供がむずかり、泣き声を上げる。母親はなだめ、叱り、それでも泣き叫ぶ子供に、パニックになる。だれもが哀れと思っても助けない。助けようもない。

    助けようもないって、戦争中ですかね。。。

    それもこれも、タクシーに乗らない母子の自己責任、なのでしょう。通勤通学時間帯に電車に乗る無謀者、だということでしょう。あるいは為政者的には、十分な手当ては出している、ということでしょうか。

    21世紀にもなって、家畜車以下の待遇が公共交通では、先進国の恥ぐらいに感じて頂きたいと思ってしまいます。
    いやそんな現実は政治家、高級官僚、既存メディアの方々は他人事なのですかね。

    もっとも、民主主義=国民国家=法治主義の先進国よりも、格差激しい権威主義国家になってほしいような勢力が今の与野党、既存メディアの真の姿のような気がします。

    せめて、カネの尺度を、政治行政の場ぐらいからは、1ミリも残らないぐらい消し去りたいですね。

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  3. たけちゃん より

    日本の総理はウマシカにしかやらせない次期総理候補No1、アホの小泉進次郎と ろ、く、で、な、し 滝川クリ●リスとができちゃった婚でアベシンゾー報告で発覚だとよ。
    このネタでワイドショーは9月迄持ちきりだよな。
    9月解散総選挙のスピンかね。

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  4. 利根川 より

     本日の記事とはあまり関係ないので恐縮ですが、ちょっと失礼します。
     大学院生の相川清さんの修士論文「グローバル化時代における日本型資本主義の理想と可能性」が反響を呼んでいるそうです。施光恒教授、相川清さん、ありがとうございます。
     日本企業は、すべてを犠牲にして株主への配当金に回してきた。
     財界は、企業が配当金にお金を回しやすいように法人税減税と消費税増税のパッケージを政治家にやらせていた。
     国民は、企業の配当金のために消費税増税をおしつけられていた。
     この論文で、かような事実が白日の下にさらされ、これを読んだ日本国民をおおいに恐怖させているそうです「コワイ」
     三橋TV第120回でグラフが詳しく解説されているので、そちらの方をごらんください。

    >>97年を基準に資本金10億円以上の日本の大企業は

    ”2017年までに配当金を5.7倍に増やしました”

    極端な株主優遇政策です。
    そして、経常利益は3倍になっているにもかかわらず、

    ”売り上げは横ばい”

    どういうことでしょうか。
    企業はデフレで売り上げが伸び悩む中、人件費(97年比で)マイナス7%、設備投資を同マイナス36%削減している。
    販管費や減価償却を抑え込み、強引に利益を膨らませ、配当金を支払ってきたわけです。

    従業員の給与を削り、最新機器を導入するのもガマン、そして浮いたお金をすべて株主への配当金に!
    >>

    さて、こういった事実が明るみに出て、一部から批判の声があがるわけですが、それに対して

    「配当金増えてんだろ。お前らも文句ばっかり言ってないで株式投資すりゃあいいじゃないの」

    と返されているのを見て唖然としてしまったわけです。
     「グローバリズム その先の悲劇に備えよ 集英社新書 著 中野剛志 柴山桂太」でも解説されていますが、アメリカはレーガン政権以降30年間、実質賃金は上がっていないし格差も拡大していました。
     にもかかわらず、トランプ政権誕生の時まで人々は自分たちが貧乏になっていることに鈍感でいられた。なぜか。
     

    政府は「資産価格をつり上げて国民が貧困化していることを”誤魔化す”」政策をとっていたから

    です。
     資産価格が値上がりすると、労働者は預金の一部を株に回すので、株が上がる。
     年金の原資が増える。持っている家の価値が上がる。それによって、労働者は資産が増えたと”錯覚”する。
     当然、この政策(資産価格のつり上げ)は、株が下がった瞬間にあらゆることがおかしくなってしまうわけです。
     というか、おかしくなってしまった(リーマンショック)そして、国民は現実を突きつけられたわけです。

    アメリカ国民「そういや、俺らもう何十年も実質所得あがってねーじゃん」

     元々、アメリカ経済がダメになってしまった理由の一つが、1970年代半ば以降、製造業の比重が低下したからです。
     先進国が高度成長していた時代は、製造業が産業の中心でしたが、現在は製造業からサービス業へのシフトが進んでいます。
     今でも比較的成長率が高い国というのは、中国がその典型ですが、製造業がまだ元気な国です。
     アメリカは今、GDPに占める製造業の比率が、12%ぐらいですが、1970年代には20%を超えていました。
     サービス業は製造業と違って「生産性の上昇に限界がある」が、製造業が衰退すると国内雇用の大部分がサービス業に行かざるを得ない。

    しかし、サービス業で安定雇用を生み出すのは難しい(現に非正規雇用が多い)

    製造業の様に「規模の経済」が働かないから、賃金が急に伸びるということもない。だから、歴代大統領は中間層の再生のためにアメリカの再工業化を目指していたわけです。
     トランプ大統領にかぎらず、レーガンもクリントンも、ブッシュも、オバマも政権の前半は製造業の復活を掲げていましたよね。
     でも、それに失敗して政権後半では、短期間で成果が出る金融で「ごまかす」ということを繰り返してきたのです。
     だから、政権後半になると金融バブルを引き起こして酷いことになっていたわけですね。

    レーガン政権 ブラックマンデー

    クリントン政権 ITバブル

    ジョージ・W・ブッシュ政権 リーマンショック

     政治家が金融に走りやすいというのはウォール街の金融層が政治と強く結びついているからという理由もありますが、それはまた別の機会に。
     詳しく知りたい方は、「奇跡の経済教室 戦略編 第五章 P121 アメリカの金融業界によるレントシーキング活動 政府⇔ウォール街間の「回転ドア」をお読みください。

    ※ちなみに、前回の覇権国家であったイギリスも金融街の「シティ」が支配する構造にあり、金融層にとっては金本位制のほうが望ましい、自由貿易の方がいいという方向で進んだ結果、国内の製造業が弱って、アメリカに覇権国家の座をゆずることになった。

     まとめると、アメリカは1980年代以降、政権の前半では製造業復活をうたい、それに失敗して金融業重視にシフトし「見せかけの経済指標向上に走ってバブルを起こし」政権の後半にバブルが破裂して危機に陥るという不毛な事を繰り返してきたのです。
     おわかりいただけるだろうか、本当に「見せかけではない経済成長」をしたいのなら金融ではなく、製造業を復活させねばならないのです。
     
    「文句言ってないで、おまえらも株式投資すりゃあいいじゃないの」

    といって、ほんとうに金融重視に”これ以上傾いていくと”ドツボにハマる未来しかないのです。
     いま、日本は

    老後の2000万円を稼ぐためには株式投資がオススメですよ~

    とやっているわけで、アメリカの良くない所を全力で後追いしているわけですね。ちょっと、いや、かなりまずいのではないでしょうか。
     日本の場合、本日の記事にもあるように地方のインフラ整備も不十分ですし、防衛も防災も不十分と言わざるを得ない状況にあります。
     治水対策費が20年前の44%しかないのに何故「万全の体制です」なんて言えるのか意味が分からない(実際、あちこちで酷い水害が発生している)
     アメリカは核ミサイル迎撃実験を盛んに行っているようですが、すでに北朝鮮のミサイルの射程圏内である日本では

    防衛省「ロフテッド軌道でミサイルが飛んできた場合?いや~、その場合ミサイル防衛むずかしいんじゃないっすかね」

    防衛省「え?対応できる迎撃システムを日本でも作れないのかって?いやいや、自衛隊は予算減り過ぎで、現状、装備を自国で製作する事すら難しくなってるのに何言ってんすか」

    防衛省「防衛費は増えてるだろうって?それね、アメリカへの支払いが増えてるだけです」

    兵器も核ミサイルも無くて済むならそれが一番かもしれませんが、実際問題、今現在は存在しているのだから悲劇を繰り返さないためには、しっかりそれらに対応するための機材と人材の育成にお金をかける必要はあるのではないのでしょうか。
     まあ、需要はとてもあるのです。そして、技術も今は”まだ”あるのです。
     じゃあ、需要も技術もあるのに、なぜできないのか。それは、政治家が緊縮脳だからです。

    政治家「そんなあれこれ金つかったら財政破綻してしまうだろうが」

    ご存知のように、日本円を創り出すことが出来る統合政府(日本政府+日銀)は、日本円での負債を返せなくなるということはありません。これは、財務省ですら認めていることです。
     なので、

    日本政府は、日本国家がもつ”生産能力を超えない範囲内”であれば、いくら国債を発行しても問題はない

    のです。
     技術者がいないとか、道具がないとか、そういったことであれば別ですが、技術も道具もあるのにお金を出してくれる人が居ないからできないということであれば日本政府が金を出せば済むことなのです。
     20年もデフレやったのだからもういいでしょう。そろそろ緊縮政策は終わりにして頂きたい。

    MMTが一人でも多くに人に理解してもらえますように

    ステファニーケルトン教授の奇妙な冒険 第四章 MMTは砕けない To Be Continued
     

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  5. 大和魂 より

    国際政治の意向を受けて国鉄の民営化も容認したのが自民党になりますから、やはり自民党の大罪は、重大問題になる訳です。つまりこれを理解しなければ、これからの進展もあり得ない状態になる筈です。そもそもぬるま湯に浸かる上級国民はリスクを侵す必要もない訳ですから、もの凄い理不尽な環境でありますよね。しかし、グローバリズムありきの国際政治に屈すれば、この世の地獄は明白になるので、これからも真実の歴史を拡散して絡めながら、国際政治に対峙して参る覚悟にございます。また愛国者の皆様にも改めて国際政治について考えて頂きますようお願い申し上げます。

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  6. たかゆき より

    税金ロンダリング

    消費税を洗浄して
    法人税減税に 回す

    政府の公表している資料を参照すれば 

    アホでも 解る。。。

    そんなことすら しないから

    いつまでたっても 舐められる、、

    というわけで

    ジョジョの奇妙な国家 では

    『消費増税は 動かない』

    それにつけても

    財界首脳の 

    カネ よこせ もとい

    消費税もっと上げろコール

    乞食と一緒 貧すれば鈍す なのだ ♪

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  7. リグス より

    これは納得できます。地方が衰退するのも交通が無ければそもそも住めませんからね。車と言うある種の贅沢品がなくとも、適正な移動手段の確保は必須ですよね。

    関係ないけど、無駄無駄無駄無駄・・・・は結構好きですけどねwディオ親子のことですが。

    独立採算脳もいつの間にか当たり前になりましたね。かなり前は公共を優先していた気がしますが?

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