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2012年9月4日

【藤井聡】人間は、利己的な存在?

FROM 藤井聡@京都大学

ロバートスキデルスキー氏が
「簡単には記せない」
と指摘する程の凄まじい害悪を世界に与え続けてきた
「新古典派経済学経済学者」、
今日は、彼等の「精神」を、少し掘り下げて分析してみましょう。

彼等の主張を、バカみたいに簡単に言うと、
「とにかくもう、民間に任せリャ、それでいいんだよ!」
ということになります。

この主張によって公共投資が否定され、
デフレが深刻化しているわけで、
しかも、あらゆる市場が自由化されて、
その煽りを受けて、中小企業が潰れて失業者が増えて、
給料も下げられて国民所得が下がって
それでもってさらにデフレが深刻化してるわけです。

挙げ句に、手っ取り早く民間に全部任せるために、
まるまる全部自由化してくれるTPP参加なんかが
真面目に検討され、下手すりゃ参加しちゃうような
状況にまで至っているわけです。

じゃ、なぜ、彼等がそんなに民間、民間ウルサイのかというと、

「なぜかっておめぇ、政府なんて、
信用できるワケねえじゃねぁか!?」

というわけです。

じゃぁ、なぜ、政府は信用できないのに、
民間は信用できるのかというと

「おめぇ、そんなこともワカンねぇのかよぉ。
民間はきょうそぉしてんだよ。
さぼってたら、つぶれちまうんだよぉ。
だから、ひっしなんだよぉ。」

というわけです。
(※1 ちなみにもう一つ、「人間に市場をコントロール
できるはずねぇだろぉ!」というお話もあるのですが….
それはまた別の機会に論じたいと思います。)

つまり彼等は、「競争」がないところでは、
人間は、まともな仕事をしない、
ということを前提にしているわけです。

みなさんも何となく、
まぁ、そぉかなぁ….なんて思うかもしれませんが…..

騙されてはいけません!!!

皆さんが今日までやってこられた
「まともなこと」を思い起こしてください。

そこには、競争はありましたか?
もちろん、あったこともあったでしょう。

でも無かったこともあったのではないですか?

人に何かしてもらったとき、お返ししなきゃ、って思って、
お返ししたとき、そこに、
「お返し競争」なるものがありましたか?(※2)

(※2 もちろん、結構、関西では、
そんな競争があったりしますが(笑)、
そんな関西でも無いときもあります!)

「勉強しなきゃ」と思ったとき、
それは「常」に、勉強競争で勝ち抜くこと「だけ」を
目指していたのでしょうか?

そして、例えばこのメルマガをご購読されているのは、
「おれはこんな事しってんだぞ競争」だかなんだかの、
何かわけのわからない競争のため「だけ」に
購読されているのでしょうか

もちろん、そんなヘナチョコな競争だけに従事してる奴ってのは、
いたりするのかもしれませんが、
そんな奴(←メチャメチャ嫌な奴)、どっちかっていうと例外で、
多かれ少なかれ、素直に「ありがとう」とお礼をしたり、
やむにやまれぬ思いでもって「学を志す」こともあれば、
やっぱ色々と知っておかないと…..ということで、
このメルマガをご購読されたりしているのではないでしょうか。

つまり、我々は、競争なんてなくたって、
真っ当なことを、いくらでもできる存在なのであって、
それが、現実の人間の姿なのです。

つまり、我々人間は、
彼等のモデルが仮定するような完璧なる

利己的存在

なのではなく、多かれ少なかれ、

倫理的存在

でもあるわけです。

・・・というお話をすると、多くの方には
ご理解いただけたのではないかと思うのですが。。。。。
こんな話をすると、スグに「彼等」は、

「オマエは性善説なんだな!?
オマエは現実を知らない、甘っちょろい奴だ!」

と言うんですね。

当方、経済学イデオロギーの方々から、
この手のツッコミをそれこそ、
(大袈裟でなく!)何百回も受け続けてきましたが(苦笑)、
それは、単なるレッテル貼り、なんです。

当方は、人間の利己心も、競争の重要性も否定していません。

「倫理的な側面がある」、

という当たり前の事をいっているだけなのです。
(つまり、当方は性善説者でも性悪説者でもなくて、
性善悪説者という程度のはなしなわけです)

でも、彼らは、それすら認めないんですね。

まぁ、彼等は、人間にちょっとでも倫理的側面があれば、
彼等の「完璧なる利己的存在を想定した理屈」が
瓦解してしまうわけですから、
何とかして、人間は倫理的存在だ、
という世界観を否定してしまいたいのはわかるわけですが。。。

兎に角!!

人間は、新古典派経済理論が
想定するような完全に利己的な存在なのではなく、
倫理的な存在であるのは、
100%、まっちがいない事実なわけです。

だから!

1.「立派な政治家も、立派な官僚」
も存在し「得る」のであって、

2.「まぁまぁ立派な政治家や官僚」
が存在することはもっとあり得るのであって、

3.「そんな、まぁまぁ立派な政治家や官僚を、
もっともっと立派にしていく取り組み」
だって、存在するわけです。

(#だから、選挙では、人品骨柄で立派な人物を
選ぶ必要があるわけですし、
官僚の皆さんに対しては、徹底的に適切な
研修を重ねていく必要があるわけです)。

そしてだからこそ、

4.「競争のない状況でも、真っ当な政府の判断」
というのは「あり得る」わけで、だから、

5.「何もかも民営化しなくったって、
政府が真っ当な政策を展開していくことだってある」
わけで、だから、

6.「何かも民営化すれば、
メチャクチャになっていくことだってある」
のはあったり前だという事になるわけです。

・・・でも、「人間は利己的だ」なんて無茶な想定があれば、
当然、 1から6は全部あり得ない、
ということになって、結局、

「とにかくもう、民間に任せリャ、それでいいんだよ!」

ってなっちゃうわけです。
・・・・と申し上げても、皆さんは、

「それ、ちょっと、大袈裟なんじゃないですか?」

と思われるかもしれませんが、
彼等と議論をすると、彼等が、如何に、
政府を信用していないかが、よく分かります…..

そう考えますと、メディアなんかでよく言われる、
行政不信、政治不信の背後には、
こうした経済学のイデオロギーからの
色濃い影響もあるわけですね。

・・・・で、最後にオマケの心理学データを少しご紹介すると、
経済学のイデオロギーに四六時中触れておられる
「経済学部」の学生さんは、
それ以外の学生さんよりも、

「人間が利己的」だと考える傾向が強くて
人を裏切る傾向が有意に高い(!)

ということが知られています。

で、「人間が利己的だ」って深く信じている人ほど、
統計的有意に「不幸」だ、っていうデータもあるんですね。
(#主観的幸福感研究の知見です)

つまり、新古典派イデオロギーは、
社会を無茶苦茶にしてしまうだけでなくて、
その人自身を、寂しい、さもしい不幸な人にしちゃうんですね(笑)。

皆さん是非、ご注意下さい。

では!!

 

京都大学 藤井聡
http://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII?ref=ts

 

PS
人は利己的な存在ではありません。
利己的に生きると逆に損をしてしまうからです。
「人は利己的だ」というのは学者の思い過ごしです。
http://amzn.to/MgJ8wQ

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【藤井聡】人間は、利己的な存在?への4件のコメント

  1. 比嘉 英信 より

     お金の報酬を与えるグループと報酬を与えないグループにある研究課題を与えその遂行状況を研究してる学者がいました。 結果は、報酬を与えなくてもグループは互いに協力しあって課題を乗り越えてました。 この事と同じことでしょうか。僕の個人的なサラリーマンの経験でも、給料に関係なく社員同士で協力しあい残業日程も相談したり、目標達成を皆で一丸となってやってました。 ただそれを団塊世代、バブル世代の上司に仲良くするのを邪魔されやりずらかったですが・・・。

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  2. 荒木 智与 より

    こんにちはなんか、気持ちがホットしました。有難うございます。

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  3. かぼちゃ より

    逆に利己的な存在は倫理的存在を利用して出し抜き、利用しつくそうとするので、労働コスト(給料)を下げたりしようとするわけですよね。。。

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