FROM 薬師院仁志@帝塚山学院大学教授
巷間では、現政権が「橋下氏に対して、菅官房長官を通じて、再三にわたり、国政出馬、入閣要請を行っている」という話が飛び交っている。もしこれが事実なら、大阪から声を大にして反対せざるを得ない。
紙幅は限られるが、少しばかり私たちの経験を伝えよう。
2015年5月17日に行われた「大阪市における特別区の設置についての住民投票」において、大阪市の廃止分割は否決された。だが、これで問題が終わったわけではない。今なお、大阪市は、この住民投票が残した荒んだ雰囲気から抜け出せずにいるのだ。運動期間中、橋下徹氏の率いた大阪維新の会が行った宣伝は、それほど見苦しいものだったのである。そのビラやツィートは、まさに人心を荒廃させるものであった。
http://oneosaka.jp/517/archive/pdf/tgt_chirashi_0419.pdf
http://satoshi-fujii.com/figure2.pdf
投票運動の期間中、大阪維新の会や橋下氏は、反対派の主張を「デマ」や「噓」と決めつけるような態度を取り続けていた。そんな折、2015年5月16日、『日刊ゲンダイ』(オンライン版)に、「橋下維新陣営『反対派のデマ』と称して公式サイトで拡散中」という見出しの記事が掲載された(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159840)。そこには、次のように記されている。
大阪維新の会は公式サイトのトップページに〈都構想のデマが拡散中です! ご注意ください!〉というバナーを設置。クリックすると、〈反対派のデマに使用されているQAです。正解は コチラ。〉とうたって、反対派の88項目もの主張に逐一反論している。
http://satoshi-fujii.com/figure3.pdf
見てのとおり、この行為は事実である。橋下氏らは、ビラでもウェブサイトでも、とにかく反対派は「デマ」を流していると叫び続けたのだ。ともあれ、記事は以下のように続く。
問題は反対派の「一度大阪市がなくなると、都構想に失敗しても二度と元に戻れない」という主張への反論だ。このテーマは住民投票の大きな争点の一つ。日経新聞(4月30日付)の世論調査でも都構想に反対する理由は「多くの費用がかかるから」(27%)に続き、「大阪市がなくなり、元に戻せないから」(24%)が2番目に多かった。大阪維新の会は公式サイトでこう反論する。
〈念のため法律上では、地方自治法第281条の4の規定により、特別区の廃置分合が可能とされておりますので、特別区を市に戻すことや、政令指定都市となることは可能です〉
http://satoshi-fujii.com/figure4.pdf
この記述の存在もまた、見てのとおり事実である。だが、記事は、この「反論」なるものこそデマだと指摘する。続きを読んでみよう。
ところが、この答えこそ「デマ」。大阪市の公式HPには先月実施した住民説明会の「質問書への回答について」というサイトがある。〈特別区設置後、大阪市を復活できるのか〉という問いには〈現在の法制度においては、特別区が市に戻る手続は定められていません〉と答えている。
http://satoshi-fujii.com/figure5.pdf
もちろん、これこそが正しい事実だ。つまり、特別区を市に戻す法律はなく、そんな手続きは存在しないというわけである。早い話、法律で認められていないことは、できないのだ。もちろん、市にさえなれないのなら、政令市になるわけがない。さらに、この記事では次のように報じられている。
高市早苗総務相も12日の参院総務委で「特別区が市町村に戻るということは現行法ではできません」と明言したが、この日の会見で大阪維新の会幹事長の松井一郎・大阪府知事は居直り。記者から「HPに〈市に戻すことや、政令指定都市になることは可能〉と書いたのは行き過ぎでは?」と聞かれると、「法律作れば可能じゃないですか」と逆ギレする始末だ。
まあ、そんなことを言い出せば、何でもできるだろう。ちなみに、かつて月亭可朝師匠が参議院議員選挙に立候補した際の公約は、「銭湯の男湯と女湯の壁の撤廃」というものであった。まあ、男湯と女湯の二重営業の無駄を解消することに繋がるのかもしれないが、何にせよ「法律作れば可能じゃないですか」……。法律を変えれば、消費税を30%にすることも可能なのだ。ちなみに、「税金が上がります」と吹聴しているのは、誰なのでしょうかね。
http://satoshi-fujii.com/figure6.pdf
http://satoshi-fujii.com/figure7.pdf
結局、橋下氏らの手口は失敗に終わった。投票日の直前になると、さすがに誤魔化せないと観念したのか、橋下氏の街頭演説も随分とトーンダウンしていたのである。
5月9日の街頭演説:
都構想で大阪が必ず発展するか分からないが、1ミリでも前に進むならやるべきだ(『大阪日日新聞』2015年5月10日)。
5月10日の街頭演説:
住民サービスが極端に下がることはない(『産経ニュース』 2015.5.10 20:10)。
大言壮語してブチ上げた構想は、そのデマを散々に叩かれた結果、「1ミリでも前に進むなら……」や「極端に下がることはない……」で終わったのだ。もう一度、最初に紹介したビラを見てみよう。そこには「住民サービスは向上します!」という文言を始め、根拠のないことばかりが派手に宣伝されている。だが、実態は、橋下氏でさえ「都構想で大阪が必ず発展するか分からない」と認めざるを得ないような代物なのだ。何年にも渡って巨額の税金を費やした無謀な構想の後に残ったのは、大阪市の荒んだ空気だけである。
大阪市の廃止分割に反対する側は、当然のことながら、橋下氏や大阪維新の会の宣伝を「デマ」だと指摘せざるを得なかった。それは致し方ないのだが、実態として、お互いがお互いを「デマを飛ばすな」と罵り合うことになってしまったのである。かくして、大阪市は残ったが、市民の心は壊れた。こうした事態に、日本全体を巻き込んではならない。
追伸:橋下氏の入閣は、如何に日本に大きな「禍」をもたらすかについては、こちらの記事もご参照ください。
https://38news.jp/politics/10721
【薬師院仁志】「橋下入閣」は、日本人の心を破壊しますへの12件のコメント
2017年7月7日 7:22 PM
内容が不快です。
大阪がどのような政策をとるべきかを、記載してほしい。
(ヘイトスピーチのようです。)
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2017年7月8日 1:21 PM
国債だけでなく地債も日銀が買いオペするのが筋やと思う。
法的な問題はあるが地方は一丸となって国に訴えるべき!
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2017年7月7日 9:04 PM
類は友を呼ぶ ♪
お二人とも 大のつく 嘘つきですから
きっと ウマがあうのでせう。。
彼らには 嘘つきでも 褒め言葉
人非人 以下の ただの 屑 ♪
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2017年7月8日 12:51 AM
いや、よくぞ書いてくれたと思います。議会民主制を否定した衆愚扇動劇場型政治手法はとても危険だと思います。現実に大阪行政はパソナのような白蟻がたかり
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2017年7月8日 1:10 AM
アイツは昔読んだ本宮ひろしのマンガに出てきた、人のいる時といない時に態度がコロコロ変わるヤクザにそっくりです。マンガまんまですわ(笑)
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2017年7月8日 9:04 AM
西元さん、快、不快で判断するんですか?
大丈夫ですか?
きっと橋下さんのこと大好きなんやろうね。
せやから自分の好きな人のことに反対する話は全部「ヘイトスピーチ」と言いたいんやろうと思います。
事実をもとに、冷静に判断しましょうね。
橋下さんのコワかったところというのは、権力を持った人間がウソをついて言論弾圧をしたということですよ。
これも快、不快ではなくて、事実ですからね。
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2017年7月8日 9:13 AM
まずは事実かどうかを確認したらいいのに。
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2017年7月8日 1:59 PM
ナニワの激オコおばちゃんさん。こんにちわ。
おこってらっしゃるのですね?
私は、橋下さんことは好きでも嫌いでも有りません。
橋下さんの進めていた都構想、行き過ぎた規制緩和にも反対です。ご本人は、それが大阪のためになるのだと、信じきっているのでしょう。大阪にとってどのような政策が良いのか、そこが知りたいです。「こうすべき」を聞かせてほしい。この記事には「批判」と「あおり」しかないように思います。筆者は恐らく橋下さんが嫌いなのではないでしょうか。それではヘイトスピーチと同じだと思います。
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2017年7月8日 4:57 PM
藤井聡さんが「大大阪構想」(だいおおさかこうそう)を打ち出されております。
詳しくは『大阪都構想が日本を破壊する』をお読み下さい。
さて。大阪都構想のイメージとは次のようなものです。
例えば、麻薬中毒者から麻薬を取り上げたら、中毒者は「何をする!俺には麻薬しかないんだ!対案を出せ対案を」と言う。
旅館の料理で全くのゲテモノが出されて、客が文句を言うと、旅館側が「何を言う!じゃあどんな料理がいいのか、対案を出せ対案を」
こんな感じです。
ダメなものをダメというのに理由はいりません。
昨今、批判というのがとても悪いものと考えられているようですが、批判がが無ければゲテモノを食べる羽目になります。
良いものと悪いものを見分けて、悪いものを悪いというのは、人が危険に身を晒さないために必要なことです。
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2017年7月8日 6:47 PM
西元さん
ご返信ありがとうございます。
名前は自分のサイトの名前なので、怒ってるわけではないです(笑)
薬師院仁志さんについては私もよう知らんかったんですが、「大阪都構想」についてはこの下の「通りすがり」さんが書いてはるように、私も『大阪都構想が日本を破壊する』(文春新書)を読みました。また、当時藤井さんはそれに対する反論も受け付けるという姿勢でしたが、結局反論は最後まで出てきませんでした。この薬師院さんは、基本的な知識を前提に書いてはると思うので、「批判」と「あおり」しかない、というのは当たらないと思います。
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2017年7月9日 9:10 PM
薬師院教授のおっしゃる通り、大阪市内の住民には荒廃した心がよく見られると思います。それはたとえば「都構想」に少しでも関係がありそうなニュースサイトへの一般の人の書き込みなどを見てもすぐにわかります。そこには不思議なぐらいほとんどが「都構想」賛成的意見の書き込まれています。それらの書き込みが上品なのか恐ろしく下品なのかは・・見たことない人は見てみて判断してください。大阪市民は当然のことながら大阪市内に身内や自分に関係する人がたくさんいます。かなりの確率で賛成か反対かの意見を持っています。賛成の方は今回掲載されているようなビラを信じて疑いません。2年たった今でも、です。大阪市以外の方にはもしかすると大げさに聞こえるかもしれませんが、市内在住の人、少なくとも私は「都構想」でというか、維新政治で人間関係や心の荒廃を実感した経験があります。
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2017年7月10日 11:01 PM
菅もどうしようもない男です。加計学園の件を見ても、もう無茶苦茶。ちゃんと説明しようとする気は、かけらも有りません。何とかはぐらかそうと、しているのが、まるわかりです。
国民を舐めています。
橋下をいれて、何をするのでしょう。口以外何の芸もない人です。これで、政権の人気が浮上すると思っているのなら、安倍政権も終わりです。
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