政治

2017年9月5日

【藤井聡】堺市長選:反対と明言しないのは、都構想の可能性を「宣言」しているに等しい

From 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

(1)「都構想推進派」が勝利すれば,堺と大阪が破壊される
来る9月10日告示、24日投開票で,大阪の堺市長選が行われます.政令指定市の市長選挙はいずれも重要ですが,この堺市長選はとりわけ日本全体にとって重要な意味を持ちます.

なぜなら,都構想・反対を『明言していない』候補者が勝利すれば,ただそれだけで,

‘  「堺市という自治体が廃止・解体」

堺市民の同意がないままに勝手に進められてしまう危機が生ずるからです.それと
同時に、

‘  「大阪市という自治体の廃止・解体」

そして最終的には,

‘  「大阪の破壊/日本の破壊」

が導かれるという恐ろしい危機が生じてしまうのです.ここでは,なぜそう判断できるのかについての,筆者の見解を申し述べたいと思います.

(2)大阪市民・堺市民が「大損」する「都構想」
いわゆる「大阪都構想」というものは,大阪の統治機構(行政制度)を、現在の東京都が採用している「都区制度」というものに変更するという構想です。つまり、

大阪市や堺市を廃止して,複数の「特別区」に分割すると同時に、
②大阪市や堺市の種々の財源・行政権を大阪府に譲渡する

というものです(詳しくは https://38news.jp/archives/05018 あるいは http://amzn.to/1GF42Us をご参照ください).

別の言い方をするならそれは、大阪市や堺市の「自治」を廃止し,財源と権限を「大阪府」に吸い上げるものです.ですから大阪市民や堺市民に極めて深刻な損害をもたらし得るものなのです.

なぜ,そんな「市民」に甚大な被害をもたらす制度が東京に導入されたのかというと───国家総動員法の戦争時代のまっただ中の1943年,東京「市」が持っている財源と権限を,中央政府管轄の「東京府」に吸い上げるために導入した,という経緯があったからなのです.
(総務省の資料はコチラ → http://www.soumu.go.jp/main_content/000151655.pdf

だから普通に考えれば,「都構想」は,大阪に導入すべきかどうかを論ずる以前の「あり得ない選択」だというのが,おおよその学識経験者の共通見解です.
(108名の学者所見はコチラ → http://satoshi-fujii.com/scholarviews2/

とはいえ残念ながら,こうした「真実」が有権者全員に周知されてはいない───のですが,一定程度は共有認識されたことから,2015年の大阪市での住民投票で辛うじて「否決」されたのです.

(3)堺市では「住民投票なし」で「都構想」が実現できる
イギリスのブレグジットの例を引き合いに出すまでも無く,一旦「直接住民投票」の結果が出れば,賛否を問わずその結果を粛々と受け入れるのが「直接投票の基本マナー」.したがって,多くの国民は都構想は「終わったもの」と考えていたのですが───誠に不条理な「政治家達の政局的な思惑」の帰結として,来年秋に再び,住民投票が実現する見通しとなってしまいました.
(詳しくはコチラ → https://38news.jp/politics/10040

すなわち今,大阪都構想が実現し,大阪市が廃止・解体されるリスクが再び現実に生じているのです.

遺憾としか言いようがありませんが,この事実、ならびに、現状の法制度(大都市特別区設置法)を踏まえるなら,堺市では驚くべき程「簡単」に,住民投票さえ行わないままに「都構想」を実現でき得る──という現状が見えてきます.

なぜなら,「大阪市で都構想が実現していれば,周辺の自治体は(分割しないなら),住民投票をせずとも,都構想に参加できる」というルールが,法的に存在しているからです.

(※ 具体的に言うなら,堺市を複数に「分割」する場合には住民投票が必要なのですが,分割しないなら投票は不要です[大都市特別区設置法 第13条参照].そして,都構想への参加は市長と堺市の市議会[および,それらに基づいて作られる法定協議会]の決定が必要ですが,[今回の補選の結果如何では]堺市議会で推進派が過半数となり得ます.).

(4)反対と明言しないのは、都構想の可能性を「宣言」しているに等しい
したがって,堺市長が「都構想にNo!」と「明言」していない限り,堺で都構想が実現し,堺市の自治が廃止され得る,というのが現状なのです.

そもそも、先に指摘した現実のルール上,堺の「議会」の過半数が(隣の大阪市で実現している)「都構想」に我々も参加したいと言い,それに市長が同調してしまえば,堺で都構想が自動的に実現してしまいかねないのです.一方で,市長が反対を明言していれば,議会がどれだけ「都構想」を望んでも,その実現は不可能です

そうである以上,今回の堺市長選挙は「都構想に反対を『表明』しているか否か」こそが最大の争点なのです.万一,「反対を表明していない」市長が誕生すれば,最悪,住民投票すらないままに,堺での都構想が自動的に実現するのです.

折りしも堺市民の多くは,「堺の分割」を望んではいませんから(前回,「堺はひとつ」という公約を掲げた候補者が勝利しています),都構想への参加が「分割無し」と議会等で判断される事は十分にあり得ます.その場合はルール上,住民投票が不要となり,結果的に市民は都構想を止める術を失います(もしも「分割」する方向となれば住民投票が行われますが,それでもやはり,都構想の「真実」が十分周知されなければもちろん,都構想は実現します).

すなわち,今回の堺市長選の結果が,堺での「都構想の実現」を左右するのであり,したがってやはり今回の堺市長選の最大争点もまた「都構想」なのです.

だから,「都構想に賛成」の有権者は,「マニフェストで都構想について触れていない候補者」を選ぶことが得策となります.

一方で,「都構想に賛成できない」という有権者なら,「マニフェストで都構想に『反対を明言』している候補者」を選ぶことが得策となるのです.

ついては本件にご関心の方は是非,候補者がマニフェストで,都構想について一体何を言っているのか,しっかりと情報を集めて頂きたいと思います.

(少なくとも現時点で立候補諸を表明している候補者のマニフェストは下記からご覧頂けます.ご関心の方は是非,ご覧下さい.
http://oneosaka.jp/sakai_election2017/manifesto/
http://takeyama-osami.jp/wp-content/themes/takeyamaosami/pdf/takeyama_manifesto20170902.pdf

ところでマニフェスト以外の「記者会見や演説での発言」は,法的拘束力がないという点には注意が必要です.少なくとも極めて深刻な影響をもたらす「都構想」については,「記者会見や演説での発言」を「信用」することは極めて大きな危険を伴うことはここに明記したいと思います.(例えば,https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/abc/region/abc-20170826008).

もちろん,政治家のは絶対に許されるものではありません.ですが誠に遺憾ながら、都構想・推進派は2015年の住民投票がラストチャンスと明言していたのに、それがであったことは今、周知の事実となっています.

そもそも、本当に都構想を進めないのなら,それをマニフェストに明記「しない」理由など,どこにも無いはずなのです(!).

だからこそ、マニフェストに「反対を明記しない」ということは,「都構想に参加する可能性がある」と宣言しているに等しいわけですが──いずれにせよ,有権者をはじめとした本件にご関心の皆様には是非,候補者の情報を集め,適切に解釈すると同時に,「都構想に明確に反対していない候補者は,『都構想』の実現可能性を宣言しているに等しい」という現状をしっかりとご認識いただきたいと思います.

P.S
今回の堺市長選挙は,「大阪市の都構想住民投票」にも影響を及ぼす可能性があります.もし,都構想「賛成派」の市長が誕生すれば,堺市と大阪市を合わせた都構想が構想されはじめる可能性があります.逆に堺市に反対派市長が就任すれば,大阪都構想は単に「大阪市を廃止分割する構想」となり,多くの賛成を集めることが困難となります.
つまり,今回の堺市長選挙は,大阪市の未来にも影響を及ぼすのです.そして日本第二の都市圏大阪の未来は,日本に大きな影響を及ぼしますから,それは日本の命運にも関わる重大な意味を持つのです.つまり、『大阪都構想は日本を破壊する』のです(http://amzn.to/1GF42Us).

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【藤井聡】堺市長選:反対と明言しないのは、都構想の可能性を「宣言」しているに等しいへの2件のコメント

  1. 反孫・フォード より

    >停滞か 成長か ~ 改革を実行します

     リンクのマニュフェストを見たら、つい書き込んでしまいました。

    30周年(無知としてはM&A等が推進されていた時期からデフレ?)の政府執行部デフレ創態が熟成させてきたまんまのフレーズワードを叫ぶ人達の暴走の停まりようが無いですね。
     停滞を改革で成長・・・まさか安倍総理、菅長官等もそう思って橋下を陰から応援していたのでしょうか。だとしたら中央政府なのにデフレ脱却の意味が違う気がしてなりません。

    (私なんぞが言えるわけもありませんけど)なかなかフレーズ合戦政治の御時世の今では理解まで辿り着きにくい気がしてなりません。
    橋下が引いた今、教授等が大阪のバラエティで訴えるのは効果抜群な気がします。
    芸能界を利用してでも(まったく判らなく適当に書いていますが小沢健二さんとかは)しないとなかなか耳を傾ける一般庶民が・・・・

    ただ浮かんできたことばかりですみません。失礼しました。

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  2. ホワホ より

    選挙制度の性質上
    保留という行為は保留という態度の表明にならない。というのを
    投票者が理解していない節が有りますよね
    本当に保留=現状維持を選択したいならば
    実は反対票が必要です

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