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2019年6月29日

【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第五十八話」【生きている過去との会話】

From 平松禎史@アニメーター/演出家

《 過去と対話せず、現在と語るのみでも、生きるだけなら生きられる。しかしそれでは、自分がどこにいるのか、どういう道筋をたどってここにいるのかさえわからないではないか。
我々が、安心して、自信を持って現在に生きるには、現在の素性を知らねばならない。現在の素性を知るには、過去に話を聞いてみなければならない。

高島俊男『本が好き、悪口言うのはもっと好き』から「国語辞典は何のためにあるか」1992年。ちくま文庫

中国文学者の高島俊男さんは、中国の歴史を知り日本との関係を検証しているがゆえに、現在の中華人民共和国(中国)に対する日本人のおもねった姿勢に批判的です。そんな反骨ゆえか、学界の華々しい経歴とは無縁のよう。
これは、朝日新聞に別役実氏が書いた「『広辞苑』第四版を読む」に対する反論。別役氏は、使わなくなったことばはどんどん削除して、掲載語の量を誇るより「削除語の量を誇ることの方が、今日の文化全体の傾向から考えても好もしい」と、辞書は「年々スマートに」なるのがよい、と書いており、これが高島翁を怒らせた…というよりは、(別役氏に限定せず)文化に対する鈍感さへの悲しみが文章からにじみ出ています。辞書の最高権威に文句をつけたようなこの文章は、岩波書店の辞典特集の依頼で書いたものだが、採用されなかったとのこと。

過去を削除してしまったら、どうやって生きていけばよいのかわからなくなる。ことばの問題を通して、文化の役割、人の生き方、国のあり方に対して、認識を改める必要性を説いているのです。

第五十八話:「生きている過去との会話」

6月21日から23日にかけて、仙台から浪江町を経由していわき市へ旅してきました。
今回は、その最終日、浪江町について書きます。
詳細は拙ブログを御覧ください。
仙台~浪江町~いわき行・『薄暮』を観る ~その1
https://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/entry-12485868527.html
仙台~浪江町~いわき行・『薄暮』を観る ~その2
https://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/entry-12485867663.html
仙台~浪江町~いわき行・『薄暮』を観る ~その3
https://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/entry-12486844346.html

仙台からいわき市まで、常磐線が浪江~富岡間が不通のため、その間を代行バスで乗り継いで、5時間半かかりました。浪江町でバス待ちが2時間ありましたので、町の様子を見てきました。

浪江町は東西に細長い町です。平成二十九年(2017年)3月31日に避難指示が解除されましたが、西側の大半は帰還困難区域のままです。
浪江駅は福島第一原発から9kmに位置する。駅前のリアルタイム線量計は「0.213μSv/h」を示していました。

福島県には、過去に蓋をされ、現在を知ること叶わない土地がたくさんあります。2年前に避難指示が解除された浪江町の一部から、過去が見えてきた。
桃内駅からトンネルを越えて浪江町に入ると、まづ目に入ってきたのは福島県立浪江高等学校の建物でした。校庭は草が高く生え、使われている様子がありません。地震で壊れたままの家。事務所の窓から倒れたままのCRTモニタや書棚が見える。放置されて草木に覆われた家々。人気のない通り。相馬市や原ノ町とは全く様相が違います。

浪江町の人口は、震災前は約21,000人でした。
町役場のサイトを確認すると、6月現在20,389人が県内外に避難して暮らしているようです。つまり、現在町に暮らしているのは600人ちょっと、というわけです。
一年前のデータと比較すると、避難者は約200人減っており、毎月20人前後が帰還して地元での生活を再開していることがわかります。
https://www.town.namie.fukushima.jp/soshiki/3/21723.html

では、写真を見ていきましょう。歩いた順序と変えています。

・浪江神社です。

鳥居は地震で倒れた後撤去され、痕跡はこの額だけでした。



拝殿の中はめちゃめちゃになっていて、入れないようブルーシートが貼ってあります。


この様子からは想像できないほど、たくさんの絵馬がかかっていた。地元の人達に親しまれていたことがわかります。
一番手前にかかっている絵馬の一つは合格祈願。2011年のものでした。
新しい絵馬が加えられることを祈ってきました。

・浪江駅です。

草むらの中に入って写真を撮ったわけじゃなく、歩道のアスファルトの割れ目からどんどん草が生えている。人がほとんど歩かないからです。何より、行政がまだ機能していない証拠です。

・駅前通り。

これは花壇の花ではありません。歩道に小さな花壇が点在してますが、それが歩道や道路脇に広がって繁殖しているのです。花の向こうには、地震で壊れた屋根がある。応急処置だけして避難した後、戻っていない様子がわかります。


駅前通りに草野球ができるほど広い公園がありました。
出入り口には「トイレ使えます」とやや新しい看板があった。これは裏口にあたりますが、草が生えていて人が出入りしている様子がありません。
こちらも同様の家。

・書店やゲームショップ、家電店、居酒屋が並んでいる一角です。

地震で破壊されたまま。対面の店舗もどれも破壊されたままの状態です。

・書店の中です。

東日本震災では、「時間が止まっている」とよく言われますが、止まってなどいません。震災で破壊されたままやむを得ず放置された町を、時は確実に朽ちさせているのです。

・相双五城信用組合浪江支店改装工事の看板。

「建退共に加入しています」、という掲示を東京で見たことがありませんでした。たいてい大手建設会社がやっているからでしょう。
たくさんの建設会社が共同で再建に関わっています。建設業退職金共済機構(建退共)は大手建設会社に属さない中小の、あるいは個人の建設事業者に対する共済制度のようです。地域の中小企業が、定年退職後または公共事業費削減で退職した建設関係者も加入し、復興事業に参加しているのでしょう。

・JAふたば浪江支店。

帰還困難区域指定解除後、あるいは指定解除を見越して建て直されたのでしょう。まだ新しい。
この近くで建替えた真新しい家に親類縁者が集まっていました。小さな子供が、JAの入り口にある大きなアンパンマンを見つけて駆け込んでいった。ちょうどお母さんが様子を見に入ったところで写真をとりました。
農協が早い段階で再建されているのは、農家の多い土地ならではですね。そんな安全保障を安倍政権は破壊している…。
人が住んで使ってるところと、そうでないところの差がこんなに明らかな状況が…しかも町全体で…並存してるのをはじめて見ました。

・駅の西側。

写真左側の奥に2016年竣工した地域スポーツセンターがあります。
町の人々が帰ってくるのを待っています。

・再建された祠です。銅板の屋根が美しい。

近くには、やはり建直した家に帰還準備をしている家庭があった。時が確実に町を朽ちさせている一方で、生活の再建もゆっくりとですが進んでいます。
お賽銭を入れて生活の再建を祈りました。

・駅の西側から回って大堀街道踏切を渡りました。
常磐線のほとんどは、継ぎ目の多い旧型工法のままなので、ガタンダタン!ガタンダタン!と昭和の音がした。再建されているところは格段に静かになります。
まだ列車が走っていないので錆びてますが、このレールと継ぎ方は最新のもの。
いわき方面へ向かう希望の鉄路です。

東西をつなぐ踏切が南北に遠く離れており、駅は東側にしか入り口のない地上駅なので完全に分断されています。町の再建を考えると、駅西に隣接する閉鎖工場を買収して駅を大改造。エレベーター完備の橋上駅にして東西の行き来をしやすくする必要があると思う。
地方は高齢化を避けられません。高齢者の暴走事故を防止するためにも、鉄道や町内を循環する小型バスの利便性を活かすべきでしょう。

・駅構内の様子です。

常磐線は単線ですが、駅は急行・特急に対応できるようになっています。しかし、浪江から富岡までが不通のため、各駅停車しか走らせることができません。仙台からいわきへ行けるタイミングが一日に二度しかないのは、不通区間が解消されないからです。
駅長に話を聞くと、来年3月に全線開通するとのこと。以前のように急行など走らせられるかは、ことばを濁された。現状の浪江町からすれば、往時のような運行は期待できないのかもしれません。
デフレが継続させる緊縮財政の政府が、悪いお手本を示しているからだ。

+ + +

東北三県には巨大な震災復興格差が存在します。
しかし、その格差は東北に限らず日本全国に存在する。これからの自然災害でも格差は巨大化し拡大していくだろう。災害が起きて、仮に急ピッチで復興が進むとしたら、それは東京・名古屋・大阪など大都市だけに違いない。政府が削っていく予算を「選択と集中」で振り分け、東京視点で「必要なところ」にだけ集中投資する。その結果が現在の、貧しい日本の姿ですが、太平洋側に大地震が来ればさらに貧しい国になるでしょう。
地方を外国人観光客を呼び込む「資源」と考え、人を安く効率的に働く「資材」と考える、そんな貧しい考え方の政府が、日本を、日本人を、貧しくしたのです。

災害を政府批判に結びつけるな、て? 冗談じゃありません。
現実が政府を批判しているのだ。ボクは、現実の一部を見て報告しているにすぎない。全国的な動向は公式データや調査会社のリポートから見えてくる。
現実は、こんな政治じゃ国民が殺されていく! と訴えているのです。

自国通貨を持つ日本には財政問題など存在しない。
防災減災、国土強靭化。災害復興に「財源」など考える必要はないのです。
政府が国債を発行し、国民に投資すれば良い。
やればできるのです。

16時28分。代行バスで浪江町を発ちました。

・帰還困難区域です。この3.5km向こうに福島第一原発がある。
浪江町の大半など、福島第一原発に近い地域は帰還困難区域に指定されたままです。つくづく、あの事故さえなければ、と悔しく思う。
事故後の検証でチェルノブイリ原発事故とは様相が異なるとわかったにもかかわらず、同等なレベル7が維持されたこと。放射線影響調査の結果を適切に反映しているとは思えない避難指定の長期化など、復興の遅れは事故当時のパニック状態を引きずった結果だろう。二重の人災だ。

被災当時の町が、過去に蓋をするように置かれている。
地震・津波・原発事故、この3重の被災と同居し、過去から現在へそして将来へと住人が咀嚼しながら受け渡していく環境、意識が奪われているのです。つらい現実は、時間とともに、暮らしとともに、人とともに変化していくものだと思います。過去に蓋をする期間が長ければ長いほど、現実を受け止められなくなり、将来を見誤ります。

一人ひとりの努力はとうにはじまっています。しかし、地方行政は対応できていない。予算が足らないからでしょう。予算が不十分では人も雇えません。行政が機能しない町は、人が去っていき、朽ちていきます。日本全国で起きていることです。

過去を直視しない安倍政権は、現在の場所を見失い、将来への道筋を誤り、それでも頑迷に「この道しかない」とのたまう。政府の役割を放棄しているのです。

過去と対話せず、現在と語るのみでも、生きるだけなら生きられる。しかしそれでは、自分がどこにいるのか、どういう道筋をたどってここにいるのかさえわからないではないか。
我々が、安心して、自信を持って現在に生きるには、現在の素性を知らねばならない。現在の素性を知るには、過去に話を聞いてみなければならない。

—発行者より—
総理「政権中にこれを破棄できなければ、日本はオシマイ」三橋貴明と総理との会談時で明かされた真実。

●総理が、三橋との会食をオープンに
(世に公開)してまで国民に伝えたかった事とは…?

●この会食で明らかになった、
私たちの邪魔をする[3つの敵の正体]とは?

●2020年に訪れるかもしれない
日本の危機的状況とは一体何なのか?

日本が発端となり、
2008年のリーマンショックが再来する?

などなどメディアが決して報道しない
「安倍総理の告白」と「日本経済2020年危機」
について解説した書籍を出版致しました。

こちらから詳しい内容をご覧ください。
https://keieikagakupub.com/38JPEC/1980/

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  1. 赤城 より

    貴重な取材をありがとうございます。

    東日本大震災のときから顕著になったのは日本国家政府が
    地方や国民、国家の部分を見捨て、見殺し、
    復興をさせようと本気で動かないどころか復興税を奪うということ、つまり、国家として存在する事を放棄し国家の店じまいを始めたこと。
    その最大の象徴と言っていいのが原発の被災を理由にした
    地方の強制放棄殺しという福島のこうむった最悪の人災だった。
    其処には人間的な理性も情も常識も頭脳も何もなく、
    日本は滅んで当然と思えるほどの虚無と無知白痴と狂気と
    無情しか存在しなかったし、
    救いようもないことにその後、修正する事も一切しなかった。
    まだ亡国家してなくても亡国の国です。
    日本は生きながらに死んでいる。

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  2. たかゆき より

    人も国家も

    首から上だけで 生きられる
    わけが ない。。

    上肢 下肢 胴 なんぞ
    切って捨てても
    生き延びられる と

    考えられる時点で
    そいつは すでに スんで もとい

    死んでいる、、

    さっさと 逝ね ♪

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