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2024年3月30日

【藤井聡】総括・アベノミクス(その1)~「醜いアヒルの子」として生まれた積極財政金融論~

本日とあるところで、「アベノミクス」を総括いたしました。植田日銀総裁の利上げが、事実上の「アベノミクスの終焉」を示唆するものあったからです。

何回かに分けて、「総括・アベノミクス」をご紹介します。

是非、ご一読下さい。

「異形の子」として生まれたアベノミクス

日銀の「マイナス金利解除」は、世論に大きな衝撃を与えた。これは要するに、前黒田総裁が安倍内閣との連携(アコード)を前提として始めたいわゆる「アベノミクス」の一環として進めてきた「異次元の金融緩和」の「終わり」が始まったのである。アベノミクスとは要するに、市中で流通するマネー量を増やし、それを通してデフレ脱却を果たさんとするものだ。だから、政府財務省は減税と支出拡大から構成される「積極財政」を行う一方、日本銀行は利下げと各種の債権の日銀買い取り(いわゆる買いオペレーション)から構成される「金融緩和」を行うことが進められた。

これは「アベノミクス」という固有名称で呼ばれてはいるものの、現下の日本経済の様な長期の需要不足に伴う不況下では、どの国もが行う当たり前の教科書的対策だ。それに対して何やら特別なものであるかのような「アベノミクス」なる名称が付与されたのは偏に、日本では長らく、デフレ不況下で求められる緩和的な財政金融政策が全く行われておらず、そうした当たり前の対策が「非常識」なものと見なされてきたからに他ならない。そんな中でその当たり前の事を当局にやらせようとすれば、それが「新しいもの」だと認識させることが必要となる。そんな不条理状況の中の苦肉の策として、「アベノミクス」という仰々しい名前が付与されたのだ。いわばアベノミクスは(普通とは違う怪しい形・姿をした)「異形」の子として産み出されたのである。

「醜いアヒルの子」のまま葬り去られるアベノミクス

繰り返すが、デフレ(あるいは、現下のスタグフレーション)において緩和的な財政金融政策を行うのは当たり前の話であり、至ってスタンダードな王道的政策である。しかし、邪説が支配する日本ではそれは「異形」の者扱いされる。かくしてアベノミクスは、美しい白鳥がアヒル社会で醜い醜いと蔑まれる「醜いアヒルの子」だったのだ。

「醜いアヒルの子」は、物語の世界では最終的に成人し、美しい白鳥となりアヒルたちを驚かす。

しかし、現実社会の「醜いアヒルの子」達の多くは、意地悪なアヒル達にいじめ抜かれ、不遇の内に人生を終える。そんな現実があるからこそ、童話の世界でだけ真に美しいものが社会に高く評価され、彼らをいじめ抜いた輩どもを見返すという結末が用意されているわけだ。しかし無論、現実はそんなに甘くはない。

かくして、異形の子として産み出された「アベノミクス」も、今般しっかりきっちりと「意地悪なアヒル達」に葬りされることとなったのだ。今般の植田総裁によるマイナス金利解除はそんな過酷な現実を意味しているのだ。

「白鳥」として飛び立つ事を阻止されたアベノミクス

「醜いアヒルの子」としてのアベノミクスは、「安倍晋三氏」という一人の大物政治家によって産み出された。

筆者を含めた一部の学者、知識人立場、緩和的な財政金融政策こそが「白鳥」であり、これを何とか生み出し、アヒル(緊縮的な財政金融政策)が跋扈するこの社会を変えねばならぬと主張し続けていた。しかし、社会の風潮では白鳥の子は蛇蝎の如く嫌われ、誰も連れてくることができぬ状況が継続していた。

そんな中、最高責任者である「総理大臣」がいきなり、(一歩の学者連中の説得が功を奏し)世間では異形と言われる「白鳥の子」(緩和的な財政金融政策)こそが必要であると認識するに至った。

しかし言うまでも無く、「アヒル」達は、そんな「白鳥」の子が活躍し始めた途端、それを排除せんとあらゆる妨害工作を仕掛けはじめた。

アベノミクスは「日銀による金融緩和」と「財務省による積極財政」で構成されるのだが、前者の「日銀による金融緩和」は何とか推進されたのだが、「財務省による積極財政」はまったく適切に進められなかったのだ。一応は安倍内閣が誕生した2012年度においてこそ10兆円の補正予算が組まれたものの、2013年度以降は消費増税が繰り返される一方、十分な補正予算が組まれることなく、「財務省による積極財政」は十分に推進されることは結局無かったのである。

実際、安倍晋三氏は、総理退任後、自身が総理時代に行った財政政策は不十分であったとの「反省」の弁を、(筆者のテレビ番組にゲストでお呼びした折に)明確に述べている。

いわば、白鳥たる緩和的な財政金融政策という思想は「総理大臣」の権限をフル活用することで日銀において支配的な地位を得ることに成功したのだが、財務省においてはやはり「醜い異形の子」と扱われ続け、完全に「完封」されてしまったのである。

したがって、晩年の安倍晋三氏の闘争は、日銀ではなく「財務省との闘争」一本に絞られていた。

例えば2022年に殺害される直前の安倍氏は、自民党内の(白鳥たる)積極財政派をとりまとめ、財政政策における「アヒル」の象徴である「プライマリーバランス黒字化目標」を撤廃すべきだという主張を徹底的に展開していた。そして、プライマリーバランス黒字化目標の堅持を主張する自民党内の(アヒルたる)緊縮財政派をとりまとめた麻生太郎氏と激しく対立していた。それは、金融政策の分野において支配的地位に就くことに成功した「醜いアヒルの子」たる白鳥が、財政の分野においても支配的地位に就くことを目指した闘争だったのである。

追伸:「続き」の(その2)(その3)はコチラ
総括・アベノミクス(その2) ~マイナス金利解除が、今年の「骨太」で財政規律の強化を導く~
https://foomii.com/00178/20240329100918122251

総括・アベノミクス(その3) ~「腐敗」を糺すために、「不信」の目を公正に徹底すべし~
https://foomii.com/00178/20240329100918122251

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【藤井聡】総括・アベノミクス(その1)~「醜いアヒルの子」として生まれた積極財政金融論~への3件のコメント

  1. 死んだ子の齢を数えて何になるか より

    また、アベさんは財務省と戦っていたですか?
    財政出動は尻すぼみ、規制緩和はやりたい放題、刷った札は大企業公務員お友達ODAで縁故バラマキ、庶民には回らず当座に豚積。
    国会で平気でウソをつき議事録文書隠蔽改竄廃棄はアタリマエ
    戦った国民はヤジで逮捕
    戦った財務省下部地方局員は改竄責任自殺
    大体buy my ア●のとか言ってたのは
    本人ですよ

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      1. その2以降も書くつもりですか? より

        人事の季節も終わって
        安泰で羨ましい限りですよ。
        こっちはのミクそのお陰の大円安で生活費逼迫ですよ、
        大スポンサーでもback up
        してくれるのですか?

        返信

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        1. まさか岸一族が白鳥とでも? より

          日本を破壊したハイエナか●虫一族比喩が妥当でしょう

          返信

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