From 藤井聡@京都大学大学院教授
こんにちは。表現者クライテリオン、編集長の藤井聡です。
「60年償還ルールの撤廃」は、日本再生のために絶対必要である……この事を改めて、当方のメルマガ「表現者クライテリオン編集長日記」(https://foomii.com/00178)にて簡潔に論じました。大変重要な内容ですので、一般の皆さんにも公開致します。是非、ご一読下さい。
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今、自民党の中で、国債についての「60年償還ルール」を見直す動きが起きています。これは、「積極財政の推進」(=日本経済復活=日本再生)にとって極めて重要な意味を持つ動きです。この議論は、昨日初会合が開かれた防衛費増のための財源を考える自民党内の特命委員会で、具体的に始められました。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/284534?display=1
これについて、自民党の積極財政派の中核組織となっている「責任ある積極財政を考える議員連盟」の城内顧問と中村共同代表のインタビュー動画でも、解説されています。
https://www.youtube.com/watch?v=bVVz0tF8Sio&t=1507s
ついては、60年償還ルールに関わるインタビュー部分について、下記に改めて書き起こした内容、ご紹介したいと思います。
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藤井 朝日新聞の二〇二三年一月一二日の朝刊には、「国債返済ルール、見直し議論 自民、『60年償還』の廃止や延長想定」という記事が載りました。残念ながらこの記事は「これを見直してしまうと国債の信認が危ない」という論調ですが、どうやって60年償還ルールを撤廃したら「国債の信認」とやらが危なくなるのか言ってみろという話です。そもそもよその国には六十年償還ルールなんてないのに、信認とやらが失われている訳じゃないんですから。
中村 一般会計歳出に16兆円の債務償還費があり、60年償還ルールをやめたらこの16兆円はなくなりますが、この16兆円は「ワニの口」の上顎に入っています。下顎は一般会計税収ですから、16兆円少なくなると閉じていきます。今までの「ワニの口が開くから財政が厳しい」という説明ができなくなるということです。
藤井 読者の皆さんに手短に申し上げますと、60年償還ルールというのは国債を発行したら60年間は借り換えできるけれど、60年たてば借り換えしてはダメです、というルールです。そうなると、国債の償還は全て、全部「税金」などの収入で返さなければいけなくなる、ということになります。だから、岸田内閣はいつも、少子化行政や防衛行政の規模を拡大するには、増税しかない、なんて思っているわけです。彼らは、「国債は結局税金で返さないと行けないんだから、予算増やすなら、増税が絶対必要ダ~」なんて信じてる。で、なんでそんなこと信じてるのかというと、60年償還ルールがあると言う前提で考えているからです。
しかし、こんなルールを持ってるのは日本だけなんです。じゃぁ、外国はどうしてるのかというと、例えば欧州には「財政が黒字になれば借り換えずに国債の償還にあててもいい。だけど、財政が赤字なら借り換えを続ける」というルールがある。要するに、金が余っているなら国債を返していいけれど、余ってなけりゃ、借り換え続けりゃいい、というのが外国の一般的ルールなんです。
中村 借り換えし続けて何ら問題ないということですよね。
藤井 何ら問題ありません。だから、六十年償還ルールに積極財政議連の皆さんが着目し、これを国際標準の当たり前のものに変えましょう、という議論を始められたことは、日本が真っ当な財政政策によって〝復活〟を遂げる上で、極めて重要な展開となったと思います。
城内 他の先進国がやっていることを日本もやればいいだけで、それで信認が失われるなんてあり得ません。
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財務省や、岸田さんや宮沢さん、甘利さんといった財務省と結託している緊縮財政派の自民党の重鎮政治家達は、防衛費や少子化対策などの支出を(臨時的な補正予算でなく当初予算の形で)「安定的・定常的に増額」するには、「増税」するしかない、と思い込んでいます。
彼らがそう思っているのは、あるいは、財務省にそう「思い込まされている」のには、実質的に以下の二つのルールによって、政府の財政が縛られているからです。
一つが、プライマリーバランス(PB)規律。
もう一つが、国債の「60年償還ルール」なのです。
PB規律は、毎年毎年の財政において、国債を一円分も刷っちゃだめだよ、という規律です。今はそうなってないけど、2025年にはそういう状況に持っていって、それ以降、ずっとそうしましょう、というルールです。
これがあるから、岸田・宮沢・甘利ら議員は、何かある毎に増税だ増税だと言っているわけです。
で、もう一つのルールが60年償還ルールなのです。
これは結局、国債の借り換えは、永遠に出来ないぞ、というルールです。借り換え、というのはつまり、1億円10年間借りれば、返すときにまた10年間1億借りて返す、というもの。これを繰り返せば、理論的には半永久的にカネを借り続けることができるようになります。
ところが、60年償還ルールは、60年以上はそれはしちゃだめ、というルール。
そうなると結局、先の1億円の借金の例で言うなら、その60年後には、「税収」を1億円分増やしておかないといけない、という事になります。
これはつまり、「長期的には、国の借金は最終的に全部耳を揃えて返さなきゃならない」というルールです。
これは、一般の家計ならその通り。僕が家を建てるのに3000万円借りれば、僕が仕事を終えるまでに、しっかり稼いで全部返しておかないと、子供につけ回しする事になります。
つまり、家計は、「長期的な(金利払いも含めた累積的な)財政収支をゼロにすべきだ」というルールが暗黙の前提となっているのであり、この暗黙の前提を、政府に持ち込んだのが、「60年償還ルール」なのです。
言い換えるなら、60年償還ルールがあることで、政府は、「長期的な収入の合計値」と「支出の合計値」を同じにしなければならなくなるわけです。これは、実質的には、長期的には国債発行額を増やしちゃいかんのだ、つまり、国債発行を長期的な視点から事実上禁止するルールなのです。
だから、防衛費や少子化対策など、長期的に予算を増やす場合には、この60年償還ルールがあるため、その財源は国債ではダメなのだ、という発想がでてくるのです。
まとめると次の様になります。
PB規律は単年度の国債発行を禁ずるルールであり、
60年償還ルールは、国債発行を長期的視点から禁ずるルールであって、
いずれも国債発行を禁ずるルールなのです。
なお、PB規律は単年度ルールなのでより厳しいように見えますが、「金利払い」は規律の対象外となっているという点で、60年償還ルールよりも「緩い」ルールとなっています。
逆に言うと、60年償還ルールは、長期的な規律なのでPB規律よりも「緩い」規律に見えますが、金利払いも規律対象となるので、その意味においてPB規律よりも「厳しい」規律となっているのです。
要は財務省は、PB規律と60年償還ルールの双方のルールで、政府財政を縛り付け、支出が増えないように、増やすなら増税するような仕掛けを作り上げてきているのです。
ホンットに、悪い奴等ですねw
ちなみに、PB規律も60年償還ルールも、日本独自の特殊な規律。余所の国の政府にはそんな規律なんて一つもないのです。
だから、PB規律が仮に撤廃されても、60年償還ルールがあれば長期的に利払いも含めて国債発行が禁止されてしまうので、当初予算を増額することができない、という事になります。
だから、日本を救うには、PB規律だけでなく、60年償還ルールも撤廃しなければならないのです。
ホントに、日本は財務省の緊縮によって、自滅していく運命にあるわけです。
ようやくそこに気付いた政治家達が現れたのは、喜ばしいことです。
自民党での60年償還ルールを撤廃する議論が進められることを、逆に、それを守ろうとするクズ議員達をしっかりと撃破いただきますことを、心から祈念したいと思います。
追伸1:
『岸田総理の思惑とは裏腹に、政府が今回出した財政シミュレーションより防衛増税は不要という事が明らかにされています!』是非、下記よりご一読下さい。
https://foomii.com/00178/20230126192300104846
追伸2:1月21日は、西部邁先生の命日です……
『西部邁先生を偲んで ~2018年1月21日、あの大雪の日から5年がたちました~』
https://foomii.com/00178/20230121115052104626
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