コラム

2016年9月8日

【島倉原】グローバル化とガラパコス化

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家

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8月6日、日本の尖閣諸島周辺に中国の漁船約230隻が侵入した。
同日、中国の爆撃機が南シナ海を飛行するなど、挑発的な態度をとっている。

この先、中国の国際的立場はどうなっていくのか。それによって、日中関係はどうなるのか。

三橋貴明が、まずは現状を冷静に分析し、日本の強みと中国の弱点を炙り出し、日本が取るべき道を探っていく。

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「日中冷戦〜誰が日本を追い詰めたのか?」
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「ガラパゴス化」という表現があります。
国際標準からかけ離れた独自の方向で製品を高機能化し、国内で競争を繰り広げているうちに、いつしか世界市場を海外企業に制覇され、あげくの果てには国内市場でも海外企業との競争に負けてしまう・・・そんな日本の産業の有り様を、批判的、あるいは自虐的な文脈で評する際に、しばしば用いられる表現です。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%83%91%E3%82%B4%E3%82%B9%E5%8C%96-188972

この「ガラパゴス化」、そもそもは日本の携帯電話市場を形容するものとして登場した表現で(当初は必ずしもネガティブな意味合いではなかったようですが)、おなじみの「ガラケー(ガラパゴス携帯)」という呼称は、2000年代半ばまでは世界最先端とされていた日本製の携帯電話で、まさしくそうした現象が生じたことに由来しています。
例えば、「(iPhoneを開発した)アップルのような企業が日本から生まれないのはガラパゴス化が原因で、日本企業はもっとグローバル化するべきだ!!」といった具合に、グローバル化政策を推奨する議論の中に登場するのを、目にした方もおられるのではないでしょうか。

しかしながらこのガラパゴス化、そんなにダメなことなのでしょうか。
言語学者で慶應義塾大学名誉教授の鈴木孝夫氏が書かれた『日本の感性が世界を変える:言語生態学的文明論』という本は、その意味で面白いヒントを与えてくれるような気がします。
(ちなみに、施光恒さんの著書『英語化は愚民化』で参考文献として紹介されていたのを目にしたのが、私が同書を知ったきっかけです)
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鈴木氏によれば、一般の生物は、異なる環境に分布するうちに、それぞれの環境に順応して自らの体や性質を変化変形させます。
そして、その典型例として紹介されているのが、まさしく東太平洋のガラパゴス諸島に生息し、19世紀のイギリスの生物学者ダーウィンが唱えた進化論の典型例としても有名な「フィンチ」と呼ばれる小型鳥類です。

フィンチはもともと、南米大陸に生息していた同一種の小鳥でした。
ところが、ガラパゴスの島々に散らばる過程で、固い木の実の多い島に定着した種は太くて硬いくちばしを持つのに対し、柔らかい果実や虫などが豊富な島に定着した種は細身のくちばしを持つといったように、それぞれ独特の形状を持ち、一部では雑種の誕生も不可能になるほど、別々の生物種に分化しているようです。

これらが「ダーウィンフィンチ」と総称されるように、ガラパゴス諸島における生物の多様な分布が、ダーウィンの進化論にインスピレーションを与えたことは、有名な話です。
『日本の感性が世界を変える』ではこの他にも、もともとは日本の菊と同一種でありながら、巨大なサボテンのような姿でアフリカのキリマンジャロに生息する植物の話などが紹介されています。

他方で、人間は同じ生物でありながら、生息環境が異なっても体の形状はさほど違いません。
鈴木氏はこの違いを、「中間地帯としての文化」という概念を用いて説明しています。
すなわち、人間は自分の体を環境に直接さらすのではなく、環境と自分との間に「文化」という名の中間地帯を介在させ、この中間地帯を自然環境の変化に応じて変容させることで、体はそれほど変化することなく、様々な環境に順応してきたというのです。

「中間地帯としての文化」は、文化人類学における「広義の文化」とほぼ同一で、道具や衣服に加え、言語、風俗習慣、宗教なども含まれるとのことです。
したがって、企業が提供する製品やサービスなども、その一部と言えるでしょう。
鈴木氏自身は生物学者ではないものの、事例の裏付けもあり、言語を通じて世界の様々な文化の違いを研究した末にたどりついた見解として、傾聴に値するのではないかと思います。

ここで、人間社会におけるグローバル化現象について考えてみましょう。
言うまでもなく、現にあるグローバルな交流が可能なのは、人間の場合はフィンチと異なり、生物種としての同一性が保たれているからです。
ところが、そうした同一性は元来、各地域の自然環境に合わせて発達した、多様な文化の存在があってはじめて成立しているのです。

このことは、ガラパゴス化を否定し、グローバル化をひたすら賞賛する議論には、根本的な欠陥があることを示しています。
なぜなら、そうした議論を突き詰めていくと、各地域の自然環境に必ずしも適さない文化が既存の文化を駆逐することによって、環境を破壊して社会の存在基盤を脅かすか、その地域の人間自体が変化して生物種としての同一性が失われた結果としてグローバルな交流が不可能になるか、いずれにしてもグローバル化の前提そのものが崩壊してしまうからです。

してみると、現代に勝るとも劣らないほどグローバル化が実現していた二十世紀初頭に、「帝国主義」という名のグローバル化を推進した大国のエゴが衝突する形で第一次世界大戦が勃発して破壊的な結果が生じたのは、ある意味で自然の摂理だったのかもしれません。
むしろ、環境に適した地域特有の文化を発達させるガラパゴス化こそが、文字通り自然の摂理にも適った、人間特有の進化のあり方ということになるでしょう。
このあたりは、昨年12月の拙稿「グローバリズムはいつか来た道?」でお示しした議論にも通じるのではないでしょうか。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/12/03/shimakura-38/

とはいえ本稿は、国際的な交流や、さらに言えば現代のグローバル化の根底にある、西欧文明主導の近代化の歴史そのものを、いきなり全否定しようというものではありません。
さはさりながら、「元来自然の摂理に反するグローバル化には、自ずと歯止めをかけるべき限界がある(自然の摂理に従えば、むしろ逆行するガラパゴス化の方が望ましい)」という観点(節度)は、常に忘れるべきではないでしょう。

以上、「グローバル化とガラパゴス化」という現象を考えるにあたっての根本的な問題提起が、今回のテーマでした。
「では、ガラパゴス化と共に停滞している日本の現状をどうすべきなのか」というテーマについては、いずれ稿を改め、詳しく論じてみたいと思います。

〈島倉原からのお知らせ〉
最後に述べたテーマの端的な回答でもあるのですが、「積極財政に基づく『非グローバリズム=内需拡大路線』こそが繁栄と平和への道」というのは、かのケインズが『一般理論』で論じたことでもありました。
その積極財政の、現代日本における意義を論じた一冊です。
↓『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(二番目のURLはあらすじをまとめたブログ記事です)
http://amzn.to/1HF6UyO
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-94.html

8月後半以降のドル高トレンドの要因が、にわかに持ち上がったFRBの利上げムードとは別のところにあるのではないか、という考察です。
↓「ドル高トレンドをもたらした意外なイベント?」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-193.html

FRBは果たして今月利上げに踏み切るのか否か、昨年末の前回利上げ時の状況とも比較しながら考察しています。
↓「FRB9月利上げの可能性」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-192.html

前回の拙稿「返す必要のない「国の借金」」が総合金融情報サイト『マネーボイス』に掲載されました。一人でも多くの方々に共有、拡散いただければ幸いです。
http://www.mag2.com/p/money/21439

↓ツイッター/フェイスブックページ/ブログでも情報発信しています。こちらも是非ご活用ください。
https://twitter.com/sima9ra
https://www.facebook.com/shimakurahajime
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/

————発行者より—————

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はーやん様のレビュー: ★★★★★ 
「中国の本質が理解でき感謝です。」

特に印象に残ったのは以下3点となります。

1.グローバル経済の凄さ

確かに中国の経済規模は無視できないと思います。
冷戦前の1991年以前は鎖国していたので貧乏でしたが、
それ以降外資を導入して経済拡大したのはよく理解できました。

品質は悪いといわれていますが、新幹線も原子力も自国で
製造できるようになっているのは、経験の蓄積といえ、今後も脅威と思います。

2.中国共産党の意思決定の速さ

これは選挙で選ばれていないので民意を反映しないで
意思決定できる点がなるほどと思いました。
独裁国家であることを再認識しました。

3.尖閣の問題

日本として妥協してはいけないと思います。

領土問題は世界のどこでもありますが、
妥協すると相手の思うつぼっていうのは当たっていると思います。

いつ解決できるかはわかりませんが、
日本国として毅然とした対応が大切と感じます。

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【島倉原】グローバル化とガラパコス化への3件のコメント

  1. 名無し より

    >「元来自然の摂理に反するグローバル化には、自ずと歯止めをかけるべき限界がある(自然の摂理に従えば、むしろ逆行するガラパゴス化の方が望ましい)」という観点(節度)は、常に忘れるべきではないでしょう。要するに近代の超克。

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  2. 拓三 より

    ガラパゴス化を批判する御人に限って、個性だの他との差別化だの精神分裂症的言論を平気でそれもドヤ顔で語っているのをしばしば見受けられます。またそれを何の疑いもなく真に受けて聞いている御人も….。話は変わりますが、最近大阪で詐欺被害が増えてるそうな。くれぐれも詐欺には気をつけましょう。

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  3. 神奈川県skatou より

    意味が先か、形が先か。ふとそんな詮無いことを思い出しました、弱気モードです。生物にはそれぞれ自分の生息領域があり、原始的で単純な生物が世界のほとんどの場を占めて、その単純さでは展開できないニッチな場所を、すこし発達した別の形の生物がその領域を占める。さらに余った領域を別の生物が。特化することで特殊環境に強くなりその生活空間を占める。閉鎖的、つまり変化が乏しければよりその場に特化が進む、ガラパゴス島のようになる。移動(交流)が激しければ、移動(変化)に耐える汎用な生物、それはある程度現場への適応が不十分なことのバーターですが、それが流行る。べきで語るとすれば、文化の安定、精緻化が人の暮らしの充実だとすれば、移動制限、ガラパゴス化肯定になるでしょうし、移動や交流、変化が至上である「べき」とすれば、文化までもの均質化が「正義」だと主張するのでしょうか。(自由と平等って、いったい・・・)(われ思うゆえにわれあり、って厨二?)これは「である」の議論で対応できるのか。ものごとが複雑になった現代は、なかなか考えるのも大変に感じてしまいます。ただ、現代社会がストレス社会というのならば、どこか生命としての人間として、今のようなめまぐるしい世界は不適切「である」と言えそうです。認識力も理解力もその場的な限界はあるはずです。無理するなってことでしょうか。どこへすすむのか。シンギュラリティなんてめんどくさくて来ないかもしれませんね。

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