8月15日、韓国の文在寅大統領は日本の朝鮮統治からの〝解放〟
を記念する「光復節」式典で演説し、
安倍晋三首相との間で両国関係を未来志向的に発展させ、
地域の平和と繁栄のため協力することで一致していると語りました
。
そう語りながら、韓国政府は今年から8月14日を法定記念日の「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」(慰安婦記念日)とし、10日には「日本軍慰安婦問題研究所」を発足させて、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した平成27年12月の日韓合意を「即刻無効化すべき」と訴える大学教授を所長に起用しました。
慰安婦記念日の式典で文氏は、「(慰安婦問題は)外交交渉で解決するとは考えていない」と述べる一方、「問題が韓日間の外交紛争につながらないことを望む」と述べました。なんと虫のよすぎる物言いか。いったい韓国は日本との関係をどうしたいのか。
国交正常化のため昭和40年(1965)に当時の朴正煕政権との間に日韓基本条約(日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約)と請求権協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)を結んで以後、日韓間の過去の諸問題は清算され、わが国は韓国の発展に協力することで未来志向の関係が築けるだろうと思ってきたわけですが、半世紀を過ぎて痛感させられているのは日本側の期待は常に裏切られるということです。
今更ですが、日韓請求権協定には「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」との文言が明記され、協定の締約日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする旨の一文もあります。
1980年から88年まで大統領をつとめた全斗煥は、日本との過去についてこう語っていました。
「我々は国を失った民族の恥辱をめぐり、日本の帝国主義を責めるべきではなく、当時の情勢、国内的な団結、国力の弱さなど、我々自らの責任を厳しく自責する姿勢が必要である」(1981年8月15日「光復節」記念式典での演説)
全斗煥の次に大統領に就いた盧泰愚は、来日した1990年(平成2)5月25日、韓国大統領として初めて日本の国会で演説し、次のように述べました。
「われわれは、過去において国家を守ることができなかった自らを反省するのみであり、過去を振り返って誰かをとがめたり恨んだりはしません」
盧泰愚のあと韓国民主化後初の文民出身大統領となった金泳三は、国交正常化30周年の日本人記者団との会見で、国交交正常化は軍事政権による政権維持のためだったと否定的な見解を述べ、正常化後の日韓協力関係についても「日本も儲けたではないか」と、前向きな評価はしませんでした。
金氏はそれまでの軍事政権を否定する「歴史清算」のなかで日本非難を重ね続け、国立中央博物館として使用していた旧朝鮮総督府庁舎を解体、撤去するなど日本統治の痕跡を消し去る事業を進め、竹島(島根県隠岐の島町)に船舶の接岸施設を建設し、韓国軍を常駐させて実効支配を強めました。
金泳三のあと大統領に就いたのが金大中です。就任後の1998年(平成10)10月に来日、当時の小渕恵三首相との間で「日韓共同宣言」を発表しました。それには両氏の署名とともにこう記されています。
「小渕総理大臣は、今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた。」
「金大中大統領は、かかる小渕総理大臣の歴史認識の表明を真摯に受けとめ、これを評価すると同時に、両国が過去の不幸な歴史を乗り越えて和解と善隣友好協力に基づいた未来志向的な関係を発展させるためにお互いに努力することが時代の要請である旨表明した。」
この共同宣言を受けて金大統領は、「これで日韓の過去は清算された。韓国が今後、外交問題として過去を問うことはない」と明言し、「謝罪は一度でいい」とも語りました。
しかし、金大中自身「知日」であることを誇り、日本もそれに期待して譲歩を重ねながら、のちに歴史教科書問題が起きると教科書記述の訂正を外交問題として日本に要求するなど前言を翻し、国連人権委員会の会合でも慰安婦問題を取り上げるなど日本非難が止むことはありませんでした。「過去は清算」されず、無限ループのごとく、日本にとって同じ失敗が繰り返されました。
金大中の次に登場してきたのが盧武鉉です。盧氏は、日本統治が終わった後の1946年生まれの「解放世代」初の大統領でした。盧も就任当初は日韓関係の「未来志向」を表明し、2003年(平成15)2月の就任式では、訪韓した小泉純一郎首相(当時)に青瓦台玄関に設置した真新しい来館者名簿の筆頭に署名を求めるなど気配りをみせ、会談でも小泉首相の同年1月の靖国神社参拝への言及を避け、スポーツ振興や自由貿易協定(FTA)などの前向きな話題に終始しましたが、程なく強硬な反日姿勢に転じます。転じたというよりそれが本性だったのでしょうが…。
その後も李明博、朴槿恵、文在寅と、大統領が代わる度に「未来志向」が表明され、反故にされ、この夏もそれを味わわされたということです。歴代の韓国大統領が何を言ってきたかを振り返っても虚しくなるだけです。彼らにはその言を履行する気はない。
同時に、我が国には「日本はまだ謝罪と補償が足りない」と訴える「識者」が大勢いて、後押しする新聞が沢山あります。
さらに相互理解のために、民主的に粘り強く話し合うことが大切だ、と。
ここで山本夏彦翁が平成10年に書いた「問答は無用である」というコラムを御紹介します。これまでの堅苦しい説明的な文章は、これを読んでいただくための前振りです(技のない書き手でスミマセン)。
〈「話しあい」というものはそもそも出来ないものだ。それを出来るように言いふらして信じさせたのは教育で、教育には強い力があると言うと、どれどれ異なことを言うと乗り出して聞いてくれる人と、てんから聞いてくれない人にヒトはふた派に分かれる。
この十年南京に大虐殺があったという派となかったという派が争っている。遅れて朝鮮人の慰安婦の強制連行があったという派となかったという派が同じく争っている。(略)
南京には従軍記者特派員文士画家が三百人近くいて記者は一番乗りを争っていた。南京の人口は二十万人である。三十万殺せるわけはない。十万で累々たる死屍に足をとられたはずなのに誰もとられていない。十年前なら従軍記者の過半は生きている。新聞は連日大座談会でも開けばいいのに開かなかった。新聞は大虐殺はあった派なのである。
慰安婦の強制連行もむろん私はなかった派である。あるはずがない、というのは昔から女衒(ぜげん)といって女を売買する商売人がいて、それにまかせて日本軍は売笑婦の現地調達をしなかった。別に軍が道徳的であったわけではない。「民」にまかせる発想しかなかった。貧しい女たちは身を売って大金をかせいで親もとに送った。孝である。
そのもと慰安婦が三十年以上黙っていて今ごろ言いだしたのは、金が目あてである。わが国の閣僚が強制はあったような発言をしたからである。一人ならず何人も謝罪して言質をとられている。
ブッシュ、クリントン両大統領も日本人記者に日本人に詫びる気はないかと問われ、毛頭ないと答えている。原爆のことと察したからである。もし謝罪したら補償問題がおこるかもしれない。アメリカ人に不利なことを大統領は言わない。ブッシュもクリントンも健康である。
自分の国の不利を招かないためにはサギをカラスというのが健康なのである。いわんやありもしない強制連行をあったという閣僚は日本人ではない。(略)
日本はアメリカとは昭和二十六年、フィリッピンとは同三十二年、インドネシアとは三十三年、以下国交回復と賠償を全部果たしている。韓国とはながい折衝の末昭和四十年「日韓基本条約」で日韓の問題は「これをもって最終の解決とする」と大金を払って合意した。
もし蒸し返されたらそのつどこの条約をもちだして一蹴すればいいのにわが閣僚も新聞もしない。それどころか陛下に謝罪の言葉がなかったと不服そうだから、若い読者にはこの条約の存在さえ知らないものがある。(略)
論より証拠というけれど、この世は証拠より論なのである。いかなる証拠をあげても大虐殺なかった派はあった派を降参させることはできない。話しあいはできないのである。(後略)〉(『文藝春秋』平成10年10月号)
さて、夏彦翁がこれを書いてから20年経ちましたが、私たちが「国家」としての健康を取り戻すために必要なことは何か。「問答は無用」というのは、実は民主主義の否定ではないのです。
これまた先哲の言葉を借りますが、福田恆存が〈信頼の鍋蓋で不満の臭気を押へる事が話合ひなら、話合ひこそ民主主義の敵である。元来、民主主義とは話合ひによつては片の附かぬ対立を処理する方法の一つなのである〉、〈民主主義が相互理解の為の話合ひだといふ誤解は、今や善意の誤解の域を脱して、頗る現代的な偽善と感傷の風を帯びて来てゐる〉と書いたのは半世紀も前でした(「偽善と感傷の国」『文藝春秋』昭和43年8月号)。
具体例として日韓問題の経緯を俎上に載せましたが、福田恆存のいう「偽善と感傷の国」というのは、すっかり我が国の常態ではないでしょうか。この払拭が平成の次の御代に生きる日本人の課題だと思います。
〈上島嘉郎からのお知らせ〉
●慰安婦問題、徴用工問題、日韓併合、竹島…日本人としてこれだけは知っておきたい
『韓国には言うべきことをキッチリ言おう!』(ワニブックスPLUS新書)
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●大東亜戦争は無謀な戦争だったのか。定説や既成概念とは異なる発想、視点から再考する
『優位戦思考に学ぶ―大東亜戦争「失敗の本質」』(PHP研究所)
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●日本文化チャンネル桜【Front Japan 桜】に出演しました。
(8月3日〈LGBT 多様性を求める人々の不寛容/日本復活への道 技術!投資!/史上最大の予算、財務省との攻防は?〉)
https://www.youtube.com/watch?v=GXB9OBwJaaA
(8月14日〈習近平の黄昏/合理主義だけで歴史は読み解けない/ 党綱領に謳う「改憲」になぜ異を唱える?/呆れるばかりの韓国「慰安婦の日」〉)
https://www.youtube.com/watch?v=e9wG4OXnDhA
●大人のための WEB Magazine「MOC」(Moment Of Choice)のインタビュー番組に出演しました。テーマは「日韓問題」です。
https://moc.style/world/movie-program-kamijima-01/
【上島嘉郎】偽善と感傷の国への3件のコメント
2018年8月24日 12:01 PM
旗は体を表す
kor: 太極旗
太極すなわち混沌 なんでもあり
jap: 日章旗
日章すなわち アカ 陰陽五行では とにかく炎上
日本には主権が存在しない よって 国家ではない
しかるに国民も存在せず棲息しているのは ほぼ 地球市民という奴隷
地球市民の今上すらkorに 謝罪を表明なさりたいとか、、、
お気は確かか??
軽井沢でテニスに興じられるほど お元気なら
憲法違反などなさらず
崩御なさるまで 祭祀をお続けになる べき かと。。。
偽善と感傷 これに極まれり ♪
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2018年8月25日 9:44 AM
もう韓国に騙されるのは止めてほしいです。韓国に騙される人って、表面上の韓国人の綺麗事の言葉や韓国人の表面上だけの礼儀の良さや(本当は礼儀もマナーも悪い)韓国人の二面性に凄く騙されてると思います。上島さんが上げたもう何十年も言葉では未来志向といいながら過去の事を蒸し返してきたり、最近は日本海を東海にとか次々と反日ネタを持ってくる有様。そういう韓国に
粘り強い話し合いとかもううんざりです、福田恒存のいうように
話し合いが民主主義だとか相互理解になるというのは全くの持って偽善だと思います。そういう偽善さが日本国家を弱体化させます。
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2019年7月18日 10:55 AM
初めてコメントいたします。
とても興味深く今までのブログを読ませていただきました。
ようやく韓国との関係も、正常なものになりそうですね。
先人たちが積み重ねてきてくれた大国日本を眠りから覚まさせなくてはなりませんね。
道を重んじる世界でも少ない国の1つとして、この先を生きる世代に誇れる国にしていきたいですね。
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