From 佐藤健志
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日本が途上国支援を続けられる訳
消費増税、高齢化、千兆円の政府債務
借金大国の日本が世界貢献できる訳とは・・・
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現在の世界においては、民主主義が「望ましい政治のあり方」の代表格として確立されています。
よって民意も、「非常に価値のあるもの」「従わねばならないもの」と位置づけられるにいたりました。
有名なラテン語のフレーズにならえば、「民衆の声は神の声」(VOX POPULI, VOX DEI)。
朝日新聞のコラム「天声人語」も、じつはこれに由来したネーミングではないかという説があります。
「天声人語」、中国の古典に登場する一節「天に声あり、人をして語らしむ」にちなんだ名称とされるものの、当の古典が何かは不明なのだとか。
また朝日新聞社は、かつて「ASAHI EVENING NEWS」という英字紙も出していましたが、そこには「VOX POPULI, VOX DEI」のタイトルで、天声人語の翻訳が掲載されていたそうです。
それはさておき・・・
見過ごせないのは、神の声であろうとなかろうと、民意が一貫性や整合性を持つとは限らないこと。
ずばり言ってしまえば、ツジツマが合っていない場合も多いのです。
にもかかわらず、民主主義が望ましい政治の代表格であるかぎり、「民意には非常に価値がある」「民意には従わねばならない」という位置付けは揺るがない。
こうなると、話は厄介になります。
関連してご紹介したいのが、最近行われた三つの世論調査。
順番に、
1)FNN世論調査(7月16〜17日実施。全国の有権者1000人が回答)
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160718-00000776-fnn-pol
2)日本テレビ世論調査(7月15〜17日実施。全国の有権者1448人が対象、回答者717人)
http://www.ntv.co.jp/yoron/201607/index.html
3)時事通信世論調査(7月15〜18日実施。全国の成年男女2000人が対象、有効回収率64.8%)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160722-00000067-jij-pol
です。
さて、お立ち会い。
FNN世論調査では、安倍総理の指導力について、61.1%の人が「評価する」と答えました。
「評価しない」は28.5%。
ただし現政権の景気・経済対策となると、「評価する」と答えた人は32.0%にとどまり、56.2%が「評価しない」と答えています。
経済の現状に不満を持っている人が多いわけですね。
ところが。
2019年10月の消費税10%引き上げについては、53.6%が「賛成」と答えており、「反対」の40.8%をかなり上回っているのです!
いわゆるアベノミクスが、「道半ば」の状態にとどまっている(=予想、ないし期待されたような成果を挙げていない)のは、プライマリーバランスにこだわった緊縮財政志向と並んで、2014年に行われた消費税8%引き上げの影響が大きい。
このまま10%に上げたら最後、よほど思い切った積極財政でもやらないかぎり、日本経済がいっそう深刻な打撃を受けるのは目に見えています。
ついでに積極財政自体も、効果が半減してしまうのは疑いえない。
経済のさらなる悪化を防ぐだけで、活性化させるまでにはいたらないのではないかということです。
すなわち経済の現状に不満を持っているのであれば、消費税10%引き上げには反対しなければならないはず。
けれども実際には、引き上げ賛成派のほうが多い。
裏を返せば、
「経済の活性化を望みつつ、経済を落ち込ませたがる」
というのが、わが国の神の声・・・もとへ民意だと判断せざるをえないのです。
しかも。
日本テレビ世論調査を見ると、現政権が10兆円を超える(であろう)事業規模の経済対策を行うことについては、52.2%が「評価しない」と答えました。
「評価する」は24.0%ですから、倍以上の開きがあります。
くだんの経済対策において、リニア中央新幹線の建設工事前倒しをはじめ、大規模な公共事業を行うことについても、「評価しない」と答えた者が55.5%!
「評価する」は28.9%にすぎませんでした。
アベノミクスを加速させる方針に関しては、支持が48.4%、不支持が40.9%となっているものの、ここでも
「経済の活性化を望みつつ、その決め手である積極財政には反対する」
というのが、わが国の民意となるでしょう。
そして。
時事通信の世論調査では、なんと81.9%もの回答者が、経済対策の財源としての赤字国債の発行を否定的にとらえています。
「経済対策は必要だが赤字国債をなるべく発行せず行うべきだ」
と答えた人が63.8%。
「赤字国債を発行するくらいなら経済対策はすべきでない」
と答えた人も18.1%にのぼりました。
「赤字国債を大量に発行してでも経済対策を打つべきだ」
との回答は、わずか8.5%です。
三つの世論調査に表れた民意を、あらためて列挙すれば以下の通り。
1)経済の現状には不満である!
2)ただし積極財政には反対だ!
3)公共事業にカネを使うな!
4)経済対策のためでも、赤字国債の発行は良くない!
5)消費税引き上げには賛成だ!
要約すれば、
「経済の活性化につながることはやらず、経済をさらに悪くするのにつながることをやって、経済を良くしろ!」
ツジツマも何もあったものではない。
そんなこと、どうやってできるのでしょうか?
ちなみに。
「民衆の声は神の声」、今では肯定的な意味で使われるのが当たり前ながら、もともとは違っていました。
このフレーズの用例として確認される最古のものは、西暦800年、イングランド出身の神学者アルクィン(出生地がヨークだったので、「アルクィン・オブ・ヨーク」とも呼ばれます)が、フランク王国のカール大帝に送った手紙。
アルクィンは782年から790年にかけて、カール大帝に進講した経歴を持っており、以後も有力な助言者でありつづけたのですが、そこにはこう書かれていたと伝えられます。
「民衆の声は神の声などと言い張る者たちに、お耳を貸されてはなりませぬ。民衆とはつねに騒々しく、狂気じみたものだからでございます」
http://www.historynet.com/what-is-the-history-of-vox-populi-vox-dei.htm
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)8月20日(土)、「表現者シンポジウム」の第一部に登壇します。
・時間 19:00〜21:30(18:30開場)
(※)これはシンポジウム全体の時間です。
・場所 四谷区民ホール
・会費 2000円
参加ご希望の方は、郵送ないしファックスで下記宛にお申し込み下さい。
西部邁事務所
〒157-0072 東京都世田谷区祖師谷3-17-22-303
03-5490-7576
お申し込みの際は、お名前、ご住所、電話番号、参加人数を記入していただきたいとのことです。
2)ツジツマの合わないわが国は、どのような末路をたどるのか? こちらをぜひお読みください。
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3)いわゆる保守派の間に蔓延する、ツジツマの欠如についてはこちらを。
『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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4)日本の戦後史に見られる、一貫性や整合性のなさについてはこちらを。
『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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5)「だからこそ『民意はつねに正しい』という発想を許容してはならないのである。(中略)しかも民衆の横暴は、君主の横暴と比べても、社会に大きなダメージを与える」(128ページ)
おかげさまで5刷となりました!
『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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6)トマス・ペインによれば、約三千年前、旧約聖書の時代から、神は民衆の態度に怒ることがあったとか。やはり「民衆の声は神の声」とは言えないようです。
『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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7)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966
ーーー発行者よりーーー
日本が途上国支援を続けられる訳
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