From 佐藤健志
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【耳寄り情報】
「日本が国債破綻しない24の理由 ~国の借金問題という<嘘>はなぜ生まれたか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php
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今から226年前、1790年のこと。
フランス革命のなりゆきを観察していたエドマンド・バークは、同国が革命によって急速に貧困化していると判断、「フランス革命の省察」にこう記しました。
豊かさを捨て去る前に、自分たちが追い求める自由が本物かどうか、よく確かめねばならない。(中略)私の考えるところ、真の自由は英知と正義を伴うだけでなく、繁栄へと導いてくれるはずのものなのである。
(「新訳 フランス革命の省察」161ページ)
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これは重要なポイントです。
困窮した国民は、自分たちを豊かにしてくれそうだと思ったら、どんな政治体制でも支持しかねません。
全体主義であろうが、独裁であろうが、です。
自分たちが自由を追い求めていたことなど、そのころには忘れられているでしょう。
裏を返せば、そういった望ましくない政治体制の実現を促進するにはどうしたらいいか?
お分かりですね。
高邁な理想を唱えつつ、国民を豊かにする方法論については提示しなければよろしい。
すると国民は、「しょせん理想では飯が食えない」とあきらめます。
政治的な理想の追求と、経済的な繁栄の達成とは、本来必ずしも矛盾しないにもかかわらず、まったくの二者択一であるかのように思い詰めるわけですね。
ならば「繁栄さえ与えてくれたら、あとは何でもいい」という話になるのは必定でしょう。
しかるに。
戦後日本の野党(および、野党を支持する左翼・リベラル)の振る舞いは、上記の点に照らして考えるとき、何とも興味深いものがあります。
彼らは絶対平和主義という、まことに高邁、ないし非現実的なまでに観念的な理想を掲げ、与党(とくにその中核たる自民党)の政治を、望ましくないものとして否定しようとしました。
けれども国民を豊かにする方法論についてはどうか?
そうです。
提示してこなかったのです!
当然と言えば当然の話。
1月27日の記事「野党の経済政策スタンス」でも述べたとおり、わが国の野党は、「小さな政府」志向が強いうえ、とにかくインフレが嫌いと来る。
緊縮財政賛成で、ついでにデフレ容認なのです。
繁栄への道筋を提示できるはずはない。
逆に自民党は、その道筋の提示に努めてきましたし、1990年代はじめぐらいまでは、本当に繁栄を達成しました。
ついでに同党の政治は、問題が皆無かどうかはともかく、少なくともこれまでのところ、全体主義や独裁とは呼べません。
どちらが支持されるかは言うまでもないでしょう。
野党、ないし左翼・リベラルは、口では自民党政治を批判しつつ、繁栄にいたる方法論を提示しないことで、同党に塩を送りまくっていたのです。
1955年の結党いらい、自民党が一部の例外的な時期を除いて、一貫して政権を担ってきたのにも、相応の理由があるのですよ。
けれども現在の日本では、ほかならぬ自民党政治のもと、国民の貧困化が進んでいる。
民主主義を健全に機能させつづけるうえでも、決して良い話ではありませんが、左翼・リベラルはこれにどう応じているか?
あるツイートをご紹介しましょう。
政治学者の山口二郎さんが、1月14日に送信したものです。
昨日学部ゼミで、NHK新映像の世紀第3集「時代は独裁者を求めた」を見た。ヒトラーが独裁政権を作る一方で公共投資で雇用を増やし、工場を視察した時労働者が総出でハイルヒトラーを叫ぶシーンを見た。日本でこれから起こることを暗示しているのかもしれないと、陰鬱な気分になった。
https://twitter.com/260yamaguchi/status/687549346850586627
ここから判断するかぎり、山口さんはわが国の今後について、以下のように想像しているのでしょう。
1)ナチスのような独裁政権が誕生する。
2)その独裁政権が公共投資を大々的に展開し、経済を活性化させる。
3)よって、国民は独裁政権を支持する。
ただし現政権は財政均衡にこだわったあげく、公共投資を抑制しつづけていますので、このシナリオとは正反対の方向に進んでいます。
おまけにわが国では「公共投資はすでにやりすぎ」という通念が強い。
現政権が退陣した後であろうと、山口さんの懸念するような事態が現実化するには、よほどの変化が生じなければなりません。
とはいえ、それは脇に置きます。
国民の貧困化に歯止めがかからない場合、いずれは「大々的な公共投資による繁栄の達成」を謳う人物がカリスマ的な支持を得たあげく、独裁的な権力を握る可能性も、たしかに存在するからです。
だとしても、それを阻止するにはどうすればいいのか?
明々白々ではありませんか。
そんな独裁政権が誕生してしまう前に、自由民主主義のもとで公共投資を行い、経済を活性化させるのですよ!
一体いつから公共投資は、独裁政権の専売特許になったのでしょうか。
だいたい「あらゆる独裁者はヒトラーの真似をするはずだ」と決めてかかるのならいざ知らず、独裁政権であれば公共投資に力を入れると判断する根拠も存在しません。
真面目な話、野党が「積極財政による繁栄回復」を旗印に共闘することができれば、自民一強と呼ばれる現状をひっくり返し、政権交代を達成することだって不可能ではないかも知れないのです。
けれども気になるのは、山口さんが「陰鬱な気分になった」とも書いていること。
かくもハッキリした対処法が存在するにもかかわらず、陰鬱な気分に陥るとは、何を意味しているのでしょう。
・・・論理的に言って、答えは一つしかありません。
野党にそんなことができると、山口さんは思っていないのです。
これも、たしかに分かる話ではある。
口では自民党政治を批判しつつ、繁栄にいたる方法論を提示しないことで、同党に塩を送りまくってきたのが、野党、および左翼・リベラルの偽らざる実情ですからね。
けれども「貧困化を背景とする独裁政権の誕生」というシナリオが見えていながら、積極財政による公共投資の展開を説こうとしないのは、当の独裁政権誕生をひそかに支援するにひとしい。
山口さんにはぜひ、陰鬱な気分(つまり敗北主義)になどひたっていないで、野党が経済政策をめぐるスタンスを根本から改めるよう、論陣を張っていただきたいと思います。
むろん、野党、ないし左翼・リベラルにすべてを丸投げするわけにはゆきません。
与党、あるいは保守派も、「国民の貧困化を放置するのは、未来の独裁政権誕生をひそかに支援すること」だと肝に銘じるべきです。
さもなければ、われわれは遅かれ早かれ、エドマンド・バークからこう訊ねられることになるでしょう。
ひとつ聞かせてくれたまえ。諸君はいったいどうやって、偉大な祖国をあっという間に台なしにすることができたのだ?
(「新訳 フランス革命の省察」、279ページ)
ではでは♪
<佐藤健志からのお知らせ>
1)2月末に徳間書店から新著が出ます。
「戦後脱却で、日本は『右傾化』して属国化する」
ご期待下さい!
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3)戦後日本における「保守」と「左翼」の関係をめぐる真実については、この本も是非どうぞ。
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4)山口二郎さんの憂鬱の背景には、日本の近代化そのものをめぐる問題があります。この本ではそれを論じました。
「夢見られた近代」(NTT出版)
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5)トマス・ペインによれば、独立達成に向けた努力を怠った場合、アメリカでも「人々の不満を巧みにとらえ、絶望のあまりヤケになった連中をまとめあげることで、政治権力を掌握してしまう者」が出現しかねなかったとのことです。
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6)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
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【耳寄り情報】
『三橋さんは過激な発言をする人だと思っていましたが…』
By 服部
“私は今年退職をして、世間から離れて行く様に感じていました。
そんな時、月刊三橋をインターネットで見つけ、三橋先生の
ご意見を聞くようになり、世の流れに戻る感じがしました。
月刊三橋を聞き始めて3か月になります。
最初は過激な発言をする人だなあと思って聞いていましたが、
今回の国債破綻しない24の理由を聞いて、
今まで何回も聞いていた内容が、私のように頭の悪い者でも
やっと理解出来るようになりました。有り難うございます。
これからの日本の為にも益々頑張って頂きたいと思います。”
服部さんが、国の借金問題について
理解できた秘密とは・・・▼▼
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php