日本経済

2016年2月23日

【藤井聡】「マイナス金利」の現状を、如何にすれば活用できるのか?

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授 

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「日本が国債破綻しない24の理由 ~国の借金問題という<嘘>はなぜ生まれたか?」
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php

p.1 日本は「国の借金」でなぜ破綻しないのか?
p.13 ”国民1人当たり817万円の借金”を広める財務省の記者クラブ
p.20 日本国民は債務者ではない、「債権者」である
p.36 かつて、本格的なインフレーションが日本を襲った時代があった
p.42 “日本は公共投資のやり過ぎで国の借金が膨らんだ”は全くの嘘
p.55 グローバリストから財務省まで、消費税増税を訴える人々の思惑

http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php

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1月末、日本銀行は、「マイナス金利政策」を断行しました。

これを受けて、株価は暴落、国債と円は暴騰しました。

もちろん、この株と国債と円の動きは、世界経済が不安定な状況であることを反映したものではありますが、その直接の引き金がゼロ金利の決定であることは、火を見るよりも明らかです。

株価、国債、為替の三つは、マイナス金利政策が決定された1月末日から急激な変化を見せたのですから、否定しようがありません。

こうした状況を受け、マイナス金利、については様々な批判がメディア上で様々な論者によって指摘されているところですが、その導入を決定した日銀の黒田総裁は、「政策効果は表れている」と、肯定的な評価を表明しています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL22HO0_S6A220C1000000/

日銀総裁がマイナス金利政策に肯定的な評価を下している以上、この状況は当面継続するものと判断する他ありません。

ついてはここでは、この状況の中で、日本経済を救うために何が求められているのか――について、改めて考えてみたいと思います。

まず、結論から申し上げれば、今、我々が行うべき対策は、以下の取り組みです。

――――――――――――――――――――――――――――――
(1)ゼロ金利にまで暴落している長期金利の状況を「好機」と捉え、政府が大規模に長期国債を発行し、大量の資金を調達する。

(2)そうして調達した資金を元手として、合理的かつ徹底的な景気刺激策を検討し、計画を立て、その計画にそって大規模な景気刺激策を断行していく。
――――――――――――――――――――――――――――――

これが断行されれば、行き場を失った大量の「マネー」が、日本の実態経済に「投資」という形で流入します(今はそれは、株式市場から国債市場に流入し、株安と、国債と円の高騰を導いています)。

結果、国債と円の高騰が緩和され、それを通して株価も回復していくことになります。そして同時に、内需は拡大し、国民所得は回復し、国内消費も回復していくことになります。

逆に言うのなら、今、こうした政府の財政出動を考えないまま、マイナス金利をはじめとした金融政策だけでデフレ脱却を図ろうとする取り組みは、もう限界(!)に達しているのです。これ以上、「財政政策をしない」という状況を続けておくことは、こと、マイナス金利政策を断行した今となっては極めて「リスク」が高いものと危惧されるのです。

・・・

そもそも「マイナス金利」というものは、「カネを貸している側」にとっては「マイナス」(=損をする)のものですが、「カネを借りている側」にとっては「プラス」(=得をする)のもの。

カネを貸しても、返ってくる時にはそれが目減りするのですから「損」をします。でもカネを借りれば、返す時には利息を払わなくて済むどころか、借りた分よりも少ない額しか返さなくても良いのですから「得」をする、という次第です。

そして今、マイナス金利で誰が一番得をしているのかと言えば、政府なのです。そもそも、国内で最も「カネを貸りている主体」は、誰あろう政府なわけですから、マイナス金利が政府に最大の利益をもたらすのも当然です。

実際、下記報道によれば、「大量にカネを貸している」銀行と日銀は共に0.7兆円損をしている一方、「大量にカネを借りている政府」は1.9兆円得をすることとなります。
http://jp.reuters.com/article/minusir-benefit-idJPKCN0VS0E4?sp=true

ここで日銀と政府を一体的に考えた一般政府部門で言うなら、1.9兆円から0.7兆円を差し引いた1.2兆円、政府が得をしていることとになります。

すなわち、現状のマイナス金利政策は、日銀も含めた一般政府で言うなら1.2兆円もの大量の資金を、政府は民間部門から「巻き上げている」のです。

もしもこのままこの1.2兆円を政府が支出しなければ、単なる「緊縮財政」を行っていることになります。これは要するに、1.2兆円分の「増税」を図った効果と同様の効果をもたらします。

だから少なくとも、この1.2兆円を支出しなければ、この「1.2兆円の資金の巻き上げ」は、確実に日本経済にブレーキをかけてしまいます。だから少なくとも、景気にブレーキをかけないためにも、最低、1.2兆円の財政を支出することが最低限求められているのです。

ただし、この1.2兆円を支出したとしても、景気刺激効果は限られています(均衡財政乗数論に基づくなら、1.2兆円を支出しても、景気刺激効果は1.2兆円にしかなりません)。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2016/01/05/fujii-177/

というより、この1.2兆円の支出は、「マイナス金利のマイナス効果を除去する」ために求められているというに過ぎず、「マイナス金利によってプラス効果を生み出そう」とするものではありません。

繰り返しますが、マイナス金利は、カネを借りる側にとって「得」をする取り組みです。

そして、誰かがこのマイナス金利の状況を活用して、大量にカネを借り、カネを使えば、日本の景気は回復し、株安、円高、国債高の状況を終わらせることが出来るのですが――このデフレの状況では、民間主体は、どれだけ金利が安かろうがマイナスであろうが、リスクを冒してまでカネを借りて投資をしよう、ということには容易くはなりません。

だから結局は、政府がこのマイナス金利を「好機」と捉えて大量にカネを借りて、大量に支出していく他に、この状況を打開する方法は存在していないのです!

というより、せっかく、日銀がマイナス金利を断行して、空前の低金利の状況をこしらえてくれているのに、誰もカネを借りて使わなければ、「景気対策として何の意味もない」という事になってしまうではありませんか。

だからこそ、日銀のマイナス金利政策を「成功」させるためにも、政府による大規模な景気対策が、絶対的に求められているのです!

・・・・

もちろん、それだけの資金を調達しても、それを支出する先があまり意義のないものであるなら、その国益増進効果は限定的なものとなってしまいます。

だからこそ、その支出内容は、合理的なものでなければなりません。

その意味でも、国土強靭化、地方創生、成長戦略といった安倍内閣が掲げる基本政策を踏まえた「大規模な財政政策」を立案することが何よりも求められています。

とりわけ、今日の状況では「カネを借りて投資をしたい」と考えている「民間主体」に、政府がこの超低金利の状況を活用して安い金利、あるいは実質的な「ゼロ金利」で資金を貸し出してやり、長期的に返却してもらう、というカネの使い方が考えられます。

例えば、JR東海については、名古屋大阪間の区間は金利さえ誰かに負担してもらえるのなら、同時開業も含めた前倒し開業があり得るのではないか、としばしば指摘されています。

そうである以上、名古屋大阪間のリニア開業という大阪、関西の政財界の悲願を、このマイナス金利状況で創出された状況を活用して、成就させることは決して不可能ではないでしょう。

あるいは、昨今にわかに注目を集めている「整備新幹線の第二期プラン」を考える上でも、このゼロ金利状況は大いに活用できます。

例えば、このゼロ金利状況を使って、次のようなアプローチで、整備新幹線の財源を創出する、という方法が考えられます。少々専門的にすぎますが、重要な議論ですので、細かく記載しておきたいと思います。

1)現在政府が保有している新幹線路線に関する何らかの「ビジネス」をJRと運輸機構と共に成立させる(例えば、JRが新幹線を買い取るビジネス、JRに新幹線を30年間“レンタル”するというビジネス、等)。

2)JRが新幹線を使ったビジネスのための資金(買い取り料あるいはレンタル料の一括払い料金)を、政府がゼロ金利(あるいは超低金利)で貸し出す(ただし、政府は、その資金を、国債(これは要するに「財投債」ということになります)を発行する形でゼロ金利あるいは超低金利で調達する)。

3)政府からJRに貸し出された資金が、「運輸機構」にJRから支払われる形で払い込まれる。

4)運輸機構は、こうして手に入れた資金を元手として、(これにこれまでのスキームで調達した資金を加えて)新幹線の新規路線を作っていく。

5)JRは政府に、毎年借金を返済していく。

このスキームでは、あらゆる人々が利益を得ることができます。

・日本国民:新幹線が整備されると同時に、内需が拡大し、デフレ不況が緩和・脱却される。

・財務省:一時的に国債発行額が伸びるが、その返済は全てJRが負担するため、長期的視点から言って、財政悪化の懸念はない(しかも、ここで発行する国債は「税金での返済」とは無縁の国債であることから、プライマリーバランスの計算対象外にできます!)。

・JR:ゼロ金利で資金を調達でき、かつ、新幹線を活用したビジネスを展開することが可能となる。しかも、JRはこの借金返済によって、毎年得られる過剰利益を圧縮でき[ると共に、資産売却ビジネスであるなら、資産を所有することで減価償却が計上可能となり]効果的な節税が可能となる。さらに、新規路線建設を通して並行在来線が分離され、営業が質的に改善される。

いずれにせよ、この

「ビッグビジネス」

を、今日成立させることができるのも、今「ゼロ金利」の状況があるからです。

もしも金利が高ければ、政府が発行する国債の返済を全てJRに賄ってもらうことは難しいでしょう。そもそも、JRがその高い金利を受け入れるのは、それ以上に「利益率」があると見通すからです。ですが、これから作る地方の新幹線は、東海道新幹線や山陽新幹線程に儲かるものではありません(実際、かつてはこうしたビッグビジネスは、東海道新幹線等では、余裕で成立していました)。したがって、金利が高ければ、JRがその「ビジネス」を拒否する可能性が高いのです。

・・・・

ところでここで一つ強調しておきますが、JRにカネを貸すのが「国」だから、JRはゼロ金利で資金を調達できるのだ、という点を忘れてはなりません。

PFIやコンセッションと呼ばれるスキームでは、カネを貸すのが「民間のファンド」である事が一般的です。そんな民間ファンドは、「利ざや」を稼ぐ事が目的で、資金を貸し出すわけですから、ゼロ金利や超低金利で資金を貸し出すことなどあり得ません(いわば、高利貸し、という業者に近い存在ですね)。仮にあったとしても、国がそれをやれば、さらに安い金利を設定することができるに決まってます。

何と言っても、民間ファンドは「儲けたい」からカネを貸すのですから。国は儲けたいからカネを貸すのではなく、カネを貸すことが国民の利益につながると考えている(はずな)のです。

・・・

以上、今日は「好むと好まざるとに拘わらず、実施されているマイナス金利政策を活用するにはどうしたらいいのか?」という視点で、一つの試論をご紹介しました。

筆者がここで論じたもの以外にも、「マイナス金利」を活用した「国益に叶うプロジェクト」はさまざまに考えられるに違いありません。とういよりもむしろ、そうしたプロジェクトを考えなければ、マイナス金利という政策は、デメリットだけを国民にもたらしかねぬリスクを背負うものです。

この状況から、日本経済が復活する道を探ることは決して不可能ではないはずです。これからも様々な方々と議論を重ね、意見交換を通じながら、日本経済復活に向けた取り組みについて、考えてまいりたいと思います。

ーーー発行者よりーーー

「国の借金が1000兆円を超えた」「一人当たり817万円」
「次世代にツケを払わせるのか」「このままだと日本は破綻する」

きっとあなたはこんなニュースを見たことがあるはずです。一人の日本国民として、あなたは罪悪感と不安感を植え付けられてきました。そうしているうちに、痛みに耐える消費税増税が推し進められ、国民は豊かにはならず、不景気のムードが漂い続けています。本当に増税は必要だったのか? そもそも「国の借金」とは何なのか?

その正体とは、、、
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php

『三橋さんは過激な発言をする人だと思っていましたが…』
 By 服部

“私は今年退職をして、世間から離れて行く様に感じていました。
そんな時、月刊三橋をインターネットで見つけ、三橋先生の
ご意見を聞くようになり、世の流れに戻る感じがしました。

月刊三橋を聞き始めて3か月になります。
最初は過激な発言をする人だなあと思って聞いていましたが、
今回の国債破綻しない24の理由を聞いて、
今まで何回も聞いていた内容が、私のように頭の悪い者でも
やっと理解出来るようになりました。有り難うございます。

これからの日本の為にも益々頑張って頂きたいと思います。”

服部さんが、国の借金問題について
理解できた秘密とは・・・▼▼
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag2.php

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  1. lemoned@F-NAK より

    喧々諤々の議論をして、「あなたの主張の方が正しい、考えを改めます」なんて結果になった対談を見た事ありますか?感情と理屈、理想と現実を完全に区別して議論できる人でないと、正論を強くぶつけても反発するだけです。(もともと、そんなことができるなら経済政策を間違ったりしないでしょう。)結局、自分のしていることをヨイショしてくれる人の話を聞きたがるものです。あらゆる組織の人事は、感情による部分が大半を占めます。辞職を武器に自己主張したところで、「じゃぁ辞めていいよ」と言われるだけです。それで辞めなかった場合、その「嘘つき」の言葉には、誰も耳を貸さなくなります。逆に辞めた場合は、職務を放棄した人間として、やはり信頼を失うでしょう。失礼な書き込みというより、組織で働いたことのない子供の書き込みです。

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  2. kanata より

    本田内閣官房参与が消費税再増税延期と財政出動を叫び、麻生財務大臣が機動的な経済対策に言及しているのだから、いよいよ追加経済対策が実施されるのでしょう。安倍総理はこのタイミングを待っていたんだと思います。

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  3. 學天測 より

    先生のご立場も、仰りたい事も、一番にやるべき事もよく心得た上で申し上げますがねえwむしろ、私は先生にやるべきをやってくれとお願いしてますからね。だから、その上で私が思うに、もはや政治や行政は財界と癒着して、国民+移民労働者を食い物にして生き残りを図る気満々ですからね。1億総活躍社会ならぬ総ガス室送りですね。これと似たような構造の結果、大阪の西成区の釜ヶ崎みたいなのが出来たと私は理解しております。馬鹿な事をとお思いでしょうが、まさに一億火の玉でそういう道を望んでいってますからね。衆愚政治と言えばそれまでですが、まあ、こんな事を続ければ全部とは言わないが列島が西成区の釜ヶ崎となりますんで先は無いでしょう。まだ有志がいるなら、少しでも財政を回復し、公共事業に繋げる為にも国民が少しでも食い物にされない様にきつくて目先、給料安くても、労働者を大切に扱い、様々な技能を身につけ一生食える様、教育してくれるコスト勝負ではなくてですね、余力ある真に競争力があり需要がある産業や企業にまだ良識が残っているなら移していくべき努力をすべきだと考えています。人口も減りますしね。アイヒマン裁判と同じでいつかこのガス室送りの時代の事をきっちり総括してイスラエルの様に国民すべての心に傷みつける必要があると思いますね。ハンナアーレントは非難するでしょうけどね。

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  4. 竹下 より

    以前も書き込みましたが、藤井先生は内閣参与なのですよね?本田先生や浜田先生らリフレ派が首相と対談したニュースはよく聞きますが、藤井先生の声はほんとに安倍政権に届いてるんでしょうか?安倍政権は提案とは真逆の緊縮の方向へと向かってますよね?増税も確実に実施する、とか首相は発言しちゃってますし例の骨太の方針等を見る限り、大規模な公共投資は封印されてしまってる。遠慮されずに、もっと安倍首相に強くいってほしいです。ぶっちゃけこれ以上提案無視するなら、参与辞めてやるぞゴラァくらい脅してほしい。失礼な書き込みかもしれませんが、現状にほんとに荷立ちを感じているので。

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  5. 拓三 より

    安倍内閣総理大臣並び閣僚の皆さま、又それを支えている与党の先生方、そして何より、財務省はじめ各官僚のエリート戦士の皆様、日本国民の幸せのためだけに日々お勤めいただき心より感謝いたします。貴方様達のおかげで、日本国民の幸せがあと一歩の所まで来る事が出来ました。全て貴方様達のお陰で御座います。日本銀行様がこれだけのお膳立てをしてくれ、幼稚園児でも解るぐらい今何をすべきかを簡単な方程式に解いてくれました。日本銀行様有難う御座います。後は『実行』だけであります。どんな馬鹿でもこんな簡単な方程式を日本人であるなら間違う事はないでしょう。何かの意図がなければ。

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  6. たかゆき より

    東ちゃんは 王ちゃまだ♪(晋ちゃんも ですけど、、、)彼等の性格は変えられるか??無理ですね(たぶん)認知バイアス という言葉があります。https://ja.wikipedia.org/wiki/認知バイアス王ちゃまの バイアスは絶対であり誤りなどない と 信じ込んでいるかぎり病状は悪くなるばかりですので彼等は すでに カウンセリングが必要な状態にある とぼくは 認識していますけど、、カウンセリングは 受けずに きっと王ちゃまの まま 逝くんでしょうね。。。

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