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2023年10月25日

【藤井聡】「財務省」より悪くて強い奴らが居ました。それは、「病院・医療」業界。財務省がエースのフォーカードなら彼らはストレート・フラッシュだったのです!

この度、表現者クライテリオンで、下記特集号を出版いたしました。

『「過剰医療」の構造
  ~病院文明のニヒリズム』
(表現者クライテリオン 令和5年11月号)


https://www.amazon.co.jp/dp/B0CKBSHQC7

当方、この雑誌出版について、とある大学関係のゼミで次のようにご紹介差し上げました。

『最新の表現者クライテリオンのテーマは「過剰医療」なんですが、僕はこのテーマについては、「金脈」を掘り当てたような気持ちになっています。どういう意味で、このテーマが「金脈」なのか、説明したいと思います。』

ここに言う「金脈」というのはもちろん、文字通りの意味の「金儲けができる凄いテーマだ」というわけではありません。この「過剰医療批判」というテーマこそ、「日本を救う、今まで思いもよらなかったアプローチだ」というものです。

なぜそう言えるのか…ここでは、そのゼミでお話しした内容を簡単にご紹介したいと思います。

まず、当方は今まで、日本を救うためにはPB規律を凍結、撤廃することが必須である、と考えてきました。それさえできれば、政府が必要な積極財政を展開し、デフレを脱却すると同時に、日本にとって必要なあらゆる行政、つまり国土強靱化や国防力の増進、地方創生、食料・エネルギー自給率の向上といった行政が展開でき、日本が救われることとなるからです。

したがって当方はこれまで、様々な形でPB規律を撤廃するための取組を進めてきました。

ケインズ経済学やMMTの研究を進めたのも、安倍さんをはじめとした様々な政治家の皆さんへの働きかけを進めたのも、そしてあらゆるメディアやSNSでの取組を進めたのも、全てPB規律の撤廃を通して日本を救うことを目指してのものでした。

ところが、昨年、そのミッションにおいて何よりも重要な要素であった「安倍晋三元総理」が凶弾に倒れて死んでしまったのです…。

これを通して、当方は絶望的な状況に追い込まれました。

当方の人生があと20年から30年しかなく、その間に、「あれだけの政治力を持った人物がPB撤廃に一定の情熱を差し向けるという事態を創出する」ということが、絶望的に困難である、という現実に思いが至ったからです…。

そんな気分でおおよそ一年以上にわたって、あれこれを日本を救う手立てを考え続けたのですが…そこで思い至ったアプローチが、

「過剰医療批判」

というものだったのです。

当方はもともと、財務省がPB規律にあれだけこだわっている最大の理由は、当方はこれまでアメリカGHQが日本を弱体化するために埋め込んだ「財政法四条」だと認識していました。

しかし、この一年、「緊縮財政派」の様々な方々と意見交換を重ねたところ、どうやら彼らは「医療費の爆発的増加」を恐れており、それを阻止するために、PB規律というものにこだわっているのではないか? という実態が少しずつ見えてきたのです。

もちろん、「医療費の爆発的増加」を止めるのに、PB規律というのは必ずしも必要ではありません。なぜなら、PB規律は医療費のみならず、公共投資や国防費、科学技術費、資源・エネルギー・食料行政費、そして、「デフレ脱却のための政府支出」も同時に抑制してしまうからです。その意味において、財務省のPB規律堅持方針は、決して正当化され得ぬものです。

それにもかかわらず、緊縮財政派がなぜここまでPBにこだわるのかと言えば、もしも彼らが医療費だけを抑止しようとすれば、

「おまえ達は命よりもおカネの方が大事だというのか!?だったらおまえ達は、人殺しじゃ無いか!!」

という誹りを、必ず、受けてしまう事になるからなのです。

そうした批判を受け続けた、医療費抑止を目指してきた緊縮財政派官僚達は、苦肉の策として、

「国家の為には、PB規律を守ることが必要です。これがなければ、国家が滅びるのです!」

というレトリックを編み出し、自らにも「絶対的な正義がある」という体裁を整えて、医療業界と対立するというアプローチを採用するに至っているのです。

つまり、財務省よりもさらに悪い集団として、それは、「病院・医療」業界があったのであり、彼らは、財務省よりもさらに「強力」な力を持ち、財務省をその裏で制御、コントロールしていた、という次第なのです。

いわば、財務省が「エースのフォーカード」だとするなら、「病院・医療」業界はそのさらに一枚上手を行く「ストレート・フラッシュ」だったわけで、霞ヶ関・永田町における最強組織の財務省といえども、「病院・医療」業界 には苦汁をなめさせられ続けてきたわけです。

しかし、言うまでも無く、財務省が設定したPB規律のせいで今、日本は滅びへの道をまっしぐらに突き進んでいる、というのは厳然たる事実。

こうした諸事実を踏まえた上で、この状況を打開する、現実的に考えられ得る最も効果的な方法は何かを考えあぐねた結果、当方は、

「過剰医療を、財政の観点からで無く、国民の健康の視点から批判する」

という「過剰医療それ自身を批判する」というアプローチなのではないか…と考えられるのです。

過剰医療さえ阻止でき、その医療の水準を「適正化」できるなら、緊縮財政は、PB規律にこだわる原因それ自身が大幅に削減されることになるに違い無い、そうなった時に、PB規律批判を徹底的に進めれば、PB規律が打開できる日がやってくるのではないか、という可能性が考えられるわけです。

ただし、ここで重要なのが、過剰医療を、決して、財政論の視点から批判する事を中心には据えない、という一点。

そもそもそれは、我々の本意では全くありません。むしろ、そんな事とは無関係に、「国民の健康」だけを見据えたとしても、過剰医療は大問題であり、それによって人々が不健康になっているわけですから、その視点から考えるだけで、過剰医療は回避せねばならない問題なわけです。

ましてや、「健全な暮らし」や「日常的幸福水準」を確保することを見据えるなら、より強く、過剰医療は回避せねばならない深刻な大問題であると言いうるものなのです。

しかも、ただただ国民の健康や幸福を考え、そのために医療水準の適正化を目指していけば、財務省がPB規律にこだわる必然性が消滅していき、日本経済が復活する希望が拡大していくことともなるのです。

こう考えれば、今、日本国民が取り組まねばならない最重要課題の一つが、過剰医療を回避する取組を全面的に展開すること、なのです。

そのためにも是非、

『「過剰医療」の構造
  ~病院文明のニヒリズム』
(表現者クライテリオン 令和5年11月号)


https://www.amazon.co.jp/dp/B0CKBSHQC7

をご一読いただきたいと思います。よろしくお願いします!

追伸1:豪州のMMTの提唱者、ビル・ミッチェルさんと、日本滞在中に下記三大イベントを行います。是非、ご参加下さい!!
■10月31日『三沢カヅチカ(藤井)×ミッチェル』ライブ@京都 https://the-criterion.jp/mail-magazine/231012/
■11月5日『ポスト新自由主義と国家の再生』シンポ@京都https://forms.gle/SwmB8xqCLPd2H1iZ9

■11月17日『デフレ時代の財政論』セミナー@東京 https://the-criterion.jp/symposium/231117-19/

追伸2:それにしても、今回の岸田さんの所信表明演説は酷い内容でしたね…所得減税についスルーした上で、ライドシェアやるぞなんて…常軌を逸した振る舞いと言わざるを得ません…是非、下記ご一読ください。
『岸田さんの「ライドシェア、解禁するのダ~!」宣言がどれほど愚かなのかを、簡単に解説します。ホンットうんざりするほど愚か極まりない話しです。』
https://foomii.com/00178/20231020112847115489

追伸3:この日経コラムも酷かったですね…何がどうダメだったのか、是非下記ご一読ください。
『日経がまたも「詭弁とウソに塗れたトンデモ論説」を配信。こんな記事が無批判に世間に受け入れられ続ければ、「国家の大計を誤る」事になります。』
https://foomii.com/00178/20231016081300115317

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【藤井聡】「財務省」より悪くて強い奴らが居ました。それは、「病院・医療」業界。財務省がエースのフォーカードなら彼らはストレート・フラッシュだったのです!への5件のコメント

  1. utaka より

    PB規律なんて予算を増やすと増税したい場合は使う
    バブル崩壊とリーマンショックで税収減は予算減らさず国債発行で埋めて無視する
    ご都合主義で使い分けしてます

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  2. 利根川 より

     釈迦に説法なので、わざわざ藤井教授に言うようなことではありませんが、かつて支出を減らしたい財務省の戦略に乗っかってTVでは「公共事業悪玉論」が盛んに報道されていた時期がありました。

    TV「無駄な公共事業がこれ以上増大したら大変だ。公共事業で私腹を肥やす土建屋を許すな!」

    まあ、一部で悪いことをしていた人達もいたようですが、悪事を働く人がいるのはどこの業界も同じです。悪いことをする人がいるから公共事業をなくしてしまおうというのはどう考えても暴論でした。

    「自動車をテロに使う人がいるから自動車を廃止しよう」

    自分や身内が被害にあったわけでもないのにこんなことを言う人がいたらサイコパス診断をお勧めします。
     さて、一連の公共事業叩きで1992年には政府民間合わせて84兆円の建設投資がなされ、建築許可業者数531千業者を数えていた「日本の強力な供給能力」でしたが、コロナ前の2019年の建設投資額は政府民間合わせて56兆円にまで落ち込み、建設許可業者数も468千業者にまで減りました。

    維新の会「大阪万博の建築が間に合わない!どうしてこんなに人手不足なんだ!?」

    そりゃあ、小泉純一郎とか維新の会みたいな構造改革派が減らしたからじゃろ(苦笑い
     それから、「公務員叩き」もありましたね。総務省によると、地方公共団体の公務員数は1994年には328万3493人だったものが2022年には280万3664人にまで減っている。しかも、この内の25%は非正規雇用。今では人手不足過ぎてハザードマップを作ることすら難しい自治体もあるとか。
     
    財務官僚「土建屋は悪い奴だから減らそう」

    財務官僚「公務員は甘えてるから減らそう」

    財務官僚「病院・医療業界は悪い奴だから医療費を減らそう」

    で、医療・病院叩きの次はどこが叩かれるんですかねぇ。
     藤井教授は自称保守界隈の方とも付き合いがある方なので、あまり言いたくないですが、自称保守の言うことはあまりうのみにしない方がいいと思いますよ。念のために言っておきますが、分断を煽るとかそういったことではないです。
     自称保守が守りたいのは日本ではなく自民党らしい。そして、自民党の上の方の連中は財務省の言いなりである。となると、自民党を守りたい自称保守は財務省の狗である自民党も擁護しなくてはならなくなる。

    自称保守「インボイス制度導入に反対する奴は左翼!」

    実際、こうだったでしょう。
     インボイス制度の是非に右左の政治スタンスは関係ないと思いますけどね。
     西部邁さんも指摘していましたが、日本に保守なんてものは存在しませんよ。

    西部邁さん「日本に保守なんて存在しない。日本の保守が保守であるためには敵が必要」

    なので、日本で保守とか愛国を口にする人がいたらまずは一歩引いてお付き合いをした方がいいと思います。

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  3. 利根川 より

     本日のお題とは関係ないことで恐縮ですが、泉房穂市長が応援していた候補者が自民党を破ったとのことで、おめでとうございます。それから、10月24日に更新されたツイッター(旧エックス)では以下のようなコメントが投稿されたそうな。

    泉氏
    「政治家やマスコミは国民の側に立て!」

    「30年間も経済成長もせず、給料も上がらず、国民が苦しみ続けているのは、政治がこの30年間、”間違い”(国民負担増)を続けてきたからだ」

    「目先の”選挙対策”で国民をだまそうとするのは、そろそろやめていただきたい。政治家よ、真面目に『国民のための政治』をやれ!」

    「ハッキリ言う。財務省なんて、ちっとも賢くなんかない。本当に賢いのであれば、国民に負担を転嫁することなく、財政運営もやり、経済も回せるはずだ」

    「でも、悪いのは財務省だけじゃない。政治家が財務省の言いなりじゃなく、国民の側に立て!」

    「財務省や政治家よりもタチが悪いのは、マスコミだ。財務省の言い分を垂れ流し、『国民負担やむなし』といった論調で報道をするのはやめていただきたい」

    「諸外国並みの5割近くの国民負担率の日本で、お金が足らないわけがない。マスコミよ、権力者の側じゃなく、国民の側に立て!」

    「今回は(岸田首相の期限付き所得税減税は)ホントに憤っている」

    「本音は『増税』のつもりなのに、”選挙対策”で『減税』の”エサ”をちらつかせれば、国民を騙せると思っているところが、あまりに不誠実だ」

    すばらしい、本物の政治家っていうのはこういう人のことなんでしょうね。自民・公明・立憲・維新、大きなところは軒並み財務省の威光に委縮してしまってものも言えない状態の中、このように真っ向から批判をする政治家がいるというのは大変心強い。

    「さすが泉市長!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ」

    「そこにシビれる!あこがれるゥ!」

     岸田首相は「賃上げ」を強力に推し進めると言っていますが、財務省が緊縮・増税を続けるかぎり実質賃金は低下し続けますので、できない約束はしない方がいいと思いますけどね。

    田村秀男さん「22年度の一般会計の税収、際立っているのは、税収増12・7兆円で、GDPの5・92兆円の2倍以上だ。税金を生み出す母体であるGDPよりも税収のほうが多い」

    まあ、稼いだ額以上に増税されたら、そりゃあ実質賃金も下がり続けるでしょうよ(苦笑い
     基本、大手新聞はどこも財務省傘下な状態ですが、そんな中、古くから財務省の緊縮政策に異を唱えていた田村さん。そのせいで産経新聞内では肩身の狭い思いをしておられたようですが、今でも戦っておられたとは。周り中が緊縮・増税派の中で仕事をしていて緊縮増税に染まらないというのはそうとう芯が強い方なんでしょうね。よい記事をありがとうございました。

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  4. 巨悪は製薬産業 より

    まさに ロイヤルストレートフラッシュ

    この薬を 売り出そうと 十二分に薬を作ってから
    その薬を 売るための  病気を煽る、、

    今般の コロナ騒動 ワクチン接種による
    ジェノサイドを ご覧になれば 自明の理

    「病院・医療」業界なんぞ 所詮は
    ヤクの 売人

    売人風情をいくら 叩いても無駄

    >どうやら彼らは「医療費の爆発的増加」を恐れており、それを阻止するために、PB規律というものにこだわっているのではないか? という実態が少しずつ見えてきたのです。

    卓越した貴説 には 不覚にも
    噴き出して しまい ました。。。

    失礼

      

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  5. その巨悪とやらの製薬産業から より

    莫大な寄付金を受ける京都大学に席を置く
    大学院教授。

    ホント、どいつもこいつも
    自分がカワイイだけの
    見たいものを見たいだけの

    喝采を浴びたいだけの
    ご都合主義者。

    返信

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