新型コロナのパンデミックが事実上収束して、海外からの訪日観光客、いわゆるインバウンドが一気に日本に押し寄せてきています。政府は2030年に訪日観光客の数を6000万人にするという数値目標まで立てて、その受け入れ拡大に邁進しています。(この数値に関しては根拠となる統計にトリックがあるので、必ずしもこの数の訪日観光客が来るというわけではありませんが。)
なぜそこまで訪日観光客にこだわるのかと言えば、訪日観光客が増えれば経済成長につながると考えているから。しかし、結論から言えば経済成長を促すようなものにはなりえないし、実際になっていません。具体的に言えば、2018年の夏休みを含む第二期(5〜8月)の訪日観光客の国内消費の国内家計最終消費支出に占める割合は、たった1.4%です。もし日本人の給与が増えてデフレから完全に脱却すれば、フーっと吹かなくても、そよ風でも飛んでいってしまうような数値にまで縮小するでしょう。日本人の観光客を含めた観光産業全体で見た場合でも、2019年の実績で、対GDP比で2%未満。つまり、観光が日本経済を支える一大産業分野などではないということはこうした数値から明らかなのです。(無論、超ミクロで見た時に、観光が重要な産業の一つとなっている場合もありえますが、そうした話を、日本全体というマクロの話にまで広げて考えてはいけません。)
しかし、政府は様々な施策を訪日観光客様、外国人様たちにとって都合がいいように作り替えようとしていますし、安倍、菅両政権と比べて、岸田政権ではその傾向はより強くなっているように思われます。
それ以上に日本におけるインバウンドが問題なのは、観光公害をはじめとする様々な外部不経済を発生させているということです。地域のバス路線に乗れない、そこらじゅうにゴミを平気でポイ捨てする、場合によっては商品の中にまでゴミを捨てていく、騒音や悪臭等の生活環境の破壊の発生、報道にもありましたが、団体で堂々と「密漁」をしていく・・・調べていけば枚挙にいとまがありません。要するに国民や事業者が無用のコストを払わされているということであり、仮にそれをマイナスの値で数値化すれば、微々たるGDPへの寄与も消え去ってしまうか、場合によってはGDPを押し下げることになるかもしれません。
こうしたことが起こる背景には、日本人が外国人に対してお人好しすぎる、サービスしすぎる、何も言わない、注意しないといった、日本人の、おそらく明治以来の悪癖があると思います。これはこれで是正が必要ですが、度を超えたゴミのポイ捨てや密漁の類は、まずは現行法の範囲内で徹底的に取り締まり、場合によっては逮捕する。それでも足りない場合は罰則を強化して外国人観光客の一斉取締りを行う、それぐらいのことをしないと悪化する一方でしょう。
おそらく、インバウンドの数値目標の達成に血眼になる岸田政権としては、「多少のことは目をつぶれ」、「日本人は我慢しろ」といった認識なのでしょうけれど、それでは、「インバウンド目標数値 達成したのはいいけれど まちは汚され生活環境は破壊され 自然も文化財も破壊され 天然資源は持ち去られ なんのためだか訳が分からず」なんてことになり、日本経済が更に縮小するということにもなりかねません。
繰り返しますが、訪日観光客、インバウンドの我が国経済への寄与は極めて小さく、彼らの数を増やしたり、一単位当たりの消費額を増やしたりしても、その状況はほとんど変わりません。そんな愚策には、我々国民の側から「反対!不要だ!」といった声を叩きつけましょう。そして、インバウンド幻想に取り憑かれている人が周りにいたら(おそらく多数いると思いますが)、目を覚させてあげてください。
私としても、「外国人問題」という少し大きな文脈で、深掘りしていきたいと思います。
【室伏謙一】そろそろインバウンド幻想から目を覚そうへの1件のコメント
2023年7月25日 7:15 PM
これもみな岸田がどうのでなく それ以前の
安倍・黒田の円安株高路線から続く成せる業
観光立国だ インバウンドを取り込むんだと
号砲ぶっ放してきたその足もとで
日本の若い人の足は海外からみるみる遠のいた
観光業の就業者はもともとほとんど非正規
替えがきくかのように考えられていた労働力も
コロナ後はより安定した雇用と賃金をめざして
季節変動の大きい観光業には戻らなかった
日本の劣悪なサービスに対するインバウンドたちの
バッドコメント数 心なしか増えているような気が
YOKOSO!JAPAN(ちょっと古いか)
フランスでも、ポルトガルでもイタリアでも
賃貸の大家がインバウンド向けの宿に作り変えた
人気観光地ほど人口も商店もごっそり減って
情緒ある町並みが次々に消えつつあるとか
もう まるでシロアリ
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