政治

日本経済

2023年6月27日

【室伏謙一】質問主意書が明らかにした財務省の決まり文句のいい加減さ

 経済財政運営と改革の基本方針2023、いわゆる骨太の方針2023が、6月16日に閣議決定されてしまいました、しかも定例閣議ではなくその日の夜の持ち回りで、まるで騙し討ちのように。この内容、そして決定過程がいかに悪辣なものであるのかについては、拙稿「「骨太の方針」議論はわずか25分、日本衰退を招く問題だらけの“中身”」に詳しいので、是非そちらをご覧いただければと思います。

https://diamond.jp/articles/-/325053 

 さて、なぜこの話を冒頭に持ってきたのかと言えば、財務省が緊縮・増税を進めざるを得ない状況を演出するために、骨太の内容等の根拠とするために使ってきた決まり文句、「財政余力」と「財政への信認」が、いかに中身がなく、いい加減なものなのかについて、骨太を巡る議論と時を同じくして提出された質問主意書によって明らかにされたからです。要するに、骨太の方針2023は内容が悪辣なだけでなく、その根拠も薄弱だということです。(そもそも根拠なんてない、根本から間違っていると言ってしまってもいいかもしれませんが。)

 その質問主意書を提出したのは、立憲民主党の落合貴之衆院議員です。立憲民主党と言えば、「消費税減税を選挙の公約に掲げたのは間違いだった」とトチ狂ったことを臆面もなく言う元代表がいたり、国債の発行は罷りならん、国債は借金で将来世代へのツケ回しだぁ、消費税増税やむなしぃなどと、頭のおかしいことを強硬に主張する議員たちがいたりと、緊縮・増税推進政党、財務省の下請政党のような存在になってしまったように見えますね。そうした中で、落合議員は、立憲民主党における数少ない積極財政派の議員です。

 では、その落合議員の質問主意書に対して、政府(内閣府(財務省))はなんと答弁しているかと言うと、まず、「財政への信認」については、「市場や国際社会における我が国の中長期的な財政の持続可能性への信認を示したものである」としています。同語反復を文章化して長くしただけのような内容で、何が言いたいのか分かりませんね。「我が国の中長期的な財政の持続可能性」、この日本国が滅亡したり、どこかの国の名実ともに属国(植民地)にでもなったりしない限り、財政は持続して行きます、以上終わり、ですね。市場云々とは、格付けのことを意味していると考えられますが、格付け会社の見解としては、日本がデフレに戻ったり、急激に日銀が利上げをするようなことがあれば、日本国債の格付けを下げることはあるとのことで、要はアベノミクスを道半ばで止めて、金融緩和を止めるのみならず、緊縮をさらに進めるのであれば、国債の格付けが下げられるということです。別の言い方をすれば、財務省の考えどおりに増税・歳出改革(緊縮)を進めれば、格付けが下げられるということです。もっともらしい言葉を使ってなんとなく取り繕おうとすると、真逆の結果になる、そんなところでしょうか。

 次に、「財政余力」。鈴木財務大臣の衆院財金委での答弁を引用して、「有事の際に、大幅な財政需要が増加するような場合にあっても必要な資金を市場から調達することができるようにしっかりと財政基盤を維持強化すること」としています。また意味不明な文章ですが、財務省は見事に馬脚を現してくれています。「財政需要が増加するような場合にあっても必要な資金を市場から調達することができるように」というところ、財政需要が増加した場合には市場から資金を調達する、つまり国債で対応しているということを見事に答えてしまっています。勿論、市場から資金を調達するなどということはしていないことはみなさんご承知のとおりですが、そこを置いておくとしても、財政需要の増加に対しては国債発行で対応するということを期せずして認めてくれたことの意味は大きいですね。

 日本は自国通貨建の国債を発行しているわけですから、債務不履行に陥ることはありえません。これは国債も保有者が日本の金融機関であると海外の投資家であるとに関わらずです。また、日本にとって財源に制約はありません。制約があるとすれば、国内の供給能力、そして資金需要です。ということで、財政基盤は盤石ですから、財務省の決まり文句の「財政余力」は無限であり、それを機にする必要はないわけですが、財務省はこの答弁書の中で「とにかく、なんでもいいから、つべこべ言わずに、「財政余力」を気にするのだぁ」と叫んでいるに等しいわけです。

 ここまで来ると、財務省は根拠なき主張を喚き立てて押し通す、駄々っ子集団のようなものですね。そんな駄々っ子集団にこの国の運命をこれ以上委ねることなどできません。

 是非こうした事実を知って、広めてください。

 それと、日本の移民問題について論点を網羅的に扱い、コミカルに描いた映画「縁の下のイミグレ」が6月30日に公開になります。それに先立ち、なるせゆうせい監督と対談動画を撮りました。こちらも併せてご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=vU2N2hf2Bz4 

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【室伏謙一】質問主意書が明らかにした財務省の決まり文句のいい加減さへの5件のコメント

  1. 肉を削いで 骨だ らけ より

    犬でもあるまいに 骨だけしゃぶってろ ってか、、

    ちなみに 現代国語の問題
    「信任」 とは との問いに

    「信任」 という語を用いて解答したら
    ㍘を いただくのは 間違いなし。。

    財政規律ばか り ではなく
    日本語の乱れ も 叫ばれる 昨今

    国語の お勉強 も もっともっと
    なさいません か (自戒を込めて)

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  2. いずれ政府・財務省は意趣返しに遭います より

    政府のくだらなさをtautologyに見る。
    こういう側面からのあぶり出しは面白いし有意義。

    いうまでもなく、同語反復は
    論理学でいうタブーの最たるもの。
    室伏さんもいう政府の「駄々っ子」すなわち、
    「いやだからいやだ」式は論理ですらない。
    すなわち、政府は国民を説得するつもりがない。

    かつて自民は同語反復で手ひどい目に遭ってます。
    消費税に大反対の社会党・土井たか子が
    「ダメなものはダメ」と唱えて国政選挙で勝利。

    既定路線と反復するだけの政府与党に業を煮やし、
    そっちがその気ならと同じ手で臨んだのだが、
    曾野綾子は土井が駄々っ子だとエッセイで喧伝し、
    消費税に賛成。

    土井批判の方向がずれていただけでなく、
    個人の心がけや志と政治や政治家の役割を
    一緒くたにして論じた「才女」。
    名手とされる短編だけ書いていれば
    瑠麗の先達という扱いを受けずに済んだのに。

    マイナ保険証に対する河野太郎の駄々っ子ぶりを
    見ていると、無能といわれる野党に塩を送っている
    ようにしか見えませんね。

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  3. 利根川 より

    新しい資本主義は岸田政権の重要政策の一つであり、同会議は岸田政権の重要会議と言っていい位置付けである。

    5月26日経済財政諮問会議「新しい資本主義『骨太の方針の骨子案』こんなんでどうでしょう?」

    積極財政議連「ダメダメ、景気悪いのに緊縮増税したらダメでしょ。どんな経済理論をもってしても現状で緊縮増税をやることを擁護できないよ」

    財務官僚「わかりました。2回目の会合までに修正案を出しますね」

    ~~~~~時は流れて6月13日第二回会議~~~~~~~~

    財務官僚「こちら修正案です」

    積極財政議連「ポピ~~~!なんにも修正されてな~~~い」

    積極財政議連「いやいや、直してきてって言ったよね?これ、原案のままだよね?」

    財務官僚「すいません、(家族サービスが)忙しかったもので」

    積極財政議連「君らも仕事忙しいから大変だろうけど3回目の会議までには修正案ちゃんとだしてね、頼むよ」

    ~~~~~~~~~6月16日~~~~~~~~~~~~~

    積極財政議連「そういえば、第三回会議っていつやるんだっけ?なんにもアナウンスがないから気になってたんだ」

    財務官僚「もう終わりました(閣議決定済み)」

    積極財政議連「ポピ~~~~!もう終わってる~~~~~!」

    だいたいあってる?
     薄々感じてはいたけれど、官僚って政治家とか国民のことをなめていますよね。まあ、私も日本の政治家や官僚を馬鹿にした態度をとっていますが、30年近く経済成長していないのにおかしいとも思ってこなかった人達ですからね、馬鹿にしたくもなろうというものですよ。
     アメリカはリーマンショックから5年後くらいには「経済成長率が鈍っただけで」何かおかしいと異変に気が付いて敏感に反応していた。現在、国内経済が傾いてきている中国ですが、専制国家としては異例なことにゼロコロナ政策を3年で撤回した。

    日本は30年近く経済成長していないのに政治家も官僚も学者もおかしいとも思ってこなかった

    高い金を払って本人も親も尋常じゃない努力をして、その結果誕生したのが大量のポンコツエリートとか、こんなの誰も救われないじゃないですか!
     ところで、

    「消費税減税を選挙の公約に掲げたのは間違いだった」とトチ狂ったことを臆面もなく言う元代表

    に関してですが、街頭で街ゆく人々からどれだけ無視されてもビラ配りを頑張る姿に支持率が上がっているとかなんとか…
     ごめんなさい、国政選挙って努力コンテストでも良い人コンテストでもないので、努力してるかとか良い人であるかどうかは二の次三の次で、社会政策・経済政策に関する知識がしっかりあることが最低条件なんですよ。医療知識の無い医者とか建築に関する技術の無い大工とか話にならんでしょ?
     で、経済に関する知識に関しては、

    世界では91の国と地域が消費税を減税し、国民の生活を守ろうとしている(全国商工新聞2022年7月18日)

    わけです。当たり前ですね、どんな経済理論でも「景気が悪い時に増税をしろ」なんて言っていないわけで、ウクライナ戦争からの輸入物価高に対応するには消費税減税が正しい政策だと言えるわけです。ところが、くだんの元代表は減税は間違いだったとのたまっているわけですよ。それなのに支持率上がっちゃうんだ…
     
    日本は民主制国家なので、国民がしっかりしてくれないと

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  4. 利根川 より

     ノーベル経済学者のジョセフ・E・スティグリッツ教授が日本で公演をしました。その際のQ&Aコーナーで

    Q「国債の価値は何に依拠するものですか?」

    A「アメリカの国債の価値は政府がそれを支払うという事実にあります」

    と答えています。
     さて、財務省の内部資料によると国債の償還(いわゆる国の借金の返済)が何時どのように行われているのかについて、世界各国の状況は以下のようになっているそうです

    日本:60年償還ルール。発行から60年経ったら、大不況の真っ最中だろうが、巨大災害の真っ最中だろうが必ず返済

    日本以外の国:政府の財政収支が黒字になったら場合によっては償還

    要するに、日本以外の国は「そのうち返すよ」と言って永遠に借り換えを続けているというのが現実。

    森永康平のビズアップチャンネル第103回

    を見ればわかるように、他の国は一般会計に債務償還費を含めていませんので、本当に国の借金の返済なんてやっていないんですよ。

    「そんな馬鹿な、国の借金の返済をしなくていいわけがない」

    と言う方もいるかもしれませんが、実際、他の国はやってないのです。じゃあ、「黒字になったら返済」というのはどういうことなのか?
     誰かの赤字が誰かの黒字、政府が黒字になるということは、民間がめちゃくちゃお金を借りて投資しまくっている状況(民間が赤字)なわけです。つまりは、バブルですね。景気が良すぎてお金が使われすぎている状況になってきたら

    国債の償還をやって社会から貨幣を間引いて景気を鎮静化させましょう

    ということなのです。ふつうはバブルになどしないので、政府が黒字になることはありません。つまり、国債の償還はおこなわれないということ。

    「国の借金の返済が行われないだなんて、そんなことでは負債がどんどん増えてしまうじゃないか!」

    そう思った方もいるのかもしれません。

    <池戸万作さんによる21世紀のG7諸国の政府総負債の増加率>

    出典:IMF、World Economic Outlook datebaseより作成

    2001年を100として算出

    2001年~2018年

    <G7諸国の政府総負債の増加率>

    イギリス 474.5

    アメリカ 384.9

    フランス 258.1

    カナダ 215.6

    イタリア 170.3

    日本 169.5

    ドイツ 160.7

    増え続けてますよ、負債。どこの国もね(笑)
     そもそも、日本のTVや新聞が煽り立てている「国の借金」って何のことかというと、

    ”その国が発行してきた貨幣で、今現在、その発行した貨幣がどれだけ残っているか”

    を表している数字にすぎない。わかりやすく言えば、

    「国の借金って自国通貨のことさ」

    ということです。
     畑を広げたら使う水の量も増やす、経済が成長したら発行する貨幣の量も増やす。先ほど、G7諸国の政府総負債は増え続けているというデータをお見せしましたが、それは当たり前の話で、経済成長しているのだから発行する貨幣の量=負債の量だって増えるのですよ。
     アメリカの貨幣(国債)の価値はアメリカ政府が支払う(発行・支出する)から価値がある。そして、アメリカ政府はアメリカ政府が発行した貨幣でしか納税を認めないので、アメリカ国民はアメリカ政府が発行した貨幣(国債・銀行預金・ドル紙幣)を手に入れなければならない。だから価値があるというわけ。
     経済制裁を受けてもロシアのルーブルの価値がなくならないのは、ロシア政府はルーブルでしか納税を認めていないし、国民は納税のためにルーブルを手に入れる必要がある。また、ロシアが産出するガス・石油・木材・貴金属などを手に入れるためにはルーブルが必要になる。そして、ロシアは今のところそれらの生産能力を失っていない。そりゃあ、ルーブルの価値は0にはならんわな。
     その国の貨幣の価値がなくなるときって

    ・その国が生産能力を失ったとき

    ・その国の政府がなくなったとき(無政府状態)

    くらいなのではないでしょうか。
     TV・新聞で「財源論」という言葉を目にしたので、何度でも同じことを説明するよ、と(笑)

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  5. 利根川 より

     三橋TV第721回で三橋さんが「扇の要」について解説していましたが、全ては財務省が緊縮・増税をやっていることでおかしくなっているわけです。そして、財務省は

    どこかの黒幕の指示にしたがっている

    というわけではなく、元大蔵官僚の斎藤次郎さんの作文に見るように、単純に勉強不足であっただけという残酷な現実が横たわっているわけです。
     ちなみに、

    財務官僚はただ法律にしたがって仕事をしているだけ

    と財務官僚を擁護する声も聞こえますが、

    ・2022年10月26日物価高や円安などに対応するための総合経済対策をテーマにした会議でまだ結論が出ていないにもかかわらず、財務官僚が総理に「決まった」と報告し、萩生田光一政調会長を激怒させた事件(政治家ではなく財務官僚が政策を決定している)

    ・矢野論文にみるように”財務事務次官として”特定の政策に選挙期間中に反対をする(国家公務員法第102条違反)

    ※国家公務員法第102条
    職員は、政党又は政治目的のために寄付金その他の利益を求め、もしくは受領し、又は何らかの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない

    人事院規則:多数の人に接し得る場所で政治的目的を有する意見を述べることを禁ずる。政治的目的を有する文書の発行・提示・配布等を禁ず。

    法律の素人である私には財務官僚が法律に従って動いているようには思えませんけど、どうなんでしょうね。たがや議員の質疑の時には、さすがに国会で嘘を言う度胸がなかっただけなのでは?
     話を元に戻しますが、いま日本で起こっている問題の元をたどっていくと全て財務省による緊縮・増税に行きつくわけですよ。
     地方の予算が減らされたせいで公共サービスを維持できなくなり、水道民営化などという海外では失敗している政策の焼き直しをわざわざやろうとしたり、郵政にみるように変なノルマを職員に課して職員を自殺に追い込んだり、こういうのは元をただすと政府の緊縮増税の影響なのですよ。

    いわば、緊縮増税によって現場は仲間内でデスゲームをやらされている状況

    なので、みんなで団結して財務官僚やその犬である御用学者・緊縮派議員と戦おうぜ、というとなぜか隣にいる奴と殴り合いを始める日本国民のしょうもなさといったらもう…まあ、わたしも人のことは言えませんね(苦笑い
     半世紀にわたる緊縮増税政策のせいですっかりルサンチマンにまみれちまって…汚れっちまった悲しみに今日も小雪の降りかかる。ま、これから夏ですけどね(笑)

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