日本経済

2023年6月25日

【三橋貴明】半世紀も続いている財政破綻論

【今週のNewsピックアップ】
半世紀前に始まった
「財政赤字=悪」という考え方のツケを
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12808926612.html
日本国民が「国債発行=貨幣供給」を
知れば世界が変わる
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12809228006.html

戦後の日本で緊縮財政を
本格的に言い出した総理大臣は、大平正芳です。

大平は大蔵大臣時代、
1975年に三木内閣が戦後初となる、
通常予算における
赤字国債(特例公債)発行を決めた際に、
「万死に値する!」
と、叫んだことで有名です。

総理就任前からガチガチの
緊縮財政派で有名だった大平は、
総理就任後に各種の「政策研究会」を組織し、
香山健一をはじめ、
新自由主義者、小さな政府論者を
ブレーンとして結集。

研究会の議論は、
政策研究報告書として公表されています。
政策研究報告書の中には、
以下の文章がある。

 (1980年にまとめられた
 「大平総理の政策研究会報告書」より)
 『財政赤字が拡大し、
 国債の大量発行時代が
 招来されたことである』
 『経常的な歳出まで経常的に
 公債の発行に依存する現在の状況は
 極めて危険であり、
 当面の目標を「赤字公債」からの
 脱却におくのは妥当である』

信じられますか?
日本の政治は、
半世紀以上も昔の大平内閣の時代から、
「日本の財政は極めて危険」
との主張を続けていたのです。

その後、1995年の11月国会で、
当時の武村正義大蔵大臣は、
国会で翌年度予算は
10兆円を超える規模での歳入不足となり、
赤字国債の発行が避けられないとして、
「財政危機宣言」を行いました。
これが、
後の消費税率アップ(1997年)につながった。
消費税増税の結果、日本のデフレ化が始まり、
現在に至る国家凋落、国民貧困化、
安全保障崩壊、非婚化と少子化。

95年以前に、
三橋は「財政破綻する」といった言説を
聞いたことがありません。
95年の財政危機宣言以降、
日本では97年の財政構造改革法、
01年のPB黒字化目標設定と、
「緊縮目標」が設定されるようになり、
政府は、
「歳出を増やせない」
「歳出を増やすなら、
増税(社会保険料増含む)する」
という路線を歩み始めることになった。

2012年末に発足した安倍政権について、
「積極財政だった」
と誤解している人が少なくない。
積極財政の政権が、消費税を二度も増税し、
PB黒字化目標を設定するはずがないのでしょ。
安倍政権は2013年度以降、
新規国債発行額を減らしていきました。
安倍政権もまた、緊縮政権だった。
PB黒字化目標を閣議決定した以上、
緊縮にならざるを得ないのです。

政府の支出は可能な限り抑制、
削減し、反対側で増税を繰り返す。
消費税の増税はもちろん、
2013年度以降は
社会保険料の引き上げが繰り返された。
PB目標がある以上、国民の負担を増やし、
政府の支出を削減することは必須なのですよ。

ちなみに、2012年は40%未満だった
国民負担率は、今や50%に接近しています。
民主党政権時代は「四公六民」だったのが、
今や「五公五民」。

というわけで、日本政府は緊縮財政路線を
継続してきたわけですが、
事情が一変したのが2020年度。
ご存じの通り、世界的な新型コロナの
パンデミックが発生。
さすがの日本政府も、
新規国債発行を増やさざるを得なかった。
2020年度に100兆円を上回った
新規国債発行額は、21年度、22年度と
60兆円前後を維持している。

で? 何か問題があったのですか?
国債金利が急騰し、
日本が財政破綻(政府の債務不履行)に陥った?
あるいは、ハイパーインフレーション
(インフレ率年率13000%)になった?
国債金利は日本銀行が完璧に抑え込んでいる。
さらには、2013年の黒田日銀発足以降、
日本銀行は450兆円以上もの国債を
買い取ったにもかかわらず、
インフレ率はゼロ近辺で低迷を続けた。

現在は、輸入物価上昇に起因した
コストプッシュ型インフレが発生し、
インフレ率はコアコアCPIで
2%を超えている。

とはいえ、現在の物価上昇は国内の需要拡大が
理由ではありません。
輸入物価が落ち着けば、
コアコアCPIは再びマイナス目掛けて
急降下することになります。

つまりは、2013年以降の
日本の「社会実験」が、
「日本国の財政破綻
(政府の債務不履行)はありえない」
「日本国がハイパーインフレーションに
なることはない」
ことを証明してしまったのです。

◆小学館から「日本経済 失敗の本質:
誤った貨幣観が国を滅ぼす」
が刊行になりました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4093888973

◆経営科学出版から
「歴史教科書が教えてくれない
古代日本「帝国」の誕生」が刊行になりました。
https://in.38news.jp/38nike2_980_teika

◆週刊実話 連載
「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」
第520回 財政破綻の眼鏡

◆メルマガ 週刊三橋貴明
Vol738 一般均衡理論と貨幣の不確実性
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
なぜ、経済学が貨幣を認識していないのか?
理由は、
主流派経済学の基盤である一般均衡理論が、
貨幣無しでなければ成立しえないためです。

◆メディア出演

もはや正気を失っている!
国民殺しに加担する財政破綻論者たち
[三橋TV第718回]三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/b_hDz8xkdXA

たまには「日本アゲ」をやろう
世界で唯一麹菌を「家畜化」した民族
[三橋TV第719回] 浅野久美・三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/2-cDYcIx3DQ

日本の国菌「麹菌」
食料安全保障強化の切り札はこれだ!
先人の叡智「発酵」に学ぼうぜ!
[三橋TV第720回] 浅野久美・三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/pRCGxU3jAjA

特別コンテンツ配信中!

シンガーsayaの3分間エコノミクス
【第63回 金融収支】
https://youtu.be/THH-RNz5xxk

日本は経済成長していない。
確かにその通りです。
ならば、日本経済を成長させるためには
どうしたら良いのでしょうか。
日本経済の成長に
本当に必要な指標、考え方、そして政策を、
わたし、シンガーsayaと共に
学んでいただくのが
「シンガーsayaの3分間エコノミクス
第二巻」です。
さあ、私と共に経済成長について
「ゼロ」から学んで下さい。
特別コンテンツとして、
三橋貴明&saya
「シンガーsayaが三橋先生に
ひたすら聞いてみた 第一回」
の全編もご視聴いただけます。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/economics/

◆三橋経済塾
6月17日開催、三橋経済塾第十二期
第六回対面講義を配信致しました。
是非ご視聴下さいませ。
https://members12.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?page_id=75
ゲスト講師は中野剛志先生でした。
インターネット受講の皆様、
お待たせいたしました。

◆チャンネルAJER
今週の更新はありません。

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【三橋貴明】半世紀も続いている財政破綻論への2件のコメント

  1. 利根川 より

     タイタニック号の残骸を見に行くツアーで18日、消息を絶った米潜水艇「タイタン」。このタイタンですが、機体の強度が足りないとして安全のために補強するべきだと訴えていた職員がいたのだそう。では、その職員がどうなったのかというとクビになった上、会社から訴えられていたという。
     19世紀、産褥熱の発生を抑えるべく発生数の調査し、産科医が次亜塩素酸カルシウムで手を消毒することで劇的に産婦の死亡率を下げることが出来ることを発見したセンメルヴェイス医師。要は、産科医の手が不潔だったせいで産褥熱が起きていたわけですが、これを認めることができなかった当時の医師たちはセンメルヴェイス医師を徹底的に攻撃。最後は精神病院に入れられ、看守がら暴行を受けてセンメルヴェイス医師は亡くなりました。
     今も昔も権力者に都合の悪いことを言う奴はろくな目に合わないというのは変わっていないようで。最近の日本人(特に知識階級)が「強い方につく」方針なのもわからんでもないかな(苦笑い
     まあ、郵政とか農協とか、叩いてもたいして反撃を喰らわないようなのをいじめて

    「俺は悪と戦っている」

    アピールをする政治家・官僚はたまに見かけますが、理不尽な要求(カジノのライセンスよこせとか、農産物の関税下げろとか)を突き付けてくるアメリカや財務官僚と本気で戦っている人って三橋さん周りしか見たことがないですね。まったくもう!みんな賢いんだから!(苦笑い
     
    強い方につく人「貧困っていうのはな、『当該国や地域で生活していく為の必要最低限の収入が得られない者(絶対基準)』のことをさす」

    強い方につく人「多少貧乏な人はいても日本に貧困なんて居ない。この程度で音を上げるなど甘え!」

    なんて言ってんのもいますが、そんなことを半世紀も言っていたから「国民総中流」が崩壊したんだろうよ。

    岸田首相「分厚い中間層の復活を実行してまいります」(令和の所得倍増計画より)

    中間層の復活と言っているということは、中間層は没落したと理解しているっていうことだ。誰だって「やっちまうこと」はある。そんなのを一々責めたりはしないけれども、分かっててやっているのやバレてなおやっているのはいい加減にした方がいい。

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  2. 利根川 より

     消費税ってさ、消費者が支払っている税金だって皆思ってるらしい。で、免税事業者は消費者から預かった消費税を自分の財布に入れちまって税務署に収めていない酷い奴(益税論)なんだそうだ。財務官僚や高橋洋一先生なっかがそんなことを言っていたとか聞きますが…実は、そのように思って

    「ずるい!免税事業者にきちんと我々が預けた消費税を税務署に収めさせろ!」

    という裁判が過去にも行われていたということでね。その裁判の判決がコチラ⇓

    判決「(消費税は)消費者が納税義務者であることはおろか、
    事業者が消費者から徴収すべき具体的な税額、
    消費者から徴収しなかったことに対する
    事業者への制裁等についても
    全く定められていないから、
    消費税法等が事業者に徴収義務を、
    消費者に納税義務を課したものとはいえない」

    「消費税の納税義務者が消費者、
    徴収義務者が事業者であるとは解されない。
    したがって、消費者が事業者に対して支払う
    消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する
    対価の一部としての性格しか有しないから、
    事業者が、当該消費税分につき
    過不足なく国庫に納付する義務を、
    消費者に対する関係で負うものではない」
    (共に東京地裁平成2年3月26日判決、
    平成元年(ワ)第5194号損害賠償請求事件、
    判例時報1344号)

    くわえて、2023年 2月10日 衆議院内閣委員会

    たがや議員「消費税を全額納めない事業者はピンハネ横取りだろうと訴えた裁判です」

    たがや議員「それの判決が既に出ていますけども『事業者が取引の相手方から収受する消費税相当額は、あくまでも当該取引において提供する物品や役務の対価の一部である。』」

    たがや議員「『事業者が取引相手から収受した消費税相当額の一部が手元に残ることになっても、税額の一部を横取りすることにはならない。』」

    たがや議員「とあります」

    たがや議員「すなわちピンハネではない、益税、あずかり税ではないと言っています」

    たがや議員「消費税は売上金の一部であり、あずかり金ではないということになります」

    たがや議員「そこでカネコ政務官に質問です。消費税は旧大蔵省が主張した通り『あずかり税ではない』、それでよろしいですか?」

    かねこ政務官「(消費税は)あずかり金的な性格でございまして、あずかり税ではありません、という答弁を財務省は過去にさせていただいています」

    たがや議員「じゃあ、預かり税ではないということでよろしいですか?」

    かねこ政務官「その認識で結構でございます」

    お分かりだろうか、消費税は消費者が払っている税金ではないし、預り金なんてないし間接税でもない。当然、益税なんぞ発生しない。それを裁判所も金子政務官も認めているわけだ。

    強い方について弱い奴を寄ってたかって皆で叩くのは楽しいよな、弱い奴を叩くことで叩いているその一瞬だけでも団結してるって感じするしな

    でもね、

    「免税事業者は消費者から預かった消費税を自分の財布に入れちまって税務署に収めていない酷い奴」

    なんて言っている人はこの裁判結果をみても分かるように何も悪いことをしていない人を一方的に誹謗中傷しているにすぎないのですよ。訴えられますよ?
     誰もが余裕のない社会です。弱い者いじめして憂さ晴らししたいという気持ちもわからんでもない。でも、消費税やインボイス制度に関してはもうしっかり裁判結果も出ているのだから、ここらで手のひら返しておいた方がいいと思いますよ。やっちまうことはだれでもある。私もあります。だから、それ自体をとがめることはしないけれど、分かっててやってるのやバレてなおやってるのはその限りではないですよ。

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