政治

日本経済

2023年2月1日

【藤井聡】岸田文雄・稲田朋美氏らが望む「財政再建」は〝成長〟さえすれば実現。しかし彼らは〝増税〟による経済停滞→「財政悪化」を加速している。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

こんにちは。表現者クライテリオン、編集長の藤井聡です。

今の岸田内閣は言うに及ばず、与野党の実に多くの政治家達の言動を規定し続けてきたのが、「財政再建」というもの。

要は「日本の財政は危機的な状況にあり、どげんかせんとエライ事になる」という認識で、無駄遣いはやめて、可能な限り増税していかなきゃならんのだと、政治家達、さらには世論を駆り立ててきたのが、「財政再建」という〝呪い〟の言葉だったのです。

しかし、そういう人達は財政再建というものが何かということを殆ど理解していません。

ただ漠然と「借金がふえちゃいかん!」という気分を財政再建という言葉に載せているに過ぎないのです。

しかし、G20が取り決めている財政再建というものの国際的基準は、「債務対GDP比の安定化」なのです。

例えば、G20における「サンクトペテルブルグ首脳宣言」(2013)では、(先進各国は)「『債務対GDP比を持続可能な道筋に乗せていく』(putting debt as a share of GDP on a sustainable path)ことに配慮しながら、『経済成長』と『雇用創出』を支える財政戦略でなければならない」のだと明記されています。

そして日本は、この首脳宣言の中で「債務対GDP比の安定化の〝ため〟に、PB黒字化を目指します」と言明しているのです。

つまり、国際公約的には、PB黒字化なんてどうなろうがホントに大事なのは債務対GDP比なのだと言っているわけです。

これは昨日申し上げた通りですが、さらに昨日お話したとおり、政府の試算では、成長しさえすれば、防衛費を増やそうが防衛増税しなかろうが、この債務対GDP比はとにかく激しく〝改善〟していくという見通しとなっているのです。

だから、財政再建を本気で考える人にとって(この試算を信ずる限り)、防衛費増なんてなんにも怖くないし、増税なんて何にも必要ないのです。

じゃぁ、なんで「成長しさえすれば、債務対GDP比が激しく改善していくのか」というと、そこには実に明快かつ単純な「小学生レベルの算数的理由」があるのです。

まず、債務対GDP比、というのは「分数」です。

で、その「分子」である「債務」は成長すれば、余り増えなくなります。成長して税収が増えるからです。

一方、「分母」の「GDP」は成長すれば、定義上当たり前ですが、大きくなります。

ですから、債務対GDP比という分数は、成長すれば「分子が小さく」なり「分母が大きく」なるのです。だったらその分数は、成長すれば小さくなるなんてのは、あったり前の話なのです!

ちなみに、これに「金利」の話があって、金利が高くなれば債務が増えるという効果がありますが、今のデフレ状況&金融緩和続行中の今の状況では金利はほぼゼロ。

したがって、少なくともデフレで金融緩和をやってるこの状況では、当たり前の様に、成長すれば債務対GDP比は小さくなる=財政は再建するのです!

実際、デフレが激しくなって2000年頃から今日までの

・名目成長率
・債務対GDP比

の推移のグラフを重ねてみるとこうなります。

※1:このグラフは3年移動平均を使っているので、実際に使っているデータは、デフレになった1998年以降のデータです。
※2:なお、成長してから財政が健全化するまで少々時間がかかるので、債務対GDP比のデータは一年遅らせたデータを使っています。
※3:ちなみに、債務対GDP比の改善量とは、下落量、として定義しています。

ご覧の様に、

・名目成長率が上がると債務対GDP比は〝改善〟し、
・名目成長率が下がると債務対GDP比は悪化する、

という超絶にハッキリとした傾向があることが見て取れます!

ちなみに、両者の統計学的な相関係数は0.84という水準(最低ゼロで最大1の尺度)。

これは、統計学的には非常に「つよい関係」があるということを意味しています。

……ということで、理屈から考えて、デフレであれば成長すれば債務対GDP比は健全化する筈だし、実際、デフレになって以降のデータをみれば、まさに理屈通りの結果が得られているのです。

だとしたら、財政再建したいっていう人達は皆、くだらない増税だとか予算カットだとかに血眼になってるんじゃ無くて、必死になってどうやったら、成長出来るのか、ってこと〝だけ〟考えてりゃいいのです!

……が、誠に不思議な事に、彼らは決してそんな事はしません。

なぜそうしないのか……と考えれば、もう理由は二つしかありませんね。

一つは、財政再建だって口ではいいながら、真面目に財政再建のことなんてな~んにも考えておらず、単なる偽善者だって理由。

で、もう一つは、生粋のバカだ、って理由。

……当方これまで山ほど緊縮財政の人達と議論してきましたが、当方の感覚では、彼らはほぼ全員、この両者の理由を同時、かつ、明確に持ってるように思います。

ってことで、彼らは、生粋の偽善者でありかつ生粋のバカなわけですね。

で、「生粋の偽善者であり生粋のバカ」が、「財政再建するのダ~!」と叫んで、増税&予算カットばかりしていると、どうなるのかというと……

1)増税や予算カットで、経済が停滞・衰退
2)経済が停滞・衰退すると、債務対GDP比は悪化する。つまり財政が悪化する。

という事になります。で、そうなると、「生粋の偽善者であり生粋のバカ」はそれをみたらどうなるかというと、「財政がヤバイのダ~!財政を再建せねばならんのダ~!!」と叫びつつ、

3)さらなる増税と予算カットを行い、これによって、経済が停滞・衰退。
4)で、経済が停滞・衰退すると、債務対GDP比はさらに悪化する。つまり財政がさらに悪化する。

……で、そうなるとまた、「生粋の偽善者であり生粋のバカ」達が騒ぎ出し……

というバカの∞ループが回っていく事になるわけですね。

……ってことで、我が国がそんな「生粋の偽善者であり生粋のバカ」に亡ぼされつつあるのかと思うと、ホンットに切なくなってしまいますね……。

では、また来週……。

追伸:以上を踏まえると、実は増税なんてしなくても「既に」財政が健全化している事が見えてきます。
『岸田総理の思惑とは裏腹に、政府が今回出した財政シミュレーションより防衛増税は不要という事が明らかにされています!』
https://foomii.com/00178/20230126192300104846
是非、ご一読下さい!!

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  1. ハカに つける薬は ない より

    実際にあったという
    公務員試験 マクロ経済学の問題

    景気浮揚策として
    消費税増税は 選択肢の一つとなりうる

    〇か ×か

    もちろん 花丸(彼等にとっては)
    なんたって 間違っているのは
    現実の方ですから、、

    もうすぐ春ということで
    脳内お花畑が 満開の彼等

    しあはせな墓よ 梅咲く 下に古り
    (桜木 俊晃)

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