アーカイブス

2012年9月19日

【東田剛】今、米国の経済学者たちが言っていること

FROM 東田剛

アメリカの著名な経済学者ローレンス・サマーズは、
フィナンシャル・タイムズ紙(9月16日)に寄稿して、
イギリスが政策を変更しなければ、日本のような
十年以上の長期停滞に突入すると警告を発しています。

イギリスと言えば、90年代にインフレ目標を導入した国でした。
そして今は、付加価値税(日本の消費税に相当)の増税と
財政支出の削減を行い、他方で金融緩和を実施しています。

日本では、失われた二十年の間、インフレ目標と
金融緩和でデフレ脱却ができると唱える経済学者たちが、
マンデル=フレミングの理論とやらを持ち出し、
「財政政策は無効だ」「金融緩和すればいい」と主張し、
積極財政派を小馬鹿にしてきました。

イギリスは、今まさに、彼らの言った通りに経済を運営
しているわけです。ところが、その結果、日本のような
長期のデフレ不況に陥りつつあるのです。

まあ、日本も、2000年代前半、インフレ目標こそ
入れませんでしたが、緊縮財政と金融緩和をやって、
デフレ不況から脱却できなかったのですから、イギリスも
日本と同じ轍を踏んでも、何の不思議もないわけです。

サマーズは、イギリスが最優先すべきは公共投資の拡大だと
主張しています。

日本でこのような主張をすると、またぞろ
「積極財政ですべてが解決するというトンデモ理論www」
などとネットに書き込まれるのでしょうが、サマーズは、
ケインズを引きつつ、なかなか洒落たことを言っています。

「自動車にはいろいろな欠陥があるだろうが、電気系統が
機能しなければ自動車は走れない。しかし、もし電気系統を
修復すれば、自動車は他に欠陥をかかえながらも、
とりあえず走るだろう。そういう状態が、今なのだ。」

自動車の電気系統の故障とは、
経済における需要不足(デフレ)のことです。

そりゃ、イギリス経済にも、いろいろ生産性の向上を阻害する
構造問題がたくさんあるのでしょう。しかし、サマーズは
「イギリスの潜在的な成長力を上げるための最も重要な
構造改革プログラムは、今の成長力を上げることである」として、
公共投資による需要の創出を最優先すべきだと主張しています。

サマーズは、公共投資が、すべてを解決すると言っているのではなく、
すべての解決の必要条件だと言っているのです。

今は、とにかくデフレ不況をどうにかしなければ、
何も始められません。

要は、政策の優先順位の問題なのです。この辺は、
構造改革論者には是非とも分かっていただきたいところです。

ところで、積極財政派は、今や、サマーズに限りません。
J・スティグリッツはもちろん、P・クルーグマン、
C・ローマーらアメリカの主要な経済学者たちの多くが、
財政政策の必要性を主張しているそうです。

積極財政派をさんざん馬鹿にして得意になってきた
日本の経済学者たちが、サマーズもクルーグマンも
「マンデル=フレミングの理論も知らない」とか言って、
勇ましく批判してくれることを私は期待しております。

PS
東田剛とは無関係ですが、中野剛志さんの評論集
『反官反民:中野剛志評論集』が発売中です。
とても良い本なので、ご一読を。ちょっと分厚いですが、
読み出したら止まりません。
http://amzn.to/TbD1P2

関連記事

アーカイブス

【上島嘉郎】東日本大震災から私が学んだこと

アーカイブス

【佐藤健志】最近の紅白がつまらない理由

アーカイブス

【藤井聡】 マスコミの日本経済の過剰な「楽観報道」:「内需GDP」は四期連続ゼロ&マイナス成長

アーカイブス

【東田剛】石原慎太郎氏の会見にがっかり

アーカイブス

【藤井聡】忘れられた日本人

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】政府与党の「増税」断行で、日本の「先進国からの脱落...

  2. 2

    2

    【三橋貴明】MMT週間が始まる

  3. 3

    3

    【三橋貴明】数字は残酷で素晴らしい

  4. 4

    4

    MMT(現代貨幣理論)とは、「現代社会の実態に即した、貨幣に...

  5. 5

    5

    【竹村公太郎】不思議な日本共同体(その3)情報共有の日本共同...

  6. 6

    6

    【三橋貴明】ステファニー・ケルトン教授の出演

  7. 7

    7

    【小浜逸郎】熊さん、増税に大いに憤慨

  8. 8

    8

    【室伏謙一】その場しのぎの御都合主義の説明の先にある外交の破...

  9. 9

    9

    【三橋貴明】史上最悪の緊縮政権

  10. 10

    10

    【施 光恒】外国人労働者受け入れは誰の利益なのか?

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】政府与党の「増税」断行で、日本の「先進国からの脱落...

  2. 2

    2

    【三橋貴明】ステファニー・ケルトン教授の出演

  3. 3

    3

    【藤井聡】「事を荒立てず、仲良くしようとする」だけの、情けな...

  4. 4

    4

    【三橋貴明】思想の対立

  5. 5

    5

    MMT(現代貨幣理論)とは、「現代社会の実態に即した、貨幣に...

MORE

最新記事

  1. 未分類

    【saya】TBS〝音楽の日〟〜歌は世につれ、世は歌に...

  2. 日本経済

    【三橋貴明】数字は残酷で素晴らしい

  3. 日本経済

    【三橋貴明】MMT週間が始まる

  4. 未分類

    【竹村公太郎】不思議な日本共同体(その3)情報共有の日...

  5. 政治

    【小浜逸郎】熊さん、増税に大いに憤慨

  6. 日本経済

    【藤井聡】政府与党の「増税」断行で、日本の「先進国から...

  7. 政治

    日本経済

    【室伏謙一】その場しのぎの御都合主義の説明の先にある外...

  8. 日本経済

    【三橋貴明】史上最悪の緊縮政権

  9. 日本経済

    【三橋貴明】社会科学からのアプローチ

  10. 政治

    日本経済

    【施 光恒】外国人労働者受け入れは誰の利益なのか?

MORE

タグクラウド