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2013年6月24日

【三橋貴明】新聞産業のカラクリ

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】
●消費者と生産者
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11556403747.html

例えば以前は1000円だった製品(野菜にしましょうか)が800円に値下げされたとして、消費者は喜びます(三橋も喜びます)。

「ああ、安く買えた。嬉しいっ!」

というわけでございますが、この時、野菜の販売に関わった方々の所得が必ず落ちています。具体的には、野菜を生産した農家、野菜を運んだ流通業者、野菜を販売した小売店などです。それぞれ「野菜の生産」「野菜の運搬」「野菜の販売」という形で「労働」し、付加価値(生産、運搬、販売)を生み出し、生み出した付加価値の対価として所得を得ているわけです。皆さんが八百屋さんやスーパーで野菜を買ったとき、「野菜の販売」に関わった方々の「労働の価値を下げている」という話なのでございます。

無論、野菜の値段が下がっても、販売個数が増え、関係者の所得が増えているのであれば問題ありません。とはいえ、現実にはデフレ期の消費者は、

「安く買うか、もしくは可能な限り買わない」

という消費行動を採るため、野菜の販売に関わった人々の所得は必ず下がります。すると、彼らは「所得が下がった。これではおカネを使えない」というわけで、次の消費や投資を減らし、別の誰かの所得を引き下げてしまいます。すると、今度は所得が下がった「別の誰か」が消費や投資を減らす、と、どこまでも「価格下落」と「所得縮小」の悪循環が続いていくのがデフレーションです。

ポイントは、モノやサービスの生産者と、モノやサービスの消費者は、マクロでみると「同一人物」という話です。我々国民は、時に消費者となり、時に生産者となるわけです。

ところが、バブル崩壊後(それ以前からですが)、やたら「消費者目線」「消費者利益」という言葉が使われるようになり、日本国内で「価格が下がることは良いことだ」という認識が広まりました。とはいえ、日本国民はそろそろ「モノやサービスを安く買うこと」は、生産者の労働の価値を下げている行為であることに気がつかなければなりません。

もちろん、全体的に物価が上昇しているインフレ期には、「モノやサービスを安く買うこと」は正しいわけです。インフレ期に消費者がモノやサービスを安く買おうとすると、企業の価格競争が激化し、生産性が向上し、インフレ率が抑制されます。とはいえ、デフレ期にまで同じことをやってはいけません。

振り返ってみると、現在の日本国内で「常識」とされていることは、基本的にはインフレを前提にしていることが分かります。「市場競争の激化は正しい」「独占禁止法の強化は正しい」「メーカーが定価として小売価格を決定するのはおかしい」など、確かに高度成長期からバブル崩壊までは正しかったのでしょうが、今は違います。

ところで、これほどまでに各産業で価格競争が激化している中、独占禁止法の例外規定により、販売店に在庫を持たせているにも関わらず、定価販売の強制が認められている業界があります。すなわち、新聞産業です。

もちろん、書籍や雑誌、CDなども定価販売が一般的ですが、あれはメーカー側(出版社等)が委託販売をする形式を採っているためです。本屋さんは、売れない本については返品ができます。返品可能な委託販売であるからこそ、定価販売の強制を認めているのです。

それに対し、新聞は販売店の在庫になります。新聞社側は「不要な在庫は納品していない」と言い訳するかも知れませんが、いわゆる「押し紙(配られない新聞)」という、新聞社から販売店への在庫の押し付けがあるのは歴然とした事実です。

余った新聞は、販売店の在庫である以上、値下げ販売をしても構わないはずですが、新聞特殊指定により「定価以外の販売は禁止」となっています。断言しますが、日本で最も市場競争から「隔離」されているのが、新聞とテレビなのです。(テレビは電波利権という既得権益による)

自分たちは価格競争に陥ることから「保護」されているにも関わらず、紙面や電波で「市場競争は正しい! 消費者目線に立つべき!」などとやっているのが新聞とテレビというわけでございます。消費者目線だの消費者利益だの主張するならば、まずは自ら「市場競争」の荒波に身を投じ、価格競争の激化、特にデフレ期の価格競争激化がどれほど悲惨か、身を持って体験するべきだと思うわけです。

朝日新聞が一部10円に値下げをしたら、三橋といえども買ってあげてもいいですよ。

PS
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