日本経済

2020年8月18日

【室伏謙一】今目指すべきは「国産国消」

From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表

 

 昨日17日、2020年4~6月期の四半期別GDP速報が発表されました。結果はご承知のとおり、前期比で名目マイナス7.4%、実質マイナス7.8%、年率換算ではマイナス27.8%と、戦後最悪のマイナス成長となる見込みとなりました。四半期のマイナスの値が一桁台なのは、昨年10月の消費税増税により四半期GDPが既に落ち込み、その次の四半期では消費税増税+新型コロナショックで更に落ち込んでいたことがあります。つまり、既に落ち込みまくっていたところにそれを上回る勢いで落ち込んだということです。

 中身を少し詳しく見てみましょう。家計最終消費支出は、名目でマイナス8.8%、実質でマイナス8.6%と大幅な落ち込みですが、これも昨年10-12月期以降連続して落ち込んでいますし、持ち家の帰属家賃分を除けば名目でマイナス10.6%、実質でマイナス10.4%と更に大きく落ち込んでいます。

 次に財貨・サービスの輸出ですが、こちらは名目マイナス21.4%、実質でマイナス18.5%とかなりの落ち込みです。新型コロナウィルスの世界的な感染拡大で人やモノの動きが止まったに等しい状態になったわけですから、当然といえば当然ですが、今度はこうした値がGDPの増減にどの程度影響したのかを見てみましょう。

 内需の寄与度が名目マイナス5.5%、実質マイナス4.8%、外需の寄与度が名目マイナス1.9%、実質マイナス3.0%です。ここから分かることは、一つは国内消費の収縮が著しいということ、次にデフレが更に進んでいるということ、そして、我が国経済が輸出に左右される度合いが増えてしまっているということです。

 ということになれば、国内消費を復活させて伸ばすとともに、輸出への依存を低めていくことが喫緊の課題ということになるはずです。

 加えて、今回の新型コロナショックは人やモノの国境を超えた動きをほぼ止めてしまいました。その結果として、輸入への依存が高い産業やサプライチェーンをグローバル化、つまり海外に主要な生産拠点を置いてしまっている産業は大打撃を受けました。実際、輸入も減少してきています。

 ということになれば、どうしても海外から輸入しなければならない財や、海外に生産拠点を置かざるをえない財を除いて、基本的には国内生産、そして国内消費という経済へ舵を切ることが必要というより必須のはずです。つまり、「国産国消」です。

 そのためには地域へのインフラ投資をはじめとした財政支出の拡大、採算性という面では悪いが国民の生活に必要な財を生産する産業(例えば農畜産業ですが)への手厚い財政的支援、無用で過剰な競争とそれによる供給破壊や賃金低下を防ぐための規制の強化、株主ではなく従業員も社会もその企業が所在する地域も大切にする企業への回帰を図るためのコーポレートガヴァナンス改革の廃止とそれ以前(1997年、平成9年以前)への回帰、端的に言えば構造改革の中止・廃止が必要になります。

 以上書いてきたことは、よく読めば当たり前じゃないか、と感じられた読者の方は多いかと思いますが、現状では一つも前進していないどころか、着手、否、検討すらされていません。

 それどころか、緊縮、増税、グローバル化推進、構造改革推進といった真逆のことが検討され、実施されようとしているというのが実情です。

 よって、皆様には今回の「戦後最悪」と評されるGDP四半期速報の公表を契機として、今何が必要なのかという認識を新たにしていただくとともに、誰が正しい認識を持っていて、誰が間違った認識でこの国を破壊しようとしているのか、しっかり見極めていただきたいと思います。

 「誰が」とは、勿論、政治家、学者・専門家、コメンテーター、言論人です。そして正しい認識を持っている方についてはそれを評価するとともにそのことを広め、間違った認識を持っている輩については徹底批判するとともに、何かハッシュタグでも付けて拡散してあげてください。

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【室伏謙一】今目指すべきは「国産国消」への3件のコメント

  1. 「国産国消」、素晴しい言葉です。

    小生は、これを相似形に小さくして、地方政治経済にも適用すべきと思います。

    即ち、地元の人を地元で雇用する「地人地用」、
    地元のお金を地元で費消・投資し、外部へ流出させない「地銭地投」
    等々。

    地方財政を切詰め「財政再建」させるために、本来、自治体自らが責を負うべき行政事務を次々に外部委託(外注)し、益々資金が外部へ流出するばかりでなく、運営当事者でなくなることで事務能力も低下するという一層の貧困化が全国の地方自治体で続いています。

    小泉内閣の「三位一体改革」は、物の見事に大失敗に終りました。我が町でも、遂に地方交付税交付金の予算基礎である経費の積上方式が廃止され、総額(抑制)方式が採用となり、益々サービスが細る一方です。

    経費が嵩むからと、もう何年も前から、60年前に教育への輿望を担って建設された小中学校のプールが廃止されて更地になっています。今の義務教育は、金づちを量産しているのです。

    これこそ、将来世代への大きなツケ、負の遺産。

    室伏さんは、総務庁系とはいえ、旧自治省を包摂した総務省のご出身であり、これら窮状は、よくご存知と思います。今後とも、地方行財政を含め、提言を続けられることを切に希望致します。

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  2. 大和魂 より

    そうですね、ではどうすれば良いのかは、わたくしの自治体で考えると先頃まで副知事の職にありながら政治家に転職した小野泰輔レベルのカスは採用しない事かなと心底に思いました。つまりこんなのが戦前では近衛文麿の世話人だったりだとか長州閥の岡敬純とか石川真吾 などと同じレベルの馬鹿たれで、五十年前なら中曽根康弘とか三木武夫などのクズ政治家たちです。ちなみに現状ではパフォーマンスを敢行する小泉親子とか石破茂とか小沢一郎やら前原誠司やら維新の会を含めた野党の連中であり財務省をヨイショするボケたちですよね!それから学者では舛添要一とか北岡伸一とか三浦瑠麗なとの低次元で役立たずの国際政治学者とか主流派経済学を猛烈に押し込む緊縮財政を唱える連中で竹中平蔵とか日本財団などに生息している馬鹿たれどもですよね!またメディアでは池上彰とかホリエモンとか佐藤優とか百田尚樹とか橋下徹とかのゴミ掃除が必要になりますから、つまりはそれからが江戸幕府の再来となるわけで、それが理想ですね。また欲を言えば法務省と財務省と総務省と文科省を改革すれば、それが完成できると思います。

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  3. 神奈川県skatou より

    >それどころか、緊縮、増税、グローバル化推進、構造改革推進
    >といった真逆のことが検討され、実施されようとしているというのが実情です。

    さらに悪いことに構造改革の美名の先には、レントシーカーが国や公共団体の事業を政治権力に近づき奪うまでありますね。そのとき悪行を正当化する標語として「民活」がありますが、これも奇妙な話です。

    というのは「採算」が民間の本質ではない、からです。

    民間企業の本質は価値提供です。その結果として対価を得て、企業は継続できる、という認識に立てば、民活の本当の意味とは、行政が何らかの統一尺度で測られ、価値提供が十分な組織(役場)は維持され、そうでない組織は維持されない、ということが、
    本当の民活ではないでしょうか。
    つまりカネという尺度は行政の価値にならないのでは、ということです。できるかもしれませんが、その評価は税収のような単純なもので良いかどうか、です。住民増、地価上昇率、誘致企業数???

    もしも地域の行政の価値を測る物差しがあるとすれば、その物差しで合格した役場組織はさらに予算人員を確保して担当する行政区域を増やすことを可能にし、そうでない役場組織は、組織の存続にも見直しが入る。それが本当の意味での民活でないでしょうか。

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