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2020年8月17日

【三宅隆介】[特別寄稿]PCR検査の拡大と大東亜戦争の敗因

From 三宅隆介@川崎市議会議員

昭和26年5月3日、連合国総司令官だったマッカーサーは、米国上院の軍事外交合同委員会に招聘され、日本が戦争するに至った理由を尋ねられました。

彼は…
①日本には近代国家を運営するための天然資源が何もないこと
②それらの多くがアジアの海域に存在していたこと
③これらの供給が断たれたら日本国内で1,200万人規模の失業者がでていたこと
…を前置きしたうえで、次のように述べました。

Their purpose, therefore in going to war was largely dictated by security.
(従って、日本が戦争に突入した目的は主として安全保障の必要性に迫られてのことだったのです)

敵の大将であるマッカーサー自身ですらこのように述べているのだから、戦後を生きる私たち日本国民は「戦争したこと自体」を反省するのではなく、「なぜ日本は負けたのか」を検証し反省しなければならない。

米国は、既に日清戦争直後から対日戦争計画(対日戦略プラン)を周到に練っていました。

いわゆるオレンジ・プランです。

ただ、それはあくまでも「戦略プラン」であり「軍事力整備計画」ではありませんでした。

一方、我が国は日露戦争以後、仮想敵国を陸軍はソ連、海軍は米国とそれぞれに定め、脅威対抗論で防衛力を整備しました。

軍事力整備は脅威対抗論ではなく、戦略目的を明確化したうえで整備されなければなりません。

「ただ脅威だから…」という理屈で整備したら際限がない。

しかし帝国陸海軍はその愚を犯しました。

具体的には、陸軍はソ連の脅威に対抗し「50個師団」、海軍は米国の脅威に対抗し「八八艦隊(戦艦8隻、大型巡洋艦8隻)」とかいう軍備構想を建てました。

結果、陸軍は予定外の敵(米国)と戦うこととなり、海軍は予定の敵と戦ったものの、その敵の懐の深さと科学技術の進歩を見誤り、自分たちに都合の悪い情報の一切を無視しました。

むろん、陸と海で脅威認識が異なっていたことも大問題でした。

戦略とは、目的と手段に関する意図的な調整によって描かれます。

戦略が破綻する最も一般的なパターンは二つのミスマッチにありますが、大東亜戦争時の帝国陸海軍は戦略そのものを見失っていたといっていい。

戦争末期には、いったい何のために戦っているのかすら怪しいものでした。

そもそも陸軍と海軍との一体的な戦略などなかったのですから。

しかしながら、戦後の日本は、ただただ戦争の悲惨さを嘆くばかりで、この種の検証や反省を怠ってきました。

ゆえに、日本の政府もメディアも国民も、新型コロナウイルスによるパンデミックという国難に直面してもなお、大東亜戦争のときと同じ過ちを繰り返しています。

新型コロナウイルス・パンデミックという敵に直面した今、その戦略目標は…
①死者を出さないこと
②経済を疲弊させないこと
…以外にありません。

①②の戦略目標を達成すための手段とは何かを、科学的な検証をもとに医学的・経済的観点から政策決定がなされなければなりません。

例えば、「心配(脅威)だから…無症状者へのPCR検査を拡大しろ!」という理屈にいかなる戦略性があるのか、はなはだ疑問です。

米国内科学会の調査報告によれば、無症状感染者がPCR検査を行った場合の偽陰性率は、下記のグラフのとおり67〜100%です。

無症状感染者が、たった一度のPCR検査で陰性とされ「お墨付き」をもらい街を闊歩することの危険性を指摘せざるをえません。

また、PCR検査数と戦略目標である「死者を増やさない」ことに、残念ながら因果関係も相関性もありません。

そのことは、信頼の置ける非営利団体が発表する情報サイト『Worldmeter』が明らかにしています。

そこで『Worldmeter』から、主要国のPCR検査数と新型コロナウイルスによる死者数を下記のとおりグラフ化します。

ご覧のとおり、英国、米国、スペインなどは、羽鳥のモーニングショーで玉川何某が喜びそうなほどにPCR検査数を拡大してきた国ですが、残念ながら新型コロナウイルスによる死者数もまたトップクラスです。

あるいはフランスなどは、ギリシャよりもPCR検査数を増やしてきましたが、死者数をみるとギリシャの22倍(単位人口あたり)になっており、即ち、PCR検査の拡大が必ずしも死者数の抑制には役立っていないことがわかります。

因みに、PCR検査の拡大で効果を上げているとされる韓国、ニュージランド(NL)などは、警察権力等を行使することで感染者や濃厚接触者をほぼ完全に追跡しフォローしています。

即ち、上のグラフが示していることの一つは、PCR検査の拡大は警察権力や国家権力による強制力を行使した場合のみ効果的であるということです。(政府が何もせずに成果を上げているのは日本だけ)

少なくともPCR検査の拡大が死者数を抑制する、という科学的根拠は見当たりません。

一方、左翼区長で有名な世田谷区長は「いつでも、どこでも、何度でも」をキャッチフレーズにPCR検査を独自に拡大するという。

いわゆる“世田谷モデル”です。

「いつでも、どこでも、何度でも」とはいえ、92万人の世田谷区民がたった一回のPCR検査を受けるには、仮に1日3,000件の検査能力があったとしても300日を要することになります。

しかも、くどいようですが無症状感染者の偽陰性率は、67〜100%です。

それに、1日3,000件の検査能力を有するための人員、機材、施設、財源、フォロー体制(感染が確認されてもフォロー体制が確立されていなければ意味がない)は確保できているのか?

確保できないままに“世田谷モデル”が断行されるのであれば、兵站や補給を無視して断行されたインパール作戦やガダルカナル作戦と同じです。

インパール作戦の作戦計画が練られている際、東條閣下は参謀本部に対して「補給は大丈夫か?」と念押しに確認したところ、参謀らは今さら「不十分です」とも答えづらかったらしく「ダイジョブであります」と答えたという。

その答えづらかった「空気」というのもまた、歪んだ世論が形成されたがゆえにPCR検査の拡大に異を唱えづらくなっている昨今の「空気」に似ています。

よく軍事の世界では、英国の将軍、ドイツの参謀、日本の兵隊で組織された軍隊こそ世界最強の軍隊であるなどと揶揄されています。

大東亜戦争においても、日本軍は現場で戦う将兵たちが一番優秀でした。

だから、例え無謀かつ無能な作戦計画であっても、現場は異常なほどの努力と頑張りによって奮戦しています。

その姿はまるで、コロナ禍の日本における医療施設、介護施設、保健所などの各現場の職員の皆さんが、日夜過酷な状況下で闘っておられる姿に重なります。

政府は右往左往するばかりで、「欲しがりません勝つまでは…」みたいな世論が形成されつつあります。

そして、「いつかは神風が吹いてくれる…」と言わんばかりにPCR検査の拡大に期待を寄せるその姿は、まるで神風特攻、あるいは戦艦大和の沖縄特攻に最後の望みを託す姿に似ていなくもない。

安倍のマスク、GoToトラベル、PCR検査の拡大等々、数え上げればキリがありませんが、無能で非科学的は作戦計画をたて、それを実行して混乱するのは敵ではなく現場であり日本国民です。

世田谷区のみならず、まずは国策として「新型コロナウイルスによる死者を出さない」という戦力目標に対し、はたしてPCR検査の拡大が合理的な手段であるのかどうかを再考してほしい。

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【三宅隆介】[特別寄稿]PCR検査の拡大と大東亜戦争の敗因への6件のコメント

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  2. 利根川 より

    朝の通勤電車で密集するのはOKだけど、オフィス内では2mの距離を保ってください

    おもしろいジョークだ。
     最近のコロナ対策は、感染症を防ぐことを目的に行われているというよりも「対策が不十分だった」ということで、社会から制裁を受けることを避けるためにやっているといった感じになってきている気がする。
     ときに、きちんとした状況分析とそれに基づいた作戦の立案というのは最も重要なことだとは思うのですが、きちんとした作戦ができあがった所でその作戦を遂行するための道具や人材がいなければ話にならない。
     新世紀のビッグブラザーのほうで見かけたデータですが、全国保健所長会によると1996年までは、保健所の数は全国に800ヶ所以上で推移していたのを1997年以降、延々と減らし続けて今では全国に500ヶ所以下になっているとのこと。
     日本の病院病床数の推移も平成28年には1562(千床)あったのが、平成30年には1555(千床)に減らされている。
     右上も左上も、ここ30年以上「政府の財政収支を黒字化」するために一生懸命に構造改革や無駄削減をやってきましたが、ここにきてそのツケがやってきてしまったようです。
     BESTTIMESに掲載された中野剛志さんの言葉を借りれば

    中野剛志
    「今、経済学者やコメンテーター、あるいはマスメディアは、連日、政府のコロナ対策の不十分さを批判しています。
    しかし、その彼らは、日本は財政危機だと信じ込み、財政支出の抑制を支持してきました。その結果、コロナウイルスが発生する前まで、保健所の数は減らされ、診療報酬は抑制され、国立感染症研究所の予算・人員も減らされ、病床数まで削減されようとしていました。
    これでは、今さら『国民がコロナで苦しんでいるのに、政治家は、まともに働いていない!』などと批判したところで、政治家がまともに働けるわけがなないでしょう」

    とのことでね…。
     それでも何とかしようとあがくのであれば、自民党の安藤裕議員や国民民主党の玉木雄一郎代表の言うように100%粗利保障と減税で

    ・経済的理由での死者数を減らす

    と同時に、”今後のために”医療サービスをはじめとする各種公共サービスの強化を再開し

    ・今後、疫病による死者数を減らせるように資本を蓄積していく

    これをもって全体の死者数を抑えていくしかないのではないでしょうか。
     とはいえ、自公政権内部では減税どころか増税の話をしているそうですし、

    >>
    7月14日の自民党政調全体会議では、「財政規律」を骨太の方針に明記すべきという自民党議員が少なくありませんでした。
     というわけで、同会議において財政規律を主張した自民党議員が誰だったのか、ご紹介いたしましょう。有権者として、我々日本国民、全員が知るべきです。

    衆議院議員
     稲田 朋美 (福井1区)
     石﨑 徹 (新潟1区)
     井林 辰憲 (静岡2区)
     大岡 敏孝 (滋賀1区)
     岡下 昌平 (大阪17区)
     宗清 皇一 (大阪13区)
    参議院議員
     滝波 宏文 (福井)
     松川 るい (大阪)

     なぜか、福井と大阪が多く、石崎と滝波は元財務官僚です。
    >>

    国民民主の玉木雄一郎代表が減税を呼びかけたのに対し、立憲民主党は減税を拒否。国民民主党にしても、増税応援団が立憲民主党に合流するといった動きを見せている。旗色悪いですね。
     それにしても、資本の蓄積というのはとてつもなく長い時間がかかるのに、失うのは一瞬ですね。
     医者や保健師を一人育てるには10年近くかかります。なにせ、免許を取るだけでも最短で6年はかかるわけですし。
     ところが、1996年から1997年のたった1年間で保健所の数は全国で100ッか所も減らされているわけです。
     今回のコロナ禍でいざ医者が足りない保健所が足りないとなっても減らしたものはすぐには戻らない。
     我々日本国民が無駄削減とか構造改革とかいって医療サービスという名の資本を削りに削ってきたせいで今、多くの人が苦しんでいる。
     戦争に対して反省する心があるのであれば、緊縮政策についても反省していただきたいところです。
     
     
     
     

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      1. 利根川 より

         今回の記事とは全く関係のないことで恐縮ですが、TikTokが中国共産党のスパイツールだということでアメリカで禁止されるといった話が上がっていて、日本はどうするのかといった話題が盛り上がっているそうです。

        何を今さら

         日本には昔からエシュロンと呼ばれる施設が堂々と設置されています。エシュロンとはアメリカによって構築された通信傍受システムです。
        欧州連合やエドワード・スノーデンさんの告発によると、有線データ通信ですら盗聴されているそうで史上最強の盗聴機関なのだそう。
         また、一部情報誌では報道されたそうですが、韓国政府のサイバーセキュリティ関係者が、2014年5月下旬に行われた日本政府の内閣官房情報セキュリティセンターとの協議において、韓国政府が無料通話アプリ「LINE」の会話内容を傍受していることを明らかにしたとのこと。
        情報を収集しているとされているのは、韓国の諜報機関である国家情報院。
        LINEというと、すでに日本の多くの人が使っていますし、中には仕事や組合の連絡にまで使っている人も居ます。

        企業のトップ「今後一層の情報セキュリティの強化を図っていく所存」

        そんなことを言っている人に限って仕事の話をLINEでやっていたりするのですよね。情報セキュリティの強化はどうした。
         
        日本の情報なんぞ昔からギられ放題、盗り放題てなもんです。

         日本政府は、外敵や災害などから国民を守る協同組合の親玉として日本国民が設置したものですが、正直、国民を守る意思があるのか疑問なところです。

        >>「ただ脅威だから…」という理屈で整備したら際限がない。>>

         優先順序はつける必要はあると思います。ただ、「やらねばならないことが際限なくある」ということは日本の供給能力を育て支えるための需要が際限なくあるということでもあります。

        ”先人が日本社会に資本を蓄積してきてくれたおかげで、今の日本は昔とは違うのです”

        まあ、その資本の蓄積を近年の政治家官僚はせっせと棄損してきたわけですが…。
         商品貨幣論から足を洗って、多くの国民が政府の財政支出にインフレ率以外に制約はないということを理解できれば、とりあえず最低限のことはできるようになると思います。

         

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  3. takacky より

    習近平襲来に対する神風が新型コロナ
    これを機に脱中国、脱グローバル、脱リベラル!

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  4. 大和魂 より

    そもそも真実の国際社会は碌でなしの金融屋の連中たちが、さまざまな謀略を国際社会に仕掛けてデタラメの侵略を繰り返してきたのが起源なのです。だから国際社会は歪んでおり絶えず暴動とか争いが繰り返されているのです。それも碌でなしの金融屋たちが意図的に画策しているから表向きでは米国はじめ露国とか南北朝鮮とか中国とか仏国など情報統制をしているのですが、実のところは国際社会の首脳も、その金融屋たちと結託して善良な方々から搾取しているのが国際社会の実情なのです。つまりは我が国の先人の方々が戦った大東亜戦争も、それに至る迄にさまざまな謀略が仕掛けられたのでした。それは独国とか伊国などと同じくメディアから政治家など多種多様に謀略されていたのであり、その相手がその他の覇権国などだから勝てるはずもないわけです。ようするに国際社会そのものが歪んだでいる背景の中で日本だけを捉えて当たり前に考えるのは危険でありナンセンスな訳です。しかも我々世代はアラブの春などを始めイラクとかリビアに向けられた謀略からと崩壊の背景を目撃したのですから、かなり罪深い世代だと認識するべきであり告白すれば実は日本に対して背信した恥じるべき愚かな世代なんですよ!

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  5. 神奈川県skatou より

    (コメントしても表示されないのは、なにかNGワードに認識されたのかなぁ。。)

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