From 藤井聡@京都大学大学院教授
世界中に新型コロナウイルスが蔓延した今年の春先。そのパンデミックに対して、各国がそれぞれの対策を図りました。
8月になりその「結果」がさまざまなデータで明らかにされ始めました。
そんなデータに基づいてまとめた一つのグラフがコチラ。
https://www.facebook.com/photo?fbid=2769792269788365&set=a.236228089811475
このグラフは、東アジアと主要な欧米諸国の「100万人あたりの死者数」と「4-6月期のGDP下落率」の関係を示したものですが、実に多くの「感染症対策の真実」を示唆してくれています。
今回は、このグラフから読み取れることをご紹介したいと思います。
(1)アジア諸国の死亡率は極端に低い
まず、このグラフで明らかなのは、東アジア地域の死亡率の低さと、欧米における死亡率の高さ、です。
中国、韓国、台湾、日本の東アジア四カ国の死者数はいずれも100万人中10人未満。一方で、ドイツ、アメリカ、スウェーデン、イギリス、フランスといった欧米諸国は100万人中100人以上。特に、ドイツ以外のこれらの欧米諸国はいずれも500人前後以上となっています。
つまり、(ここでは示していませんが、その他のアジア諸国の死亡率も東アジア諸国とさして変わらない水準である事を踏まえると)アジア諸国の死亡率は、欧米の10分の1~100分の1程度の水準に収まっているのです。
感染症対策が各国によってバラバラであることを考えると、どういう訳かアジアの死亡率が低いのは、対策の相違というよりは、地域的な相違が濃厚にあることが考えられます。
なお、こうしたアジアにおける何らかの免疫力の高さの原因は、しばしば「ファクターX」と呼ばれたりすることは、多くの読者もご存じだと思います。
(2)日本はファクターXがあったのに激しく自粛し、経済下落はアジア中最悪となった
さて、そのアジアだけに着目すると、日本が最も死亡率が多い事がわかります。
しかも、経済下落率も最も高いこともわかります。韓国は-3.3%、台湾はほぼ0%、中国に至ってはプラス成長の中、日本の下落率は-7.8%と、韓国の二倍以上の水準に達しているわけです。
その背景にあるいはもちろん、「自粛率」の高さ。
世界各国の移動量の推移をGoogleが公表しているのですが(World Mobility Data)それによりますと、(中国の移動データは入手できていないのですが)、4月~6月期の移動量の平均下落率は、日本において38%と約4割という水準。この移動の縮小率は(上記データに基づくと)、アメリカと同程度であると同時に、ドイツよりも「激しい」水準。つまり我が国は、ロックダウンをしていないとはいえ、国民の自粛によって、都市活動はロックダウンした国と同程度に活動が抑制されていたのです。
一方で、台湾の移動抑制量は我が国の半分以下の18%、韓国に至っては7%と五分の一以下で抑えられています。
つまり、「ファクターX」のおかげで死者数が限定的であった日本以外の東アジア諸国においては、その「ファクターX」の恩恵を十分に活用するかたちで、自粛量を大幅に抑制したのです。その一方で、我が国はそのファクターXという好条件を活用することなく、欧米と同様、あるいは、それに準ずる程度の自粛による活動抑制を行い、その結果、東アジアの中で最も経済が冷え込むことになったのです(そしてその水準は、後に述べる欧米各国の下落レベルに至ってしまったのです)。
(3)日本はアジアの中で最も激しく自粛したのに、死亡率は最も高かった
では、その自粛によって死者数は低く抑えられたのかというと――先にも述べたように必ずしもそうとは言えません。なんと言っても、もっと自粛しなかった韓国や台湾より、死者数が高い水準になってしまっているのです。
ちなみに、欧米のデータに着目しても、ロックダウンをしたから死者が減った、という結論は、導き出せそうにありません。なぜなら、移動量を3割程度しか抑制しなかったスウェーデンと、7~8割程度の移動を抑制したイギリスやフランス、イタリアとで、死亡率はほとんど変わらなかったからです。というよりむしろ、イタリアとイギリスは、スウェーデンの2倍以上の行動自粛をしていたのに、死亡率はスウェーデンよりも高い水準だったのです。
つまり、自粛が死者数抑制に効果が無いと言うかどうかはさておき、少なくとも激しい自粛、ロックダウンが死者数を抑制するという効果が明確だとは、到底言えそうにないわけです。
(4)結論:日本はファクターXを活用し損ない、効果があるか無いか不明確な準ロックダウンを行い、経済被害を拡大させた
以上の議論を纏めると、日本は折角の「ファクターX」の「幸運」を活用し損ない、他の東アジアの国々は激しく行わなかった「ロックダウン」に準ずる活動制限を欧米レベルでやってしまった。その結果、死亡者が減ったのかどうかは不透明だが、少なくとも、欧米レベルでの経済下落に見舞われることになった―――ということになります。
さらに当方として残念なのは、ファクターXの存在は3月下旬から4月上旬の段階で、それを示唆するデータが既に存在していたという点……。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/2401031323331130
だから、例えばこの当方のSNSで紹介したデータを政府、あるいは、政府系の専門家達が重視していれば(もちろん、安全側に対策を行うことは必要ではありますが、それでもなお)、日本はもっと「かしこく」、過剰自粛を要請しないままに感染症対策ができたこともあった筈なのです(実際、当方はウイルス学の宮沢先生とこうしたデータに基づいて、「一律自粛」でなく「リスクの高い行動の自粛だけ」を要請する、現在我々が「半自粛」と命名している行動方針を、4月上旬の段階で提案していたのです)。
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20200604/
いずれにしても、自粛も適材適所に使うことも必要ですし、その場合に補償を行うことは必須でしょう(例えば、オーストラリアは、そのおかげで経済被害を軽減できている可能性があります)が、だからといって(以上の分析が示すように)あまりに激しい自粛を行うと、(感染症対策としての効果が不明確ではあるが)経済が激しく傷付くことは明確なのです。
今後秋から冬にかけて感染がまた拡大するような事があったとき、かつてのように「ファクターX」の存在を無視した過剰な全面的自粛を要請することなく、こうした検証結果を踏まえた、より副作用の少ない、そしてより効果的な対策を政府が講ずることを、心から祈念したいと思います。
追申:
平常時の日本は、「ファクターX」のためにコロナに対する強靱性があるように見えます。しかし、「大災害」が起こった折りには、衛生環境が全て破壊され、ファクターXの恩恵が全て消し飛び、欧米のように感染爆発するリスクが考えられます……この問題に対する備えを、今から始めておかなければ、間に合わなくなります。
『感染列島を大災害が襲う~「衛生」列島改造論 序説~』
https://foomii.com/00178/2020082217150770005
【藤井聡】「過剰自粛」で経済下落~ファクターXを経済に活かせなかった日本の悲劇~への8件のコメント
2020年8月28日 4:58 PM
いや、死ななきゃ安い…って
それはいくらなんでも酷過ぎる見かたですよ
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2020年8月28日 5:46 PM
chinkor統計
この世には
けっして信じてはならぬものが
三つある
それは china korea そして 統計
ちなみに
過剰自粛 最高
この国は落ちるところまで落ちて
シャッフルされなければ
何も変わらない かと、、、
この世は夢よ ただ狂え ♪
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2020年8月29日 10:27 AM
一定の効果が見込めると想定された(結果論では違っていたかもしれませんが)ロックダウンよりも、完全なる結果論かつ全く正体不明なファクターXに便乗して自粛緩和したほうが良かった、とおっしゃりたいのですか?
後出しジャンケンにすらならない、科学者にあるまじき発言です。もはや、カルト宗教の教義と変わりがないですよ。
もう、本当にいい加減にしてください!!
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2020年8月29日 11:07 AM
感情的な部分を抜きにしても、ツッコミどころが多いです。
1. 台湾については、初動対応が完璧に近く早いうちに封じ込めに成功した。だから自粛率を低く抑えることができた。原因と結果が逆だと思います。
2. 中国の死者数の数字を鵜呑みにするのはマズいでしょ。かの国の隠蔽体質はよくよくご存じのはずです。仮に中国の本当の死者数が10倍違っていれば、それだけで「ファクターX論」は崩壊します。
3. アジア諸国がファクターXを積極活用したから自粛を抑制したとは断定できないと思います。その国なりの対応策を実施した上で、結果としてファクターXのおかげで助かっていたのかもしれないですし。正体不明な怪しげなものを積極活用しようなんてとち狂った指導者はそうそういないです。
相関関係と因果関係を混同する典型的な詭弁です。
4. GDPの下落率を自粛率だけで語ろうとするのはよくないと思います。その国の死生観、ライフスタイル、産業構造など様々な要素が絡むからです。
例えば、韓国などは元々外需の依存度が非常に高く、コロナの前から米中貿易戦争の影響で輸出が冷え込んでいたので、多少自粛で内需が冷えてもGDPへの寄与度は低いともいえると思います。一方で日本はご存知の通り内需大国なので、内需を直撃する自粛は韓国や台湾と比較してGDPへの影響が非常に高いと言えますね。
この程度の分析、藤井先生なら造作もなくできるはずだと思うのですが、あえてしていないのですか?
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2020年8月31日 1:21 AM
あなたの主張は全般的に全く根拠がありません。
その程度の論で非常に多くのレッテル貼りをしていることにご自身で気付いて すか?
論外なのはあなたの方です
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2020年8月31日 10:17 AM
コメントありがとうございます。
確かに私の指摘は色々拙い部分があったかもしれません。その点は謝罪します。
しかし、こうした素人突っ込みができてしまうぐらいに、藤井先生の分析は、自粛緩和すべきという結論ありきのバイアスが強くかかっている疑義があるというのが私の考えです。
ファクターXはまだ仮説に過ぎず、メカニズムはおろか存在すら立証されていないものです。
そんなあやふやなものを根拠にして自粛緩和を論じることの危うさを私は指摘しているつもりです。
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2020年8月30日 12:41 AM
コメント欄なんてあったのですね(汗)
いつもデータの詳細な分析ありがとうございますm(_ _)m
ええと、日本は結果的に欧米並みの激しいロックダウンをしたのに、ファクターXに身を任せた他アジア諸国のゆるゆるロックダウンしかしてなかった国より死亡率が高かったと…。
(^_^;)
自粛とわ…(^_^;)
これもう、財政出動のきっかけにしないと報われないですよ?
日本は中央銀行があるから財政破綻しないんだと気づき実行することは、どちらにせよ日本の課題です。あと消費税の見直しですよね、日本の消費税は構造的欠陥があると聞きますから、そういうことも含めて…今のタイミングで凍結ももちろん。
なんかこう、藤井先生にとって、今の日本って「お茶を吹く」というか「心臓が止まる」ような瞬間がたくさんあるんじゃないのかなって(笑)。
「消費税増税します!」
「今かよ!!!!.∵・(゚ε゚ )」
「8割自粛しましょう!」
「し過ぎや!!!!.∵・(゚ε゚ )」
っていうコント?漫才?が浮かぶんです…(笑)
いつも本当に、お疲れ様ですm(_ _)m
こんな私たちでも、見捨てないで下さいね…?(^_^;)
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