日本経済

2020年4月14日

【室伏謙一】「欲しがりません勝つまでは」が深刻化させる国民の分断

From 室伏謙一@政策コンサルタント/室伏政策研究室代表

 

 新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、7都道府県を対象に、4月7日から5月6日を緊急事態措置を実施すべき期間とする緊急事態宣言が発出されたことにより、様々な店舗で休業や営業時間の短縮、多くの企業・事業所で自宅等における勤務が可能な場合の在宅等勤務が実施されるようになりました。更に、政府は7都道府県以外でも「接客を伴う飲食店」の利用自粛要請、東京都は飲食店の営業時間を午後8時までとするとともに、酒類の提供は午後7時までとするよう要請するに至りました。夜間歓楽街にいる人には警察官を動員して「声がけ」までするとのこと。

 いよいよ自粛要請というより、単なる締め付けの様相を呈してきていますが、休業なり営業時間短縮を強く要請するのに併せて必要な分の休業補償も行うというのであれば、それが誘因になって締め付けをする必要などないわけで、わざわざ警察の手を煩わすまでもないわけですが(こんなことに警察官を動員して、治安の方が手薄になることの方が心配です。)、皆さんご承知のとおり、休業補償が行われる見込みは今のとろ皆無。東京都は「休業協力金」なるものを休業等に協力する店舗に配るようですが、その額はといえば、1店舗なら50万円、2店舗以上なら100万円とのこと。この額をもらっても、一月分の家賃を払っておしまい、家賃と諸雑費の一部に充当しておしまいというところが多いようで、端的に言って休業補償とは程遠いもの。これでは今月で店を閉める、来月以降の営業の見通しが立たないので廃業するといったところが増えてくるように思います。

 加えて、今回の新型コロナショックとも言われる経済への影響の裾野は広く、例えば、外出が抑制されることで、部屋着、普段着の類で生活できるようになると、服飾品が売れない、どこかに伺うという機会も激減しますから、手土産や贈答品が売れない、解雇や休業、事業の中止や延期等で収入が無くなったり激減してしまったりする人も多くなっていますから、そもそも買うお金がない、節約せざるをえない・・・と経済全体でお金が回らなくなる、動きが鈍くなっていっています。

 民間部門でのお金の動きが鈍いのであれば、これはもう政府が大規模な財政支出をするしかない、休業補償、営業休止等によって失われた粗利を100%するしかない、政府がそれに二の足を踏んでいるのであれば、国民としてはデモでもなんでもやって、強く求めていくしかない、そうなるのが自然だと思うのですが、そこは不思議の国ニッポン、なんと真逆の動きがあるのです。

 その一つはこの期に及んでやれPB黒字化目標が、財政規律が、財政再建がといった動きというか主張。その担い手は、おなじみの財務省とそれに連なる御用学者、御用エコノミスト、そして洗脳された政治家たち。

 そしてもう一つは、「欲しがりません勝つまでは」とばかりに飲食店等の営業自粛を声高に叫び、「ぜいたくはできないはずだ」のスローガンよろしく、外食はおろか人の外出にまでケチをつけ、営業している飲食店には「こんなご時世に」と文句をつけ、外出している人々の群れを写真に撮ってはSNS等に上げて「こんなたくさん外出し不謹慎な」とまるで密告か告発のようなことをするといった動き。

 こうした動きの担い手は、一般の人々、市井の人々、ですが、私の見るところ、新型コロナショックでもあんまり困っていない人々、「変化に対応できない連中は新型コロナショックが終わっても生き残れない」とか対岸の火事のように平然と言える人々、「これを機に日本は変わる。これを機に日本の「古い」制度や慣習は変えてしまえ。」と惨事便乗商法で儲けている輩と同じような、不謹慎なことを当然のことのように言える人々のようです。

 こうした方々の頭の中では、休業補償といったものは「甘え」に該当するそうで、この状況にあっても経営努力をしろ、イノベーションが足りない、「ピンチをチャンスに」のようです。(財政再建が〜に洗脳されているということもあるかもしれませんが。)

 現実を分かっていないというか、夢の世界に生きていらっしゃるというか、話にならず、議論にもなりませんが、彼らの周辺にはこうした主張を「そうだ、そのとおり!」と支持する連中もいます。そうした連中は、夢の世界の方々よりも現実に近いところにいるはずなので、決して困っていないわけではないはずですが、不都合な真実からは目を背け、極めて不確実な幻想というか妄想の世界に逃げ込む傾向があるようです。(まるで新興宗教の熱狂的信者ですね。)

 そして、こうした人々、特に周辺の人々が考え、口にするのは、「みんな我慢しているのだから、お前も我慢しろ」といったもの。要は、国等からの営業自粛要請にも関わらず、やむにやまれず営業を続けている飲食店等はけしからん、不謹慎だという主張。

 何をか言わんやですが、彼らの勢いというか動きはその程度に止まりません。休業補償がなければやっていけない、休業補償が死活問題である人たちがデモ等を行うことに対して、「うるさい、迷惑だ」と斬って捨てるようなことまでするに至っているようです。(その一方で、ネット署名運動で「高校の休校を」なんて根拠のない主張や動きについては、その担い手の子供達やそれに便乗する20代の若者達を諫めるのではなく、称賛して更に便乗するか煽る。そっちの方がよっぽど迷惑だと思いますがね。)

 ネット上では、これみよがしに「#stay home」のタグをつけて擬似的連帯感を演出し、絆が、一体感が大事だと臆面もなく書いているような輩が、です。

 まあだいたい絆なんてものは一朝一夕でできるものではなく、歌えばどうにかなるものでもありませんから、そもそも空虚な主張というか話なのですが、それにしてもこの一貫性のなさは呆れ返ります。

 さて、こうした話ってどこかで聞いたことがありませんか?そう、戦前・戦中の日本です。こんなことを続けていたらどうなるかは、歴史を振り返れば容易に推測できますが、そのこと以上に私が特に深刻だと思っているのは、国民の間の分断です。困っている人たち、やむにやまれず休業要請を無視して営業を続けざるを得ない人たち、声を上げて必要な措置を求める人たち、そうした人たちを助けよう、同じ日本国民として少なくとも気持ちを分かち合おう、何かできる協力をしよう、そうした気持ちや思考が、一定程度の人たちには欠落しているということです。

 しかし、この手の人たちは、一定程度と書きましたが、その数は多くはありません。分断の一方と比べればむしろ数は少ないと思います。その違いは何かといえば、主張・情報発信の量でしょう。であるならば、奴らの荒唐無稽、支離滅裂な主張を凌駕する情報発信、主張を行っていきましょう。こんなことで困っている、政府は、地方公共団体はこうした措置を講じることが必要だ、こんな予算、政策は間違っている、○○が足りない・・・身近なこと、切実なこと、そんなことを自分の言葉で発信していきましょう。この「新経世済民新聞」の執筆者の方々のところに寄せてもいいと思いますし、まさに憂国の士である安藤裕衆院議員のような方々のところに寄せてもいいと思います。また、全く現状を分かっていない、危機感のない地元選挙区選出の国会議員のところに意見・主張をぶつけてもいいと思います。

 分断を許さないのではなく、分断を乗り越えるために、是非皆さん、ご一緒に。

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【室伏謙一】「欲しがりません勝つまでは」が深刻化させる国民の分断への4件のコメント

  1. たかゆき より

    緊縮の 極意

    そして だれも いなくなった。。

    欲しがりません もう沢山

    と 兵站を確保すれば良いだけ

    なのに、、、

    財政破綻とやらの 存在しない敵に怯えて

    国民を 見殺し

    唯々諾々と 屠殺される

    羊たち の 沈黙

    その沈黙が 小生には恐ろしい。。。

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  2. 日本晴れ より

    室伏さんの全くおっしゃる通りだと思います。
    こういう時に同じ日本国民叩いて憂さ晴らししてるのは
    右にも左にも居ますね。戦時中もこういう感じだったんだなと思うし こういう時ってメディアは右翼だけが問題視されるが何とてことは無くて左翼も同じであって欲しがりません勝つまではみたいなメンタリティーな人は左右問わず老若男女問わず居るって事です。SNS見てもそう思うしSNSでも老若男女左右問わず
    居ます。

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  3. 大和魂 より

    現在の状況は、財務省とその関係者、それから政権与党の自民党や公明党も、さらに維新の会の寝ぼけた政策の失敗が、内政と外交双方とも砂上の楼閣として、もたらした紛れもなあ人災なんですね!!それを姑息にも言葉巧みにに隠蔽したり取り繕い国民を意図的に混乱させて、責任のがれを企む卑しい輩のカス連中の、なせる技でしかない!それで今度は、与党と立憲民主で更に歳費返納を掲げ、撹乱をより進めることは、政治家としてあるまじきなんだよ!よって、奴らに政治を、やらせないように、海外勢力でも巻き込み政権崩壊を目論むしか術はありませんから、ゴーンとかのバックの勢力と接触するしかないかと思いますよ。

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