日本経済

2019年2月27日

【藤井聡】「アベノミクス」は、結局、やられてなかった。

From 藤井聡(京都大学大学院教授)

「アベノミクス」というと、
ヒトによってとらえ方はそれぞれです。

一般的に、「金融緩和」のことだけを指して、

アベノミクスと呼ぶことが(新聞などでは)多いようです。

が、もちろん、三本の矢がそろってアベノミクス。

そもそも、当方が2012年、
(総選挙後&組閣前の)当時の安倍自民党“総裁”に
提案していた資料に掲載していたのが、
こちらのフローチャート。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1700559520044984&set=a.236228089811475&type=3&theater

この考え方はいたってシンプル。

アベノミクスの全体の目標は、
(実質)賃金を上げて、国民を豊にすること。

そのために、
第一に、「金融政策」で日銀から金融市場に
大量のマネーを供給します、

第二に、そのマネーを、金融市場から
実態経済に注入するために、
徹底的な「財政政策」を行います。

(その際に、その財政でインフラを形成すると、
経済成長はさらに加速されます)

そうして実態経済が活性化すれば、
国民への所得が増えていき、
国民が豊かになっていく・・・

これが、当方のアベノミクスと呼ばれる経済政策の
全体イメージ、でした。

そして、おそらくは、誰が考えても、
「三本の矢」を前提としたアベノミクスというものは、

このイメージにならざるを得ないものです。

では、安倍内閣は実際に、
このイメージ通りに
アベノミクスを展開したのでしょうか?

まず、「金融政策」については、
文句なく徹底的に進められています。
(マネタリーベースが何倍にもなりました)

では、「財政政策」についてはどうかというと・・・
残念ながら、全く進められておらず、
民主党政権の方が、
積極的に展開していた、というのが実態なのです。

こちらのグラフをご覧ください。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1700564250044511&set=a.236228089811475&type=3&theater

これは、
「政府が民間に注入したマネー量から、
政府が民間から吸い上げたマネー量を差し引いた値」
つまり、政府の民間への資金供給量の推移を示しています。

ご覧の様に、安倍内閣が誕生してから、
一貫して、民間への資金供給量は
縮小されてきたのです。

これを、先ほどのフローチャートで言うなら、
本来なら、左側の「金融市場」から右側の「実体経済」
に政府がマネーを注入していかなければならないところ、
それを「やらない」どころか、むしろ「縮小」させて、
右側の「実体経済」から右側の「金融市場」に、
マネーを吸い上げる圧力をかけ続けていった、

という次第です。

これでは、国民の賃金が上昇していく筈はありません。
実際、下記のグラフに示した様に、
安倍内閣下で、実質賃金は、大きく下落しました。

(このグラフは、政府公表値をそのままグラフ化したものです。なお現時点での政府の再集計値を掲載していますが、過去三年分については、集計の仕方をより適切化すればさらに下落する可能性も考えられます。)

ご覧のように、その落ち込みは、
2008年のリーマンショックを遥かに上回っています。
そして民主党政権時代には、何とかリーマンショックからの立ち直りが見られています。

そもそも、上の図にも示されている通り、
民主党政権時代には、GDP比で8〜10%程度、
40〜50兆円程度にも上る大量の資金を政府が民間に供給していたのです。

その結果、安倍内閣下より、民主党政権時代の方が、
国民はまだ豊かだったのです。

そしてこのグラフからも明らかな通り、
安倍内閣下で、一気に賃金を下落させたのはやはり、

2014年の消費増税。

これによって、資金供給量は一気に縮小していきます。

資金供給量は、
安倍内閣誕生時点で40兆円だったのが、
今や、11兆円にまで、実意に三分の一以下、29兆円も縮小しています。

そしてこれによって経済は再びデフレ化しはじめ、
実質賃金は大きく下落したのです。

この下落幅は、リーマンショックよりも、そして、

1997年の増税時よりも、さらに激しいものなのです。

 

ちなみに、この「資金供給量」という尺度は、
別名「財政赤字」と言われます。

したがって、安倍内閣は、
プライマリーバランス黒字化目標なるものを立て、
財政赤字を一生懸命削っていったのですが、
それは、マクロ経済的に言うと、ただ単に、
資金供給量を縮小させたと言う話に過ぎないのです。

つまり、現状において、
アベノミクスが「失敗」していると評価するなら、
それは、アベノミクスそれ自身が悪いのではなく、
偏に、アベノミクスがやられなかったからに
過ぎないのです。

そして、なぜ、アベノミクスがやられなかったのかと言えば、
本来は拡大すべき、
「政府の資金供給量」という数値を、
「財政赤字」と、さも悪いものであるかの様にレッテル張りし、
いそいそと、その縮減に努めたからに他ならないのです。

だから、デフレ化を促進する他無い消費増税が断行され、
今もなお、さらに10%まで上げようという議論が
後を絶たないのです。

今からでも遅くはありません。

「カロリー」は
肥満体質の人々にとっては
「悪」なのかもしれませんが、
栄養失調の人々にとっては、
「善」なのです。

安倍総理でも、次の総理でも誰でもよいので、
(少なくともデフレが脱却するまでの間は)
「政府の資金供給量」に「財政赤字」という
下らないレッテル張りをすることをやめ、
「資金供給量」と正しく呼称しつつ、
それを拡大する取り組みを徹底推進いただきたいと思います。

今のままでは、日本は確実に衰弱し、
国民が貧困化していく他ないのです-――。

追伸1:

表現者クライテリオンでは、こうした議論をじっくり論ずるための場として「表現者塾」を開講します。この機会に是非、ご参加ください。
https://the-criterion.jp/seminar/

追伸2:

表現者クライテリオンの最新号は、平成の「デフレーション」を徹底的に多面的に論じています。是非ご一読ください。
https://the-criterion.jp/

追伸3:

「週刊クライテリオン 藤井聡のあるがままラジオ」では、「自由を叫び続けたから、自由をなくした平成ニッポン」というパラドクスについて、お話しています。こちらもあわせてお聞きください。
https://www.youtube.com/channel/UC9GNcWzLq0k7io20AHjN4qQ

—発行者より—
総理「政権中にこれを破棄できなければ、日本はオシマイ」

三橋貴明と総理との会談時で明かされた真実。

●総理が、三橋との会食をオープンに
(世に公開)してまで国民に伝えたかった事とは…?

●この会食で明らかになった、
私たちの邪魔をする[3つの敵の正体]とは?

●2020年に訪れるかもしれない
日本の危機的状況とは一体何なのか?

日本が発端となり、
2008年のリーマンショックが再来する?

などなどメディアが決して報道しない
「安倍総理の告白」と「日本経済2020年危機」
について解説した書籍を出版致しました。

こちらから詳しい内容をご覧ください。
https://keieikagakupub.com/38JPEC/1980/

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【藤井聡】「アベノミクス」は、結局、やられてなかった。への10件のコメント

  1. たかゆき より

    「アベノミクス」は、結局、
    やら ず ぼったくり

    こんな 舐めたマネをなさってるから
    戦後 主権を持てず
    近隣諸国から 舐められっぱなし、、、

    悪いのは 誰?

    そう、、 小生を含む アホな
    人民 

    道連れ 御免 ♪

    返信

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  2. 赤城 より

    >では、「財政政策」についてはどうかというと・・・
    残念ながら、全く進められておらず、
    民主党政権の方が、
    積極的に展開していた、というのが実態なのです。

    こんなので安倍政権の経済政策を支持できるわけがない。
    民主党政権の方がよほどマシだったわけだ。
    しかも安倍政権は民主党政権のやったよりはるかに強力で多くの
    国家解体政策をやりまくったわけですから
    ずっとレベルが上の売国奴ということです。

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  3. メグザル より

    東京都調布市で飲食店を営む者ですが、確かに民主党政権下でも、もっと街に活気がありました。そして2014年の消費税増税を境に売上げは減り始め、それと歩を合わせるかのように年々街から活気が失われています。人々の身なりも顔色も貧相になったと感じます。
    今回の藤井先生の記事は、以上のことを数値で表していて納得です。消費税10%の増税はあり得ません。むしろ減税して消費を活性化させる方が税収も増えるのではないでしょうか?

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  4. 日本晴れ より

    財政支出もやってないそれでいて増税とは超緊縮のレベルですね
    安倍政権は財政支出もやらずそれでい増税もやってしまった
    超緊縮であってリフレ派に浜田宏一氏に騙されてるんじゃないでしょうか?
    国土強靭化計画ってこれまで予算が付いてるのかと思ってましたけどこの前初めて少しついただけなんですね
    前から国土強靭化ってやられてるもんだと思ってましたが。

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      1. 藤井聡 より

        です、ありがとうございます、おっしゃるとおりでした。正しいグラフを引用しました。混乱申し上げ恐縮です。ただし、基本的な主張は変わりません。急ぎ、改定いたします。ありがとございました。

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        1. 藤井聡 より

          すみません、ネット環境が悪いところで書いていて、校正中の文書が公開されてしまいました。が趣旨は上記の通りです。が、改訂は明日になりそうです・・・ありがとうございました。

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  6. 一市民 より

    契約社員の5年打ち切り問題もひどいです。
    政府の無期化政策が都合の良い言い訳になりました。去年から契約5年目を迎えた契約社員が働き口を失っています。

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  7. 庶民次郎 より

    今回もまったくの正論の素晴らしい記事です。記事の内容とは別なのですが、気になるので言わせていただきます。

    >そして、おそらくは、誰が考えても、
    >「三本の矢」を前提としたアベノミクスというものは、

    >このイメージにならざるを得ないものです。

    >一般的に、「金融緩和」のことだけを指して、

    >アベノミクスと呼ぶことが(新聞などでは)多いようです。

    この二箇所です。
    PCで読んでいるのですが、いつもこのように中途半端に改行されています。読みやすさを考慮してのことだと思いますが、デザイン的に安っぽく見えてしまいます。それで記事の内容の説得力が多少失われはしないかと不安になります。自分だけなら問題ないのですが。

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