日本経済

2016年4月20日

【佐藤健志】熊本地震発生にかんがみ、消費税率の引き下げを!

From 佐藤健志

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かつて日本は「一億総中流」などと言われ、比較的、経済格差の少ない国だとされていた。その「一億総中流」の経済力によって、大きな経済成長を遂げてきた国だった。

しかし、それも「今は昔」。デフレが深刻化するとともに、経済格差の拡大が問題視されるようになっている。

三橋貴明はその原因を政府が「デフレを甘く見ていること」と「実質賃金を軽視していること」と指摘する。特に「実質賃金」は重要なキーワードであるという。

実質賃金とは物価変動の影響を除いた賃金のことだが、要するにモノやサービスを「買う力」を表している。

この実質賃金が、日本では1997年をピークに下がり続けているという。株価が上昇していたアベノミクス初期ですら、実質賃金(=買う力)は下がり続けていたのだ。

なぜ、日本国民の「買う力」は低下し続けているのか。また、この事実はデフレや格差拡大とどのように関係しているのか。

三橋貴明が、デフレの正体やその脱出法とともに詳しく解説する。

『月刊三橋』最新号
「日本経済格差拡大のカラクリ–実質賃金の軽視が招いた大災害」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

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今週は本来、朝日新聞政治部次長・高橋純子さんのコラム記事「『だまってトイレをつまらせろ』 あなたならどうする」をめぐる考察の3回目をお届けする予定でしたが、熊本地震発生を受けて、急遽、内容を変更いたしました。
ご了承下さい。
高橋さんのコラム記事をめぐる3回目の考察は、次週、4月27日に行いたいと思います。

ご存じのとおり、さる4月14日、熊本で最大震度7の地震が発生しました。
わが国の気象庁が発表する震度は、10の階級に区分されていますが、最高は「震度7」ですから、大変な揺れだったことになります。

10階級なのに、なぜ「7」が最高なのかと言うと、震度5と震度6について、それぞれ「強」「弱」の二種があるうえ、「震度0」という区分も存在するため。
0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10階級なのです。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/

14日の地震、マグニチュードは6.5でしたが、4月16日には、最大震度6強、マグニチュード7.3の地震が発生。
これは阪神大震災に匹敵する規模だそうです。

気象庁では、マグニチュードがより大きい16日の地震を「本震」と位置づけ、14日の地震はその「前震」だったと規定しました。
けれども専門家の中には、 「今回(注:4月16日)の地震が本震なのかどうか、まだ分からない」として、さらに規模の大きな地震が今後発生する可能性を指摘する人もいます。
そうでなくとも、余震は数ヶ月にわたって続くかも知れないとのこと。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160416-00010013-nishinp-soci

犠牲となられた方々のご冥福を祈るとともに、被災されたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。

2011年、東日本大震災が発生した際、「今後、日本列島周辺では地震活動が活発化する」といった趣旨の指摘がなされましたが、その通りだったと思わざるをえません。
現に今回の熊本地震については、南海トラフ地震の前兆かも知れないとする主張まであります。
国際情勢のみならず、災害対策という点でも、わが国の安全保障をめぐる環境は厳しさを増しているのです。

となれば、いよいよもって「国土強靱化」を積極的に推し進めねばなりません。
けれども政府が、果たしてそのような方向性を取るかどうかは、決して楽観できないのが正直なところ。
緊縮財政志向、とりわけ公共事業の抑制志向がすっかり定着したわが国では、財源不足を理由に、強靱化への取り組みがズルズル遅れてしまう事態が生じかねないのです。

この懸念をストレートに表明したのが、くしくも4月16日に発売された『表現者』66号に収録されている、藤井聡さんの論考「『国土強靱化基本法』の運用を真面目に考える」。
http://amzn.to/1SSMLJL

論旨を私なりに要約すれば、以下のようになります。
1)国土強靱化基本法が制定されたといっても、具体的な取り組みが遅ければ、強靱化が達成される前に巨大災害が生じてしまう。
2)いいかえれば、強靱化の取り組みはできるだけ迅速になされなければならない。
3)にもかかわらず、現在の日本では財政規律へのこだわり(=緊縮財政志向)から、強靱化に十分な予算を投入できないのが実情である。
4)すなわち、わが国では「巨大災害によって国民に甚大な被害が生じ、国家が深刻な危機に陥ることよりも、政府の借金が増えることの方が怖い」という判断がなされていることになるが、これは本末転倒ではないか。

正論です。
だいたい強靱化どころか、東北の復興も未だ道半ば。
緊縮財政志向に固執するかぎり、「財源がない」という理由、ないし口実により、東北と九州の復興が、どちらも満足になされない恐れだってあります。

今年の3月30日付で本紙に寄稿した「国家の店じまい」ではありませんが、災害にやられた地域から疲弊・衰退が進んでゆき、日本が徐々にしぼんでゆくというシナリオが、現実のものとなりかねないのです。
復興、および強靱化をまっとうに推進するには、経済政策をめぐる従来の流れを変える必要があると言わねばなりません。

そのような方向転換の突破口となりうるものは何か?
提案したいのは、「消費税率の引き下げ」です。

来年4月に予定されている10%への引き上げについては、熊本地震が発生する前より、延期の可能性が高まっていると報じられてきました。
しかし「経済政策をめぐる従来の流れを変える」ためには、ただ延期するだけでは十分ではない。
「今までとは違った方向性に転換する」ことを、象徴的に宣言するのですから、少なくとも8%で凍結、できれば5%への引き下げが求められます。
そのうえで、被災地の復興、および強靱化の達成に関し、十分な予算を投入するのです。

税率を引き下げたら、ますます復興や強靱化の財源がなくなるという主張もあるでしょうが、それによって経済が活性化されれば、むしろ税収は増える可能性が高い。
安倍総理も最近、「消費税率を5%のままにしていたら、税収は今頃もっと増えていただろう」という旨を語ったとの報道がありました。

振り返ってみれば、阪神大震災のときも、東日本大震災のときも、政府は発生からほどなくして、消費税率の引き上げに踏み切っています。
阪神大震災の場合は、2年後の1997年4月より5%への引き上げ。
東日本大震災の場合は、3年後の2014年4月より8%への引き上げ。
むろんどちらも、財政規律重視の発想に基づいたものでした。

しかるに1997年が、わが国の〈貧困化〉の始まりとなったことは、本紙執筆陣のみなさんが指摘するところ。
日本の労働者の実質賃金は、この年を最後に下がりだしたのです。
2014年の増税が、景気にもたらした悪影響については言うまでもないでしょう。
経済が冷え込み、貧困化が進む中で、復興が順調に進むとは信じがたい。

つまりは
「巨大災害によって国民に甚大な被害が生じ、国家が深刻な危機に陥ることよりも、政府の借金が増えることの方が怖い」
どころか
「現に発生した巨大災害から、国民がしっかり立ち直れなくとも、政府の借金が増えなければそれで良い」
という判断を、この20年ほど、わが国は折に触れて示してきたのです。
これでは経世済民も何もありません。

国民の生命と安全を守ることこそ、政府の果たすべき最も根本的な役割のはず。
くだんの大原則に立ち返るためにも、思い切った転換が必要になります。
もとより財務省などは猛烈に反対するでしょうが、総理が(改革ならぬ)救国のドリルの刃となって、それを打破することを期待したいと思います。

なお『表現者』66号には、私も「日本消滅というユートピア」という論考を寄稿したほか、座談会「非常の時を如何に生きるか」にも参加しています。
こちらも、ぜひご覧ください。

<佐藤健志からのお知らせ>
1)従来の流れを変えるには、まず思考停止を克服しなければなりません。それについてはこちらを。

『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
http://www.amazon.co.jp//dp/4198640637/

2)思考停止によって引き起こされた矛盾や混乱、つまりパラドックスについてはこちらを。

『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
http://amzn.to/1A9Ezve(紙版)
http://amzn.to/1CbFYXj(電子版)

3)東日本大震災への対応から浮かび上がった、わが国の問題点についてはこちらを。

『震災ゴジラ! 戦後は破局へと回帰する』(VNC)
http://amzn.to/1lXtSsz

4)古典的名著と呼ばれるこれら二冊は、ともに「国家の非常事態」にどう対処するかを論じたものです。

『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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5)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
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かつて日本は「一億総中流」などと言われ、比較的、経済格差の少ない国だとされていた。その「一億総中流」の経済力によって、大きな経済成長を遂げてきた国だった。

しかし、それも「今は昔」。デフレが深刻化するとともに、経済格差の拡大が問題視されるようになっている。

三橋貴明はその原因を政府が「デフレを甘く見ていること」と「実質賃金を軽視していること」と指摘する。特に「実質賃金」は重要なキーワードであるという。

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この実質賃金が、日本では1997年をピークに下がり続けているという。株価が上昇していたアベノミクス初期ですら、実質賃金(=買う力)は下がり続けていたのだ。

なぜ、日本国民の「買う力」は低下し続けているのか。また、この事実はデフレや格差拡大とどのように関係しているのか。

三橋貴明が、デフレの正体やその脱出法とともに詳しく解説する。

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