日本経済

2019年1月30日

【藤井聡】<拡散希望>Q&A「増税やむなし」と言われたら、こう言い返せ―10の想定問答(中編)

From 藤井聡(京都大学大学院教授)

前回のメルマガでは、

『別冊クライテリオン:消費増税を想定せよ』
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07JHJV5XV

に掲載した、

「増税やむなし」と言われたら、
こう言い返せ―10の想定問答

におきます、前半をご紹介しました。
https://38news.jp/economy/13105

ご紹介したのは以下の五つ。

Q1.
「戦後二番目の景気拡大期」などと言われている今が、
増税のチャンスではないのか。

Q2.
政府は「軽減税率」とかいろいろ対策するから、
増税しても大丈夫じゃない?

Q3.
2014年に増税したけど、今でも成長してる。
やっぱり増税の影響は軽いんじゃないの?

Q4.
「成長させて税金増やす」って言うけど、
これから人口も減るし、増えなかったらどうするの。
無責任じゃない!?

Q5.
今、増税して少しでも借金を減らしておかないと、
将来にツケを残すんじゃないの?

 

これらの回答については是非、
https://38news.jp/economy/13105
をご参照頂くとして、今日は、
残りの「想定問答」の内、
以下の「4つ」についてご紹介します。

ーーーーーーーーーーーーー
Q6.
福祉とか社会保障のためには、
やっぱ、消費増税が必要なんじゃない?

A.
社会保障のために、消費増税は、必要ありません。
むしろ、消費増税をすれば、
安定的な社会保障が不可能になってしまいます。

高齢化社会を迎えるわが国で、
「社会保障」をどうしていくのは、
とても大切な議論です。
でもだからといって、
「消費増税すべきだ!」と考えるのは、
あまりにも短絡的。
というよりもむしろ、
「愚かの極み」と言わざるを得ません。

第一に、先に指摘したように性急な消費増税で、
かえって税収が減り、
将来の社会保障が難しくなってしまいます。

あるいは、経済評論家の島倉原氏が指摘するように、
「生活に困窮している人」それ自身を減らすのが
社会保障政策の目的なのですから、
格差と貧困を拡大する消費増税など
あり得ない選択だともいえます。

第二に、本誌の座談会の中で
元財務官僚で経済学者の高橋洋一教授が指摘するように
「社会保障」のための財源に「消費税」を当てるのは、
「世界の非常識」。
おおよそ社会保障制度は、
飯田泰之准教授が指摘しているように
「世代で閉じた社会保障制度」にしておかなければ、
その持続性が保てません。

にも関わらず長期的な展望も無しに、
目先の財源確保で消費増税をしてしまえば、
経済が不安定化し、将来世代の社会保障財源が、
ますます無くなっていきます。

だから財源確保のためには、
(例えば、島倉氏が主張するように)
「成長」こそが必要なのであり、
(例えば、エコノミストの会田氏や岩田氏が論じたように)
大局的視点の下で「国債」を発行しつつ、
(例えば、高橋氏が指摘したように)
保険制度を見直すことが必要です。
そして、消費増税の代わりに、
例えば塚崎公義教授が指摘する所得税増税や、
岩田教授が指摘した相続税の見直しなどを行えばよいのです。

第三に、消費増税が行われてきた背景には、
法人税減税が繰り返されてきたという
歴史的背景があります。例えば、
経済学者の菊池英博教授が指摘しているように、
法人税が縮小してきた減税分はおおよそ、
消費税増税による増収分とほぼ同水準。

つまり
「法人税減税のために空いた穴埋めのために、
消費税が増税されてきた」
のです。だから、このバランスを見直し、
消費税のかわりに法人税を
増税すべきであるという議論は当然成立します。

このように福祉や社会保障を充実したいなら、
成長すべきであり、
一時的な国債発行の可能性も見据えながら
社会保障制度それ自身をみなすべきであり、
税制そのものを見直すべきなのです。

にも拘わらず、
目先の財源確保のために焦って消費増税をしてしまえば、
成長できず、かえって日本人の社会保障環境は
「最悪」なものとなってしまいます。

ーーーーーーーーーーーーー
Q7.
欧州では20%以上の国も多いんだから、
10%にするくらい当たり前じゃない?

A.
当たり前でも何でもありません。
そもそも日本は、「税率」それ自身が低くても、
総税収に占める消費税の割合は諸外国よりも
「高い」のです。
だからこれ以上税率を上げれば、
「世界で最も消費税に依存する国家」
になってしまいます。

経済学者の菊池英博先生の本誌記事でも紹介されている通り、
額面上の「税率」は、イギリスやドイツ、
イタリア、スウェーデンの方が圧倒的に高く、
20%前後~25%という水準で、
仮に日本が10%にしたとしても、
その半分前後の税率しかない、と言うことができます。

しかし、「総税収に対する消費税収の割合」に着目すると、
日本が10%に増税すれば、
それらの国々よりも高い水準になってしまいます。

最も額面上の税率が高いスウェーデンでも、
「総税収に対する消費税収の割合」は
18・5%に過ぎない一方で、
日本は37%にまで達してしまいます。

こうなっている理由は、
日本だけがデフレ不況なので
所得税や法人税が少ないという事や、
諸外国では食料品などについて
消費税率「0%」という大胆な軽減税率が
適用されている事などが挙げられますが、
いずれにしてもこの様な状況で10%増税をすれば、
日本だけが異様に消費税収にだけ依存する国家になってしまいます。

ーーーーーーーーーーーーー
Q8.
どっかの学者が、
「消費増税で将来世代の不安が無くなって、
かえって消費が増える!」
って言ってたよ。
そういうこともあるんじゃない?

A.
あり得ません。
むしろ増税すれば、
将来が不安定になり、デフレが深刻化し、
人々はますます不安が大きくなって、
消費を減らしてしまいます。

確かに、私たちは将来不安があれば、
消費を控える効果はあります。

しかし、本誌で岩田規久男教授
経済学的な視点から指摘したように、
「日本の財政状況を心配して、
消費を抑制している人は、
いたとしても、きわめてまれな人」
です。ですから、
「消費税によって、財政が改善するから、
皆が安心して消費を増やす」
という現象は現実的にはあり得ません。

むしろ私たちが将来に対して
不安な気持ちを持っているのは、「デフレ不況」
(消費者にとっての「所得」が下落し続けていく状況)
が続いているから。

だからデフレ不況が続く限り、
自分たちの将来の所得は上がらないだろうし、
それ以前に失業することすらあるかも知れない―――
という不安におびえ続けるのです。
それどころか、
消費増税はデフレを深刻化させますから、
ますます不安を高め、
消費はさらに縮小していくことでしょう。

ーーーーーーーーーーーーー
Q9.
「増税反対」って言ってる人たちって、
どうせ「民衆の受け狙い」で言ってるだけじゃないの?

A.
あり得ません。
日本の経済や財政のために必要な
「増税凍結」という方針が、
たまたま、
民衆に支持されているにすぎません。

確かに、民衆は
(例えば、評論家の小浜逸郎氏が論じているように)
「増税反対」を支持するであろうと予期されます。

そして、「民衆が支持するものが間違っている」
ということも当然あり得ます。

そして、中には「民衆の受け狙い」で
増税反対を主張する政治家もいることでしょう。

しかしだからといって、
「民衆が支持するものは、『常に』間違っている」
とは当然言えません。

そもそも「民衆が支持するものは、『常に』間違っている」
というのなら、
一刻も早く民主主義を辞めるべきだ、
ということになりますよね。

そういう議論はさておき、そもそも、
それぞれの政策が正しいかどうかは
民衆人気とは無関係に
客観的な分析に基づいて判断すべきもの。

そして、本誌に寄稿された専門家の皆さん
口を揃えて言うように、例えば
「データという事実」に基づいて論じた三橋貴明氏

「現在の日本は消費税の増税どころか、
減税、あるいは『消費税廃止』を
検討しなければならない局面である」

と断じ、
野口旭教授が経済学に基づいて
「拙速な消費増税によってその後の5年10年を無駄にする」
と主張し、さらには経済学者の飯田泰之氏
『財政再建』の視点からすら

「消費増税は消費の減少を通じて
景況を悪化させ,本来得られたであろう
税収を失うだけではない.
景況の悪化による政権の安定性の低下は
より大きな財政の課題である社会保障改革を遅らせ,
財政危機の深刻さを増大させる」

という危機があると指摘している様に、
「このタイミング」での消費増税は
「経済」の視点からも「財政」の視点からも、
そして「実証的」にも「理論的」にも
最悪の愚策でしかないのです。

そうした「消費反対論」が、
たまたま「民衆の支持を得ているから」
というだけの理由で
「民衆の受け狙いだ!」と批判するのは、
無根拠な「誹謗中傷」であり、
単なる「濡れ衣」に過ぎないと言えるでしょう。

・・・

以上、これで10の想定問答の内、
9つまでご紹介しましたが、
あともう一つのQ&Aは

Q10.
新聞やテレビで、
学者や専門家が消費増税すべきだって言ってるけど、
彼ら、嘘ついてるの?

というもの。これについてお答えしてると、
また長くなってしまいますので・・・
次回は、このQ10について、
じっくり、たっぷりお答えしたいと思います。

いずれにせよ、
以上の「回答」をさらに詳しく知りたい、
という方は、
『別冊クライテリオン:消費増税を想定せよ』
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  1. コメントに返信する

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  2. とすくん より

    「テレビに出ている学者はウソついてるの?」…ホントに新聞、テレビって何様なんでしょうね?と常々憤慨する日々です…。

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