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2016年11月11日

【施 光恒】「脱グローバル化」時代の秩序構想を!

From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

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おっはようございまーす(^_^)/

米国の大統領選挙、トランプ氏が勝ちましたね。
開票が行われていた水曜日の午前中からお昼ごろまでは、
私は仕事が手につかず、ネットであちこちのサイトの
開票速報を見て回っていました。

●「脱グローバル化」の時代

今回のトランプ氏の勝利で、現在の世界は
「脱グローバル化」(ポスト・グローバル化)の
流れのなかにあるということが明らかになりました。

最近、日本でもすっかり著名になった
フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏は、
最近、「グローバル化疲れ」(globalization fatigue)
という言葉をよく使っています。

米国や英国、その他のヨーロッパ諸国の大多数の人々は、
新自由主義に基づくグローバル化路線に
すっかり疲れ切っていると指摘します。

グローバル化に伴う「格差拡大」、「移民の急激な増加」、
「民主主義の機能不全」、「グローバル・エリートの身勝手さ」
などに辟易し、その疲労感が限界に達しつつあるというのです。

1980年代からグローバル化を先導し続け、
良くも悪くもグローバル化が最も進展している
米国や英国の人々は特に「グローバル化疲れ」を顕著に感じています。

例えば、経済的格差について言えば、現在、
先進国で最も格差が大きいのは米国であり、
二番目に大きいのは英国です。

グローバル化の進展がもたらす疲労感や徒労感が、
英国のEU離脱や米国のトランプ現象の背後にあるとトッドは見ます。

日本の多くの政治家や財界人、マスコミ関係者は、
「現在はグローバル化の時代だ!」と相変わらず
喧伝していますが、トッドによれば、
グローバル化の時期はもう終わりつつあります。

トッドは、戦後社会を非常に大まかですが三つの局面に区分します。

第一の局面は、1950年から1980年までの経済成長期です。
これは福祉国家の時代でもあります。

各国は安定的成長を経験し、
庶民の所得も上がり、
消費社会が到来した時代です。

第二の局面は、サッチャーやレーガンが現れた
1980年ごろから始まる経済的グローバル化の時期です。

第三の局面は、トッドは2010年ごろから
徐々にその兆しがみられるとしますが、
「脱グローバル化」「国民国家への回帰」に向かうものです。

この区分に表れているように、トッド氏によれば、
グローバル化の時代はすでに終焉を迎えつつあります。

現在は、グローバル化の生み出した様々な問題が
社会を疲弊させ、その流れを立ち行かなくし、
「脱グローバル化」「国民国家への回帰」という反転が
英米をはじめとして各国で顕在化してきている時期だとみるべきです。

今年六月の英国のEU離脱の決定、
加えて今回の米国でのトランプ大統領の誕生は、
この「脱グローバル化」への流れを明確化し、
そして実際上、それに拍車をかけるものなのです。

●周回遅れの日本

残念ながら、安倍政権は、現在のこうした流れを完全に見誤っています。
そして周回遅れのグローバル化に突き進んでいます。

安倍政権は、あろうことか、昨日TPPを衆院で採決して通してしまいました。

まったく間抜けです。日本の国益にかなっているかどうか
大変疑わしいTPPをなぜやみくもに推し進めるのか理解できません。

日本の一部の政治家や財界人、マスコミ関係者にとって、
「グローバル化」はもはや信仰の域に達しているのかもしれません。

あるいは、先日、野党議員が国会で質問していたように、
11月、12月の首脳会談で日本がロシアに接近することを
オバマ政権に認めてもらう代わりに、TPPの速やかな
国会承認に全力を尽くす、などといった密約でも交わしているのでしょうか。

英国や米国の出来事を鑑みれば、今後の世界が
「脱グローバル化」のほうに急速に舵をきっていくのは目に見えています。

安倍政権も、もはやTPPに固執するのはやめるべきでしょう。
TPPのような前時代的なものとなりつつある
構想にこだわっている暇はありません。

安倍政権をはじめTPPの賛成派は、
TPP推進の理由としてしばしば
「日米で今後の世界秩序を作りだすためにTPPは絶対に必要なのだ!」
という趣旨のことを叫んでいました。

ですが、今回のトランプ氏の大統領当選で、
すっかり潮目は変わっています。

大統領選で米国民は、TPPに代表される
新自由主義的な秩序の建設を否定しました。

現在、日本がなすべきことは、
トランプを選んだ米国民と協調しながら、
TPPなんかよりもずっとましな
「脱グローバル化」時代の世界秩序の
あり方の模索を始めることなのです。

●「グローバル化」の反対は、「鎖国」でも「孤立主義」でもない

私は、ここ数年、「英語化」批判やTPP批判といったかたちで、
新自由主義に基づくグローバル化に反対してきました。

講演などでも、しばしばグローバル化路線を厳しく批判してきました。

そのため、講演のあとなどで
「施さんはグローバル化を批判していますが、
 では「鎖国」を勧めるのですか」、
あるいは
「「孤立主義」を推奨するのですか」
などとたまに尋ねられます。

私は、この二分法は、まずいと思います。
「グローバル化」の反対とは「鎖国」や
「孤立主義」であると考えてしまう二分法です。

「グローバル化」の反対を「鎖国」
「孤立主義」だととらえるのは極端です。

「グローバル化」の反対概念は、
「鎖国」ではなく「国民主権の回復」でしょう。

新自由主義に基づくグローバル化によって失われたもの、
そして英国のEU離脱の際に明らかでしたが
人々がグローバル化を否定することによって
取り戻そうとしているものは、国民が物事を決め、
自分たちの政治的行く末を自分たちで制御していく権利なのです。

ですから、「脱グローバル化」の世界秩序は、
各国の国民主権の尊重を軸に据えたものとなるはずです。

各国の国民主権を尊重する世界秩序を作りだすために
まず前提となるのは、国際協調の下、資本の国際的移動を
一定程度、規制していくことです。

資本の国際的移動が自由である限り、政府は、
経済政策や福祉政策の自律性を確保できません。

国境を超える資本の移動が自由である場合、
各国の政府は、国内から資本が流出すること、
あるいは国外からの投資が入ってこなくなることを恐れ、
経済政策を立案する際にグローバルな投資家や
企業に好まれる政策しか取れなくなってしまいます。

その結果、各国政府は、自国の国民一般ではなく、
グローバルな投資家や企業の顔色をもっぱら窺う
経済政策を連発することにならざるを得ないのです。

したがって、「脱グローバル化」の
新しい安定的な秩序を作り出すためには、

国際協調の下、資本の国際的移動に対して
一定程度の規制をかけていく必要があります。

そして、各国の経済政策や福祉政策の自律性を
回復していかなければなりません。

●文化多元的な新しい世界秩序

各国が、民主主義に基づき、自分たちの経済を
調整することを繰り返していけば、おのずから、
国柄や発展の度合い、置かれた状況などの相違に応じて、
各国の経済社会のあり方は異なってきます。

市場経済制度を基本にしているという点で
同じであったとしても、例えば、「日本型資本主義」、
「ドイツ型資本主義」「北欧型資本主義」のように、
それぞれの特徴がでてきます。

グローバル化が本格化する1990年代ごろまでは、
こうした多様な各国型の資本主義が実際に存在し、
学問の世界でも、資本主義の多様性についての
比較分析を行う研究が結構ありました。

しかし、グローバル化が本格化して以降、
株主中心主義的な「アングロサクソン型資本主義」が
世界を覆ってしまい、各国の経済社会の特徴は、
いわゆる構造改革を通じて失われてしまいました。

各国の自律性を認めずに画一化を強いる
「経済のグローバル化」から脱却し、再び、
各国の文化伝統や雇用慣行、国民の好み、
発展状況、環境や福祉や安全に対する考え方などを
反映した多元的な経済社会の建設を可能にする
世界秩序を作っていくべきでしょう。

アングロサクソン型で画一的に塗りつぶされてしまう
グローバル化路線ではなく、各国は、国民主権を回復し、
自国の庶民がなじみやすく、力を発揮しやすい
社会の建設をそれぞれ目指すべきです。

世界全体で見た場合、文化多元的で多様な経済社会を
可能にする方向へ舵を切るべきではないかと思います。

●新しい日本型資本主義の模索を始めよう

もう忘れてしまっている方も多いと思いますが、
安倍首相は、2012年の政権奪回選挙の際、
日本は米国型の強欲資本主義とは一線を画し、
日本らしい「瑞穂の国の資本主義」を目指すと語っていました。

そういう関心はすでにすっかり失ってしまったのかもしれませんが、
トランプ氏が大統領に就任することになった今は、
「瑞穂の国の資本主義」を目指す方向に舵を切るチャンスです。

安倍さん、初心を思い出してくださいな。

アングロサクソン型の強欲資本主義を拡大し、
固定化させてしまうTPPなんぞさっさと葬り去りましょう。

そして安倍首相は、トランプ次期大統領とともに、
各国それぞれの庶民の暮らしや文化伝統、
慣習などを尊重しうる、より公正な多元的世界秩序のありかたと
その実現の方策について協議していくべきなのです。

長々と失礼しますた
<(_ _)>

—発行者より—

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築地市場の豊洲移転問題で都政を批判して注目を集め、
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【施 光恒】「脱グローバル化」時代の秩序構想を!への8件のコメント

  1. tanada より

    今年の夏から次の米大統領はトランプ氏であると予言していた評論家がいます。その方は副島隆彦です。彼は今年の5月18日のトランプ、キッシンジャー会談後試行錯誤した後、次の米大統領はトランプ氏で決まりと発表しました。  このことは彼の著書「トランプ大統領とアメリカの真実」「Lock her up ヒラリーを逮捕、投獄せよ」に詳しく説明されています。ぜひこの二冊を参考してください。

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  2. しろくまアイス食べ過ぎてお腹を壊す人 より

    施先生は安倍に初心を、とおっしゃいますが私は瑞穂瑞穂詐欺だったと思っています。元から小泉の腹心みたいなやつでしたし、第二次になる前に東谷氏が竹中に注意するようおっしゃったときも素直に聞く感じではなかったそうです。あの民主党の後ではそういう態度をとることが得策だったというだけのことでしょう。実際これは奏功したのも事実ですし。この期に及んでTPPを日本で主導だの、散々アメリカの言いなりになった後で何の寝言を抜かしているのかといったところです。私はTPPを巡る安倍自民の醜態だけは絶対に忘れません。優れた保守主義者たちがグローバリゼーションの後退を予測し、実際に世界がその流れに沿って動き始めているのに、主が不在になる公算(まだ予断は許しませんが)になるTPPに前のめりという浅はかさ、愚劣さは見るに堪えないものです。こんなやつは断じて保守主義者などではない。忌々しい保守の敵であると断じます。

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  3. たろう より

    イギリスもアメリカも反グローバル化の流れを作った、しかしながらユダ金達は世界を支配できる財力は依然ある。そして実際支配を行っている。日本の政治家も企業も彼らの意向を無視できない。たとえアメリカがTPPに参加できなくとも、日本とアジアをTPPで結ばせ日本に移民を受け入れさせ 日本の主権と国境を奪う。と同時に中国を包囲し戦争を起こし米英印の分割支配を目指してるのかもしれない。ユダ金達の最終目標は彼らを頂点とした他を奴隷とする単一世界である。その流れを止めるためにはトランプがユダ金達が行った過去の悪行を全世界の人に知ってもらうことだろう。世界中の多くの人はその悪行に気づいてるのだがメディアに洗脳されてる人は気づいていない。

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  4. wonder より

    全くその通りアベノミクスはもっと周回遅れの経済政策だと思います小泉純一郎・竹中平蔵の規制緩和経済政策の継承ですからねいまだにあの亡霊を日本の「経済通が追いかけて民営化がーグローバリズムがーと言っているむしろエネルギー・通信・食料は不安定な世界情勢を見越して国営化でもいいいくらいだと思える。TPPのような経済圏は平和な安定的世界でこそ有効だと今はいつどこで紛争が起きて流通が止まるか生産基地が破壊されるか分からない危険な世界でグローバリズムとは?と言いたくなる

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  5. 學天則 より

    施光恒先生は一般人がどれだけ愚かかを理解されていない。先生の講演を聞きに来る層などまだマシな部類でしょう。三橋さんが愚民と言い、西部先生がジャップというのも最もであり本来もはや滅びるべき愚かさなのです。それを同じ日本人に生まれたからという理由だけで延命にひたすら加担せざるを得ない現実が本当に虚しい。先生はまだ当然のこの認識に達しておられないと見ますね。文章がまだまだ若いし浅い。私のプランとしては堺市などやる気のある自治体をフラグシップモデルにして下からのアプローチで日本を立て直すしかないと見ますがその前に世界秩序を日本がどうこうというのは現実的に厳しい。私がアドバイスできるとすれば今後の世界秩序は江戸幕府を開いた徳川家康公に学ぶべきではないかと言う事です。私が提唱するジャパンスタンダードのグロバリゼ―ションは江戸時代の統治の在り方が基本モデルです。自由貿易があるかぎりそれはグローバリゼーションでしょうw施光恒先生は解りにくいです。

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  6. ぬこ より

    どうも、、、、中央銀行の株主である国際金融家の戦略として、まずは耕してから収穫するというサイクルを、数十年単位でしているのでは??と勘ぐってしまいます。彼等、通貨発行権を持つ1%の金融資本家たちは、富の本質が、紙切れではなく、資源や食糧や、そこから99%側が産み出す財やサービスであると、99%の人間よりも熟知しているのではないでしょうか?だから、時には、 ?戦争や革命を起こして武器を売って儲ける ?焼け跡の復興事業で儲ける(資金や労働力は敗戦国) ?復興後、一億総中流社会を目指「させて」、技術力や土地を耕す ?バブルを起こし潰「させて」、付加価値の付いた土地や労働力を、商習慣や商法の規制緩和や資本のグローバル化等の手段を用いて安値で買い叩く ?各国のナショナリズムを煽って?に戻る様に世論を誘導するのフェーズを繰り返しして、富を増やしているのだと思います。今、?だと思うのですが、?に戻らせれない様に、僕ら99%は為政者を持つ目を持つことが大事なのではないのでしょうか?今では、共産主義だけでなく、ナチスも、国際金融家が資金を提供していたという事も広まってますよね。日本においては、バブル崩壊後の改革騒ぎにおいて、外資系金融マンが、構造改革や事業仕分会場や民間議員として入り込んでいた事が思い起こされます。ただ日本の為政者の欧米信仰ぶりは、明治維新からこの流れは変わらないんでしょうね。それとも、イルミナティがイエズス会と名乗って南蛮貿易していた時代から?彼らは日本の中の政治は日本人だけがやっているから自己責任だと印象付けさせるのが得意ですからね。これから先も注意は必要ですよね。トランプの背後にはバチカンやカジノマフィアが居ると言われております。不毛な築地移転問題も東京カジノ構想も裏にあるのでは?と言われてますよね。

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  7. たけちゃん より

    安倍晋三は底抜けバケツ (すくいようが無い)のアホですからこのまま周回遅れを続けるでしょう。コイツはじいさんに続きオヤジの出来なかった日ソ友好条約を領土主権を棚上げして国民にウソついてでもヤル積もりです。こういう奴を売国奴といいます。 ホントとっとと辞めさせないと日本は破滅です。

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  8. kanata より

    トランプが大統領選に勝利して、まだ数日です。慌てることはないと僕は思います。確かに米国が反対に回りつつあるTPPを日本が急いで通そうとするのは滑稽に見えますが、高速道路を走っていて急ブレーキを踏むのは危険でしょう?トランプひとりですべてを決められる訳でもありませんし、安倍総理がすべてを決められる訳でもありません。グローバリストだって、このまま黙って見過ごすとも思えません。好機が到来したときこそ、慎重に事を進めることが必要ではないでしょうか。

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