アメリカ

2016年11月10日

【三橋貴明】アメリカ・ファースト(前編)

From 三橋貴明@ブログ

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「Make America Great Again!(アメリカを再び偉大に!)」
 上記のスローガンは、1980年の大統領選挙において、
ロナルド・レーガンが使用したのが初出になります。

 2016年の大統領選挙において、出馬表明時は
「泡沫候補」としてメディアから嘲笑されていたドナルド・トランプが、
「Make America Great Again!」の商標を出願。
選挙運動の初期に、上記スローガンが書かれた帽子をかぶり続け、
自らのキャッチフレーズと化すことに成功しました。

 さらに、ドナルド・トランプは共和党の予備選の時点から、
アメリカ国民の利益を最優先する「アメリカ・ファースト」
(アメリカを第一に)を基本にすると表明。

「ブリテン・ファースト(イギリスを第一に)」
「アメリカ・ファースト(アメリカを第一に)」
 常に先頭を切るイギリスに続き、アメリカでもまた、
「自国を第一に」の叫びが選挙で勝利しました。

『米大統領選 トランプ氏が勝利 「驚くべき番狂わせ」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161109/k10010762331000.html

 アメリカ大統領選挙は過激な発言で話題を集めてきた
共和党のトランプ氏が民主党のクリントン氏に勝利し、
アメリカメディアは「驚くべき番狂わせだ」と伝えています。

トランプ氏は「分断の傷を修復し、ともに結束していくときだ」と演説し、
次期大統領として激しい選挙戦で分断された国の融和をはかる考えを示しました。

 アメリカ大統領選挙は8日、全米で一斉に投票が行われました。
 アメリカのABCテレビによりますと、トランプ氏は28州を制して、
当選に必要な過半数を超える278人の選挙人を獲得し、
民主党のクリントン氏に勝利しました。

 過激な発言で話題を集めてきたトランプ氏は、
「アメリカを再び偉大にする」というスローガンを掲げ、
現状に不満を抱く有権者から支持を得ました。(後略)』

 トランプの勝因は、わたくしが見ていた限り大きく二つありました。
一つ目は、ポリティカル・コレクトネスをものともせず、
「白人」に支持を訴えたことです。

 過去三十年、アメリカの政界は共和党も民主党も、
共に白人労働者階級の取り込みには慎重でした。

理由は、白人階級にアピールし、アメリカ国内で増加中の
マイノリティの有権者が離反してしまうことを恐れたためです。

さらには、ポリティカル・コレクトネスの概念が広まり、
政治家が白人階級にダイレクトに訴えかけることがタブー化されてしまいました。

 11月8日の大統領選挙では、
選挙人29人を数えるフロリダ州をトランプが獲得。
フロリダ州は、ヒスパニック系の割合が少なくなく、
トランプは勝てないと言われていたのです。

ところが、フロリダ州北部の白人階層が一斉に
トランプに票を投じた結果、予想が覆ってしまいました。

 二つ目は、かつてアメリカの重工業や製造業が集中した地域、
すなわちラストベルト地帯で、反グローバリズムの姿勢を明確化し、
繰り返しグローバル化を批判したことで、
民主党の地盤をひっくり返してしまったことです。

 ペンシルベニア州、オハイオ州、ウィスコンシン州、
そしておそらくはミシガン州も(まだ結果が出ていないですが)、
労働組合の力が強く、民主党色が濃い地域で、
トランプはヒラリーを破りました。

結果的に、最終的な勝利につながります。 

 トランプはアメリカ政府の通商政策がグローバル化を促進させ、
米国の製造業の雇用を失わせたと主張。16年6月29日には、
ペンシルベニア州で演説した際に、グローバル化を批判すると同時に、
「我々の政治家は積極的にグローバル化の政策を追求し、
我々の雇用や富や工場をメキシコと海外に移転させている」
「グローバル化が金融エリートを作り出し、
その寄付によって政治家はものすごく裕福になった。
私もかつてはその1人だった」
 と、発言しました。

 グローバル化故に、アメリカの労働者
(特に白人労働者階級)が貧しくなっている。
直球のグローバル化批判が、サイレント・マジョリティと
化していた人々に届いたわけです。

 興味深いことに、NHKは開票番組では、
「トランプのグローバル化批判が、
ラストベルト地帯の白人労働者階級の支持を集めた」
 という事実を、繰り返し、報道していました。

 投票が行われる前は、その手の情報がマスコミで
流れているのを、わたくしはほとんど見かけませんでした。

623ブレグジットの際に、離脱派勝利が明らかになった後に、
移民問題がクローズアップされ始めたのを思い出しました。

 カリフォルニア大学サンタバーバラ校の調査によると、
アメリカの有力紙100社の内、民主党のヒラリーを
支持しているのは「ワシントン・ポスト」や
「ニューヨーク・タイムズ」など57社に上りました。

それに対し、トランプを支持しているのはわずか2社でした。
アメリカのメディアは、疑いなくヒラリーに肩入れをしていたのです。

 投票日二日前には、アメリカのメディアは一斉に
「クリントン勝利90%」といった見出しを掲げ、
ヒラリーを支援しました。ところが、結果は敗北。

 ブレグジットにせよ、アメリカ大統領選挙にせよ、
メディアは予測を外しまくりました。

グローバル化に対する人々の不満の高まりは、
グローバリズムの先兵たる大マスコミをも上回っている、
あるいは上回り始めたというのが真実なのかも知れません。

 明日に続きます。

—発行者より—

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【三橋貴明】アメリカ・ファースト(前編)への6件のコメント

  1. あまき より

    安倍首相が先の訪米でトランプ氏と会わなかったというが、呼びかけに応じなかったのはトランプ氏のほうで、トランプ氏のアドバイザーにはヒラリー氏とだけ会う事情を説明して承諾を得ている、トランプ氏とヒラリー氏とは古い友人でもあるし、17日にNYでトランプ氏との会談が決定したのもオバマ大統領の就任時に比べると異例の早さだから、決して安倍さんや外務省の失点ではない、といった内容を読んだ。いろいろとお詳しい方のようだが、大事なことが2点抜けている。ヒラリーと「だけ」会う「事情」とは一体何なのか。国論を二分するような大選挙戦のさなかである。両候補者と会わないで帰って来る、あるいは両方と会えないのなら最初から行かないという外交の「常道」も選択肢として当然考えられたわけだが、官邸がそうしなかった理由は何なのか。安倍首相は自ら「価値観外交」を掲げ、誇っておられる方である。つまり自分の価値基準に照らして、一致できない人や国とは一線を画すと喧伝しているのだ。安倍さんご自身は、麻生元総理の「自由と繁栄の弧」を援用、応用されたつもりなのかも知れないが、「価値観」と抽象的に薄めたところが不用意であり、不用意であるにもかかわらず、今度のような選択的行動を味方のお国でも取ってしまったところに、従属根性の裏返しからくる尊大と幼い野心が見えてしまう。日本人として尊敬できるふるまいにはどうしても思えないのだ。そしてこのふるまいに誤った確信を与えているのが外務省であると、この方の内容を読んでむしろ「確信」するのだが、間違いだろうか。

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  2. 學天則 より

    トランプ個人視点でなくチームとして優秀です。日本人は直ぐに個人で評価するスターシステムが好きですが。あくまで相手は組織としてどうかですからね。マラドーナも一人では成り立ちません。

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  3. 學天則 より

    私の下馬評は状況によってはトランプ勝利もありうるです。だから直前の安倍総理の行動は理解不能でしたね。ツイッターで一貫してそう言っていたので証拠もあります。イラク戦争時のおかしな報道の様に益々その疑念を持ちました。メディアのやり方がどうみても稚拙だというのもあるでしょう。ともかく、これはアメリカとかイギリスの話でしょう?日本は関係ない。日本人がこうなるにはやはりフィリピンぐらいいかないと駄目だというのが現実でしょう。残念ですが。日本に若者の未来が心配だなんていう公人います?いないでしょう。カトリックとプロテスタントは共通の利益において必ずしも敵対しない。トランプがナショナリスだから味方とは限らない。自国利益が全ての帝国にとって奴隷がいる植民地は搾取できる狩場だ。反トランプ、トランプともアメリカにとってストロングジャパンは一貫して不利益でしょうからね。特に安倍総理のやった事は許されざる敵対行為だ。関が原で西軍に加担した毛利=長州と言う事ですね。その後の家康から長州が受けた処遇を考えると怖いですね。今後はトランプがオバマの様な穏健路線を取ると思えないですしそれじゃ何の為に立候補したのだと、橋下さんの維新のように大衆支持を獲得して、自分の政党つくってでも正面突破を図るのではないかと疑念していますね。三橋さんも経験したからその怖さやでたらめさはわかるでしょう?素人だから無能みたいな論評は大抵ヒラリー勝利を予想した奴がいいますが外した癖にあれこれいうのは嘘つきだろうとw責任とって消えなさいと。トランプ一人でやってるわけがないし、泡沫から大統領だから優秀じゃない訳がない。ニコニコ、シェイクハンドしながら契約とトレードはとことん冷徹。そういう冷酷なビジネスマンでしょう。結果という事実を見ましょう。橋下さんが出来て来た時と同じようなにおいを何やら感じますな。日本は大阪市の様なデマゴーグの標的にされない様にデマ契約に契約しない様に願いたい。アメリカ国民に対する情報戦が大事でしょうね。だからこそ不安ですね。あと憲法前文を批判する水嶋社長が平和を愛する諸国民に期待して軍事費増強圧力を言ってる姿には噴きました。まあヒラリーだと言って外したことはやんわり反省していたので好感持てますがwしかし日本の自衛隊はそこまで切迫しているのでしょうか?解りませんが目先、対ロ関係をもっと緩和するなりして兵力を南西に回せるように知恵を絞らないと、兵法に他力はないと言う事です、取らぬ狸の皮算用、打ち出の小づちを期待してもね。

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  4. 拓三 より

    TPP交渉でケツの穴まで見せた日本政府。TPPが破棄され、二国間協議に移るがケツの穴まで見せた日本政府に悲しいかな勝ち目は御座いません。まして米国は新たに関税、軍事と2つ武器を手に入れたのであります。もし日本が年次改革要求をTPPの枠組みで打ち止めにしようと浅はかな考えがあったとするならば、「肉を切らして骨を断つ」どころか「肉を切らせ様としたが骨まで断たれた」で御座います。

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  5. しろくまアイス食べ過ぎてお腹を壊す人 より

    この件に関しては日米ともにメディア報道がどうしょうもない偏向ぶりだったと思いました。トランプ勝利の後に必死になってdisり始めた日本メディアの狼狽ぶりは失笑ものでした。これで本当にTPPが壊滅してくれれば良いのですが、既にもうそれなりに穴を開けられてるんですよね。今度は別の看板を掛けた罠が仕掛けられて、それに伴って安倍売国内閣による売国行為が進められる危険性を見過ごしてはならないと思います。それにしても本当にマスコミ終わってますね。何一つ本当のことが分からない。民進党玉木議員のTPP質疑に関しても私が目にした限りテレビで取り上げているところは見かけませんでした。あの質疑を大々的にクローズアップして国民に周知するだけでも大分認識が変わると思うのですが、経団連に属しているテレビ局は結局自分たちに都合の良い世論を作りたいというだけなんでしょうね。

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  6. 近藤欣司 より

    アメリカの友人に聞いたところでは、「より巨悪」はどちらかということでトランプを選んだそうです。又、クリントンは本人の性格以外に巨額の蓄積が庶民の反感を買ったこと、及び娘婿の義父が評判が悪い人物であったことなども影響しているようです。なお、かつてレーガンが1980年に立候補した際も、最低の候補者と評価せれていたのですが、米国NO1とも言われる大統領になったことから、案外結果は分からないのでは、と言っています。

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