日本経済

2018年7月26日

【小浜逸郎】冷房装置代ケチって亡国へ

From 小浜逸郎@評論家/国士舘大学客員教授

今から三年前の2015年8月27日、
安倍首相は、遠藤利明五輪相が新国立競技場の
整備計画について説明したところ、
冷暖房はなくてもいいんじゃないか
と指摘しました。

https://www.sankei.com/politics/news/150828/plt1508280044-n1.html

「2651億円→1640億→
1595億円→1550億円。
(中略)
首相自ら新計画の発表前日となる27日、
冷暖房設備のカットを指示するなど
土壇場まで調整を続けた結果、
旧計画から1101億円もの削減が実現した。
「冷暖房はなくてもいいんじゃないか…」
(中略)
これ以上ない削減を行ったと思っていた
遠藤氏は驚いた。
首相の手元には、冷暖房を盛り込み
『総工費1595億円』などと書かれた
新計画案のペーパーがあった。」

唖然とする発言です。
こういう発言をする安倍首相の生理を疑います。
もっともこの発言は、3年前のものですので、
その点は割り引くべきですが、残暑が厳しい
時期であったことには相違ないでしょう。

おまけに、今年はついに40度を超える
史上初の酷暑が続いています。
この状態は2年後も変わらない可能性が
きわめて濃厚です。
引用の後続部分に、開会式、閉会式は
夜行われるとありますが、
夜でも熱帯夜が続いていることは
日本国民なら誰でも経験しています。
しかも競技は日中の炎天下で行われるのです。

冷房の効いた官邸の執務室で、
想像力の欠落した首相はじめ閣僚たちが、
ソロバンばかりこちょこちょはじいて
経費削減に血眼になっている姿。
みっともないというか恥ずかしいというか。

新国立競技場はもう着々と工事が進んでいます。
しかし今年の酷暑のことを考えれば、
今からでも遅くありません。
さっそく冷房装置を新たに設置するよう、
予算を増額すべきです。
技術的には可能なことで、何ら問題ありません。

そもそも東京五輪は
どうして真夏に開催することに決まったのか。
これについては、
早くから疑問の声が上がっていました。
ここ数年日本の夏は、
亜熱帯としか言いようのない酷暑と
高い湿度が続いており、
屋外競技では選手も観客も参ってしまうことが
十分に予想されたはずです。
しかし、次の記事を見てください。

「だが、開催時期は招致の時点で
決まっており、
今後日程が変わることは基本的にはない。
なぜなら、
国際オリンピック委員会(IOC)では、
立候補都市は夏季五輪開催日を
7月15日~8月31日までの間に設定
することを大前提としているからだ。
では、IOCが開催時期を
この期間としているのはなぜか。
それは、欧米のテレビで五輪競技の
放送時間を多く確保するためである。
IOCは欧米のテレビ局から支払われる
巨額の放映権を収入の柱としている。
そのため、欧米で人気プロスポーツが
開催されておらず、テレビ番組の編成に
余裕のある7~8月に五輪の日程を
組み込むことで収入を得るという
仕組みを作ったのだ。」
https://www.nippon.com/ja/currents/d00104/

要するに、欧米のビジネスによって
ことが決まっているという話です。
IOCというのもしょうもない
ひも付き組織ですね。

64年の東京オリンピックは
「スポーツの秋」にふさわしく
10月に行われました。
その経済効果も、新幹線や首都高などの
巨大インフラが整備されるなど、
莫大なものがありました。
今回はそれも期待できません。

ちなみに公立小中学校の冷房装置設置率は、
ようやく5割弱で、都道府県によっては、
2割未満のところもあります。
千葉市はゼロだそうです。


https://www.nippon.com/ja/features/h00248/

直接の原因は、自治体の財政難ですが、
究極の原因は言うまでもなく財務省の
根拠なき緊縮路線です。
特別国債を発行し補助金を計上することなど、
決断次第でいくらでもできるはず。
公共設備として資産価値に計上されるだけでなく、
大規模発注による経済効果も生じます。

大人たちが冷房の効いたオフィスで仕事を
しているのに、
子どもたちに毎日こんなかわいそうな目に
遭わせてよいのでしょうか。
また今度の水害で明らかになりましたが、
避難所である体育館には冷房が全くありません。
避難所には乳幼児もいます。
日頃からのインフラ整備を怠ってきたツケが
いまこの国に大きく回ってきています。
未来の日本を担う子どもたちを見殺しにする
こういう国は、早晩亡ぶでしょう。

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【小浜逸郎】冷房装置代ケチって亡国へへの2件のコメント

  1. たかゆき より

    そして 誰も居なくなった。。。

    落語にケチな大店の店主の噺あり

    賃金がもったいないと使用人を次々に解雇

    夫婦二人で商売を営むが 主は妻も要らぬと離縁 最後は自分も要らぬと 自殺する オチ

    政府は年金受給者 重度の障害者や病人のような穀潰し(失礼)は要らぬでしょうし

    国民など一人も居なくなったら 全くカネが掛らないと お考えかも、、

    そして最後は、、、

    落語の世界をナマで実感できる 日本に生まれてこられた 幸せを

    心の底から感謝する 酷暑の朝 ♪

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  2. 神奈川県skatou より

    3年ほど前、BS朝日の番組で、1964年東京五輪に関して建築家の側面で特集した番組(菊川怜がナビゲータ)を観ました。

    駒沢公園はどのように何のために設計したのか。

    東京五輪とオリンピックといえば、丹下健三事務所の所産がよく注目を浴びますが、そもそも、手で触れられる建物=建築とちがって、都市計画というものはどのような観点でなされたのか。五輪開催後も残る、街づくりとしての計画とはどのようなものか。高山栄華研究室の話が前半で紹介されていました(後半は首都高)。

    今の五輪計画は一体なんでしょう。
    短期間のイベントのためだけの計画、建造?
    そのあとのことを考えているとすれば、いかにカネをかけず、コンパクトに。。。つまりイベント後はみんな無駄という前提なのでしょうか。その後のビジョンがあっても、競技場だけで日本の都市の未来は語れません。

    現代の視点がエゴ(グローバル)ならば大きな社会のあるべき姿は見えるはずもなく、無理筋でしょう。2020東京オリンピックは、ないほうがましだったと後世言われる可能性すらありそうです。それは1964年のチャレンジを理解できない現代人の愚行
    かもしれません。

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