政治

日本経済

2018年12月19日

【藤井聡】貞観地震後に「減税」を決断した清和天皇 ~天災が多発するデフレの今、「増税」など「悪政の極み」である~

From 藤井聡@京都大学大学院教授

 

こんにちは、京都大学教授、ならびに、
表現者クライテリオン編集長の藤井聡です。

この度、今年最後の表現者クライテリオン
発売しました。
https://the-criterion.jp/

この最新号のメイン特集は、

『思想としての防災』

その趣旨は、
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20181217/
にてお話しした通り、
大災害が多発し、
首都直下地震や南海トラフ地震がリアルに予期される今、
防災、強靱化を「行う」という政治判断こそが必要である、
だから、そうした当たり前の政治判断を導く「思想」
について徹底的に議論せねばならない、というもの。

この議論の中でも特に、
今の「消費増税」問題にも直結する
大変、意味深長な議論がありましたので、
ご紹介差し上げます。

それは、清和天皇による「減税」のお話。

平安の清和天皇の時代、
疫病や災害が連発しました。

その中でも特に酷かった災害が、貞観地震でした。

この地震は、
「千年に一度」と言われた、かの東日本大震災の
「前回」の巨大地震。

いわばそれは、平安版・東日本大震災。

この地震の一報を受けた清和天皇は、
これを即座に「天罰」と捉えます。

つまり、この巨大災害は、
「自分自身の不徳の致すところの帰結」として、
天からの戒め、罰として下されたものに違いない、

と感得します。

こうした「天罰」として捉える伝統は、
古来から繰り返し見られるものです。

例えば奈良時代の聖武天皇は、
大地震や疫病、飢饉が度重なった時に、
それを天の怒りと捉え、
それを鎮める趣旨も込めて、
かの大仏を建立しました。

鎌倉時代では、
日蓮上人が、同じく度重なる災害は、
日本人のこころの乱れを反映したものだと説きましたし、

近代では、関東大震災の折に、
思想家の内村鑑三や、
財界の渋沢栄一
詩人の北原白秋らがこぞって、
近代日本の在り方に対する「天罰」に違いないと
それぞれの立場で論じています。

こうした日本の伝統の中で清和天皇もまた、
「天人感応説」あるいは「天人相関説」と呼ばれる、

「天災は為政者の不徳に対する天罰である」

という考え方を唱えていたわけです。

「天罰」というと、何やら非科学的だ―――
と考える向きも多かろうかと思いますが、
よくよく考えると、
天罰と捉える伝統の「機能」に着目すると、
きわめて合理的に政治の「改善」を果たす、
至って「実践的」な思想
だ、
という側面が見えてきます。

なぜなら、その地震や台風で人が死に、
街が破壊され、その被害が拡大してしまうのは、
その「備え」が不十分であり、かつ、
社会や経済のありようが「脆弱」であったからです。

だから、巨大な天災の被害を目の当たりにした為政者は、
自らの政治の不十分さに思いを致し、
深く「反省」し、
社会のあり方を改善していく努力を始めなければ
ならないわけです。

そして、そうした反省と、改善努力は、
為政者が、それを「天罰」と捉えれば捉えるほど、
大きくなります。

しかし、それを天罰と捉えず、
単なる「アンラッキー」と捉える様な
下劣な為政者は、
どれだけ被害が大きくても、
何の反省も、改善努力もしません。

つまり、その災害を
天罰と捉えるのは為政者として誠に「正しき」態度
であり、
天罰と捉えない為政者は、「悪しき」為政者
と言わざるを得ないわけです。

こうした構図の中、
清和天皇は、その災害を明確に「天罰」と捉え、
自らの政治は「悪しきもの」だったと反省したわけです。

そしてその反省に基づき、清和天皇はまず、
「減税」
を断行します。

東北の民は困っているだろうから、
年貢を取るのを控えたわけです。

あわせて、当時の蝦夷征伐(東北討伐)を中止し、
「東北の復興」に当たるべしという詔勅を出します。

翻って、現代の日本の歴代政権は、
こうした清和天皇の態度を
未だに持っているのでしょうか?

残念ながら「否」としか言いようがありません。

東日本大震災の翌年には、
清和天皇が行った「減税」とは逆に、
被災者も含めたあらゆる国民から
薄く広く徴税する「消費税」の増税
三党合意で決定してしまいます。

清和天皇が東北への侵攻を止めたのとは逆に、
農業主体の東北の被災地に対する、
「安い外国の農産品」の侵攻を加速する
TPPや日欧EPA、さらには、
日米貿易協定を始めてしまいます。

それどころか、あらゆる側面で、
外国勢力が「侵攻」しやすくなる方向で、
水道法漁業法種子法入国管理法IR実施法が、
改訂・廃止されたり、設置されたりしています。

しかも災害は、東日本大震災だけではありません。

今年だけでも北海道と大阪の大地震、
西日本豪雨や台風21号、24号がありましたし、
ここ数年の間でも、熊本地震や
広島や伊豆大島の土砂災害、
北九州や北関東の豪雨災害など、
日本全国が被災地となっています。

そして何と言っても、
過去20年の間に、
平均世帯所得を130万円も下落させた、
「デフレ不況」という災害に、
全ての国民が苛まれています。

もしも、清和天皇に象徴される、
天災を「天罰」と捉える伝統的精神が
我が政府に残存していたのなら・・・

この度重なる「災い」を契機に、
自らの政治がいかなる意味で
「悪政」なのかと「反省」し、
その反省に基づいて、
様々な「改善」がなされていたに違いありません。

しかし、繰り返しますが、
我が国の歴代政府は、
そうした「伝統的精神」
全く残存していないかのように、
消費増税を断行し、
国民産業への「外国からの侵攻」を促す
自由貿易や規制緩和を加速

し続けてきたのです。

こうした現在の政府の振る舞いは、
日本の伝統の見地から言うなら、

「悪政の極み」

と言わざるを得ないでしょう。

この平成の御代で、我が国国民に降り注いだ
度重なる天災を「天罰」と捉えぬ政府には、
早晩、「天罰」が下る
ことになるでしょう。

そして、そうした「政府」を放置し続ける
民主国家日本の国民にもやはり、
巨大な「天罰」が早晩、下される

こととなるでしょう。

そうならないためにも―――

政府を含めた我々国民一人一人が、
我々を苛む天災の一つ一つを、
謙虚に受け止め、
自らの立ち居振る舞いの一つ一つを改めんとする、
伝統的精神が今、強く、求められているのです。

これこそが、筆者が説き続けている、
国土強靭化の基本思想なのです。

追伸1:
防災や災害の問題を、思想的な側面からもしっかりとお考え頂くためにも、

表現者クライテリオンの最新号「思想としての防災」を是非、ご一読ください。

定期購読(10%割引)はコチラ:
https://the-criterion.jp/subscription/

本号のみのご講読例えばコチラ:
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消費税問題
について、まだ、下記ご覧になってない方がおられましたら、

是非、下記、ご購読ください。

別冊クライテリオン「消費増税を凍結せよ」:
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【藤井聡】貞観地震後に「減税」を決断した清和天皇 ~天災が多発するデフレの今、「増税」など「悪政の極み」である~への6件のコメント

  1. たかゆき より

    人事を尽くさず 天罰が下る ♪

    今上も総理も議員も役人も

    所詮 「日本人」ではなかった のか と、、、

    天恵の上に 眠り続けた愚者(小生です 念のため)にも

    天刑を お与えください

    amen

    返信

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  2. たかあき より

    三橋貴明の話は読んでてたまに?となる時がありますが、藤井先生のは我々凡人にもたいへん分かりやすいですね。
    理解してほしいという気持ちが伝わってきますよ。

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  3. 拓三 より

    「危機と対峙」これは「生き物とは」を呼び起こす原点。

    右だの左だの所詮男の絵空事。女が左右の議論をしてますか ?
    人口の半分は女であることをお忘れなのでしょう自称ホシュ並び左巻きの皆様は 。
    女性に比べれば男などすべて左。お花畑の絵空事で生かされてるに過ぎず。

    お花畑で蝶々を追いかけるか、それとも現実の危機と向き合うか、これは右左の問題ではなく、生き物としての存続価値があるかどうかを意味する思想。
    危機を感じ獲れない生き物の未来は絶滅である。それが自然の原理。

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  4. 神奈川県skatou より

    昔習った心理学の演習で、理由づけの効果(Reasoning)、という論文がありました。
    テスト結果の[良い/悪い]と、その理由を[自分の属性/運等外的要因]とで、都合4分類して、再テストしたところ、

     悪かったのは自分のせい 次テストで向上
     悪かったのは運のせい  次テストで悪化

    という実験結果が得られたそうです。

    日本人の気質というのは、災害に対する姿勢、理由づけ、また、治安=社会維持の問題として、権威権力に因らずともルールを守る、という体験の繰り返しから生まれたものであるはずで、独特かつ、今後もやはり必要なものだと思われます。

    インフラ整備を超絶に投資して天災はもはや過去のものであれば別ですが、むしろ政府はその逆の姿勢であり、なおかつ移民推進ですから、とても近視眼的かつ独善的のようですね。

    国民が反対しなくても筋道が正すかもしれません。

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  6. 日本晴れ より

    天皇は国民が大御宝であるという事をよく分かってた
    国民や庶民が苦しんでる時に増税なんてあり得ないという事も
    自然にそう思われたんでしょうね、減税するべきだって。
    これが為政者だと思いますが。
    藤井先生には申し訳ないけど安倍政権や自民党はもう駄目です
    ここまで緊縮主義や新自由主義グローバリズムを掲げてる政党は
    もう駄目だと思います。

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