日本経済

2018年7月25日

【藤井聡】政府は「異常気象緊急対策」を速やかに推進せよ。

From 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

皆さんこんにちは、内閣官房参与、
京都大学大学院教授の藤井聡です。

この度の西日本豪雨に象徴されるように、
我が国は今、海水温の異常な上昇等を背景として、
今回の豪雨災害のような災害が
「頻発」する状況になってきました。

実際、時間降雨量80mmを超える頻度が、
この30年で一気に1.7倍にまで増大

http://ur0.biz/LcBl

そして、ご覧の様に、今の日本は・・・

死者・行方不明(被害額)
2011 台風12号(紀伊半島水害) 98名(1236億円)
2012 7月九州北部豪雨     30名(1900億円以上)
2013 伊豆大島土砂災害     43名(―)
2014 広島土砂災害       77名(―)
2015 鬼怒川決壊(関東東北豪雨)20名(3850 億円)
2016 四台風北海道上陸・接近  27名(2786億円)
2017 九州北部豪雨       42名(2200億円)
2018 西日本豪雨        230名以上(―)

・・・と、文字通り「毎年」、
「雨期」になれば必ず何十人もが死んでしまうような国に
なってしまいました。

にも関わらず、
我が国の治山・治水対策は不十分な水準。

計画されている治水整備率は、
アメリカのミシシッピ川で約8割
オランダの河川はほぼ完成
そして、英国のテムズ川は完成している一方、
我が国の代表的河川である大和川は半分以下
荒川でも三分の二程度の水準に留まっています。

そして恐るべき事に、
治水対策費用は、過去20年の間に
英米では約二倍にまで拡大した一方、
我が国では、
「44%」という水準にまで激しく下落しました。

http://ur0.biz/LcBs

つまり我が国は、
異常気象で毎年必ず何十人もの人が死ぬ
災害が繰り返されているにも関わらず、
治水対策の整備率は低く、
かつ、予算を半減如何に削減している
のです。

このままでは、これまで以上に多くの国民が、
豪雨で死に続けていくことは必至
です。

ついては筆者は、内閣官房参与として、
今回のような災害を二度と起こさないために、
以下の様な「異常気象緊急対策」を、
短期/中長期の両視点から進めるべきであることを、
強く提言したいと思います。

■短期対策:「異常気象緊急対策パッケージ」

まずは、今、短期的(~2019年度)に進めるべき、
全国の治山・治水事業をピックアップし、
これを「パッケージ」として徹底的に推進することが必要です。

その財源については、「骨太2018」の方針に基づき
「本年度・補正予算」、
「次年度当初予算・特別枠」、
「次年度当初予算・通常枠」、
「次年度・補正予算」
を充当していきます。

なお、「防災投資」の効果は、「長期」に及びますから、
「受益者負担」の原則に基づいて、
「国債」を躊躇無く発行することで、
その財源を確保します。

(受益者負担の考え方については、下記をご参照下さい
https://38news.jp/economy/12188

また、「次年度当初予算・通常枠」については、
非社会保障費は基本的には増やさないということが、
閣議了解されていますが・・・
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018071000167&g=eco

本緊急対策については、
その『例外』として扱うことが
当然、必要です。


■中長期対策 「異常気象危機対策・抜本強化プラン」

以上は、来年度までの短期的対策ですが、
これだけでは、異常気象に対する抜本対策は完了しません。

抜本的な対策には、短期ではない、
中長期的な視点からの対策が不可欠なのです。

ついては次に、「国土強靱化基本計画」で謳われる
「国家100年の計」に求められる治山・治水対策を
「15年で完了」させる「15年治山・治水目標」を設定します。

この目標を正式に設定していくには、
例えば、「自然災害緊急対応国土強靱化対策のための
財政についての臨時特別措置法」
等を
国会で成立させる等の対応が必要でしょう。

つまり、こうした法律等を通して、
15年目標と、そのための財源確保を
法的にオーソライズするわけです。

なお、その財源については、本対策についても
「受益者負担」の原則に基づいて、
「国債」を躊躇無く発行することが当然必要です。
https://38news.jp/economy/12188

具体的な「目標設定」にあたっては、
国土強靱化基本計画等で想定されている施策郡の中から、
「15年で完了」させる合理性がある施策
ピックアップするという方法が考えられます。

そうした施策のピックアップにあたっては、

・災害のリスク(=確率と被害規模)
・対策効果、
・国債金利

の三者を加味し、
その「投資効果」と、
国債発行による「利払い費」とを
比較衡量して選定する、
という方法が考えられるでしょう。

ところで、この対策費用については、
次年度以降の「当初予算・通常枠」における
治水・治山対策費の「純増」が必要です。

もちろん、予算枠拡充にあたっては
本対策費は、
「非社会保障費を増やさないという閣議了解」の
『例外』として扱うことが必須であることは、
改めて繰り返すまでも無いでしょう。

・・・・

以上が、筆者が内閣官房参与として、
この度の西日本豪雨災害の様な被害を
二度と繰り返さない為に、
政府に提案する「異常気象緊急対策」の概要です。

なお、我が国が直面しているリスクは、
豪雨のみならず、地震や津波、高潮もあります。

ついては、後者の「15年対策目標」の設定や、
立法措置を検討するにあたっては、
それらの代表的な自然災害を勘案し、
総合的に検討を進めることが得策でしょう。

政府が本提案を真摯に受け止め、
「一人の国民の命も失わない」
という国土強靱化の基本理念
に基づく
本気の対策を推進されんことを、
心から祈念いたしたいと思います。

追伸1:
防災において「投資」が如何に重要なのか―――
『防災における「善意の押し売り」は「凶器」たり得る』
を是非、ご一読ください。
https://the-criterion.jp/mail-magazine/20180723/

※こうしたメルマガにご関心の方は是非、
ご登録(無料)下さい。
http://www.mag2.com/m/0001682353.html

追伸2:
「危機と対峙する保守思想誌:表現者クライテリオン」では、
こうした災害という危機対応を含めた、
様々な危機対応について、包括的に議論しています。
是非、ご購読ください。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281687591/
あるいは http://ur0.link/LcOU

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【藤井聡】政府は「異常気象緊急対策」を速やかに推進せよ。への5件のコメント

  1. たかゆき より

    雨が降っただけで 人が死ぬ、、

    哀れな国になりはてに鳧

    治「水」は勿論ですが、、

    常に氾濫している 政治家 政府 官僚のせいで 多数の国民が犠牲になっているのですから

    治「政」を急ぐべきかと

    まともな治政の確立こそが喫緊の課題 鴨

    返信

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  2. momo より

    近年、「人の命より金が大事」という思想が日本社会を席巻している気がして止みません。実際、命より金が大事になってしまっています(多くの人が死ねば人口減に繋がり人減らしにより人余り状態が解消されるから)。
    マクロ経済的な人余り減少がもたらす数々の弊害が、別の形で社会的な集団心理に影響を及ぼしているんでしょうか。

    返信

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  3. 防災計画は昔から100年に1度の災害に対することを基本としている。近年、豪雨は局所的巨大化し、一方、南海トラフや首都圏直下型地震がいつ発生しても不思議ではない状況下にある。コスト・ロスの知見から、我が国は明らかにご指摘(警告)の対策を実行しないと、「わかっていたけど・・・」では済まされない。

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