日本経済

2018年7月18日

【藤井聡】防災に「国債」を発行しない政治家は、馬鹿の誹りを免れ得ない。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

西日本豪雨災害では、
200名を超える方々の人命が奪われました。

そしてさらに多くの方々が、
家族を失い、家を失い、職場を失いました。

改めて、犠牲者の冥福をお祈り申し上げますと共に、
被災者にお見舞い申し上げます。

こうした被害を二度と繰り返してはならないと―――
改めて強く感じざるを得ません。

そんな視点で、
この度の様々な災害報告を拝見していますと、
「防災投資」の大切さが、
改めて浮き彫りとなってまいります。

例えば、桂川は、激しい氾濫も危惧されましたが、
近年の度重なる氾濫を受けて、
治水対策(浚渫等)を進めていたため、
被害は最小限に食い止められました。

一方で、肱川水系では下流で氾濫が起きてしまいました。
上流でダムの増強や新設が計画されていたのですが、
もしこれらが完了していれば、
氾濫が起きなかったであろうことが想定されます。

そして30人以上もの貴重な人命が奪われた
今回の災害で「最悪」の堤防決壊が起きた小田川でも
抜本的な防災投資(稼働付け替え工事)が予定されており、
もしもそれが間に合っていれば、
ほとんど誰も死なずに死んだことは間違いありません。

しかもこの工事は、
最近になって新しく構想されたものではなく、
何十年も前から議論されていたものでした。

なのになぜ、対策工事がここまで遅れたのか――。

この点について、地元の岡山県議会議長を勤める高橋戒隆氏は、

『河川工事が遅れた背景には、予算の縮小もある』

と指摘しています。その上で、

『「自分が国を動かせなかったという無力感がある。住民の方々に対して申し訳ない。何とか間に合ったら、こんなことになっていなかったのに」声を詰まらせた。』

と報道されています。
https://jp.reuters.com/article/weather-japan-failures-insight-idJPKBN1K61KM

(その経緯には紆余曲折がありましたが、
十分な予算があれば、
それが迅速に進んでいたことは間違いありません)

では、なぜ国は「動かなかった」のかと言えば―――
言うまでもなく、政府が、

「緊縮財政」

の方針を採用していたからです。つまりこれは、

「おカネがないから、防災対策ができず、人がたくさん死んだ」

という話なのです。

もちろん、ホントにお金がなかったのなら
仕方がなかったとも言えますが、
それはあり得ません。
防災対策の費用は、国債を発行すれば調達できるからです。

しかも、防災に対しては、
国債を発行して、「住宅ローン」ならぬ
  「防災ローン」
を組むのが、防災の「常識中の常識」

こちらの図をご覧ください。

http://urx2.nu/L68i

もう一目瞭然、ですよね?

(住宅ローンと同じ様な発想で)
「防災ローン」を組めば、
トータルの支払い額を増やさないままに、
何十年もの間、人の命を守ることができるのです。

具体的に言うなら、次のようになります。

まず、オカネがたまってから対策をすれば、
それまでの20年、30年の間に来た豪雨で、
人がたくさん死にます。

ですが、国債を発行して「ローン」を組めば、
今すぐ対策が完了します。
結果、これからの20年、30年の間に来た豪雨で、
(端的に言えば)人が死ななくなります。
しかも、低金利の現在ならトータルの支出は全然増えません。

つまり、低金利の今なら、
国債を発行し、防災ローンを組めば、
長期的な財政を一切気付つけずに、
何百人、何千人、あるいは、何万人、何十万人もの命を
守ることができるのです!

だから、世界中、どこに行ったって、
国債発行によって防災投資をするのが、
「常識」なのです。

もしも我が国にそんな「常識」があれば、
「防災ローン」のために国債を発行し、
小田川の工事は迅速に進められ、
決壊は防げ、30人以上もの犠牲者の命を
救うことができた筈なのです。

そうである以上、
今回の豪雨災害でなくなった方々の多くは、
(小田川決壊の犠牲者も含めて)
日本の「財政関係者」の「非常識」によって、
殺められたと解釈せざるを得ません

こう考えれば、
先週紹介した、吉川東大名誉教授らが言う
「財政を守るか人命を守るか?」
という問いかけ自身が、
馬鹿馬鹿しいものなのだという「真実」が見えてきます。
https://38news.jp/economy/12160

国債を発行して早期に防災事業を完了させれば、
「財政も人命も共に守ることができる」からです。

こうした無責任者達はさておくとしても、
この当然の常識を理解せずに
「財政を守るか、人命を守るか?」なぞと
嘯(うそぶ)きながら、
防災対策をしない様な政治家達は、
馬鹿の誹りを免れ得ないのです。

追伸:
最も効果的な治水対策は「スーパー堤防」。ですが、これほど世間に「誤解」されている対策はありません。その実態をご理解いただくためにも、下記メルマガ記事を是非、ご一読ください。
https://the-criterion.jp/mail-magazine/20180716/

なお、こうした記事にご関心の方は是非、この「無料」メルマガをご登録ください。
http://www.mag2.com/m/0001682353.html

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【藤井聡】防災に「国債」を発行しない政治家は、馬鹿の誹りを免れ得ない。への5件のコメント

  1. 日本晴れ より

    この前bsフジのプライムニュースで藤井先生含めて3人の識者と片山さつき議員が出てましたけど。
    3者の提言は本当にその通りだなと思いましたし、スーパー堤防は誤解されてるし、スーパー堤防こそこれからの治水対策に必要だし
    中長期的な街作りにも有効なんだと思いました。国債も発行すべきだと思います。

    返信

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  2. 神奈川県skatou より

    「防災投資」っ!!!

    最近自分の不勉強を再認識し、反戦後論を読み始めています。
    庶民とは賢いもので、言葉にできずとも、この空虚を気付いていて、でも、本を読むにも「難しい」と言い、答えにたどり着けないものなのかと。

    ならば、中身を纏めた新語を投げつければ、なにか変わるのか。。
    (もう少し勉強します)

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  3. メイ より

     何事もそうだけれど、インフラも万能ではないと思う。
     大切なものだけれど、インフラさえあれば安心なのだという印象を与えてしまうような言い方は、問題はないか。
     テレビで被災者のインタビューを聴いていると、ダムが新しくなったことが油断になってしまった、と応えている方が何人かいらした。インフラは、あくまで「備えのひとつ」ではないだろうか。
     必要なインフラについて、地元の人がどう考えているのか、何が必要だと考えているのか、自治体などで意見を聴きとりまとめる事も大切に思う。
     3.11で酷い津波の被害に遭ったにも拘わらず、大き過ぎる堤防を拒否する意見が地元からあがっていました。それを「なぜだろう」と真剣に受け止め、もっと聞きこんでいくべきだと考える。
     地元の意見が一番重いのではないか。
      
     また、今、広範囲・多数の甚大被害が出ているタイミングでは、減災担当でもある藤井さんには、被害が広がらないよう、被災者をどう救うかを優先して考えてほしい。
     自衛隊のトラックを使えるなら、コンビニに商品を運ぶのもあってもいいけど、被災者に無償で食料を運び、水を大量に送ってあげて欲しい。今年は雨が多くて、各自治体から水の支援を頼めそうな気がする。飲料水もそうだし、お風呂、トイレ、汚れたものを洗うため、工業用水、医療用水等、いくらでも要る。
     いつまでも不潔な状態で放置していては良くない。

     毎日、殺人的な暑さが続いているのも体力を奪うから、対策が必要ですよね。私の頭では現実的なアイディアが浮かばないけど、入れ替わり立ち代わりであってもクーラーの効いたところで休ませてあげたい。荷台に冷蔵庫機能があるトラックなどを使って、皆で順番に入ってもらうとか、ダメだろうか・・。
     どこか涼しい所に避難させてあげて欲しい。
     どうか、内閣参与として、政治家に強く促してほしい。
     

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