日本経済

2018年6月23日

【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第四十六話

「「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第四十六話」
From 平松禎史@アニメーター/演出家

◯オープニング

6月18日7時58分、大阪府高槻市で最大震度6弱の地震が起きました。
M6.1、震源の深さ13km

死者5名、重傷者含む負傷者は406名とのこと。
これ以上の死者が出ないよう、負傷した方の回復を祈るばかりです。

ボクは前日(この地震の4時間ほど前)
自然災害に対する政府や多くの国民の危機感がなさ過ぎることをブログに書きました。

「自然災害国の民が現実を見ようとしない恐怖」
https://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/entry-12384506671.html

5月17日に起きた千葉県東方沖の震度4の地震。
6月17日午後3時に起きた群馬県南部の地震。
この二つが関連しているように思えたからです。

理由は上記エントリーに書きましたが、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震によって日本列島全体が動いた。その影響は直後には静岡県東部地震や長野県の地震につながりました。最近では、南は九州の熊本地震、霧島連山の噴火をはじめ、伊予地方の地震などなど、一見関係ないように見える内陸の活断層型地震と関連があると考えても不思議はありません。
関東地方では、千葉県と茨城県の県境あたりから銚子沖あたりで地震が頻発しています。
その延長上に、千葉県東方沖の連発地震。群馬県南部の地震があったのだろう。
そう推測できます。

大阪の地震で地震学者と思しき方が、この地震と南海トラフ地震は距離が離れているので関係ないだろうという意味のことをコメントしていて驚いた。
とんでもない。やや対象を絞って列島規模で考えても、「隣」と言わざるを得ないでしょう。
地震の間隔、10年程度のズレは「ちょっとの差」に過ぎません。2、3年ならほぼ同時です。
知識層ほど、思考の規模が短期化・狭小化しているのでしょうか?

さらに遡ると、4月20日には火山噴火に対する政府の対応が見えないことを書きました。

「日本は環太平洋火山帯の一部・なさすぎる政府の危機感」
https://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/entry-12369820680.html

大阪の地震も日本各地の火山噴火も「まさか!」の連続です。
しかし
その「まさか」が起こってしまうのが、自然災害大国日本なのです。

第四十六話:「自然災害への対処をできなくする思考の短期・狭小化」

◯本編

さて

2018年4月の実質賃金が出ました。

実質賃金(ニッポンの数字)
http://www.nippon-num.com/economy/actual-income.html

ー0.23% です。

前月は少し上がっていたので期待もあったのですが、ダメですね。
消費者物価指数はコアコア(生鮮食料品とエネルギーを除いた)CPIで +0.3% 数字はプラスですが前回より下落しています。

と言いますか、14年の消費税増税で強制的に物価上昇させられて以降、ずっと下がってきています。一時的に上がったのはエネルギー価格の上昇が加工費や物流費に乗ったためだろうと思います。コスト・プッシュ・インフレと言うヤツですね。
景気が良くなっているわけではありません。賃金が上がらないんですから当然です。

企業に原材料や加工費・物流費で負担がかかれば他のどこかを削らねば収益が減ってしまいます。需要は増えておりませんので、コストカットになる。
賃金を上げない、または下げることで対処することになる。
その結果…
実質賃金の下落、というデータにあらわれるわけですね。

家計調査(二人以上の世帯)2018年(平成30年)4月分 (2018年6月5日公表)
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html

3月に続いて4月も、名目・実質ともに家計消費が減りました。しかも減少率が悪化している!

勤労者世帯の実収入が上がっているのは、妻や引退した高齢者が働く率が増えているからでしょうか?総合の実収入が伸びない(実質でマイナス)なのは生産年齢人口比率の低下と高齢化のため、でしょう…。
社会保障が削減されていくので世帯実収入が増えても消費に回らない。
消費の減少率が悪化するのは、将来不安が強いということでしょうね。

この通り、実質賃金が下がり、公的支出が減れば、国民は消費や投資を控えますから、益々企業収益を圧迫し、企業はコストカットのために長期的な投資を控え、人材育成をしないですむ短期労働、外国人労働者、などなど合理的な判断が迫られることになる。

そして、益々賃金が下がっていくことになる。

ばっちりデータにあらわれているこの20年間の負のループ。デフレスパイラル現象だ。

「危ないブロック塀」が野放しになる深刻原因
死亡事故が繰り返し起きているのだが…」(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/226283

記事が指摘するように
危険なブロック塀を撤去し生け垣や丈夫なものに更新するにはお金がかかります。
当たり前の話です。

自治体の助成金は呼び水にはならず、防災減災の取組みは鈍いままだそう。
例示されているのは東京都の平均年収ランキングでベスト10に入る新宿区や世田谷区です。
特別区では税収の多くが都全体に吸収されますが、それでも経済規模の大きさでカバーできてしまう。そんな豊かな区だからこそ、撤去と生け垣化にそれぞれ20万円ほどの助成ができる。

それでも、防災減災の意識が働かないのはどういうわけなのか?

政府の取組みを見てから書きましょう。

平成29年度 建設投資見通し(けんせつPlaza)
https://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/17910

土木建設分野で見た予算配分の推移がわかります。

政府の建設投資は、ピークだった70年代の上昇がオイルショックで急下落。その後は80年代のバブル景気で少し持ち上がった後、バブル崩壊でまた下落。デフレ転落後は下落の一途です。

民間の建設投資に対して、政府のそれは10年以上横ばいで増えていません。

オリンピックの土木建設投資があるはずなのに、全体で増えていないのは、いかに他(地方でしょうね)で減らしているか、ということだろう。

2018(平成30)年1~3月期四半期別GDP速報 (2次速報値)(内閣府)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2018/qe181_2/pdf/gaiyou1812.pdf

数字をざっと見てどう思います? マイナスが目立ちますよね。
今年の第1四半期は名目・実質GDPがマイナスになりましたが、内訳をみれば、民間・公的ともに需要が縮小したままなのがわかるでしょう。
景気が良くならないのは、政府支出が足らないからだと言えます。

GDPが縮小し、経済成長率が上がらないのは国民の貧困化を表しています。

こんな状況で、いつ役に立つかわからない防災減災に支出を増やせますか?
震災があったからといって、急に自治体や民間が建設投資を増やせると思いますか?
無理ですよね。
自治体も民間も通貨を発行することができないので、所得が増えない状況では、財政的限界に直面せざるを得ません。

20年の緊縮財政で、土木建設分野は供給能力を失ってきました。
東日本大震災の復興投資やオリンピックで戻しつつあるようですが、全国的には、普通(例えば80年代)の水準にすら戻っていないでしょう。
防災減災を実行しようとすれば、またぞろ「供給制約が〜〜」とよくわからない反論が出そうです。
実際に、全国的に防災減災をやろうとしても、受け手が足らない現実はあるでしょうね。

民間のブロック塀対策が進まないのと似ています。

わかっちゃいるけど、やられない。

なぜか。

所得が増えないからですよ。

民間は?
一時的な助成金があったとしてもブロック塀の撤去と耐震化には出費が必要です。
短期的には助かっても、長期的に所得が増えない状況では、出費した分を取り戻す自信がない。
…じゃぁ、今のままで。。。となってしまう。

国家規模の防災減災は?
震災復興やオリンピックで一時的な需要があったとしても、政府がインフラ整備の予算を増やさない状況では、土木建設分野の様々な投資が無駄になってしまう可能性が高い。
…じゃぁ、設備も人材も増やさないほうが良いよね。。。となってしまう。

この繰り返しで、日本のインフラは高度経済成長期に作ったものが、ろくに更新されずに老巧化し、渡れない橋が増え、時代に対応した港湾は作られず、インフラ不足の地方を捨てて便利な東京に人口や経済拠点が一極集中してきたのです。

政府が旗を振って短期的思考のビジネス政治を推進した結果、長期的思考が徹底的に不足…もはや消滅、といった状況になっている。

地震に弱いのはブロック塀だけではありません。
一時期進められた建物や高架の耐震化、建て替えも足らない。
都会の危険な住宅密集地も放置状態。
万が一に複数の避難路になる幹線道路の整備も関東でしか進められていない。
東京一極集中を緩和する地方へのインフラ投資は全くと良いほどやられていない。

政府が短期的なグローバルビジネスに躍起になり、長期的思考で将来への投資をやらないため、民間も短期的にしか動けなくなっているのです。

最悪なのは、国内の民間企業がやってくれないなら外国企業に参入してもらって防災減災しましょう、という発想。安倍政権が傾きやすいのはこれです。
国土の特性や国民性といった文化を共有しない外国企業に長期的な防災減災を任せて良いはずがありません。インフラにはメンテナンスが必須ですが、長期的な事業を外国企業に任せられるだろうか。災害が起きて母国に避難してしまったらどうするのか。外国企業に依存していたら国内企業のノウハウは衰退してしまいますから、災害復興ができなくなります。

大阪北部地震で政府は交付金の前倒し支給を検討しているそうですが、規模がちっちゃすぎて話になりません。

自分たちの国を、自分たちで守るのは当たり前(by母)。

これがわからなくなっているのが安倍政権です。

通貨発行権を持つ政府が、「国の借金で財政破綻」などというデマを真に受けている。
財政拡大をやろうとしない政府が、東京一極集中の固定化を強化し、地方活性化の足を引っ張り、民間の防災減災への努力をできなくさせているのです。

◯エンディング

所得が上がらないから、先のことにお金が使えなくなっている。
長期的な投資を諦めざるを得なくなっている。
危険なのはわかっちゃいるが、明日の収益確保に手一杯・・・。

この本質的な危機を自覚し、まじめに考えないと、救える命も救えなくなります。

経済成長(=国民の所得増)が、最優先の第一歩です。

◯コマーシャル

岡田麿里監督作品『さよならの朝に約束の花をかざろう』
http://sayoasa.jp/
ボクはコア・ディレクターとして絵コンテ演出・作画監督などを担当しました。
2月24日から始まって4ヶ月。上映館は残り少なくなりました。
全国で125館で上映していただきました。感謝です。

『平松禎史 アニメーション画集』発売中。
『エヴァンゲリオン』シリーズや『彼氏彼女の事情』などカラーイラストを多数収載。
http://amzn.asia/hetpEPD

画集第二弾『平松禎史 Sketch Book』発売中。
キャラクターデザインのラフや楽描き、国民の祝日の絵「ハタビちゃん」シリーズなど収載。
http://amzn.asia/hUQoCkv

TVアニメ『ユーリ!!! on ICE』の完全新作劇場版、制作決定!

ボクのブログです。
http://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/

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【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第四十六話への2件のコメント

  1. 赤城 より

    日本の政治はもう自分達に未来が無いことを確信して行っている
    かのようです。
    未来への必要な投資も計画も戦略も何もない。
    もう短期的に動きさえする事が政治だと言わんばかりですから
    こいつらには10年先も無いんだなと思わずにいられない。
    国家自殺自滅のために政治をするのがこいつらの仕事なのでしょう。
    奴隷属国の末路ですね。

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  2. たかゆき より

    病んでますね 日本

    機能的にも器質的にも。。

    「このままだと 死ぬよ」と言われても
    聞く耳持たず
    消費税増税こそが 「特効薬」と嘯く有様

    緊縮財政で体力を削ぎつつ
    「特効薬」の濃度 何%まで増量したら
    お気に召すのか、、、致死量は如何ほどか

    じっくりと 経過観察させて頂きます♪

    返信

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