日本経済

2025年11月10日

【三橋貴明】政府債務対GDP比率を引き上げたPB黒字化目標

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三橋TV1089回で取り上げた、
「政府債務対GDP比率の引き下げを狙い、
PB黒字化目標を導入したら、
政府債務対GDP比率が上昇していった」
という問題は、
まさに現代の政治家全員に
知って欲しい話なので、
今後も繰り返し
(切り口換えて)
取り上げます。

政府債務対GDP比率は、
「政府債務残高÷名目GDP」で
決まります。
比率を引き下げるためには、
1.分子を小さくする
2.分母を大きくする
のいずれか(あるいは双方)が
必要ということになります。

ところで、
名目GDPとは、
◆名目GDP(支出面)
=民間最終消費支出
+政府最終消費支出
+民間住宅
+民間企業設備
+公的固定資本形成
+在庫変動
+純輸出
の統計です。

当たり前ですが、
足し算なので、
政府最終消費支出や
公的固定資本形成を
削減する、
あるいは
増税で
民間の消費や投資を
縮小させてしまうと、
名目GDPは小さくなります。
足し算でございますから。

PB黒字化目標は、
まさに政府支出削減と、
増税により収支を
黒字化しようという
悪夢の政策だったのです。

PB黒字化目標により、
名目GDPという分母が小さくなり、
2001年の目標導入以降、
政府債務対GDP比率は、
むしろ上昇していくことになりました。

結局、問題は何だったのか。
日本の名目GDP、
実質GDP、
そしてGDPデフレータの動きを
見れば分かる。

【日本の名目GDP
実質GDP
GDPデフレータの推移
(対前年比%)】

http://mtdata.jp/data_96.html#3GDP

恐ろしいことに、
デフレ下の日本では、
GDPデフレータは
マイナスが
「基調」な状況になっていました。
つまりは、物価が下がり続けた。

となれば、
実質GDPの成長率が
名目GDPの成長率を
上回る実名逆転状況が
終わらない。

実質GDPは、
名目GDPから
GDPデフレータの物価上昇分を
「控除」して計算されます。
つまりは、
常に名目GDP成長率が
実質GDP成長率よりも高いわけで、
実名逆転は異常事態です。

GDPデフレータの
ゼロ・マイナス基調は、
事実上、
2022年まで続いた。
97年と14年に
GDPデフレータが
プラス化していますが、
これは消費税増税によるものです。

要するに、
日本はデフレだったのですよ。
これが、問題だったのです。
実際、
2023年のデフレ脱却
(※但しサプライロス型インフレ)以降、
名目GDPが拡大を始め、
政府債務対GDP比率は、
勝手に下がっていっています。

そして、
この超長期デフレーションを
継続させた戦犯こそが、
PB黒字化目標なのです。
PB黒字化目標により、
民間、政府の支出(=名目GDP)が
高まらない。
結果、政府債務対GDP比率は上昇する。

すると、
政府債務対GDP比率の上昇を受け、
「PB黒字化が必要だ」となってしまい、
はや四半世紀。

落ち着いて考えてみれば、
誰にでも理解できる。

政府債務対GDP比率の分母の
名目GDPは足し算。
PB黒字化目標は、
引き算であるため、
名目GDPの成長を抑制する。
成長率に
蓋をかぶせておくようなものです。

すると、
政府債務対GDP比率は上昇する。
そして、
PB黒字化目標は、
政府債務対GDP比率を
「引き下げる」ことが
目的で導入された。

いい加減に
正さなければなりません。

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11月以降の予定は以下の通り。
https://members14.mitsuhashi-keizaijuku.jp/

 第十一回 11月15日 大場一央先生
(早稲田大学非常勤講師)

 第十二回 12月20日 堀茂樹先生
(慶應義塾大学名誉教授・仏文学者)

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