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2013年8月3日

【古谷経衡】福祉国家スウェーデンの闇

From 古谷経衡(著述家&『月刊三橋』ナビゲーター)

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福祉国家スウェーデンの闇〜映画『ドラゴン・タトゥーの女』〜

北欧三カ国(ノルウェー、フィンランド、スウェーデン)は、日本において特に印象が良い。
「楽しいムーミン一家」で有名なトーベ・ヤンソンはフィンランド人。
日本でもCMソングなどで最近注目されているマイア・ヒラサワはスウェーデン出身。
何よりまして日本の、特にリベラルからは「日本が見習うべき福祉国家」の将来像として、この三カ国の名前がいつもお手本のように紙面やテレビで踊る。

さてこの北欧のひとつ、スウェーデンで近年大ヒットし、ハリウッドにも移植されたある推理小説がある。
スティーグ・ラーソン原作の「ドラゴン・タトゥーの女」がそれだ。
ラーソンは勿論スウェーデン人だが、人口1000万人に満たない同国で、この小説は300万部以上売れているのだから、如何に凄まじいヒットか判ると思う。

人気は欧州全土、米国など全世界に飛び火し、現在累計7000万部刊行ともいわれている。当然映画業界が見逃すはずもなく、2009年には同名映画がスウェーデンで、2011年には鬼才デヴィッド・フィンチャーがアメリカで映画化されている。

スウェーデン版と米国版は話の筋は基本的に同じだが、今回は特に米国版を紹介したい。

結論を言うと決してカップルで観るのはお勧めできない作品である
主人公の天才ハッカー女性・リズベットは精神異常者と判定されて(本当は感情表現が乏しいだけなのだが)裁判所から後見人をあてがわれている。

つまり、日本で言うところの成年後見人制度を利用しているのであるが、その後見人というのが外道中の外道。リズベットは銀行口座やクレジットカードをもてないので、生活費を後見人の振り出す小切手に頼っている。彼女の後見人は、その小切手を振り出すたびにその見返りとしてリズベットに性的関係を求め、しかも通常の性行為ではない、ここでは過激過ぎて書けないような酷い倒錯した性衝動のはけ口として扱うのである。勿論、この後見人は後日、彼女からそれ以上の復讐をされるのも圧巻の(そして胸のすく)最高の見応えなのではあるが。

後見人制度は、恵まれない青少年にとって最後のセーフティネットというべき社会保障である。
その社会保障を己の欲望の食い物のように扱う、本作の後見人は、まさに「福祉天国」スウェーデンの暗部を代弁したものだ。
もっとも、この作品はあくまでフィクションである。話の本筋自体は、スウェーデンの片田舎で起こった幼女失踪事件をめぐる、日本版「犬神家の一族」的な話なのであるが、しかし完全なる創作というわけでもない。

スウェーデンに代表される北欧の高福祉の国々では、ケースワーカーやソーシャルワーカーによる児童や介護者に対する虐待(性的なものを含めて)が近年社会問題になっている。

イスラム系移民による治安の悪化や混乱もある。同国ウトヤ島で起こった移民排斥を唱える犯人が起こした銃乱射事件も記憶に新しい。
そういったスウェーデン社会の暗黒面が背景にあるからこそ、本作の惨い描写は、単なる作り話と一笑することができないリアリティを持ってスウェーデン国民に迎えられたのだ。

高福祉国家、ユートピアの代名詞とて語られるスウェーデンの、闇の部分を継ぎ足して、世界に衝撃を与えた本作は、単にかの国が夢の国でも何でもなく、それどころか闇に蠢く魔性(ドラゴン)が確かに存在する事実を的確に映像の中に流し込んだものだ。

映画は、その国の社会を映す鏡である。

ドラゴン・タトゥーの女では、常に鬱屈とした霧と曇天が世界を覆っている。実に暗いライティングが続く。それはスウェーデンが、決して希望にあふれた光の国ではないことを、デヴィッド・フィンチャーが色彩の中に表現した皮肉なのではないか。

日本の未来像がスウェーデンに無い事は、この映画を見れば誰しも納得するであろう。

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【古谷経衡】福祉国家スウェーデンの闇への4件のコメント

  1. こじこじ@京都 より

    古屋さんの映画評論いいですね!めっちゃ興味沸きました、見てみます!!確か田嶋さんも、スウェーデン、フィンランドとか言ってたような気がするなぁ

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  2. 情緒不安定放送局○HK より

    >どこにも存在しない社会を夢見るものは、馬鹿にされるわけです。(うみゆりさんてブログのコメントに御出演の方でしょうか。そんな疑問はどうでもいいことではありますが) おっしゃる党利ですね。考えれば考える程発狂しそう(してる)で思考停止したくなってきました。自分の脳味噌を引きずり出して、脳詰めソーセイジ食品にして…サイナラ、サイナラ、サイナラッ。 福祉国家でも自由国家でも結局、民主(主義)は利用されバリバリバンバンドドメ色と化していく?。 いまだに原作は3巻中までしか読んでなく、ネット右翼の逆襲とどちらを先に読むかで悩み過ぎて火花が飛び散り思考回路破損してしました。スクラッブ機械人間は廃棄処分でユンボで埋められた。(面白くも何ともない馬鹿な支離滅裂コメントになった。御了承ください)

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  3. ウミユリ より

    ユートピアって、理想郷の意味もありますが、本来は「どこにもない場所」「決して存在社会」を意味するのです。ちなみにユートピアを夢見る人間をユートピアンといいますが、これは「頭の能天気な空想家」の意味もあります。どこにも存在しない社会を夢見るものは、馬鹿にされるわけです。この世に理想郷は、存在しません。光があるところは、必ず影があります。光が強くなれば、それだけ影も濃くなります。そして、長所は常に短所と同じ硬貨の表と裏の関係にあります。勿論、北欧諸国に学ぶべき点が数多くあるでしょうが、「理想郷は、この世に存在しない」ということを念頭に置いておかないと、間違ったことを学び、導入する危険性が生じます。在日スウェーデン人女性が、「日本は、スウェーデンの良いところしか見ていない。是非暗い部分も見て、スウェーデンの二の舞を演じないでほしい」と書いておりましたが、暗部を見ることも、他国から学ぶことにおいて重要な要素だと思います。

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