日本経済

2018年2月13日

【三橋貴明】リニア新幹線と文房具、あるいはカローラ

From 三橋貴明@ブログ

JR東海のリニア中央新幹線は、
ゼネコン大手による
「不当な取引制限 カルテル」の疑惑
により、工期に影響することが
懸念されています。

『39年開業に黄信号? 指名停止なら工期影響「中堅では作業厳しい」
http://www.sankei.com/affairs/news/180211/afr1802110013-n1.html

リニア中央新幹線建設工事をめぐる
ゼネコン大手4社による談合事件は
東京地検特捜部による捜査が進む一方、
工事の遅れが懸念されている。

JR東海は「工期への影響は想定していない」
と強調するが、各社が刑事訴追されれば
受注資格を制限せざるを得ないとみられる。

技術力の高さから「スーパーゼネコン」
といわれる大手4社。

距離にして6割以上の未発注区間への
影響は必至で、予定する平成39年開業に
暗雲が立ちこめている。(後略)』

日本のマスコミは相変わらず
「談合事件」などと、バズワードを
使った無責任な報道をしていますが、
談合とは官公庁の入札制度における、
事前協定(話し合い)のことを意味します。

JR東海は民間企業であるため、
「談合事件」は成立しません。

今回の事件は、あくまで
「カルテル」の疑惑になります。

もちろん、「談合」自体について、
わたくしは別に問題があるとも
思っていません。

と言いますか、

「指名競争入札と、談合」

以外に、各地方に土木・建設産業の
供給能力を「健全な競争」の下で
残す方法があるならば、
教えて欲しいものです。

入札を一般競争入札と化し、
さらに談合を禁止する
「市場原理主義」の下で、
我が国は自然災害大国でありながら、
土木・建設の供給能力を毀損する
という最悪の道を辿ってきたことは、
ここ数日、書いてきた通りです。

さて、今回のJR東海のリニア発注に際した
カルテル疑惑において、対象となった工事は
「南アルプストンネル」及び大深度地下の
「品川駅」「名古屋駅」の三つが中心になります。

この三つは、
「超絶に難関な工事」
であるという現実を
知らなければなりません。

記事の後半で、ある大手ゼネコン幹部が、

「トンネルはかなり勉強が必要。

うちでさえリニア計画発表から
7、8年かけて勉強している。

トラックの通り道や作業スペースの
土地取得など事前打ち合わせに
相当時間がかかる。

中堅ゼネコンにどこまでできるのか。

現実には難しいものがある」

と、語っていますが、「価値観」的な
話を排除すると、それはそうでしょう、
としか書きようがないわけです。

南アルプスの下をくり抜くような
長距離トンネルは、過去に「人類」が
経験したことがありません。

その種のトンネルの仕事を
請け負うとなれば、当然ながら
事前に様々な準備が必要になります。

例えば、大手ゼネコン企業が
リニア中央新幹線のプロジェクトを見据え、
莫大な金額を事前に投資し、
技術を開発し、学び、発注に備えたとします。

この種の事前準備にコストをかけた挙句、
「はい、一般競争入札です」
という話になってしまうと、
投資が無駄になってしまうわけです。

そうなると、各社は「事前の準備」に
費用を支出することが困難になり、
誰もまともに応札あるいは工事ができず、
「超難関」なリニア新幹線は実現しない
という話になってしまいます。

もちろん、現在の独占禁止法では、
大手ゼネコンやJR東海が
「事前に調整」していたとなると、
これは「カルテル」に該当し、違法
という話になってしまいます。

とはいえ、リニアのような超難関工事と、
文房具の調達、あるいはカローラの
調達について、「同じ基準」の法律を
適用しているわけで、違和感を
禁じ得ないのです。

それはまあ、文房具やカローラであれば、
品質が「市場」で評価されているわけで、
一般競争入札で「最も安い企業」から
買えばいいのです。

とはいえ、リニア新幹線の
南アルプストンネルは、

「本当に誰がやっても同じ品質になるのですか?」

という話なのでございます。

この手の話は、常識あるいは
「良識」の範囲だと思うわけですが、
それでも、

「いや、一般競争入札でなければならない。
カルテルは違法だ」

と、官公庁ならともかく、
JR東海のビジネスについてまで
「制約」しようとするのが、現在の
日本政府であり、政治家であり、
日本国民なのだと思います。

我々、日本国民が早期に「良識」を
取り戻さない限り、我が国の未来を
覆う暗い帳が払われることはないでしょう。

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【三橋貴明】リニア新幹線と文房具、あるいはカローラへの3件のコメント

  1. 天鳥船 より

    以前、小浜先生が「才能を潰すのが得意な日本」として書かれていましたが、やはり一連の捜査は何かの力が働いているのか?と勘ぐりたくもなりますね。
    こう言うと、一部の人間は陰謀論云々と嗤うかも知れませんし、私自身も検察は事実と正義に基づいて仕事をしている、と信じたい気持ちはあります。
    しかし、現実として検察にも色んな人間がいます。
    座右の銘が「日本死ね」のパコリーヌ山尾も、元々は検察官だったことを忘れてはいけません。
    せめて我々は、国家権力が反日勢力に悪用されていないか、注意深く目を光らせねばなりません。

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  2. 談合? より

    私は、「談合は悪」そのものの考えには賛成しかねる者です。
    こう書くと皆さんに大いに批判されそうですが・・・・
    しかし、考えてください。なぜ談合が悪いのか?
    価格が高止まりするから?
    だったら、官の人間が、工事の価格を正当に判断できる能力があればそんな事は起こらないはずです。
    自分たちはそのような能力が無いのにもかかわらず、「談合悪」・・・
    今、談合談合という言葉で、今回のような工事で無くとも、本当に工事が出来る施工社が落札できずに、ただ価格だけで落札し、まともに工事の出来ない施工社が、施工できずに「丸投げ」に近い状態で施工を請け負う形態が増えています。これが本来の姿でしょうか?
    みんなが丸く収まる、「話合い」も必要では無いでしょうか?

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      1. 天鳥船 より

        基本的な考え方は概ね賛成ですが、一部に誤解があります。
        公共工事の場合、使用する資材も施工価格も人夫賃も、すべて単価が決まっています。専用の算定ソフトに設計図書に基づいて単価を入力していけば、それによって入札価格が算出されます。担当する職員によって、公共工事の価格にバラつきがでることの無いよう、基本的には誰がやっても同一の価格になるようになっています(もちろん、設計図書や単価は部外秘です)。従って、官の人間の能力によって工事価格が高止まり、なんてことは起こりえません。入札価格には上限、下限があり、時々ニュースになっているのは、落札価格がほぼ上限ギリギリになっているケース。(因みに、この手のニュースは大抵が内部告発です。)どこかから入札予定価格が漏れて、出来レースで落札予定者に落札させているわけです。税金を使っている以上、工事費は安い方が良い、申し合わせで上限ギリギリで請け負うなどケシカラン、となるわけです。
        ちなみに、安い方が良いのなら、何でわざわざ下限を決めているのか、と不思議に思われるかも知れませんが、モノには適正価格があります。それを極端に下回ると、労働者の安全が犠牲になったり、あるいは使用する資材の品質に問題があったり等、必ずどこかにしわ寄せがきます。最悪の場合、工事自体がストップすることも起こりえます。
        しかし、中には公共工事の請負実績を稼ぐために、無茶苦茶な低価格で入札してくる業者がいます(カミカゼ入札などと言われます)。それを防ぐために下限額が決められています。
        さて、話を元に戻しますが、現状でも三橋先生が懸念されている事態を防ぐ方法はあります。本来、特殊な技術を要する等の理由で請け負える業者が限られる場合、随意契約や、入札にかけるにしても指名競争入札が認められています。しかし、近年は何かと言うとマスコミに官民癒着だの官製談合だのと叩かれたり、或いは後で会計検査院に理由を説明するのが面倒だったりするので、何でもかんでも一般競争入札にする風潮があります。
        随意契約の要件を緩和し、施工内容に相応しい業者にきちんと発注できるようにすれば、三橋先生が懸念されているような悲劇は起こりません。結局のところ今の日本の問題はルサンチマンが蔓延し、官とゼネコンが癒着して税金で美味しい思いをしていると妄想を抱いて、公共工事というだけで何でもかんでもバッシングしたがる、官もそれを恐れて、とりあえず一般競争入札にしておけば、後から面倒に巻き込まれずにすむ、そうやって逃げようとします。これが問題なのです。

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