日本経済

2017年11月2日

【島倉原】雇用情勢を巡る歪んだ報道

From 島倉原(しまくら はじめ)@評論家(クレディセゾン主任研究員)

雇用情勢の改善が報道されています。
厚生労働省の10月31日の発表によれば、
9月の正社員の有効求人倍率は1.02倍で、
統計を取り始めた2004年以降の最高値。
15~64歳人口の就業率も75.8%で、
こちらは何と1968年以降最高とのこと。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO2291349031102017MM0000/

他方で「雇用改善」の割に消費は回復せず、
同日発表された9月の家計調査によると、
2人以上世帯の世帯当たり消費支出は
実質で前年同月を0.3%下回ったことが、
同じ記事の中で伝えられています。

本紙の読者にはいわずもがなでしょうが、
消費の不振は実質賃金の低迷によるもの。
「毎月勤労統計調査」によれば、
8月の実質賃金指数(季節調整済)は、
前月比、前年比いずれもマイナスで、
相変わらずの低迷が続いています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22489830Q7A021C1EAF000/

これは以前も述べたことですが、
例えば就業率を過去の水準と比較するなら、
上記のような15~64歳人口での比較は
適切とは言えません。
仮に、50年前と今の就業率が同じなら、
進学率や定年年齢の変化、あるいは
女性の社会進出などの影響を加味すれば、
今の方が50年前よりも実態は悪いはず。
特に、女性の就業率の高まりは、
配偶者の所得だけでは家計が苦しく、
むしろ雇用環境の悪さを反映した部分も
あるからです。

社会変化の影響を極力排除するのなら、
比較対象は25~54歳の男性が適切。
これは、下記の拙著でも述べた通りです。
http://amzn.to/1HF6UyO

というわけで、25~54歳男性の就業状況を
見てみましょう。
就業率は確かに上昇傾向ですが、
長期デフレによって大きく落ち込んだ
2000年以降の水準にとどまっています。
他方で、2008年のリーマン・ショックで
一段と落ち込んだ就業者数は、
その後の減少傾向は全く変わっていません。
https://twitter.com/sima9ra/status/925665552579796992

これは、就業率の上昇をもたらしたのは
企業側の雇用意欲の高まりではなく、
人口減少の結果であることを示しています。
しかも、就業率自体もデフレ以前より
大きく落ち込んだままであること、
さらには実質賃金の低迷を踏まえれば、
雇用意欲は高まっているどころか、
むしろ低迷しているというべきでしょう。

デフレと経済の長期低迷をもたらしたのは、
民間の所得を抑圧する緊縮財政。
この20年にも及ぶ失政を続ける限り、
真の意味での雇用情勢の改善は、
実現に程遠いのではないでしょうか。

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欧州中央銀行が量的緩和政策の縮小を決定。
その後の金融市場の動きを踏まえ、
金融市場の中期的な動向を展望しています。
↓「ECB理事会決定後の金融市場」
http://foomii.com/00092/2017102901420042032

株式市場の転換点をどう見極めるべきか。
中期的な目安として有力と思われる、
ある指標について考察しています。
↓「株価の転換点を見極める方法」
http://foomii.com/00092/2017102200000041899

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【島倉原】雇用情勢を巡る歪んだ報道への3件のコメント

  1. たかゆき より

    『猿』
    芥川龍之介の短編小説
    「落ち」の場面
    「猿は懲罰をゆるされても、人間はゆるされませんから」

    二十年にわたる失政にもかかわらず 国家公務員法という 鳥獣保護法によって 保護され続けてきた 彼等、、

    そうですか 
    猿だったんですね。。。

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  2. 赤城 より

    この20年にも及ぶ失政を続ける限り、

    もう誰も失政だと判断も出来ないことがこの国の救いがたい現状を物語っています。
    どんなに健全な体、国家を持っていたとしても頭が狂ったり病原菌に冒されてしまえば自滅と自殺以外の結末はありえないということです。

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  3. たかし より

    私は50代で、過去に転職7回ほどしております。
    ヘッドハンティングなどでではなく殆どが零細企業です。

    その折に感じたことですが、有効求人倍率がいくら良くなっても、
    実質まったく需給のマッチングができていないと感じました。

    ハローワークでの求人の多くは、看護師、ソフト関係の実務経験者や、~の実務経験必要とか資格~級以上とか何かと条件がついていることがほとんどでした。

    資格無しとなれば、警備、飲食なののブラック企業といわれるような職種です。ホテル業界でも日常レベルの英会話必須です。

    結局、無資格や実務経験がない人は応募ができません。
    有効求人倍率は改善されてもこれではなかなか仕事が見つからないという現実が無視されているように思います。

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