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2019年5月25日

【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第五十七話

From 平松禎史@アニメーター/演出家

佐藤健志さんは、最近スタートさせた『痛快!戦後ニッポンの正体』
https://pages.keieikagakupub.com/satosn1_org_02/
のプロローグで作劇術を例に、「悪役」にも彼らなりの真理と賢明さがある、旨おっしゃっていた。
その通りだと思います。
悪役が取るに足らない愚か者では滑稽にしかなりませんし、観客と一体化すべき主人公の正しさもへったくれもなく、そんな悪役と必死に戦う主人公には共感できなくなってしまいます。
「世界征服」という単純化されたワードで悪役を設定しても主人公の活躍をよろこんで観てくれるのは、小学生低学年くらいでしょう。

第五十七話:「虚実の転倒した世界・子供じみた全能感に埋没した経済論者」

ヒッチコック映画を例に考えてみます。
サスペンス映画は主人公と観客とが心理を共有して旅をする物語と言えます。
そのようなタイプの映画では「悪役」の設定が重要になりますので、主人公よりも悪役のキャスティングを慎重に行い魅力的に仕立てていました。

ヒッチコック映画では、「悪役」が自身の正義感を陶酔的に吐露する場面があります。
特に第二次大戦中から戦後の作品に顕著です。
『海外特派員』(1940)のフィッシャーは、ドイツ移民としての祖国愛を実証するため、平和活動家を詐称して諜報活動を行う。
『逃走迷路』(1942)のトビンは、民主主義や資本主義を憎むニヒリスト(虚無主義者)。
『疑惑の影』(1943)のチャールズは、亡夫の築いた富で安穏と暮らす未亡人を敵視し、殺して財産をいただくのが正義だと信じている。
『ロープ』(1948)のブランドンは、ニーチェの超人理論を歪めて信奉し、自身の超人性を実証するために完全殺人を断行する。
などなど。
東西冷戦期に入ると、政治的な題材は後退して人物の心理を中心とした恋愛ものやスパイアクションものがつづきます。スパイものの悪役は機密を売買するビジネス目的になっているのが今日的です。
複雑化した世界情勢では「悪役」なりの真理を描きにくくなったのでしょう。民主主義陣営の正義を単純に肯定できなくなったのかもしれません。
1944年公開の『救命艇』では、自由主義陣営の人物が自説を振りかざしてバラバラになっていることを批判していた。悪役のドイツ兵を技術も意志も強固な優れた兵士に仕立てたため、アメリカの映画評論家に酷評されてしまった。
しかし、今『救命艇』をみると「自由」だから正義だと言えない現実世界をカリカチュアライズした作品だと思えるのです。正義であるはずの自由主義陣営の人物が、個人の主義主張を絶対だと固執していたのです。

彼らに共通しているのは「全能感」です。

【全能】ぜんのう 何事でもなしうる能力。「全知__の神」
(大辞林第三版)

『海外特派員』のみイギリス時代の作品ですが、すべてヒッチコックが属した連合国側の視点とは言え、歴史の経験を経て、人類は民主主義と国民を主体とした資本主義を主軸に選んできたのです。
「悪役」の思想は全体主義者、無政府主義者、アナーキストやニヒリストのそれであり、受け入れられない。
しかし、「悪役」は、それぞれ民主主義や資本主義体制を懐疑し、自分たちの理想郷を作るために破壊活動をする。彼らは彼らの理想を真剣に追求しているのだ。
現代のテロリストに重なる思想、全能感を持っている。
それを、滔々と語る場面があるのです。

理性的な観客からすれば「トンデモ論」にしか聞こえないそれを、彼らは真剣に信じているのだ。彼らの全能感は覆すことができない。だから、狂気となる。
だから、主人公に寄り添う観客は「悪役」と対決しようとする。

「悪役」論理構造は、緊縮財政・新自由主義を是とする経済論者とそっくりです。
「悪役」の論理が主流となり、一般人は正しいと思いこんでいる。
『逃走迷路』では、悪役たちが主催したパーティ(集まっているのは一般のごく善良な人々)の中で孤立してしまう。主催者は悪者だと説明しても誰にも信じてもらえない。
この恐怖も、実に現実的です。

+ + +

さて
現代日本の経済問題では、この「悪役」と「主人公」…虚実がほとんど転倒している状況です。
少し前の記事ですが、現在も異口同音、財政拡大路線への批判が連日展開されています。
朝日新聞が「MMT」(現代貨幣理論)にお怒りのようです

https://www.excite.co.jp/news/article/BestTimes_10290/
《原(真人)氏は、MMTについて、「インフレにならない限り政府は中央銀行に紙幣を刷らせ、財政赤字を気にせずにどんどん財政支出できる、という驚くべきトンデモ経済理論」と、一刀両断。》
に対して、中野剛志さんは
《より正確に言うと、MMTとは、「自国通貨を発行できる政府は、インフレにならない限り、財政赤字を気にせずにどんどん財政支出できる、という経済理論」です。》
と説明します。
「インフレにならない限り」の位置が違うだけじゃないかと思うでしょうか?
ここが大違いなのです。
「インフレにならない限り」という制約条件が、「政府は中央銀行に紙幣を刷らせ、財政赤字を気にせずにどんどん財政支出できる」の前についているか、「政府は、」と「財政赤字を気にせず」の間にあるかでは、大違いなのです。
つまり、前につけているのでは、「財政赤字を気にせずどんどん財政支出できる」が切り取られて認識される。よって、「トンデモ論」の印象を植え付けることができるのです。

ここが、原真人氏(財務省)なりの真理と賢明さの表れと言えよう。

ここで「え? MMTってそんなこと言っちゃってんの?」と思ってしまった読者は、つづく原真人氏(財務省)なりの真理と賢明さにどんどん騙されてしまうのです。

しかし、それは「悪役」による空想的全能感の吐露であって、真実ではありません。

中野さんが丁寧かつユーモアたっぷりに反論…というか原氏の言うことが本当ならどうなるかを説明…しています。

まさに、ちょっと考えてみればわかること、なのですよ。

原真人氏(財務省)らの言うことが正しいいなら、彼らの主張で実行した政策で景気は回復し所得は上がり世の中は安定して豊かになっているはずだ。
なっていない、どころか、悪くなる一方だ。



「ニッポンの数字」より https://www.nippon-num.com/economy/nominal-income.html

わかりにくいカタカナ語を多用して一般人の思考を停止させる術にも長けている。
「悪役」に術に取り込まれ、「消費増税やむを得ない」などと納得してはいけないのです。

おそらく、戦前戦後のヒッチコック映画を、無政府主義者やアナーキスト、ニヒリスト、テロリストが観たならば、主人公が「悪役」にみえることでしょう。

現代日本の経済問題には、そのような虚実の転倒が起きているのだと、わかるのです。

映画って本当にイイものですね。

○コマーシャル

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ボクのブログです。
http://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/

 

—発行者より—
総理「政権中にこれを破棄できなければ、日本はオシマイ」

三橋貴明と総理との会談時で明かされた真実。

●総理が、三橋との会食をオープンに
(世に公開)してまで国民に伝えたかった事とは…?

●この会食で明らかになった、
私たちの邪魔をする[3つの敵の正体]とは?

●2020年に訪れるかもしれない
日本の危機的状況とは一体何なのか?

日本が発端となり、
2008年のリーマンショックが再来する?

などなどメディアが決して報道しない
「安倍総理の告白」と「日本経済2020年危機」
について解説した書籍を出版致しました。

こちらから詳しい内容をご覧ください。
https://keieikagakupub.com/38JPEC/1980/

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【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」:第五十七話への1件のコメント

  1. たかゆき より

    ニ ニ ニーチェか サルトルか

    ソ ソ ソクラテスか プラトンか、、

    ニーチェにならって 言うなら

    民主主義は 死んだ

    そして グローバリズムという 全体主義が

    文字通りに 地球を覆い尽くしつつある。。。

    人間とは(含小生) どこまで愚かになれるものか??

    杯を 干しながら

    眺められる 快感

    映画なんか鑑賞するよりも(失礼)

    現実を観察している方が

    百万杯も 愉しいのだ ♪

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