日本経済

2017年10月7日

【三橋貴明】少子化が国難というならば

From 三橋貴明@ブログ

月刊WiLL (ウィル) 2017年 11月号 に連載

「反撃の経済学
なぜ日本の実質賃金は低迷しているのか?」

が掲載されました。

さて、総理は「国難」について
北朝鮮危機と「少子化」である
と説明しています。

2016年の合計特殊出生率は
1.44。2015年と比較すると、
0.01ポイント低下しました。

出生数も97万6979人と、
戦後、初めて100万人を割ります。

日本の少子化の主因は、
文句なしで「婚姻率の低下」になります。

1970年代は10前後だった
婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)が、
2014年に5.1まで下がり、
2015年も同じく5.1。

なぜ、結婚が減っているのか。

18歳から32歳までの
未婚者を調査すると、
「いずれ結婚するつもり」と
答えた者の割合は、
男性が85.7%、女性が89.3%。

実は、この値は他の先進国と
比較して「高い」数字なのです。

日本の若い世代の結婚願望は、
決して低くありません。

それにも関わらず、結婚が増えない。

理由はもちろん、所得水準が
下がっていっているためです。

【日本の20代・30代の所得分布(1997年と2012年)】


http://mtdata.jp/data_57.html#2030

上記の通り、「問題の年」である
1997年と比較すると、
20代、30代の所得分布は、
明らかに左にシフトしてしまっています。

特に、97年時点で
年収500万円~699万円の30代が
25%近くいたのに対し、
2012年には15%に
落ち込んでしまっているのには驚かされます。

と言いますか、97年は30代において
最も所得分布が集中しているのが、
500万円から699万円だったわけです。

それが、2012年には300万円から499万円。

この惨状で結婚や出産が増えたら、
むしろ奇跡でございます。

日本の若い世代にとって、
出産どころか結婚そのものが
「贅沢品」になってしまっているのです。

2013年以降は、
さらなる実質賃金の低下に見舞われましたので、
当然ながら所得分布はさらに左に移っているでしょう。

安倍総理が本気で少子化が「国難」である
と考えているならば、20代と30代の所得分布を
「右にずらす」必要があるのです。

無論、名目で上げればいい
という話にはなりません。

給料の額面の上昇率が、
物価の上昇を上回る実質賃金で
所得を引き上げていかなければならないのです。

というわけで、17年8月の実質賃金(速報値)が発表になりました。

【平成29年8月の実質賃金(速報値)】

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/29/2908p/2908p.html

現金給与総額:対前年比0.1%
きまって支給する給与:対前年比▲0.2%

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

現金給与総額は辛うじてプラス化しましたが、
わたくしが重要視している
「きまって支給する給与」は
マイナスに落ち込んでしまいました。

【日本の実質賃金の推移(対前年比%)】


http://mtdata.jp/data_57.html#JC1708

ちなみに、2016年に
実質賃金が上がっているのは、
賃金の上昇というよりは、
物価の下落によるものです。

2017年は物価の下落は止まりつつあるのですが、
名目賃金が伸びないため、きまって支給する給与は
昨年9月を最後にプラス化したことがありません。

日本国民の貧困化は継続中です。

所得分布が左にずれていっているのです。

少子化を本気で国難と思うならば、
まずは実質賃金の低下に
歯止めをかけなければなりません。

具体的には、政府の需要創出と生産性向上、
そして労働分配率の規制です。

この種の間違いなく効果がある
「少子化対策」を実施せずに、
「消費税の使い方の見直し」が少子化対策などと言われても、
「あ、どうせ、それでは解決しませんから」
と、断定せざるを得ないのです。

関連記事

日本経済

【島倉原】憲法改正論議の背後にある緊縮財政

日本経済

【島倉原】企業の投資意欲の実態

日本経済

【藤井聡】政府は「正々堂々」とプライマリーバランス目標を解除せよ

日本経済

【三橋貴明】デフレ脱却、積極的財政政策で

日本経済

【三橋貴明】日本国民の問題

【三橋貴明】少子化が国難というならばへの1件のコメント

  1. 神奈川県skatou より

    三橋先生のご活躍をいつも熱く熱く応援しております。

    いまや結婚して子供を育て、戸建てを買って、なんて昭和なサクセスストーリーは「価値観が違う」という言い訳で皆が放棄してしまっている世の中なのかもしれません。
    個人の利得だけを短時間で考えれば上記は重荷で、なんらかの理由、個性尊重がどうしたとか、男女平等がどうしたとか、が立ちますが、人が生まれ育つ環境は家庭であるならば、それを形成することの喜びをなくしてしまえば人は人で居られるのだろうかと
    思わずにいられませんです。
    自分はそれを確保するのが政治だと思いたいです。

    少子化問題。
    子供が少なくなれば、子供は大人に囲まれて育ちます。おさない社会性を訓練する場は、あるのでしょうか。保護される立場、サービスされる立場、それでよいのでしょうか。
    つたない者同士でとりあい、譲り合い、約束し、信頼を築く。子供社会が今、弱くなっているのかもしれません。
    少子化は単に人口バランスの問題だけではないはずだと思います。

    返信

    コメントに返信する

    メールアドレスが公開されることはありません。
    * が付いている欄は必須項目です

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

週間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】日本最強の提言書  〜「財政再建」のための、消費増...

  2. 2

    2

    【藤井聡】与党内部からも、「消費増税凍結」「PB目標撤回」を...

  3. 3

    3

    【小浜逸郎】誰が実権を握り、日本を亡国に導いているか

  4. 4

    4

    【小浜逸郎】高度大衆社会における統治の理想

  5. 5

    5

    【三橋貴明】平成病

  6. 6

    6

    【藤井聡】「財政健全化投資」こそが、財政再建のために必要であ...

  7. 7

    7

    【三橋貴明】国民を守るための銃

  8. 8

    8

    【三橋貴明】皇統と財政(前編)

  9. 9

    9

    【三橋貴明】皇統と財政(後編)

  10. 10

    10

    【三橋貴明】忌まわしき税金

MORE

月間ランキング

  1. 1

    1

    【藤井聡】与党内部からも、「消費増税凍結」「PB目標撤回」を...

  2. 2

    2

    【藤井聡】「消費増税」すれば、「税収」が減ってしまいます。

  3. 3

    3

    【小浜逸郎】誰が実権を握り、日本を亡国に導いているか

  4. 4

    4

    【藤井聡】注意報:「財政規律」を巡る攻防でいま、「デマ」が横...

  5. 5

    5

    【藤井聡】いよいよ、「プライマリー・バランス」を巡る攻防が本...

MORE

最新記事

  1. 日本経済

    【藤井聡】「財政健全化投資」こそが、財政再建のために必...

  2. アジア

    【三橋貴明】忌まわしき税金

  3. 政治

    【三橋貴明】平成病

  4. アメリカ

    【三橋貴明】国民を守るための銃

  5. 政治

    【三橋貴明】皇統と財政(後編)

  6. 日本経済

    【三橋貴明】皇統と財政(前編)

  7. 政治

    【小浜逸郎】高度大衆社会における統治の理想

  8. 日本経済

    【藤井聡】日本最強の提言書  〜「財政再建」のための、...

  9. 政治

    【竹村公太郎】定点観測、新人研修

  10. 日本経済

    【三橋貴明】忌まわしき税金

MORE

タグクラウド